ウッドショックが新築住宅などの不動産価格に与えているということを聞いて、所有不動産の売却タイミングを探っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、中古不動産の価格は必ずしもウッドショックの影響を受けるとは言えず、売却する際には慎重に検討した方がよい場合もあります。
この記事では、ウッドショックと木材価格の推移、新築住宅の値上がりと中古不動産価格への影響、を解説し、ウッドショックが中古不動産価格に与える影響や不動産売却のタイミングについても検証していきます。
※本記事は7月26日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
目次
- ウッドショックと木材価格動向の推移
1-1.ウッドショックとは
1-2.木材価格動向の推移 - 新築住宅価格の値上がりと中古不動産価格への影響
- 市場動向と景気状況から不動産売却のタイミングを検証
3-1.全体傾向から見た不動産売却のタイミング
3-2.個別要因からみた不動産売却のタイミング - まとめ
1.ウッドショックと木材価格動向の推移
まず、ウッドショックとはどのような現象で、木材価格にどのような影響を与えているのか、それぞれ見ていきましょう。
1-1.ウッドショックとは
2020年のコロナショック以降、アメリカの住宅建築需要が増加したことを契機に、世界的な建築用木材の需要が増加し、その結果、木材価格が高騰しました。
日本では、住宅建材の大部分を輸入木材に依存しており、2021年半ばから輸入木材の価格が急騰したことで、国内の丸太や木材・木製品の取引価格も急上昇しました。
このように、世界的な木材価格の高騰が日本にも波及して木材価格が高騰し、日本の新築住宅価格にも影響を及ぼしている現象を、ウッドショックと呼んでいます。
※出典:経済産業省「新型コロナがもたらす供給制約 ; ウッドショックの影響」
1-2.木材価格動向の推移
それでは、ウッドショックによって、木材価格はどれぐらい高騰しているのでしょうか。経済産業省がまとめている資料を下に見ていきましょう。
木材・木製品の輸入物価指数は、2021年4月頃から上昇し始め、同年末には2020年と比較すると、1.6倍程度になっています。特に、集成材と製材の価格上昇率が大きく、2.2倍程度まで急騰しています。
次に、国内の丸太、木材・木製品の取引価格について見ていきましょう。
輸入木材・木製品の価格急騰に伴い、2021年4月以降、国内の丸太の取引価格も、1.5倍程度まで急上昇しました。しかし、その後は高価格を維持したまま、推移しています。
木材・木製品の価格は、2021年4月以降1.7倍程度まで急上昇しましたが、2022年3月現在もなお、上昇傾向にあるといえるでしょう。木材・木製品の種別の価格推移をみると、製材は直近ではおおむね横ばいで推移しており、輸入価格の影響は一定程度反映されたとみられるものの、合板や集成材では、輸入価格と同様の上昇基調にあり、今後も輸入価格上昇の影響が懸念されます。
2.新築住宅価格の値上がりと中古不動産価格への影響
ウッドショックによる木材価格の高騰は、新築住宅価格にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。
国土交通省が公表している、建設工事費デフレーターによると、近年上昇基調にあった木造住宅の建設工事費ですが、2021年に入って上昇速度を高めており、1年間で1割程度上昇しています。
また、経済産業省「木造住宅投資の動向をみる;新型コロナ感染症拡大以降は」によると、2021年に入って新築戸建住宅販売業指数が急落しており、その背景には、コロナ禍で蓄積された需要が一巡したことに加え、木材価格の高騰が影響を及ぼしている可能性を指摘しています。そして、今後の木材価格が新築住宅販売業に与える影響は不透明であるとしています。
これらの資料から、ウッドショックが木造住宅の建設工事費の上昇を招き、新築住宅価格に影響を及ぼしていることが分かります。ウッドショックは、中古不動産価格に直接の影響を及ぼすわけではありませんが、間接的な影響があると言えるでしょう。
例えば、新築住宅の購入を検討している顧客層が、価格が上昇することで予算オーバーとなり、中古不動産市場に流入して来るといった影響が考えられます。そうすると、中古不動産の需要が高まり、結果的に中古不動産の価格も上昇する可能性があります。
また、リフォームの際、木材や木製品を用いるケースもあることから、中古不動産の中でも大規模なリフォームをおこなった物件などの価格が上昇する可能性があるでしょう。
3.市場動向と景気状況から不動産売却のタイミングを検証
3-1.全体傾向から見た不動産売却のタイミング
ウッドショックによる木材価格の高騰の影響は、今後も継続する可能性があり不透明であるだけでなく、近年上昇基調にあります。そのうえ、円安による輸入品全般の価格上昇の影響も建設工事費の上昇要因となる可能性があります。
一方、不動産価格を構成する要素は工事費だけではなく、住宅ローン、不動産投資ローン等の長期金利、金融機関の貸出動向にも大きな影響を受けます。不動産市場の動向を検証する際は、金利動向にも注視することが大切です。
日銀の主要行長期金利の推移をみてみると、2008年頃2.4%程度まで上がったものの、その後低下を続け、2016年には1%を切っています。2020年からわずかに上昇したものの、2022年6月現在、1%前後の低金利で推移しています。(※参照:日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移 2001年以降」)
また、金融機関の貸出態度判断は、「日銀短観-2022年6月-」によると、2008年を底にしてアベノミクス以降、緩和傾向が継続しています。
2022年7月時点、長期金利も低水準かつ金融機関の貸出態度も緩和された傾向が継続している状況においては、不動産価格が急落するということは考えにくく、マクロ的には一つの売却タイミングとして検討しやすい時期であると言えます。
ただし、円安・インフレへの懸念が高まることで、貸出金利を引き上げることで抑制する動きになる可能性もあります。過去の動向が必ずしも将来を決定づけるものではないという点に注意が必要です。
3-2.個別要因からみた不動産売却のタイミング
不動産価格は立地や経年劣化などの個別要因にも大きく左右されます。特に、マンションの場合は建物価格の割合が大きいため、経年劣化の進み具合で売却タイミングを決めるのも一つの選択肢です。
その他、所有不動産の立地地域で再開発がおこなわれて、その影響で価格が値上がりすることもあるでしょう。売却タイミングを図るには、市場動向のようなマクロ的な検証も大切なポイントですが、実際に所有している物件の個別要因にも目を向けることが重要です。
個別要因による売却タイミングを検討するには、定期的に不動産査定を行い、実際に不動産価格がどのように推移しているのかを検証していく方法があります。ウッドショックや大きなインフレ(デフレ)傾向など、象徴的な市場の動きがあった場合などは特に有効です。
不動産査定を行う際は、複数の不動産会社へ査定依頼ができる不動産一括査定サイトが便利です。無料で利用でき、売却するかどうかは査定後に決めることができるため、「まずは価格を知りたい」「市場に合わせた価格を知りたい」という時にも活用することができます。
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まとめ
世界的な木材価格の高騰によるウッドショックは、日本にも波及し、木材や木製品の輸入価格の高騰、国内の木材・木製品の価格上昇をもたらしています。
木材・木製品の価格上昇によって建設工事費が増加し、新築住宅価格は上昇していることから、中古不動産にもその影響が及ぶ可能性があります。また、円安や低金利など、他のマクロ的な要因をみても、2022年7月時点で中古不動産の価格が急落する可能性は低いでしょう。
ただし、一時点の経済動向が今後も継続する保証はなく、所有不動産の価格には立地や経年劣化などの個別要因が最も影響を与えます。それぞれの事情に合わせて定期的に不動産査定を行うなどして、売却タイミングを図ることを検討してみましょう。
佐藤 永一郎
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