不動産投資ローン、融資年数を長くするメリット・デメリットは?条件交渉のコツも

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不動産投資ローンを利用する場合、融資年数は重要なポイントとなります。融資期間の長さよって、月々の返済額や返済総額が変わり、不動産投資の収益にも大きな影響を与えることになるためです。

そこで今回のコラムでは、融資年数を長く設定することのメリットとデメリットを解説いたします。また金融機関と交渉する際のコツも紹介します。

目次

  1. 融資期間は法定耐用年数を基準に算出
  2. 融資年数を長く設定することのメリット
  3. 融資年数を長く設定することのデメリット
    3-1.金利負担が増え、返済総額が大きくなる
    3-2.経年によって家賃収入に対する返済額の比率が高くなる
    3-3.不動産投資ローンにかかる保証料が高くなる
  4. 不動産投資ローン、条件交渉のコツ
    4-1.属性を改善する
    4-2.お金の管理を適切に行う
    4-3.適切な事業計画書を作成する
    4-4.交渉時も見られていることを意識する
  5. まとめ

1 融資期間は法定耐用年数を基準に算出

不動産投資ローンを利用する場合、融資期間の基準となるのが投資物件の「法定耐用年数」です。法定耐用年数とは資産を使用できる期間を示しており、住宅用の建物は構造や用途によって下記のように定められています。

構造または目的 法定耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造 47年
れんが造、石造またはブロック造 38年
木造 22年
軽量鉄骨造(厚さ3ミリ以下) 19年
軽量鉄骨造(厚さ3〜4ミリ) 27年

※引用:国税庁「 減価償却のあらまし」より抜粋

中古の物件であれば、この法定耐用年数から築後の経過年数が引かれることになります。例えば、木造で建てられてから10年が経過している中古の賃貸用アパートであれば、不動産投資ローンの返済期間は12年を基準に考えることになります。

金融機関ではこの法定耐用年数による基準に加え、賃貸用物件の状態や家賃収入、オーナーの属性などを審査して、融資期間や金利、毎月の返済額などを決定していきます。

2 融資年数を長く設定することのメリット

融資期間の長さは最終的には金融機関が決定しますが、この項目では融資期間が長いことで得られるメリットを解説しましょう。

代表的なのは月々の返済額が少なくなることです。返済期間を長くすると、借入額、金利、返済方法が同じ場合は月々の返済額は少なくなります。

例えば、5,000万円の借り入れを金利2%、元利均等返済式で返済すると、返済額は下記のようになります。

融資期間 毎月の返済額
15年 32.2万円
20年 25.3万円
25年 21.2万円
30年 18.5万円
35年 16.6万円

表を見て分かる通り、15年間で返済するのであれば毎月の返済額は32万2,000円ですが、35年なら16万6,000円となります。毎月の返済する金額が約半分になるので、それだけ手元に資金が残ることになります。

不動産投資の場合、管理手数料や清掃費用、共用部分の電気代、Wi-Fiといった設備費用などの経費が毎月かかります。また屋根や外壁の塗装工事、水道管工事、さらに原状回復工事など急な出費のために費用を蓄えておく必要があります。そのため手元に資金が残せるのであれば、それは大きなメリットと言えます。

また、退去によって空き部屋が出るとその分の家賃収入はなくなります。このとき、過去に家賃収入で得た金額よりも、毎月の返済額や諸経費が上回ってしまうと経営は赤字になってしまいます。

逆に、返済額が少ないと、空室期間の返済負担が減り、空室が出てしまった時に経営が赤字になるリスクを抑えることができます。

3 融資年数を長く設定することのデメリット

一方で融資期間をできるだけ長く設定することによるデメリットもあります。詳しく見てみましょう。

3-1 金利負担が増え、返済総額が大きくなる

まず紹介するデメリットは返済総額が大きくなってしまうことです。毎月の返済額が少ないということはそれだけ借り入れた元金の返済が遅くなるということです。そのため利息の支払い額が増えて、返済総額が大きくなってしまうのです。

先程の例を見てみるとより分かりやすいでしょう。5,000万円の借り入れを金利2%、元利均等返済式で返済する場合の返済総額です。

融資期間 返済総額
15年 5792万円
20年 6071万円
25年 6358万円
30年 6654万円
35年 6957万円

15年では返済総額は5,792万円で、35年で返した場合は6,957万円です。15年で返済するよりも35年で返済する方が、約1,200万円も多く支払うことになります。

なお、借入時の不動産投資ローンの金利が高い場合、借り換えなどにより不動産投資ローンの金利を下げてキャッシュフローを良化させることを検討してみましょう。金利が下がることで返済総額が少なくなり、投資効率を改善することに繋がります。

例えば、借り換えシミュレーションができる「インベース」というサービスでは、オンライン上で不動産投資ローンの借り換えシミュレーションから借り換え手続きの代行まで一貫して行うことが可能です。

