不動産ローンの滞納、競売と任意売却の違いは?メリット・デメリットを比較

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不動産ローンを滞納すると、金融機関や保証会社などから競売を申し立てられることがあります。競売になると、裁判所の手続きによって強制的に担保の不動産を売却され、立ち退かなければならなくなることになります。

そんなときに検討したいのが、任意売却手続きです。任意売却では、債権者の都合ではなく、ある程度債務者のペースで、通常の不動産売買のように売却することが可能です。

本記事では、競売と任意売却の違いを確認し、それぞれのメリット・デメリットについて比較しながら解説します。

目次

  1. 競売手続きと任意売却手続きの違い
    1-1.競売手続きの流れ
    1-2.任意売却手続きの流れ
  2. 競売のメリット・デメリット
    2-1.競売のメリット
    2-2.競売のデメリット
  3. 任意売却のメリット・デメリット
    3-1.任意売却のメリット
    3-2.任意売却のデメリット
  4. まとめ

1.競売手続きと任意売却手続きの違い

競売とは、不動産ローンを滞納した場合、金融機関や保証会社が、担保の目的としている不動産を強制的に売却して、債権の回収をはかる手続きです。

金融機関や保証会社が、裁判所に申立てることによって競売手続きが開始され、その後は、裁判所が民事執行法に基づいて、調査、入札などをおこないます。

落札者が決まると、裁判所が売却許可決定をおこない、強制的に落札した買受者に引き渡されることになります。

他方、任意売却とは、不動産ローンの返済ができなくなり、売却してもローンの全額を返済できない場合、債権者の合意を得て一般市場で売却する手続きです。

任意売却は競売を回避するための手段として利用され、債権者の合意を得るほかは通常の不動産の売却手続きと大きく変わりはありません。

1-1.競売手続きの流れ

以下、競売手続きの流れについて詳しく説明していきます。民事執行法に則った裁判手続きの一形態であり、入札者を募るために不動産の情報が公開され、落札者に強制的に売却、引き渡すことになります。

競売の申立て

金融機関や保証会社などの債権者が裁判所に対して債権の担保となっている不動産を強制的に売却する法的手続きの申立てをおこないます。通常、不動産ローンを3~6カ月程度滞納すると、競売手続きに移行します。

競売開始決定の通知が届く

裁判所から、債務者に「担保不動産競売開始決定通知」が届きます。この時点で、所有不動産が競売にかけられたことが分かります。通知が届いてからおよそ6カ月程度で不動産は競売により売却され、明け渡さなければならなくなります。

現況調査

裁判所の執行官が、競売にかけられた不動産の現況を調査します。室内の写真撮影などもおこなわれます。この調査を下に、価格査定がおこなわれて競売の入札時の基準価格が決定されます。

入札と開札

入札期日になると、不動産の落札(購入)を希望する人が入札をおこないます。入札期間は1週間程度になります。開札日に、入札額のうち最も高い金額で入札のあった人が落札者、すなわち買受者となります。

売却許可決定と引渡し

落札者に売却許可決定がなされ、不動産が引き渡されます。元の所有者が引渡しに応じない場合、新しい所有者は、引渡し命令の申立てや強制執行の申立てにより、元の所有者は強制的に立ち退かなければならなくなります。

1-2.任意売却手続きの流れ

以下、任意売却手続きの流れを詳しく説明していきます。基本的には、債権者と交渉する以外は、通常の不動産売却の流れと同様です。

任意売却の相談・査定依頼

任意売却を専門としている不動産業者などに、任意売却の相談をおこないます。任意売却を検討している不動産の査定も依頼します。不動産業者は、債務者の現状や不動産の査定価格を総合考慮して、任意売却の計画を立てます。

任意売却の実績がある不動産会社を探すには、不動産一括査定サービスの利用を検討してみましょう。不動産一括査定サービスは複数の不動産会社から無料で物件査定を受けられるサービスですが、任意売却のような特殊な条件を伴う場合にも有効利用することが出来ます。

不動産一括査定サービスに物件を登録する際、備考欄や売主の希望欄に「任意売却を検討しているため、対応実績のある不動産会社へ依頼したい」旨を記載することで、1社ずつ問い合わせるよりも効率的に実績のある不動産会社にアプローチすることが出来ます。

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債権者との交渉

売却価格の調整、競売の取り下げ、残債の返済方法など任意売却の詳細について、すべての債権者と交渉して同意を得ます。場合によっては、弁護士などの専門家が交渉にあたることもあります。

販売活動

債権者の合意が得られたら、販売活動となります。通常の不動産売買と同様、不動産業者と媒介契約を締結し、販売活動をおこなってもらいます。

売買契約締結、引渡し

購入希望者が見付かったら、条件をすり合わせ、売買契約を締結します。契約に基づいて決済、引渡しをおこない、買主から支払われた代金によって、残債を返済します。抵当権抹消、所有権移転の登記がおこなわれ、任意売却は終了します。

