不動産投資ローンの金利には、おもに固定金利と変動金利の2種類あります。どちらを選べば良いのかは、金利の状況、投資目的、借りる人の属性などによって異なってくるため、それぞれのメリット・デメリットをしっかりと押さえておくことが大切です。
この記事では、固定金利と変動金利の特徴やメリット・デメリットを比較しながら、どちらを利用すれば良いのかについて詳しく解説します。不動産投資ローンの金利の選択方法を詳しく知りたい方は、参考にしてみてください。
目次
- 不動産投資ローンの固定金利とは
1-1.固定金利のメリット
1-2.固定金利のデメリット - 不動産投資ローンの変動金利とは
2-1.変動金利のメリット
2-2.変動金利のデメリット - 不動産投資ローン、固定金利・変動金利の選び方
3-1.毎月の返済額を固定したい場合
3-2.返済計画を長期的に立てたい場合
3-3.短期間で収益物件を売却する可能性がある場合
3-4.金利上昇リスクにも対応したい場合
3-5.経済状況を定期的に確認したい場合 - まとめ
1.不動産投資ローンの固定金利とは
固定金利とは、ローンの融資を受けたときから完済するまで、適用される利率が変動しないタイプのローン商品です。
固定金利の利率の決定基準は、長期金利がベースとなります。長期金利とは、金融機関が企業などに対して1年以上の期間を定めて融資をするときに適用される金利です。
長期金利は、長期的な資金需要の影響を受けて利率が決まるため、物価変動や金融政策などの長期的な見通しで変わります。そのため、景気が上向くと上昇し、景気が後退すると下落する傾向にあります。
長期金利の利率を決定する基準は、10年物国債の利率です。10年物国債とは、発行から償還までの期間が10年の国債のことで、「長期国債」と呼ばれています。そのため、固定金利の利率の決定には、10年物国債の利率が大きく影響してくることになります。
1-1.固定金利のメリット
不動産投資ローンの融資を受ける際、固定金利を選択すると総返済額を固定することができます。返済期間中の利率変動がないため、返済期間中に金利が上昇しても、当初の予定よりも総返済額が多くなることもありません。
金利上昇によって毎月の返済負担が増えることもないため、金利変動を気にすることなく融資を受けられるメリットがあります。
また、総返済額を固定することができると、収支管理がしやすくなるのもメリットです。不動産投資ローンの毎月の返済も、支出の1つに該当します。もし、ローン金利の利率上昇が生じて毎月の返済額が多くなった場合は支出額も変動するため、その管理が難しくなります。
しかし、毎月の返済額があらかじめ確定していれば、ローン返済における支出額は変わらないため、そのぶん、収支管理もしやすくなります。
また、不動産投資ローンの融資を受けた後、インフレが起こると返済で有利になります。インフレによって物価が上昇すると、国は物価を安定させるために政策金利を上げて、金融機関の貸付金利を上昇させるようにします。
このように、固定金利の場合は返済期間中に金利が上昇してもその影響を受けないので、インフレが起こると返済で有利になる特徴があります。
1-2.固定金利のデメリット
不動産投資ローンで固定金利を選択した場合、変動金利よりも利率が高く設定されます。そのため、低金利の状況が継続すると、変動金利よりも総返済額が多くなるというデメリットがあります。
金利が上昇したときは返済が有利になる反面、低金利の状況が継続しているときは返済が不利になるのが固定金利のデメリットです。
また、景気が悪くなっても、毎月のローン返済額が変わらない点も固定金利のデメリットになります。景気後退が生じると、勤務先の業績不振により、給与やボーナスがカットされるケースもあります。
このような状況が生じたときでも、固定金利だとローンの毎月の返済額や利息が減るわけではありません。一方、変動金利の場合は、景気後退が生じるとその影響でローンの金利が下がって毎月の返済額や利息が少なくなる場合があります。景気後退が生じて経済的に厳しい状況になったときでも、毎月の返済負担が変わらないのが固定金利のデメリットです。
2.不動産投資ローンの変動金利とは
変動金利とは、ローンの融資を受けた後、一定期間ごとに適用される金利の利率が見直されるタイプのローン商品です。
例えば、融資金額5000万円、変動タイプの金利で利率1.8%という条件で借入をした場合、半年後に景気上昇の影響で適用される金利の利率が年2.0%に見直されると、以降はその利率で利息額が算出されます。
見直しにより金利の利率が変更された場合、発生する利息額も変わってきます。それにより、ローンの総返済額にも変動が生じることになります。
ただし、金利の利率が見直されると同時に毎月の返済額も変更されるわけではなく、毎月の返済額の見直しは5年ごとになるケースが大半です。5年以内に金利上昇があって利率が上がった場合、毎月の返済額のうち、利息の返済分の割合がそのぶん増えます。
また、変動金利の利率の決定基準は、短期金利がベースになります。短期金利とは、1年未満の短い期間の金利です。短期金利の代表例が政策金利であり、政策金利とは、中央銀行である日本銀行が一般の銀行に資金提供する際に適用されるときの金利です。
政策金利は、無担保で借入した翌日に返済する無担保コール翌日物で適用される金利をもとに設定されています。そのため、変動金利は、無担保コール翌日物で適用される金利の状況に影響されます。
2-1.変動金利のメリット
