REIT(リート)銘柄を選ぶポイントは?人気ファンド3本も紹介

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投資物件を購入して不動産投資をおこなうには、不動産投資ローンをしたり、頭金としてある程度のまとまった資金が必要になります。

このような事情から不動産投資をなかなか始められないという個人投資家も少なくありませんが、代わりにREITへ投資する方法があります。REITは、多くの投資家から集めた資金を多数の不動産に分散投資する投資信託の一種で、比較的に少額からでも投資にチャレンジできるのが特徴です。

この記事ではREITの特徴や銘柄選びのポイントを紹介し、後半では人気ファンドを3本紹介します。REITを通じた不動産投資にチャレンジする時の参考にしてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. REIT(リート)の仕組みや種類
    1-1.REITは不動産に分散投資する投資信託
    1-2.REITの種類①商品性
    1-3.REITの種類②投資先
  2. REIT(リート)の銘柄選びのポイント
    2-1.投資対象で選ぶ
    2-2.利回りが高い=良い銘柄とは限らない
    2-3.銘柄の信用力をみる
    2-4.スポンサー企業や運用会社の状況もみる
    2-5.時価総額とNAV倍率をみる
  3. 人気のREIT(リート)ファンド3選
    3-1.インヴィジブル投資法人
    3-2.GLP投資法人
    3-3.eMAXIS Slim 先進国リートインデックス
  4. まとめ

1 REIT(リート)の仕組みや種類

REITは英語で「Real Estate Investment Trust」の頭文字をとったもので、Real Estate=不動産に投資をおこなう投資信託です。まずは、REITの基本的な特徴やREITの種類、投資するメリットやデメリットを整理しておきましょう。

1-1 REITは不動産に分散投資する投資信託

REITとは、運営をおこなう投資法人が、多数の投資家から資金を集めて、それを多数の不動産に投資する投資信託の一種です。投資法人が、不動産運用を通じて得た賃料収入や物件の売却益が投資家に還元されます。

REITには上場していて柔軟に売買がしやすい公募REITと、上場していない私募REITがあります。私募REITは機関投資家向けに組成されることが多いため、個人投資家の投資商品としては証券取引所を通じて売買を柔軟におこなえる公募REITが浸透しています。特に日本の証券取引所に上場されている公募REITは「J-REIT」といいます。

また、厳密にはREITではないのですが、複数のREITに投資する投資信託があります。REITに投資する投資信託も、REITと似た商品と考えて投資することが可能です。

1-2 REITの種類①商品性

日本の個人投資家が投資しやすいREIT関連の商品は次の二つです。

  • J-REIT
  • REITに投資する投資信託

J-REITは、日本の投資法人が運営しているREITのうち、証券取引所に上場している銘柄です。海外不動産に投資することもできるルールにはなっていますが、主に日本の不動産に投資をおこなっています。

また、海外にもREITは存在しますが、日本の投資家が国内から海外のREITに投資するのは難しいため、REITの個別銘柄へ投資する場合は、J-REITから銘柄を選ぶのが現実的です。

その他、複数のREITに投資をおこなう投資信託もあります。通常の投資信託と同様に、市場指数へ連動することを目指して運用されるインデックス投信と、指数を上回るパフォーマンスを目指すアクティブ投信があります。

こちらはJ-REITだけでなく、海外のREITに投資する商品もあります。個人投資家が海外REITに投資する場合には、REITに投資する投資信託を活用するのが便利です。

1-2 REITの種類②投資先

REITは投資する不動産の分散度合いに応じて、次の4つに分類されます。

タイプ 投資先の特徴
総合型 3つ以上の用途の不動産に分散投資する
複合型 2つの用途の不動産に分散投資する
特化型 1つの用途の不動産に投資する
その他 投資地域など不動産の用途以外で投資先を絞る

不動産の「用途」は主に、次のような種類があります。特化型なら単一の用途の不動産に投資をおこないますが、それ以外は複数の用途の不動産に分散投資します。

用途 不動産の基本的な特徴
オフィス 大型オフィスビルへの投資
景気動向の影響を受けやすい
商業施設 ショッピングモールなど
消費活動の影響を受けやすい
オンラインショッピングの普及は逆風要因
住宅 マンションなどの賃貸住宅
景気動向に左右されにくく、相対的には安定性が高い
物流施設 大型倉庫などへの投資
オンラインショップの普及で需要が堅調
入居企業の入れ替わりが少なく、オフィスよりは安定性が高い
ホテル ホテルや旅館など宿泊施設への投資
景気動向やインバウンド需要などの社会情勢の影響を受けやすい
ヘルスケア・介護施設 高齢者住宅や老人ホームなど
賃料が高く、かつ景気に左右されにくいため、相対的に安定性は高い

