REIT(不動産投資信託)は、気軽に少額で不動産投資を始めることができる投資手法として人気があります。REITを保有していれば、不動産投資の家賃収入のように定期的な収入を得ることや、相場の変動によって売買益を得ることも可能です。
投資先の不動産の収益に連動してインカムゲインが得られる投資手法でありながら、売買によるキャピタルゲインも狙えるため、場合によっては大きな利益を生み出すことが可能です。
そこでここでは、REITについてこれから勉強を始める初心者の方向けに、REITを始める手順や、銘柄を選ぶときはどこを見れば良いのか、お伝えします。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- REIT(リート)の取引を行う証券会社に口座を開設する
1-1.REITの取引を行う証券会社を選ぶ
1-2.証券口座の開設に必要なものを用意する
1-3.証券口座に投資資金を入金する - REIT(リート)銘柄の選び方
2-1.投資先不動産の種類を確認する
2-2.利回りや時価総額などの条件を確認する
2-3.市場の流れ(チャート)を見る[PR] - REIT投資のリスク・注意点
3-1.相場の変動が大きい
3-2.上場廃止や倒産の可能性がある
3-3.不動産が被災するリスクが有る - まとめ
1.REITの取引を行う証券会社に口座を開設する
REITを購入するためには、証券会社に口座を開設する必要があります。REITは証券市場に上場している不動産投資信託のため、株式と同じように証券として取引を行うことになります。
証券会社に口座を開設するステップは下記の3つです。
- REITの取引を行う証券会社を選ぶ
- 証券口座の開設に必要なものを用意する
- 入金して投資を準備する
それぞれ見て行きましょう。
1-1.REITの取引を行う証券会社を選ぶ
証券会社に口座を開設するためには、まずは証券会社に口座の開設を申請します。証券会社を選ぶ際は、取引手数料や普段利用している銀行口座との連携を考慮しつつ、選んでみると良いでしょう。
三井住友銀行と連携できる「SMBC日興証券」や、住信SBIネット銀行と連携できる「SBI証券」などのネット証券であれば、PCやスマホから簡単に取引を行うことができるうえ、取引手数料も割安になっています。
不動産投資信託(REIT)が購入できる主なネット証券
1-2.証券口座の開設に必要なものを用意する
開設する口座を決めたら、必要書類をそろえて申し込みをしましょう。証券口座を開設する際、主には下記の書類が必要になります。(※証券会社によって必要書類が異なる可能性があるため、解説するネット証券でそれぞれご確認ください。)
- 運転免許証【表/裏】
- 住民票の写し
- 印鑑登録証明書
- 各種健康保険証【表/裏】
- 住民基本台帳カード
- パスポート(日本)
- 在留カード/特別永住証明書【表/裏】
- 個人番号(マイナンバー)カード
申し込み後は本人確認のために自宅にハガキが送られてくるので、最後にハガキに記されたコードを入力すれば口座の開設が完了します。信用取引の有無や、iDeCo口座開設などオプションも同時に設定可能です。
1-3.証券口座に投資資金を入金する
口座の開設後は、銀行の口座から証券会社の口座に入金し、実際にREITを購入してみましょう。
REITには10万円前後の低額の銘柄もあれば、100万円もの高額な銘柄もあります。リスクを抑えて投資したいのであれば、まずは安い銘柄を買うのが良いでしょう。
次項ではREIT銘柄の選び方について詳しく解説します。
2.REIT銘柄の選び方
証券会社に口座を開設し、口座に入金したらいつでもREITを購入することが可能です。
REITの銘柄数は60程度と株の銘柄に比べれば少ないものの、どの銘柄を選んで良いのか迷うところでしょう。
そこで、REITの銘柄を選ぶ際のポイントをお伝えします。
2-1.投資先不動産の種類を確認する
最初に見るべきポイントは、そのREITが取り扱っている不動産の種類です。
REITの投資先不動産には、主に下記の種類があります。
- ホテルや旅館などの宿泊施設
- ショッピングセンターのようなテナン施設
- 都心の駅前にあるようなオフィスビル
- マンションなどの居住施設
- 倉庫などの物流施設
それぞれの不動産の種類によって、収益性やリスクの大きさに違いがあります。
