不動産投資ローンは、金融機関が提供している不動産投資向けのローン商品です。不動産投資を始める場合は、おおむね不動産投資ローンを利用することになります。
そこで今回のコラムでは、不動産投資ローンがどのくらいの金利で借りられるのか相場を解説していきます。また金融機関による違い、審査の際の項目などについても解説していきます。
目次
- 金融機関の種類
1-1.銀行の種類
1-2.銀行以外の金融機関 - 不動産投資ローンの金利相場
- 不動産投資ローンの審査基準
3-1.対象物件の担保評価・事業性
3-2.申込者の属性 - まとめ
1 金融機関の種類
金融機関というと銀行を想起される方が多いと思いますが、銀行以外にも金融機関があります。不動産投資ローンの金利は、金融機関の種類によって相場が異なるので、まずは金融機関の種類について把握していきましょう。
1-1 銀行の種類
銀行にはいくつかの種類があり、金融サービスをする目的や役割も異なります。規模や営業エリアなどで下記のように分類されます。
都市銀行
東京や大阪などの大都市に本店を置き、全国各地で銀行業務を行う銀行です。取引先は主に上場企業などの大企業や、個人の場合は高年収の方や資産家などです。そのため融資審査のハードルは高くなっています。「三菱UFJ銀行」「みずほ銀行」「三井住友銀行」の3大メガバンクも都市銀行です。
地方銀行
全国の大都市および中枢都市に本店を置き、銀行業務を行う銀行です。営業エリアは本店のある都道府県内が中心で、取引先は主に地域の企業や個人です。第1地方銀行とも言われるのは、下記の第2地方銀行と混同を避けるためです。主なところでは、「横浜銀行」や「千葉銀行」などが地方銀行になります。
第2地方銀行
地方銀行と同様、地方の都市に本店を置き、地域に密着した銀行業務を行っています。もともとは相互銀行だった金融機関が多くを占めています。「東京スター銀行」「京葉銀行」「栃木銀行」「名古屋銀行」などが第2地方銀行になります。
信託銀行
通常の銀行が行う銀行業務に加えて、信託業務と併営業務を行うのが信託銀行です。信託業務とは個人や企業から信託財産を管理・運用する業務です。また併営業務とは、不動産売買の仲介業務などです。「オリックス銀行」「三井住友信託銀行」「野村信託銀行」などが信託銀行になります。
そのほかの銀行
店舗を持たないインターネット専業銀行や、コンビニや商業施設にATMを展開する流通系銀行などがそのほかの銀行に分類されます。ゆうちょ銀行もそのほかの銀行となります。
1-2 銀行以外の金融機関
銀行以外にも銀行業務を行う金融機関があります。不動産投資では、協同組織金融機関である信用金庫と信用組合、政府系金融機関などのローンを利用する可能性があります。詳しく見てみましょう。
信用金庫
金融の円滑を図るため設立された協同組織の非営利法人で、地域の利用者などの会員の出資によって成り立っています。主な取引先は中小企業や個人で、会員や地域の繁栄のために金融サービスを展開しています。
信用組合
組合員の相互扶助を目的とする協同組織の非営利法人で、組合員の出資によって成り立っています。預金と貸付、為替などの金融サービスを行っているのは銀行などと同じですが、利用できるのは原則として組合員のみとなっています。
政府系金融機関
政府系金融機関とは、出資金の多くを政府が出している金融機関です。日本国内の経済活動が円滑に進むために中小企業の経営サポート、ローンの取り扱いなどを行っています。日本には「日本政策金融公庫」「日本政策投資銀行」「国際協力銀行」「商工組合中央金庫」などの金融機関があります。
2 不動産投資ローンの金利相場
通常、金融機関の金利は短期プライムレートによって変動し、融資案件ごとに決定されますが、目安となる数字があります。
- 都市銀行:1%〜2%台
- 地方銀行:2%〜4%台
- 信用金庫・信用組合:2%〜3%台
上記はあくまでもおおよその金利相場ですが、都市銀行は他の金融機関よりも低い傾向があり、その次に信用金庫や信用組合が低く、銀行によりますが地方銀行の金利は高い傾向にあります。
また金利には、返済期間がすべて同じ金利の固定金利と、短期プライムレートによって変動する変動金利の2つのタイプがあります。ローンを申し込む際にどちらか選択することができますが、タイプによっても金利は異なります。通常は変動金利の方が低く、固定金利の方が高めの設定になっています。
不動産投資ローンは融資額が多く、返済期間は数十年単位と長くなります。1%違うと総支払額が大きく違いますので、自分に合った金融機関を選ぶようにしましょう。
3 不動産投資ローンの審査基準