物件のタイプや分散投資の度合いによる、リスクの高さや変動要因の違いをふまえたうえで、自分の投資スタイルにあったREITを選んで投資しましょう。

2 REIT(リート)の銘柄選びのポイント

一口にREITといっても、投資できる銘柄は多数存在するため、銘柄選びに悩んでしまう方も多いでしょう。そこで、次に紹介する5つの視点をもとに、リスクの許容度や期待リターンに合わせて投資をおこなうことを検討してみましょう。

2-1 投資対象で選ぶ

投資対象をもとに銘柄を検討しましょう。総合型・複合型・特化型のどれに投資するか、特化型ならどの用途の不動産に特化した銘柄を選ぶか、という軸で検討します。

例えば、今後景気拡大が見込まれる経済動向のタイミングであるなら、ボラティリティの大きいオフィス型やホテル型、景気変動の影響をさけたいなら住宅型やヘルスケア・介護型を選ぶのが有効な選択肢の一つとなります。また、景気動向にかかわらず長期保有したいなら、投資先が分散された総合型・複合型を選ぶのがよいでしょう。

2-2 利回りが高い=良い銘柄とは限らない

REITでは分配金利回りが収益性の指標とされます。

分配金利回り=1年間の分配金合計÷基準価額(REITの価格)

分配金利回りが高いと魅力的な銘柄である、と一見考えてしまいそうですが、一概にそうとは言い切れません。

利回りが高い銘柄は、投資している不動産のリスクも高いケースが多く、ハイリスクハイリターンの商品となっている場合があります。また、不動産の売却益などにより一時的に利回りが高くなっているケースもあり、その場合は、将来利回りが急低下するリスクがあります。

過去の分配金推移や投資先の物件の特徴なども調べたうえで、自分のリスク許容度にあった銘柄であるかを判断したうえで投資を検討しましょう。

2-3 銘柄の信用力をみる

主要なJ-REITの投資法人は、企業や金融商品の信用力を評価する「格付会社」から格付けが付与されています。日本の格付け会社でいえば、JCRやR&Iといった企業が、多くの投資法人の格付けを公表しています。信用力の高い投資法人であるほど経営上のリスクが低く、景気悪化などにも相対的に強いと期待できます。

また、LTVという指標も信用力を推測するうえで有効です。

LTV=有利子負債(Loan)/総資産(Value)

REITでは、投資法人の総資産の大部分について投資している不動産で構成されますので、総資産≒法人が運用している不動産の価値と考えることができます。LTVが低い=総資産に対する有利子負債の比率が低い方が、財務体質が健全であることが言えます。

2-4 スポンサー企業や運用会社の状況もみる

多くの投資法人にはスポンサー企業がついています。スポンサー企業とは投資対象となる不動産の供給や、物件の運用・管理についてノウハウやリソースを供給する企業のことで、投資法人の大株主として参画しているケースが大半です。

スポンサーの経営悪化はREITに大きな影響を与えるリスクがあります。スポンサー企業の経営状況が健全か、信頼できる企業かを確認しながら銘柄を選びましょう。

2-5 時価総額とNAV倍率をみる

時価総額はREITの市場価値を表したもので、基準価額に発行済投資口数をかけて計算されます。また、NAV倍率の計算方法は次の通りです。

NAV倍率=時価総額/純資産価格

純資産価格は投資法人のバランスシート上の純資産(総資産から負債を引いた部分)です。NAV倍率が1を上回れば割高、下回れば割安と考えることができます。

3 人気のREIT(リート)ファンド3選

ここまで紹介したREITの選び方をふまえても、銘柄選びに悩んでしまう人も少なくないでしょう。続いては人気のREITファンドをJ-REITから2つ、REITに投資する投資信託から1つ紹介します。悩んだときはまずこちらのファンドを参考にしてください。

3-1 インヴィジブル投資法人

  • ホテル・住居を中心とする総合型投資法人
  • 首都圏を中心としつつも全国および海外にも投資
  • LTVは40%程度

インヴィジブル投資法人ではコアアセット・サブアセットという形で投資不動産の用途を分類しています。コアアセットはホテル・住居で、サブアセットはコアアセット以外のオフィス、商業施設などとなっています。50%以上をコアアセットに投資する方針となっていて、複合型と総合型の中間的な性質をもつREITです。