例えば、ホテルやテナントといった種類の不動産は、家賃収入と売上による歩合の収入が見込め、好景気により業績が良いときには値上がする傾向にあります。しかし、景気が悪化して業績が落ち込んだ時には売られやすくなるため、上下幅の変動が大きい特徴があります。
一方、居住用REITは景気動向による家賃収入の上下幅が少なく、ホテルやテナントなどと比較して景気の影響を受けにくいREITだと言えます。
このように、選択するREITの物件タイプによってリスクや収益性が異なります。まずは投資の目的に合わせて、どの物件タイプに投資を進めて行くのか慎重に検討してみましょう。
また、REITには、複数の不動産を運営する総合型や複合型など、複数の対象を運営することで、リスクの分散を行う銘柄もあります。
2-2.REITの利回りや時価総額などの条件を確認する
REITの物件タイプを大まかに絞れたら、次に各種REITの銘柄別に設定された投資面の条件を見てみましょう
REITの利回り
インカムゲインが目的でREITを購入するのであれば、REIT銘柄の利回りをそれぞれ確認してみましょう。REITは1年に1回、もしくは2回に決算が行われ、その度に配当金が投資家に支払われます。
年間の配当額の目安になる年間利回りが、証券会社のサイトに銘柄別に掲載されているので確認しましょう。銘柄の値が100万円で利回りが4%であれば、年間の配当額は税引前で4万円となります。
REITの時価総額
時価総額とは、REITの資産を時価評価したものです。時価総額が大きければ大きいほど、そのREIT銘柄に投資している人が多く、値動きのリスクが少ない傾向があります。
また、時価総額が大きいほど簡単に倒産や上場廃止になりにくくなり、大きな損失を出してしまう危険性を軽減できます。
2-3.市場の流れ(チャート)を見る
購入するときに各銘柄の投資条件に注目するだけではなく、REIT市場の流れを捉えることも重要です。
現在はどのREIT銘柄が値上がりしているのか、反対に下落している銘柄は何なのか、これらは、REITが取り扱う物件の種類や投資条件によって変わってきます。購入前に、ここ数ヶ月~数年間の市場の流れをしっかりとチェックしておきましょう。REIT市場全体の価格の推移を示す指標として、東証REIT指数があります。
扱う不動産の種類と各種の投資条件、市場の流れなどを見ながら、購入するべき銘柄を判断しましょう。
3.REIT投資のリスク・注意点
REIT投資も投資の1つである以上、様々なリスクや注意点があります。
特に、ここでは、初心者の方が知っておくべき3つの注意点をお伝えします。
3-1.相場の変動が大きい
REITは現物不動産の投資と比較して、相場の変動幅が非常に大きい金融商品です。たとえば、東証REIT指数はコロナショック期の2020年2月21日から2020年3月19日までのわずか1ヶ月間で最高値の2244から、ほぼ半値の1145まで下落しました。
同期間における日経平均株価の下落率が約30%であったことから、株価と比べても、REITではボラティリティ(価格変動の度合い)の高さが目立ちます。値下がりが激しい一方で、購入後に値上がりするチャンスも掴みやすいと言えます。
REITのボラティリティの高さは大きなリスクに繋がりやすいことを覚えておきましょう。
もし、リスクをおさえて不動産に少額投資をしたい場合は、不動産投資型クラウドファンディングというサービスを利用するという選択肢もあります。不動産投資型クラウドファンディングはREITと異なり上場はしておらず、匿名組合という仕組みを活用することで、実物不動産に1万円程度の金額から投資可能です。
不動産投資型クラウドファンディングではほとんどのサービスで、「優先劣後出資」という仕組みが導入されています。これは、投資家が出資する分を優先出資分、運営不動産会社が出資する分を劣後出資分として、ファンド運用終了後に不動産売却をする際に不動産の価格が購入時より値下がりをしている場合、劣後出資分からその損失を計上するという仕組みです。
不動産投資型クラウドファンディングの運用期間は数ヶ月から数年程度で、劣後出資割合は投資額の10%~30%となることが多いため、元本損失リスクを抑えて定期的な配当や売却時のキャピタルゲインを受け取ることが可能です。不動産投資型クラウドファンディングはREITのように証券ではなく実物不動産への投資となるため、流動性は低くなるデメリットがある一方で、REITのような激しい値動きが少なくなるメリットがあります。
