セットバックが必要な不動産を売る時のコツは?6つのポイントを解説

※ このページには広告・PRが含まれています

不動産売却を行う際に不動産調査を行うと、「セットバック」が必要な不動産であることが判明することがあります。セットバックが必要であるということは不動産にとってデメリットとなり、購入検討する方にとってもマイナスの印象を与える要素となります。

売却予定の不動産にセットバックが必要であることが分かった場合、どのように売却を進めていくのか、売却戦略を立てることが大切です。

この記事では、セットバックがなぜ必要なのか、売りにくい理由、売る時のポイントなどを解説します。セットバックが必要な不動産の売却を検討している方はご参考ください。

目次

  1. セットバックが必要な不動産とは
    1-1.接道義務を満たしていない
    1-2.道路斜線制限の条件を満たしていない
  2. セットバックが必要な不動産を売るのが難しい理由
    2-1.セットバックで利用可能な面積が狭くなる
    2-2.そのままの状態では再建築できない
  3. セットバックが必要な不動産を売る6つのポイント
    3-1.建物を解体して更地として売却する
    3-2.隣接地の所有者に売却する
    3-3.隣接地を買い取って条件を満たしてから売却する
    3-4.セットバックしてから売却する
    3-5.セットバックに必要な費用を値引きして売却する
    3-6.リフォームしてから売却する
  4. まとめ

1.セットバックが必要な不動産とは

不動産は「建築基準法」というルールに基づいて建てられています。しかし、建築基準法は時代の変化に適用できるように適宜見直されており、建築後の建物が現行の建築基準法を満たしていないケースも見られます。

現行の建築基準法に適合していない建物の場合には、敷地の境界線を道路や隣地から離す「セットバック」が必要です。どのような場合にこのセットバックが必要になるのか詳しく見ていきましょう。

1-1.接道義務を満たしていない

建築基準法の第43条には、前面道路に2m以上接していなくてはならない接道義務というルールが記載されています。

道路であればどのような道路でも良いというわけではなく、第42条に定められている幅員4m以上の道路でなくてはなりません。規定を満たしていない幅員1.8m以上の道路の場合、既存の建物はリフォームによって住み続けることは可能です。

しかし、再建築や大規模なリフォームを行うにはセットバックにより現行の建築基準法に適合させる必要があります。

1-2.道路斜線制限の条件を満たしていない

建物が無制限に建築されると、日当たりや風通しが悪くなってしまうため、建築基準法では日当たりや風通しを確保するために、道路斜線制限というルールを設けています。

道路斜線制限とは、道路の境界線から伸ばした斜線よりも高い建物を建築できないというルールです。道路斜線制限にかかる場合、建物全体または2階部分のみをセットバックする必要があります。

2.セットバックが必要な不動産を売るのが難しい理由

セットバックが必要な不動産は、以下のような理由から買い手が見つかりにくくなります。

  • セットバックで利用可能な面積が狭くなる
  • そのままの状態では再建築できない

各理由を詳しく説明していきます。

2-1.セットバックで利用可能な面積が狭くなる

接道義務を満たしていない不動産を現行の建築基準法のルールに適合させるには、敷地を道路の中心線から2m後退させる必要があります。また、セットバックした部分は道路と見なされるため、自由に使用できません。

セットバックさせた分だけ土地の大きさが縮小することになるため、建物の建蔽率や容積率が影響を受けることになります。

2-2.そのままの状態では再建築できない

セットバックが必要な不動産は現行法に適合していません。そのため、再建築する際または増改築する際には、セットバックによって現行法に適合させる必要があります。

リフォームによってセットバックを先送りすることも可能ですが、建物が限界を迎えた場合は再建築のためにセットバックに応じなくてはなりません。その他、火事や地震などで急に再建築が必要になる可能性もあります。

このように、セットバックによって利用可能な面積や再建時の建物の規模が縮小する、常にリスクと隣り合わせになるため、購入検討者にとっては制限のない不動産の方が優先される傾向があります。

3.セットバックが必要な不動産を売る6つのポイント

セットバックが必要な不動産は制限のない不動産と比べて売却が難しくなるため、売却時には少しでも成約率を高めるための工夫が求められます。

セットバックが必要な不動産を売るポイントとして、以下の6つが挙げられます。

  • 建物を解体して更地として売却する
  • 隣接地の所有者に売却する
  • 隣接地を買い取って条件を満たしてから売却する
  • セットバックしてから売却する
  • セットバックに必要な費用を値引きして売却する
  • リフォームしてから売却する

各ポイントを詳しく見ていきましょう。

3-1.建物を解体して更地として売却する

セットバックが必要な不動産をそのまま売却した場合には、セットバックに必要な費用を購入者が負担することになります。

しかし、建物を解体して更地として売却した場合は、既にセットバックが完了しているので購入者の負担が軽減されます。

経年劣化などによりそのままの利用が難しい物件であれば、建物が残っている場合よりも需要が期待できます。ただし、解体費用を回収できるほど不動産が高く売れるとは限らないため、いきなり解体に踏み切らず、売却戦略をしっかり立ててから取り組むことが大切です。

3-2.隣接地の所有者に売却する

隣接地の所有者の中には、不動産の購入を希望している人もいます。例えば、二世帯住宅に建て替えたい、敷地を広げることで土地の資産価値を高めたいなどです。

必ず購入してもらえるというわけではありませんが、上記のようなケースもあるため、不動産仲介会社を通して一度相談されてみると良いでしょう。

なお、隣接地の方との関係性にもよりますが、基本的に直接の交渉は控えておきましょう。不動産売買は「できるだけ高く売りたい売主」と「できるだけ安く買いたい買主」という関係性となり、双方の利益が相反することから交渉が難航しやすいためです。

