区分マンションでマンション経営を行っているオーナーの中には、賃貸中のマンションを売却する方法や手順などを知りたいと考えている方も多いと思います。
賃貸中のマンションを売却する場合は、オーナーチェンジ物件として売却することになります。通常の物件の売却とは異なるポイントもあるため、オーナーチェンジならではの売却方法について確認したうえで売却活動を行ってみましょう。
この記事では、区分マンションを賃貸中に売却する方法や手順、注意点などを解説します。
目次
- 賃貸中の区分マンションの売却方法
- 賃貸中の区分マンションの売却手順
2-1.不動産会社に査定を依頼する
2-2.不動産会社と媒介契約を締結する
2-3.売買契約を締結・物件の引き渡し - 賃貸中の区分マンションを売却する際の注意点
3-1.売却理由を明確にする
3-2.空室時の室内の状況を写真に残しておく
3-3.物件の欠陥がある場合は情報を開示する - まとめ
1.賃貸中の区分マンションの売却方法
賃貸中の区分マンションの売却方法は、賃貸契約を締結したままオーナーのみが交代するオーナーチェンジという売却方法が選択されることがほとんどです。
居住用としてではなく、賃貸用(投資用)として売却するという点が通常の不動産売却とは異なる点ですが、その他は基本的に同じです。不動産会社に賃貸中の区分マンションの売却を検討している旨を相談し、売却を進めていきます。
ただし、オーナーチェンジの場合は管理会社を継続するかどうか、内見ができない場合に付帯設備についてどのように説明するのか、住居の売却とは異なるポイントがあります。購入者も投資目的で検討しているため、収益性についても重要なポイントとなります。
これらの注意点があるため、売却を依頼する不動産会社については収益不動産を専門的に扱う不動産会社への依頼を検討することも大切なポイントとなってきます。
2.賃貸中の区分マンションの売却手順
賃貸中の区分マンションの売却を速やかに進行するには、売却手順を把握しておくことが大切です。
賃貸中の区分マンションの売却手順は以下の3つのステップです。
- 不動産会社に査定を依頼する
- 不動産会社と媒介契約を締結する
- 売買契約を締結・物件の引き渡し
それぞれの売却手順について詳しく説明していきます。
2-1.不動産会社に査定を依頼する
通常の居住用物件の場合、市場相場に築年数や劣化状況などの個別情報などを踏まえつつ価値がどのくらいかを判断します。一方、投資用物件の場合、収益還元法(不動産収入から逆算して不動産価格を査定する方法)による価格も踏まえて判断するため、特別な知識が求められます。
多くの不動産会社では投資用物件の査定にも対応しています。しかし、不動産会社で査定の際に何を重視するかが異なり、査定結果にも差が生じるため、複数の不動産会社に査定を依頼して査定価格や査定の根拠を比較してみましょう。
以下、複数の不動産会社へ査定依頼ができる不動産一括査定サイトの一覧です。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
2-2.不動産会社と媒介契約を締結する
査定結果、担当者との相性、売却実績などを総合的に判断しながら、売却の仲介を依頼する不動産会社を決めます。
仲介を依頼した後は、不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約締結後は不動産会社が中心になって売却活動を行ってくれます。媒介契約には以下の3種類があります。
項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
複数の不動産会社への依頼 | ○ | × | × |
自分で見つけた買主との単独契約 | ○ | ○ | × |
指定流通機構への登録義務 | 無 | 有 | 有 |
販売活動の報告義務 | 無 | 有 | 有 |
契約期間 | 規制は無し | 3ヵ月以内 | 3ヵ月以内 |
一般媒介契約では、売主は複数の不動産会社に仲介を依頼することができます。不動産会社が発見した買主の中から自分で選んで契約することもできます。
専任・専属専任媒介契約では、売主は専任媒介契約をした1社にしか仲介を依頼することができませんが、依頼を受けた不動産会社には定期的な販売活動の報告義務と指定流通機構へ物件情報を登録する義務が発生します。どの契約形式が良いか迷う場合には、まずは一般媒介契約を締結して様子を見るなど、工夫をしてみましょう。
なお、媒介契約後は不動産会社が主体となって活動を行ってくれますが、値下げ交渉、不動産会社から進捗報告を受けて売却期間と価格の調整、必要書類の準備、抵当権抹消のための金融機関との連携など、売主主体の業務も多数あるので注意してください。