不動産投資ローンは誰でもが利用できる訳でなく、各金融機関で審査が行われます。金融機関によって審査基準は異なりますが、審査対象となる「対象物件」と「申込者の属性」について解説していきます。
3-1 対象物件の担保評価・事業性
不動産投資の場合、対象となる賃貸用物件の収益力や事業性などについて審査が行われます。その際、主に下記の項目によって審査されます。
- 立地
- 築年数
- 状態
- 入居状況
- 収支状況、など
各金融機関によって判断基準は異なりますが、例えば築年数が経っている物件は経年劣化により建物の担保性が低く、また入居率が悪化している場合には収益性の観点から評価が低くなる傾向があります。一方、新築の場合は担保性もプラスに評価され、収支状況が良いのであれば収益性が高く評価されて審査に通りやすくなると考えられます。
3-2 申込者の属性
次に審査対象となるのが、不動産投資ローンを申し込んだ方の属性です。属性とは、その人が持っている社会的および経済的な背景のことで、属性が良いほど不動産投資ローンも好条件で受けることが可能になります。
年収
不動産投資ローンの場合、対象となる賃貸用物件に抵当権が設定されます。加えて、金融機関ではローン返済が滞りなく行われるために、申込者の年収がどの程度あるのか確認します。おおよそ、年収の7倍〜12倍程度が融資の限度額とされます。
年齢
不動産投資ローンは長期にわたって返済していきます。申請者本人の年収も加味して融資額を決定するため、支払いが終了する時の年齢に制限を設けていることが通常です。各金融機関によって異なりますが、返済完了時の年齢は75歳や82歳などとなっています。
勤務先
申請者の年収が審査対象となるため、勤務先についても評価の対象となることがあります。例えば、上場企業などの大手企業であれば開示されているIR情報から経営状況や事業内容を把握しやすいため、プラスに評価されやすい傾向にあります。その他、医師や弁護士など平均年収が高い職業である場合も、審査で高く評価されやすいと言えます。
勤務年数
勤務年数が長い方が継続的に仕事をしており、融資後も収入は途絶えにくいと判断されます。ただし近年はキャリアアップのための転職も多く、勤続年数が短くても年収が上がっていたり、同一業界・業種への転職などであれば融資審査への影響が軽微である可能性もあります。各金融機関で最低勤続年数の基準を設けていることがあります。
雇用形態
非正規雇用の場合は派遣期間が終了すると収入が途絶える可能性もあるため、融資の判断が難しくなります。それに対して正規雇用であれば、雇用期間が継続される高い見込みがあるため、審査に通りやすいと考えられます。
家族構成
家族構成によって生活費が異なるケースもあるため、不動産投資ローンの審査で家族構成を申告することになります。例えば、家族4人よりも2人の方が生活費は少なくなるため、ローン返済に回す資金に余裕があると判断されます。
資産の状況
資産がどれくらいあるかを確認することで、申込者の返済能力を推測することができます。金融機関にしてみると、ローン返済が滞った場合などでも十分な資産があれば返済は可能だと判断でるため、金融資産や不動産資産を申告することになります。また、現在の資産を形成するに至った経緯や資産推移などが審査対象になることもあり、計画的に資産が増えているとプラスに評価されやすくなります。
借入金の状況
住宅ローンや車のローンなどの借入金が多いと収入に対する返済比率が高くなってしまうため、借入金がある場合は審査ではマイナスポイントとなります。なお、借入金にはクレジットカードの利用額も含まれ、融資を申し込む前には利用を控えたり、不要なカードについては解約しておくなどの対策が必要です。
まとめ
不動産投資の資金効率を高めるためには、金融機関からの融資を有効活用することが大切です。都市銀行、地方銀行など金融機関によって金利相場や融資条件、属性審査の項目が異なるため、比較しながら自分に合った金融機関を選ぶようにしましょう。
不動産投資会社やアパートメーカーによっては金融機関と提携しているケースもあり、担保評価の高い物件を提供している不動産会社であれば、優遇金利が利用できるなど良い条件で融資が得られることもあります。不動産会社を選ぶ際のチェックポイントにもなりますので、提携金融機関や融資実績なども確認されてみると良いでしょう。
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倉岡 明広
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