不動産投資は金融機関の融資を利用して手元の資金以上に大きな運用が可能な投資方法です。投資額が大きくなることで大きなリターンを狙いやすくなりますが、その反面、大きな損失に繋がるリスクもあります。
これらのリスクに備えて事前に回避したり、軽減することで、大きな損失を出さないようにコントロールしていくことは大切なポイントです。
そこで今回のコラムでは、不動産投資初心者が知っておきたいリスクと、それを回避する方法を紹介します。
目次
- 不動産投資におけるリスクヘッジとは
- 不動産投資の空室リスク
2-1.物件選びを慎重に行う
2-2.適切な家賃設定をする
2-3.空室対策に強い管理会社を選ぶ - 不動産投資の家賃下落リスク
3-1.入居希望者が多い物件を選ぶ
3-2.リフォームやリノベーションを行う - 不動産投資の家賃滞納リスク
4-1.保証会社を利用する
4-2.保証金制度を取り入れる - 不動産投資の資産価値下落リスク
5-1.適切な時期にメンテナンスを実施する
5-2.土地価格が下落しない場所を選ぶ
5-3.資産価値が下がる前に売却をする - 不動産投資の修繕リスク
6-1.清掃やメンテナンスをこまめに行う
6-2.資金に余裕を持って運営する - 不動産投資の災害リスク
7-1.保険を手厚くする
7-2.災害に強い物件を選ぶ - 不動産投資の金利上昇リスク
8-1.定期的な繰り上げ返済を検討する
8-2.キャッシュフローの潤沢な物件を選ぶ
8-3.固定金利を選ぶ - まとめ
1 不動産投資におけるリスクヘッジとは
不動産投資は入居者の賃貸ニーズがある限り定期的な家賃収入が見込めることや、金融機関の融資を利用して少ない資金で始められるレバレッジ効果、減価償却費の計上による損益通算など、様々なメリットがあります。
また、不動産投資は自身の現金や与信を実物資産に変換して運用するため、市場がインフレ傾向にある時の資産保全対策としても有効な手段となります。2021年時点の日本は低金利政策により緩やかなインフレ傾向にあり、不動産へ資金を投じることは、このような市場の流れに沿った戦略の一つとも言えるでしょう。
しかし、不動産投資はリスクのある投資方法です。メリットだけに目を向けて投資を行ってしまうと、大きな損失を招くことがあります。
例えば不動産投資を行う際、物件を購入する前にどのくらい収益を得られるのかシミュレーションを行います。しかし、このシミュレーション通りに運営ができず、想定した利益を得られない可能性があります。
このような想定した収益を得られる、もしくは損失となってしまう振れ幅のことを「リスク」といいます。不動産投資において代表的なリスクは次の7つあります。
不動産投資の代表的な7つのリスク
- 空室リスク
- 家賃下落リスク
- 家賃滞納リスク
- 資産価値下落リスク
- 修繕リスク
- 災害リスク
- 金利上昇リスク
不動産投資をできるだけシミュレーション通りに運用するには、これらのリスクがあることを理解し、シミュレーションの時点で数値にストレスをかけ、トラブルが起きても運用に問題がないかどうか判断することが大切です。
これらのリスクができるだけ小さくなるように事前に対策を講じておくことを「リスクヘッジ」と言います。次項より、それぞれのリスクの詳細、リスクヘッジの方法について解説していきます。
2 不動産投資の空室リスク
不動産投資では繰り返される入居と退居をいかに乗り切るかが課題のひとつです。そのためには下記のようなリスクヘッジ方法があります。
2-1 物件選びを慎重に行う
空室リスクを回避するには物件選びを慎重に行うことが欠かせません。入居者が決まりやすく、退居したくならない賃貸需要の多い物件を慎重に選ぶことが大切です。
単身者向けの物件であれば最寄駅から近くにあること、ファミリー向けであれば学校や商業施設、公園などの近くに位置する物件など、ターゲット層に合わせた物件選びをしてきましょう。
2-2 適切な家賃設定をする
相場に合わせた適切な家賃設定にすることでも空室リスクを回避することができます。反対に家賃設定を間違うと、入居付けが悪くなるだけではなく、入居期間も短くなってしまいます。