また買主との値下げ交渉を不動産会社へ任せるのであれば、値下げ交渉があることを想定して応じられる価格をあらかじめ決めておき、不動産会社へ伝えておくと良いでしょう。
【関連記事】不動産の値下げ交渉は応じるべき?売却前に知っておきたい対応方法
2-3.売買契約を締結・物件の引き渡し
売買契約締結前に確認しておく必要がある事項として、修繕積立金の引き継ぎ、今後の修繕計画、管理会社の継続可否などが挙げられます。
区分マンションでは定期的に行われる大規模修繕に備えて修繕積立金を徴収しています。売主はオーナーが変更することを理由に修繕積立金を引き出すことはできず、それまでの修繕積立金は買主が引き継ぐのでその旨を明確にしておかなくてはなりません。
また、引き渡し後のトラブルを回避するためにも、マンション全体の修繕計画・修繕履歴、室内の修繕履歴なども合わせて確認しておきましょう。他にも、現在管理を委託している管理会社の管理継続可否を決めておくことも大切です。
売買契約締結後、物件の引き渡しの際に元オーナーから新オーナーへの所有権移転登記を完了させ、最後に入居者にオーナーの変更を通知すれば売却手続きは一通り完了です。オーナーの変更の通知に関する様式は特に決まっていませんが、トラブル回避のためにも以下の事項を盛り込んでおきましょう。
- 新旧オーナーの名前・連絡先・住所
- オーナーの変更日
- 賃貸借契約が引き継がれた旨
- 敷金の返還義務が引き継がれた旨
3.賃貸中の区分マンションを売却する際の注意点
賃貸中の区分マンションの売却を成功へと導くには、以下の3つの注意点を押さえた上で売却に臨むことが重要です。
- 売却理由を明確にする
- 空室時の室内の状況を写真に残しておく
- 物件の欠陥がある場合は情報を開示する
各注意点について詳しく解説していきます。
3-1.売却理由を明確にする
空室状態の区分マンションとは違い、賃貸中の区分マンションは所有していれば家賃収入を見込める物件です。収益物件が売りに出されているということは「何らかの問題が潜んでいるのでは」と買主は不安を抱きます。
そのため、理由を聞かれた場合に速やかに伝えられるように、資産整理のため、老後資金を確保するため、買い替えのためといった理由を整理しておくと良いです。
ただし、売り急いでいることを相手に伝えてしまうと、買主から強気の交渉をされてしまうことがあります。売却理由についてどのように伝えるのか、状況にあわせて不動産会社と相談を行っておきましょう。
3-2.空室時の室内の状況を写真に残しておく
通常の不動産売買では、内覧時に室内の状況を確認できますが、賃貸中の区分マンションを売却する際は入居中なので買主に室内の様子を見せることはできません。
そのままでは買主にとって不利になるため、入退去があった場合、原状回復工事後の写真を撮って残しておくなど工夫してみましょう。
売却時にはその写真を買主に提示すれば、室内の様子を確認できるため、売買契約の締結に至りやすくなります。
3-3.物件の欠陥がある場合は情報を開示する
民法改正により、売却した不動産に契約条件とは異なる何かしらの欠陥が潜んでいた場合、売主は契約不適合責任を負うことになります。
契約不適合責任を負うことになると、相手から契約解除や損害賠償を請求されるといったトラブルに発展する可能性もあるので注意が必要です。
売主が故意に事実を伝えなかっただけでなく、欠陥に気付いていなかった場合にも、同様に契約不適合責任を負います。
そのため、売主は物件に不具合がないか把握することを努めるほか、不具合があった場合は売買契約書や告知書などの書面で通知し、当該不具合の責任を負わない旨を明記するなど対策が必要です。
また、契約不適合責任について明記していない場合は、買主が不備を知ってから1年間は追及可能となります。あらかじめ、引き渡しの日から〇ヶ月といったように期限を設定しておくと良いでしょう。
【関連記事】契約不適合責任をわかりやすく解説!売主が注意したい3つのポイントも
まとめ
オーナーチェンジで区分マンションを売却する際、購入検討者の多くは投資目的となります。物件の状態に加えて、過去の運用状況についてもできるだけ明示することが、高値売却のポイントとなってきます。
売却を依頼する不動産会社については、収益不動産の売却実績がある不動産会社への依頼を検討してみると良いでしょう。また、1社だけでなく複数社の不動産会社を比較することも大切です。売却を依頼する不動産会社によって売却結果に差が生じるため、査定結果、売却実績、担当者との相性などから総合的に依頼先を決めましょう。
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矢野翔一
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