3-3.隣接地を買い取って条件を満たしてから売却する

隣接地の所有者が売却を検討している場合は、隣接地を買い取ってまとめて売却するのも選択肢の1つです。

仮に隣接地がセットバックの不要な不動産だった場合は、隣接地と合わせることによって接道義務の条件を満たせるため、資産価値が高まります。

3-4.セットバックしてから売却する

セットバックして現行法に適合させてから売却するのも選択肢の1つです。売却前にセットバックすれば、通常の不動産と同様に売却できるため、要セットバックの不動産よりも需要増が期待できます。

しかし、セットバック費用を自身が負担しなくてはならず、敷地面積にもよりますがおおよそ30~80万円程度の費用が発生することを理解しておきましょう。

3-5.セットバックに必要な費用を値引きして売却する

売却前にセットバックするのも選択肢の1つですが、セットバックのタイミングを相手に委ねて、セットバックにかかる費用分を値引きして売却するという選択肢もあります。

セットバックのタイミングを購入希望者に委ね、セットバックに必要な費用を値引きして売却することを提案すれば、印象が悪くなることを回避できるでしょう。

3-6.リフォームしてから売却する

セットバックが必要な不動産は、セットバックで利用可能な面積や再建時の建物の規模が縮小することから、購入に前向きになれない人が多い不動産です。

一方、通常の不動産よりも物件価格が安いことから、長く利用できそうな物件であれば購入検討する方も少なくありません。まだ建物部分の重大な劣化がない物件であれば、売却前にリフォームで室内をきれいにしておけば、上記のマイナスの印象が弱まることで前向きに購入を検討してくれる人が増える可能性があります。

しかし、リフォームには多額の費用がかかります。かかった費用を回収できるほど不動産が高く売れるとは限らないので、解体を検討する場合と同様、実施前に売却戦略をしっかりと立てておくことが大切です。

4.セットバックが必要な不動産の売却が得意な不動産会社の探し方

セットバックが必要な不動産を売却するには、建築基準法について理解が深く、また幅広い購入者層にアプローチできる不動産会社の協力が重要となってきます。セットバックのような特殊な売却条件があるのであれば、全国的に知名度が高く、信頼性の高い大手不動産会社への依頼を検討するのも一つの方法です。

例えば、三井グループの大手不動産会社が運営する「三井のリハウス」のような豊富な取引実績や顧客ネットワーク、全国エリアに店舗展開しているなどの強みを持った不動産会社への依頼を検討されてみると良いでしょう。

その他、上記の三井のリハウスを含む大手6社に同時査定依頼が出来る「すまいValue」のような不動産一括査定サイトを活用し、複数の不動産会社の査定結果や売却戦略を比較されたうえで依頼を検討することも有効です。

なお、地方エリアの不動産や居住用不動産の売却では、そのエリアの特徴について深い理解のある中小規模の不動産会社の方が得意である可能性もあります。そのような場合は、大手と中小の不動産会社2,000店舗に依頼ができる「SUUMO」が便利です。株式会社リクルートが運営しており、数多くの企業と取引実績がある同社では、独自の審査基準を設けて取引企業を審査している点が特徴的です。

その他、主な不動産一括査定サイトの特徴をまとめた表です。セットバックが必要な不動産の売却を依頼する不動産会社を探す際はご参考ください。

主な不動産一括査定サイト

サイト名 運営会社 特徴
SUUMO(スーモ)不動産売却[PR] 株式会社リクルート 大手から中小企業まで約2,000の店舗と提携。独自の審査基準で悪質な不動産会社を排除。60秒で入力が終了し、無料査定がスタートできる。
すまいValue[PR] 不動産仲介大手6社による共同運営 査定は業界をリードする6社のみ。全国875店舗。利用者の95.5%が「安心感がある」と回答
LIFULL HOME’Sの不動産売却査定サービス[PR] 株式会社LIFULL 全国3826社以上の不動産会社に依頼できる。匿名での依頼も可能
リガイド(RE-Guide)[PR] 株式会社ウェイブダッシュ 17年目の老舗サイト。登録会社数900社、最大10社から査定を受け取れる。収益物件情報を掲載する姉妹サイトも運営、他サイトと比べて投資用マンションや投資用アパートの売却に強みあり
HOME4U[PR] 株式会社NTTデータ スマートソーシング 全国2100社から6社まで依頼可能。独自審査で悪徳会社を排除

【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

まとめ

セットバックが必要な不動産は、同じ土地面積を利用して建て直しや大規模なリフォームを行うことができません。建て直しや大規模なリフォームを行うためには、セットバックにより建築基準法の条件に適合させる必要があります。

しかし、適合させるには費用がかかる、敷地面積が狭くなるため、通常の不動産と比べて不動産需要が低い傾向があります。

そのまま売り出そうとしても簡単には買い手が見つからないため、セットバックしてから売却する、セットバックに必要な費用を値引きして売却するなど工夫して売却することを検討されてみると良いでしょう。

The following two tabs change content below.

矢野翔一

関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。HEDGE GUIDEでは不動産投資記事を主に担当しています。専門用語や法律が多く難しいジャンルですが分かりやすくお伝えしていきます。