また家賃設定に合わせて、設備の更新を適切に行うことも必要です。シャワートイレの設置や、キッチンの入れ替え、無料Wi-Fiの設置などによって快適性を確保することで、入居率の下落を防ぐことに繋がります。
2-3 空室対策に強い管理会社を選ぶ
管理会社を委託するときはどのような空室対策を行ってくれるのか、あらかじめ実績を確認してみましょう。入居者募集とひと口に言っても、仲介店舗を持ち、管理と仲介を組み合わせて行っていたり、自社のサイトで入居者を募集していたり、仲介店舗に委託するだけといったように管理会社でそれぞれスタイルが違うためです。
3 不動産投資の家賃下落リスク
物件は、築年数が経つことによって経年劣化が起き、賃貸需要が低下していきます。そのため家賃を下げないと入居者を見つけられなくなる傾向があります。
家賃の下落を回避あるいは軽減する方法として下記のことが挙げられます。
3-1 入居希望者が多い物件を選ぶ
家賃を下げる必要があるのは入居希望者が少ない、あるいはいないケースです。反対に入居希望者が多い物件であれば、家賃を下げることなく運営することができます。そのためには、駅から近い、商業施設から近いといったように利便性に優れ、さらに競合物件の少ない地域の物件を選ぶことです。
築年数が家賃下落の主な要因とならない、もしくは少ないエリアもあります。投資エリアの過去の家賃推移を調べておくなどの対策を検討してみましょう。
3-2 リフォームやリノベーションを行う
適切な時期のメンテナンスや修繕、設備の更新を行うことで、家賃の下落を回避できる可能性もあります。費用はかかりますが、リフォームやリノベーションをすることによって、周辺相場よりも家賃を上げることに成功した事例も少なくありません。
4 不動産投資の家賃滞納リスク
入居者が経済的に困窮する状況に陥った場合に、起こりうるのが家賃滞納リスクです。滞納が起きてしまうと、強制退去の時間や費用がかかり、大きな損失となってしまうケースがあります。こちらも事前に対策を確認しておきましょう。
4-1 保証会社を利用する
家賃滞納リスクを避ける方法として取り入れられているのが保証会社の利用です。保証会社が入居者から手数料をもらうことで、親族などに代わって連帯保証人になるシステムです。入居者が家賃を払えなかった場合は、保証会社が代わりに支払うことになります。
保証会社を利用することで、家賃滞納のリスクを大きく削減することができます。ただし、保証会社への保証料を入居者が負担することになることや、保証会社の審査を通過できない方は入居できなくなってしまう点に注意しておきましょう。
4-2 保証金制度を取り入れる
関西圏で広く導入されているのが保証金制度です。敷金・礼金のほかに保証金を預かり、家賃を滞納した際の補填に充てる仕組みです。家賃滞納リスクを回避するのに有効な手段として用いられています。
ただし、保証金を超えた部分について補填することが出来ない点はデメリットとなります。
5 不動産投資の資産価値下落リスク
賃貸用物件を資産として見た場合、経年劣化による資産価値の下落は避けられません。しかし、適切な対策を講じることで、できるだけ資産価値を下落させないようにすることができます。
5-1 適切な時期にメンテナンスを実施する
資産価値を下げないようにするには、建物の劣化を防ぐことです。そのためには適切にメンテナンスを行い、さらにはリフォームやリノベーションで建物としての価値を下げないようにします。
また賃貸用物件として収益性を落とさないことも重要です。例えば、満室状態を長くキープすることができれば賃貸用物件としての収益性が保たれ、売却時の価格にも良い影響を与えます。適切に空室対策を行うことは、資産価値下落リスク対策になることを押さえておきましょう。
5-2 土地価格が下落しない場所を選ぶ
建築物は建てたときから劣化が始まり、資産価値が低下していきます。しかし、土地の価格は景気、あるいは再開発など土地の需給関係によって上昇することもありますが、建物のような経年劣化が起きない資産です。