3-2.上場廃止や倒産の可能性がある
REITには、株式のように上場廃止もしくは倒産のリスクがあります。東京証券取引所に上場しているREITの場合、上場に際して各種の条件を満たしていなければなりません。
以下にその一部を引用します。
(1) 不動産等の組み入れ比率
運用資産等の総額に占める不動産等の額の比率が 70%以上となる見込みがあること。
(有価証券上場規程第 1205 条第 2 号 a)
運用資産等の総額に占める、不動産等、不動産関連資産及び流動資産等の合計額の比率が、上場
の時までに 95%以上となる見込みがあること。
(有価証券上場規程第 1205 条第 2 号 b)
(2) 純資産総額
純資産総額が、上場の時までに 10 億円以上となる見込みのあること。
(有価証券上場規程第 1205 条第 2 号 e)
(3) 資産総額
資産総額が、上場の時までに 50 億円以上となる見込みのあること。
(有価証券上場規程第 1205 条第 2 号 f)
(1) 上場受益権口数
上場投資口口数又は上場受益権口数が、上場の時までに 4,000 口以上となる見込みのあること。
(有価証券上場規程第 1205 条第 2 号 d)
(2) 大口投資主の所有比率
大口投資主(所有する投資口口数の多い順に 10 名の投資主をいう。)が所有する投資口の総口数
に自己投資口口数を加えた投資口口数が、上場の時までに、上場投資口口数の 75%以下になる
見込みのあること。
(有価証券上場規程第 1205 条第 2 号 g)
(3) 投資主の数
大口投資主及び自己投資口を所有している場合の当該新規上場申請銘柄の発行者である者を除
く投資主の数が、上場の時までに 1,000 人以上となる見込みのあること。
(有価証券上場規程第 1205 条第 2 号 h)
*日本取引所グループ(JPX)「REIT(投資証券)上場の手引きのご利用にあたって」より引用
一定の時価総額を下回ると上場の条件を満たせなくなり、上場廃止になる可能性があります。また、REITを運営する会社の業績が悪化して倒産すれば、REITも上場廃止になってしまいます。
特に、2020年の時点におけるホテルREITの場合、今後しばらくは観光客数の回復が望めないことから、短期間での売り上げの回復も見込めない状況が続いています。経済全体の状況もチェックしておきましょう。
3-3.不動産が被災するリスクが有る
不動産にとっての大きなリスクの1つに、被災リスクがあります。
例えば、地震が発生してREITで運営するビルやホテルなどの不動産が倒壊してしまえば、運営で収入を得ることができなくなってしまいます。地震以外にも台風や火災などによって建物が被害を受け、大幅に収益が低下するおそれがあります。
運営する物件に保険をかけているのであれば、保険金を使って建物を補修し、あるいは建て直すことは可能です。しかし、再度営業できる状態に戻るまでにはどうしても時間がかかってしまうため、再建期間内の収益性は大きく低下します。
このように、REITは現物の不動産による収益を投資家に分配しています。不動産が被災してしまうと大きく収益が下がってしまう可能性がある点に注意しておきましょう。
まとめ
REITは株式と同じように証券市場に上場しています。株式を購入し、取引した経験をお持ちの方であれば、REITの取引が難しいと感じることはないでしょう。
証券会社に口座を開設して入金を済ませ、銘柄を購入した後は売買を繰り返しても良いですし、保有し続ければ定期的に配当金が入ります。REITは定期的に配当金が得られるため、売買取引を繰り返さずに収益を得たい方にも向いています。
ただし、現物の不動産投資や株式投資と比較してもボラティリティが高く、コロナショックのような大きな経済危機が発生したさいに大きく暴落するリスクもあります。
REITの購入に際しては、社会全体の経済の状況や投資先の不動産がもつ特徴をしっかりと確認し、購入する銘柄を選ぶことが重要です。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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