不動産投資ローンの借入をする際、変動金利を選択すると、通常固定金利よりも低い利率が設定されます。2016年1月より導入されたマイナス金利政策により、低金利の状況が継続しており、不動産投資ローンの借入で適用される金利の利率も低金利となっています。
低金利の状況が継続する中、変動金利を選択して借入をした場合、返済期間中は固定金利より低い利率が適用され続ける可能性が高いため、総返済額を抑えやすくなります。
一方、金利上昇に転じて総返済額が増える場合でも、毎月の返済負担を一定限度に抑えられるメリットがあります。金利上昇により総返済額が見直された場合、毎月の返済額は見直し前の金額より1.25倍が上限となっているためです。
例えば、当初の毎月の返済額が10万円の場合、金利がどれだけ上昇しても、最初の見直し後の5年間は、毎月の返済額が12万5000円を超えることはありません。金利上昇が生じて毎月の返済額が見直されても、返済負担の大幅増加となる可能性は低いと言えます。
2-2.変動金利のデメリット
インフレが起こったとき、不動産投資ローンの借入で変動金利を選択していると、返済で不利になるのがデメリットです。
インフレによって金利上昇のリスクが高まり、ローンで適用される金利の利率も見直しにより引き上げられます。その結果、固定金利を選択したときよりも総返済額が多くなる可能性があります。
ローンの返済計画を立てにくいのも変動金利のデメリットです。変動金利を選択した場合、返済期間中に金利の利率が変わるため、融資を受けたときに総返済額を把握することができません。
また、将来的に金利の利率や総返済額が変動すると、収支管理をするのも難しくなります。
このほか、金利上昇によって、ローン返済の先送りを招くケースもあります。例えば、当初の毎月返済額が10万円でその内訳が「元金分3万円、利息分7万円」の場合、金利上昇により、毎月の返済額10万円すべてが利息分の支払いになると、元金が減らなくなります。
さらに、金利上昇が起こって、毎月の返済額が利息分にも満たなくなる場合、未払分の利息が出てくる可能性もあります。
金利上昇による毎月の返済額の見直しは5年ごとに行われます。見直しの際には、当初の返済額の1.25倍までしか増額されないものの、金利の上昇率によって返済負担が増えると未払分の利息を発生させてしまい、ローンの先送りとなる可能性も出てきます。
3.不動産投資ローン、固定金利・変動金利の選び方
不動産投資ローンの借入をする際、固定金利と変動金利のどちらを選択すればいいのかは一概に言えません。固定金利を選択したほうがいいケースもあれば、変動金利を選択したほうがいいケースもあるので、それぞれ確認してみましょう。
3-1.毎月の返済額を固定したい場合
固定金利を選択して借入をした場合、返済期間中に金利が変動することはありません。
変動金利を選択して借入をすると、返済期間中に生じる金利変動によって、総返済額が多くなる場合もあります。総返済額が上昇すると、毎月の返済額も増え、経済的負担も大きくなります。
将来的に支出が増えてしまうことを避け、毎月の返済額を固定したい場合は固定金利のほうが向いていると言えます。
3-2.返済計画を長期的に立てたい場合
相続した土地に収益物件を建築して不動産投資を行うなど、収益物件を長期間保有する場合、ローンの返済も長期になります。長期返済予定のローンでは、返済計画を立てやすく、金利変動のない固定金利が検討できるでしょう。
ただし、固定金利は変動金利よりも金利水準が高くなり、長期保有するほど金利差による返済負担額が増加していきます。最終的な総支払額の差を比較してから、慎重に検討したいポイントと言えるでしょう。
3-3.短期間で収益物件を売却する可能性がある場合
収益物件の賃料収入だけではなく、売却益を得ることも考慮して不動産投資を行う場合、短期間で売却する可能性も出てきます。
この場合、固定金利で長期ローンを組んだ後に短期間で収益物件を売却すると、途中解約扱いとなり、多額の違約金を強いられるケースがあります。解約条件についても確認し、売却に問題があるケースでは変動金利を検討することになります。
3-4.金利上昇リスクにも対応したい場合
金利上昇で総返済額が増えても、経済的に余裕のある場合、変動金利が向いています。また、金利上昇によって総返済額が増えると見込まれる場合、借り換えをしたり、返済方法を変更したりしてリスクを回避することも可能です。このような形で金利上昇リスクへの対応を検討できる場合、変動金利が選択肢に上がります。
【関連記事】不動産投資ローンを借り換えるメリット・デメリットは?借り換え手数料も解説
3-5.経済状況を定期的に確認したい場合
変動金利を選択した場合、ローンの適用金利は、経済状況の影響を受けて利率が変化します。金利上昇リスクに対応する場合は、経済状況をしっかりと把握しておく必要があるので、変動金利のほうが向いています。
4.まとめ
固定金利と変動金利の主な違いは、「返済期間中の金利が変わるかどうか」というポイントです。固定金利は、返済額が固定されて収支管理しやすい反面、低金利の状況が続くと、変動金利よりも総返済額が多くなるのが特徴です。
一方、変動金利は、低金利の状況が続くと恩恵がある反面、返済計画を立てたり、収支管理をしたりする場合に対応しづらいのが特徴です。
固定金利と変動金利のどちらを選ぶかは、ローンを利用する人の状況によって異なります。不動産投資ローンの借入をする際、この記事などを参考にご自身に適したタイプの金利を検討してみましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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