駅から近いなどの好立地物件は、資産価値リスクを軽減する可能性があります。投資エリアの地価推移や人口推移を調べ、下落リスクが少ないかどうか確認してみると良いでしょう。
5-3 資産価値が下がる前に売却をする
不動産の資産価値は経過した年数によって下がっていきますが、その下がり方は一定ではありません。また、エリアや物件の構造、収益性によって資産価値が低下する時期も大きく異なってきます。
資産価値の下落理由・タイミングをつかむため、不動産会社による不動産査定を定期的に受けることを検討してみましょう。不動産査定を受けることでおおよその売却価格や査定価格の根拠について確認することができ、売却のタイミングを推し測ることができます。
6 不動産投資の修繕リスク
賃貸用物件は建築物ですから劣化は避けられません。必ず修繕する時期が訪れますので、リスクを回避あるいは軽減する方法を把握しましょう。
6-1 清掃やメンテナンスをこまめに行う
前項でも紹介しましたが、建物の劣化を防ぐには適切な時期のメンテナンスや日頃の清掃が欠かせません。
また、小さな劣化を放置しておくと、さらに劣化が進むことがあります。例えば、少しのひび割れを放っておいたばかりに、ひびがどんどん広がって大規模な修繕が必要になることもあります。さらに、そのひびから雨水が侵入し、建物の基礎部分が腐食するといったこともあり得ます。
できるだけ規模が小さいうちに修繕を行いましょう。修繕する規模を大きくしないことがリスク回避では重要です。特にアパート経営など、自身の裁量でリフォームを行える場合、こまめに物件の状態を確認しておくことが大切です。
その他、ワンルームマンション投資の場合は外壁などの大規模修繕や共有部分の修繕に備えて、管理会社が修繕積立金を設定しています。建物管理がどのように行われているのか、修繕計画が適切かどうか、事前に確認しておきましょう。
【関連記事】不動産投資で建物管理がなぜ重要なのか?建物管理に強い不動産会社も
6-2 資金に余裕を持って運営する
余剰資金があるときに修繕用の費用としてストックしておけば、修繕が必要なときに費用が捻出できないといった事態を避けることができます。
例えば、設備が破損してしまった場合や災害によって大きな被害が出た際には、突発的な修繕が必要になることもあります。不動産投資で得た収益をプライベートの消費などに使ってしまわず、修繕のために積立をしておくのもいいでしょう。
7 不動産投資の災害リスク
日本は地震が多く、ゲリラ豪雨や大雨、台風による被害があります。賃貸用の物件を守るためにも、災害リスクを回避する方法を確認しておきましょう。
7-1 保険を手厚くする
自然災害や火事、事故などから物件を守るためには、保険に加入しておくことが重要です。
賃貸用の物件がこうした被害に遭った際に、自力で復活させるのは困難です。火災保険に加え、地震保険(特約を含む)、水害に対する補償が受けられる保険など、被害を想定して適切な保険を選ぶようにしましょう。
7-2 災害に強い物件を選ぶ
物件のある地域がどのような被害に遭うことが想定されるか、ハザードマップであらかじめ確認することも災害リスクを回避する手段のひとつです。
例えば、気になる物件があったときに、洪水などによる水害や地震の揺れがどのくらい起きるのかハザードマップを見ると推測ができます。賃貸用物件として好条件が揃っていても、災害に弱い物件であれば資産を失いかねません。適切な判断をするようにしましょう。
また、災害リスクを回避するには災害に強い物件を選ぶことも考えましょう。例えば、1981(昭和56)年5月31日までの旧耐震基準で建てられている物件などには要注意です。中古マンション投資を検討している際には、築年数の確認をしておきましょう。
8 不動産投資の金利上昇リスク
金融機関から融資を受けて賃貸用の物件を購入する際に気をつけなければいけないのが金利上昇リスクです。金利が上昇して返済金額が増えると、手元に残る資金が減ってしまいます。
8-1.定期的な繰り上げ返済を検討する