2022年1月12日時点では、ホテル91.7%、住居7.8%とホテル中心のポートフォリオになっています。「2021年12月期 決算説明資料」によると、コロナ禍からの今後のホテル需要の回復を見込んで、投資をおこなっているとのことです。

投資地域は首都圏と政令指定都市を中心としつつも、震災リスクなどを考慮して全国の物件に投資先を分散しています。また最大15%まで海外不動産に投資しているのも特徴です。

同投資法人の格付けはJCRでA格が付与されています(2022年2月1日時点)。AA格の投資法人も多数存在するなか、2022年1月時点の主要な投資先であるホテルセクターの、コロナ禍での環境悪化をふまえて、やや低めの格付けとなっています。(※格付けはA→B→C→Dの順に高く、また同じアルファベットならAAA→AA→Aのように数が多い方が高い)

3-2 GLP投資法人

  • 物流施設特化型の投資法人
  • 延床面積10,000平方メートル以上の大規模施設を中心に投資
  • 関東圏を中心としつつ地理的分散を考慮して投資

GLPはグローバルに物流施設を中心に投資をおこなう資産運用会社で、GLP投資法人は、そのなかで日本のREITを運用する投資法人です。全国の物流施設に特化した運用をおこなっています。

延床面積10,000平方メートル以上の大規模施設を中心に投資をおこなっています。また、天井高5.5m以上、床加重1.5トン/㎡以上の設計となっている機能性の高い物件に投資する方針です。(2022年7月23日時点)

投資する地域については、取得価格ベースで次のようなポートフォリオとなっています。

  • 関東圏:50-70%
  • 関西圏:20-40%
  • その他:0-20%

人口密度と地理的分布を両立した配分になっていることが分かります。また、空港や貿易港の近隣、大消費地間を結ぶ交通網沿線など、安定した需要が見込まれる物流施設を選んで投資しています。

格付けは2022年2月18日時点で、JCRよりAAが付与されています。物流施設に特化することで、安定した需要が見込まれる点が評価されています。

3-3 eMAXIS Slim先進国リートインデックス

  • S&P先進国REITインデックスに連動する成果を目指して投資
  • 実質的に米国を中心に海外のさまざまなREITに投資できる
  • 不動産の用途で見ても分散投資が可能

eMAXIS Slim先進国リートインデックスはさまざまなREITに投資する投資信託です。S&P先進国REITインデックスは先進国のREIT約400銘柄(2022年6月末時点で386銘柄)から構成される指数で、同ファンドはこの指数へ連動することを目指して運用されています。

日本から直接購入するのが難しい海外REITに投資するのと同様の効果が得られるのが特徴です。市場規模の大きい米国を中心に先進国各国のREITに投資されています。

組入比率
アメリカ 74.0%
オーストラリア 6.1%
イギリス 5.1%
シンガポール 3.5%
カナダ 1.8%
香港 1.5%
ベルギー 1.2%
フランス 1.1%
オランダ 0.6%
スペイン 0.4%

出典:三菱UFJ国際投信「eMAXIS Slim 先進国リートインデックス2022年6月月次レポート
2022年6月30日時点

また、不動産の用途を見ても、幅広い施設に分散されているのが特徴で、比較して景気変動の影響を受けにくく、長期保有しやすいファンドです。

用途 組入比率
専門・その他投資型 18.7%
店舗用 17.4%
工業用 16.7%
住宅用 15.9%
ヘルスケア 9.1%

出典:三菱UFJ国際投信「eMAXIS Slim 先進国リートインデックス2022年6月月次レポート
2022年6月30日時点

なお、このファンドは為替ヘッジをおこなわないため、不動産の運用成績のほかに、各国通貨と日本円の為替変動の影響を受けることになります。投資する場合には、為替の動向についても注意しましょう。

4 まとめ

REITは個人投資家が少額で手軽に不動産投資をおこなうことができる投資商品です。個別物件を購入するほどまとまった資金が用意できない人や、多数の不動産に分散投資したい人にとって、REITは検討しやすい投資商品の一つと言えます。

個別の上場REITであるJ-REITでは主に日本の不動産に投資することができます。また、海外不動産に投資したい人、より投資先を分散させたい人は、複数のREITに投資する投資信託の購入を検討されてみると良いでしょう。

投資銘柄を選択する際は、今回紹介した5つのポイントが参考になります。それでも投資銘柄を決め切れない場合は、後半で紹介した人気銘柄も検討してみてください。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。