低い金利のローンに借り換えをすることで毎月の返済額を減らすことができ、その分キャッシュフローも良くなり運用も改善していきます。借入時の融資条件が悪い場合には、利用を検討してみると良いでしょう。

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3-2 経年によって家賃収入に対する返済額の比率が高くなる

新築物件でも、中古物件でも、建築物は年数を重ねるごとに劣化していきます。そのため賃貸物件の家賃を下げなければ、入居者が得られないケースもあります。こうした場合、毎月の返済額はずっと変わらないのに家賃収入は減ってしまうので、家賃収入に対する返済額の比率が大きくなってしまうのです。

具体的な数字を挙げて考えてみましょう。

賃貸マンションを新築した当初、毎月の家賃収入が30万円で、融資の返済額が毎月20万円だった場合の20年後を比較してみます。

  • 20年間で借入金を返済し終わっている場合→家賃収入の25万円がそのまま手元に残る
  • 毎月の家賃収入が25万円に下がっている場合→手残り金が10万円から5万円に減っている

手元に残る資金は、生活資金だけではなく修繕費用などの物件の経営資金にもなります。手元に残る資金が少なくなるため、経営が思うようにいかないことも考えられるのです。

3-3 不動産投資ローンにかかる保証料が高くなるケースも

金融機関から融資を受ける場合、その融資金額に対して保証人を立てない代わりに保証会社に保証金を支払うケースもあります。

保証金は、融資年数が長いほど料率が上がる仕組みになっている金融機関がほとんどです。つまり、融資年数が長くなると保証金を多く用意する必要があるのです。

ただし不動産投資ローンの場合、賃貸用の物件に抵当権をつけて保証の代わりとすることもあります。金融機関によって違いますので、申し込みの際は確認が必要です。

4 不動産投資ローン、条件交渉のコツ

金融機関が融資をする際の審査基準はそれぞれで違い、公表していません。ただし、原則として投資物件の収益性と投資家の属性の両面から、「返済能力があるかどうか」という視点が大きな判断基準となります。条件交渉の際は、下記のことに注意しましょう。

4-1 属性を改善する

不動産投資ローンの場合は賃貸用物件自体の返済能力に加え、オーナーの属性も審査の対象になります。この属性とは、主に下記のことを指します。

  • 職業(勤務先および勤続年数)
  • 年収
  • 自己資金
  • 資産残高
  • 借入金残高
  • 家族構成
  • 年齢、など

これらの評価が高いと、融資年数を長く設定できたり金利を低く設定してもらえる可能性が高まります。しかし、すぐに職業や資産残高などを変えることはできません。まずは借入金を減らしたり、自己資金を増やすなどして属性の改善を行うことを検討してみましょう。

4-2 お金の管理を適切に行う

お金の管理がルーズな人は金融機関から信用が得られない可能性があります。例えば、クレジットカードの支払いが遅延したことによって、信用情報に問題がある人は審査に通りにくくなります。また資金不足によって口座引き落としの延滞が何度もあるような人も同様です。

不動産投資を始める以前に、普段から銀行口座などの資金の管理を適切に行っていることが重要です。

4-3 適切な事業計画書を作成する

融資を審査してもらう際に必要となる書類はいくつかありますが、そのうちに事業に関わる重要な書類が事業計画書です。物件を購入することでいくら収益を上げることができるか、といったことが丁寧にまとめられていれば、それだけ信用度も高くなります。

また物件の収益性だけではなく、事業計画書を作成することで経営者としての姿勢もアピールすることができます。物件を販売する不動産会社がテンプレートなどを用いて作成することがほとんどですが、一度目を通しておき、疑問に思ったことがある場合はあらかじめ確認および調整しておきましょう。

この際、希望の融資期間に基づいて事業計画書を作成しておくことが肝心です。ただし、融資年数に無理が見られるようであれば、融資自体を断られることにもなりかねません。常識的な範囲で融資年数を設定するようにしましょう。

4-4 金融機関との交渉では「付き合い」や「人柄」を評価されることも

融資を依頼する金融機関で長年口座を持っていると、資金状況の把握が容易であることから交渉がスムーズに進むことがあります。その他、物件を販売する不動産会社などから金融機関を紹介してもらうのもひとつの方法です。不動産会社の担当者によって、投資物件に適した条件交渉を行ってもらえる可能性もあります。

また金融機関の融資担当者は人柄もよく見ており、信用できる人かどうかチェックしていることもあります。交渉時には服装や髪型にも気をつけ、丁寧な話し方をするなどして、不信感を抱かせないような対応を心がけましょう。

まとめ

融資年数を長く設定することで得られるメリットとデメリットについて解説しました。毎月の返済額が低く抑えられることが大きなメリットですが、その分、返済総額は多くなることがデメリットになります。

物件の収益力やオーナーの本業の有無、給与、年齢などでどのくらいの期間が最適かは違ってきます。融資年数が長くなることのメリット・デメリットを比較し、自身に合った適切な判断をするようにしましょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。