金利上昇リスクに備える方法の一つに、繰り上げ返済があります。繰り上げ返済を行うことで借入総額を当初のスケジュールよりも早く減らすことができ、金利上昇時の影響を少なくすることに繋がります。
繰り上げ返済には、返済期間を短くするパターンと、返済期間はそのままで毎月の返済金額を少なくする方法があります。投資の資金効率やキャッシュフローも考えたうえで検討してみると良いでしょう。
ただし、繰り上げ返済には、融資を受けた金融機関に対する違約金がかかること、それとは別に手数料がかかる場合があることが注意点として挙げられます。
その他、2022年1月時点における各金融機関の不動産投資ローンの金利は非常に低く設定されているため、金利が上昇した時の利息額もそれほど大きくならない可能性があります。余剰資金があるのであれば、全額繰り上げ返済に回すのではなく、別の運用対象へ再投資することも選択肢の一つと言えるでしょう。
8-2 キャッシュフローの潤沢な物件を選ぶ
変動金利の場合、金利上昇がおきるリスク自体を避けることはできません。そのため、将来の金利上昇に備えてキャッシュフローが潤沢な物件を選ぶことも重要なポイントとなります。
キャッシュフローが良好でない物件の場合、金利上昇によって収支がマイナスになってしまうおそれがあります。金利上昇リスクを加味した収支シミュレーションを行っておきましょう。
8-3 固定金利を選ぶ
金利上昇リスクを避けるためにはローンを契約するときに固定金利を選択しておくことも一つの手段です。
金融機関とのローン契約の内容によっては、ローン返済途中からでも金利の切り替えができます。金利が急激に上昇することがあると推測できる場合は、返済途中でも固定金利へ切り替えることも検討してみると良いでしょう。
ただし、変動金利のほうが金利は低い傾向にあるうえ、実務上、パッケージ融資で固定金利を選択するというケースは非常に少ないと言えます。金利変動リスクに対するヘッジの方法の一つとして、押さえておきましょう。
【関連記事】不動産投資ローンは固定金利・変動金利どちらがおすすめ?違いを比較
9 まとめ
不動産投資のリスクヘッジ方法は、物件を選んでいるとき、物件を購入するとき、物件を運営しているときといったように、いくつかのシーン別に考えることも必要です。特に、利回りの高い物件はハイリスクであるケースも少なくないため注意が必要です。
今回紹介したリスクヘッジ方法を参考にして、リスクを回避、あるいは軽減しながら賃貸用物件の運営をしていきましょう。
依田泰典
ソニーにて、ITソリューション関連の法人営業や企画・マーケティングに従事(MVP受賞)。株式(信用取引)等幅広く金融商品を運用。リーマン・ショックを経験後、不動産投資を徹底研究。日本銀行のマイナス金利政策を勝機とし数億円の融資を獲得。分譲マンション(1Kから3LDK)を20戸以上購入。ソニー退職後、不動産会社(ベンチャー企業・東証上場企業)にて、収益用不動産(1棟物件)の売買、事業開発、広報・広告宣伝に従事。現在は、ベンチャー企業を創業。東証上場グループ企業等の社外取締役、顧問、アドバイザーとして活動。不動産テック等スタートアップ30社に出資。貸金業務取扱主任者、ビル経営管理士、賃貸不動産経営管理士、社会保険労務士、行政書士等の資格を保有。趣味は、マンガアプリ(電子書籍)とYouTube。街の散策と食べ歩き。合気道(有段者)。アイドルファン(乃木坂46齋藤飛鳥)。
【連絡先はコチラ】
倉岡 明広
最新記事 by 倉岡 明広 (全て見る)
- 不動産売却はどこがいい?大手不動産会社5つの比較や不動産査定サイトの使い方も - 2024年11月11日
- 不動産売却の実績が多い大手不動産会社は?10社の実績ランキングを比較 - 2024年11月11日
- 不動産売却で「東急リバブル」と「住友不動産販売」の違いは?評判・実績を比較 - 2024年11月11日
- 住友不動産販売の不動産売却査定の評判・口コミは?申込み手順も - 2024年10月3日
- 地価上昇が続くエリアはどこ?好立地の用地仕入れに強いアパート経営会社も - 2024年9月30日