2.競売のメリット・デメリット

前述したように、競売と任意売却ではそれぞれの手続きの流れ、性質が大きく異なることが分かります。これらを踏まえて、競売のメリット・デメリットについて解説します。

2-1.競売のメリット

強制的に執行されてしまう競売は任意売却と比較して金銭的なメリットは少なくなりますが、次のようなメリットがあります。

手間がかからない

競売の最大のメリットは、債務者の手間がかからないということです。裁判所と債権者が進める手続きであり、債務者は立ち退くまでは物件の売買に関して何もする必要がありません。

比較的長期間不動産を持ち続けることができる

競売手続きには、6カ月から1年程度の時間がかかります。落札者が集まらない場合は、さらに長期化する可能性もあり、比較的長期間不動産を持ち続けることができるといえます。

2-2.競売のデメリット

競売手続きには、次のようなデメリットがあります。

相場よりも安い価格で売却される

競売の場合、売却基準価額が市場価格の50%程度といわれ、入札可能な価格は、これの80%からスタートするため、落札価格は相場よりも安くなる傾向があります。すると、不動産ローンの残債も多くなってしまい、手続き後の負担が重くなることがあります。

資金繰りが困難になる

競売によって得られた売却代金は、すべて抵当権者へのローン返済に充てられます。引っ越し代も捻出できず、残債も一括返済を迫られることが多く、自己破産に結び付く可能性もあります。

プライバシーが脅かされる

競売手続きでは、現況調査が行われて執行官が室内に立ち入ります。また、入札に際して、不動産の所在地や所有者などの情報が公開され、落札を検討する不動産業者などが訪れたりすることもあります。このように、プライバシーが脅かされるリスクがあるといえます。

立ち退きを迫られる

競売では、落札者の都合で強制的に立ち退きを迫られます。裁判所命令によるもので、強制執行されるため、拒むことはできません。

3.任意売却のメリット・デメリット

任意売却は、デメリットの多い競売を回避することができるメリットの多い手法です。しかし、デメリットもあるため、注意が必要です。

3-1.任意売却のメリット

任意売却手続きには、次のようなメリットがあります。

競売と比較して高めの価格で売却できる可能性が高い

任意売却では、一般の不動産売買と同じ流れで行われるため、時間をかけて購入者を選ぶことができます。そのため、市場価格に近い価格で売却でき、競売と比較すると高い価格で売却できる可能性が高くなります。

手元資金も得られ、不動産ローンの残債を無理なく返済できる

任意売却では、高めの価格で売却でき、ローンの残債が少なくなる可能性が高いうえに、債権者との交渉によって資金繰りに余裕が生じる可能性があります。

売却代金から引越し代などの手元資金を用意してもらったり、場合によっては残債の分割返済ができることもあります。分割返済に応じてもらえれば、不動産ローンを要因とした自己破産を避けられる可能性が高くなります。

元の所有者の希望について融通が利く

競売では、不動産の元の所有者は、落札者からすぐに退去を求められます。しかし、任意売却では、買主との交渉で、引越し時期の相談に乗ってもらうことができ、場合によってはリースバックという形式で住み続けられる可能性もあります。

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プライバシーが守られ、精神的負担も少ない

任意売却では、競売のように不動産の情報が公開されることもなく、通常の不動産売買と同様におこなわれ、プライバシーが守られます。また、債務者のペースで手続きを進めることができ、競売と比較すると精神的負担も少ないといえるでしょう。

3-2.任意売却のデメリット

任意売却手続きには、次のようなデメリットがあります。

競売よりも手間がかかる

任意売却は、債務者が主体的に行動して進めていく手続きであるため、競売と比較すると手間がかかります。少なくとも、任意売却を専門とする不動産業者や任意売却の窓口となる専門家を探す手続きは、債務者がおこなう必要があります。

債権者や保証人など関係者の合意が必要

任意売却をおこなうには、不動産の共有者や不動産ローンの連帯保証人がいれば、その同意が必要になります。債権者の同意が必要であることは、任意売却の大きなデメリットです。

不動産ローンの残債が大きい場合、売買価格と債権者が求める金額との折り合いがつかないことがあります。

競売のリスクも残る

任意売却は一般市場での売却手続きであり、必ずしも買主が見付かるとは限りません。また、競売手続きが開始している場合、開札日の前日までには売却を完了させる必要があります。

任意売却の手間をかけたとしても、期限内に債権者と合意できる価格で売却できる保証はありません。万一、任意売却が不調に終わった場合には、競売手続きに移行してしまうリスクもあります。

まとめ

不動産ローンを滞納した場合、競売を回避する方法として、しばしば任意売却が用いられます。競売は、裁判所による強制的な入札方式による売却ですが、任意売却は債権者の同意さえ得られれば通常の売買と大きく変わりはありません。

競売は相場よりも安く売却されやすく、強制的な立ち退きを迫られるデメリットがあります。一方、任意売却は、市場価格に近い価格で売却することができ、債権者との交渉により債務者の希望にも応えることが可能です。

ただし、必ずしも任意売却が成功するとは限らず、最終的に競売になってしまうこともあります。任意売却の手続きを選択する場合は、専門の不動産業者と相談して慎重に計画を練ることが重要です。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。