不動産投資、売買契約の前に確認すべきことは?4ステップで解説

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不動産投資で物件探しから売買契約までの段階は重要なポイントとなります。どのような物件をどのような条件で購入するかによって、リスクやリターンが大きく異なるためです。

不動産売買契約を締結すると、原則的に解除条件を満たさない契約破棄はできなくなります。契約の締結前に注意点を確認し、後悔のないように物件購入を進めることが大切です。

本記事では、不動産投資家が、物件探しから売買契約までの手続きにおいて注意すべきポイントを、4つの段階に分けて解説していきます。

目次

  1. 物件資料で確認しておきたい注意ポイント
    1-1.物件の収益性と資産性を調べる
    1-2.建物の築年数と設備、法令適合性を確認する
    1-3.物件の収支をシミュレーションする
  2. 物件の現地調査の注意ポイント
    2-1.物件の交通アクセスと周辺環境を確認する
    2-2.土地と接道の状況を調査する
    2-3.中古物件は外観と内装の状態を調べる
  3. 購入申し込みの注意ポイント
    3-1.購入申込書(買付)の提出時に条件交渉する
    3-2.融資審査を申し込み前から進める
  4. 重要事項説明書と売買契約書の注意ポイント
    4-1.登記簿記載内容の確認をおこなう
    4-2.法令適合性と法令規制内容を確認する
    4-3.第三者による占有事項をチェックする
    4-4.契約不適合責任の有無と内容を確認する
    4-5.契約解除に関する事項を確認する
  5. まとめ

1.物件資料で確認しておきたい注意ポイント

投資物件の販売資料を検討する際、注意したいポイントは次のような点になります。

  • 物件の収益性と資産性を調べる
  • 建物の築年数と設備、法令適合性を確認する
  • 物件の収支をシミュレーションする

1-1.物件の収益性と資産性を調べる

物件を実際に現地調査する前に、物件の収益性と資産性を資料から分かる範囲で検証してみましょう。

資産性については土地路線価と建物の価格を調査・算出し、販売価格が相場とかけ離れていないかどうかを調べます。大規模修繕の履歴が分かれば教えてもらいましょう。

収益性については、想定利回りやランニングコスト、空室率を見てみましょう。すでに入居者が入居している物件であれば、レントロールを取り寄せて個々の賃貸借契約状況を確認するとよいでしょう。

1-2.建物の築年数と設備、法令適合性を確認する

建物の築年数は、修繕リスク・陳腐化リスクにつながります。築古である場合は、修繕費用や設備の入替・追加費用を多めに見積もるようにしましょう。

建築基準法に適合した建築物であるかどうかも、チェックしましょう。たとえば、建ぺい率・容積率違反の物件は、金融機関の融資を受けにくくなります。このような物件は、流動性が低くなり資産価値も落ちることになるため、注意が必要です。

1-3.物件の収支をシミュレーションする

販売資料を下に、購入を検討している物件が、投資計画に合った物件かどうか、収支のシミュレーションを行います。収支の推計にあたっては、物件の価格、購入時諸経費と、想定家賃収入から維持管理費を控除して、実際に手元に残る資金を算出するようにしましょう。

融資を受ける場合は、現金で支出した初期投資費用と、運用収益からローン返済額を差し引いたキャッシュフローを試算してみましょう。

2.物件の現地調査の注意ポイント

机上の販売資料の検討で、投資対象になりうると判断したら、物件の現地調査を行います。物件の現地調査時には、次のような点に注意しておきましょう。

  • 物件の交通アクセスと周辺環境を確認する
  • 土地と接道の状況を調査する
  • 外観と内装の状態を調べる

2-1.物件の交通アクセスと周辺環境を確認する

入居者目線で判断するためにも、物件の交通アクセスについては実際に現地で確認しておくようにしましょう。

周辺の住環境について、近隣の生活施設・公共施設の存在などは、現地で調査しておきたいといえます。嫌悪施設がないかどうかや、周辺エリアの治安状況などのマイナス要素もチェックするようにしましょう。

2-2.土地と接道の状況を調査する

アパート、戸建、一棟マンションなど、土地の価格割合が大きい物件の場合、土地と接道の状況確認も重要です。

建築基準法上の道路に2メートル以上接していることが再建築可能な土地の条件であるため、現地でもその確認を行いましょう。再建築不可の土地は、流動性に問題があり資産価値が低くなるといえます。

土地の形状についても、整形に近い方が資産価値は高いといえます。境界標があり、境界が確定しているかどうかもチェックしましょう。

2-3.中古物件は外観と内装の状態を調べる

中古物件の購入を検討する場合、建物の経年劣化の度合いについて、基礎や外壁の剥がれ、ひび割れ、タイルの浮き沈み、水染みなどがないかどうかをチェックします。建物の強度や内部の劣化が進んでいるようなら、修繕費用がかさむおそれがあります。

室内については、特に雨漏りと床の傾きをチェックしましょう。これらがあると、修繕費用が大きくなることが推測されます。室内も特に水回りの劣化がひどいようであれば修繕が必要になる可能性もあるため、リフォーム費用を見込んでおきましょう。

3.購入申し込みの注意ポイント

現地調査で問題がなく、投資計画に合う物件と判断したら、次は購入申し込みとなります。

不動産投資ローンを活用する場合、購入申し込みの前に、融資の仮審査を通過させておく必要があります。購入申込書に法的拘束力はないため、希望条件があれば交渉するようにしましょう。

3-1.購入申込書(買付)の提出時に条件交渉する

購入申込書(買付)は購入の意志表示を売主に伝えるものですが、売買契約までは法的に拘束されるわけではありません。

投資計画上、購入価格やリフォーム費用が負担になるような場合は、購入申込書の提出時に価格交渉をしてみましょう。また、土地の境界確定などの譲れない条件があるようなら、購入申込書提出時に交渉しましょう。

3-2.融資審査を申し込み前から進める

購入申し込みの受付は先着順が基本ですが、投資用物件の場合、居住用物件に比べて融資審査が厳しい傾向があります。売主に購入の意志があることを伝える前提として、融資の仮審査を通過していることが求められるケースも少なくありません。

金融機関には、申し込み前に、物件資料や属性を伝えて融資の仮審査を通しておくとよいでしょう。物件を探す前の段階で、金融機関に自分の属性を伝えて、いくらぐらいの融資がどのような条件で可能なのか、ヒアリングしておくことも大切です。

4.重要事項説明書と売買契約書の注意ポイント

購入申し込みをおこない、売主との折衝が済んだら、売買契約の締結となります。契約の前に、重要事項説明がなされることになっています。重要事項説明書と売買契約書の記載事項については、主に次のような点に注意したいといえます。

  • 登記簿記載内容の確認をおこなう
  • 法令適合性と法令規制内容を確認する
  • 第三者による占有事項をチェックする
  • 契約不適合責任の有無と内容を確認する
  • 契約解除に関する事項を確認する

以下で、詳細を説明していきます。

4-1.登記簿記載内容の確認をおこなう

売主の住所氏名、物件の住所、築年、床面積などが、登記簿に記載された内容と一致しているか確認しましょう。相続人や後見人による売買などで売主が登記簿の所有者と同一でない場合、買主への所有権の移転が可能なのかも見ておきます。

4-2.法令適合性と法令規制内容を確認する

建築基準法上の道路に2メートル以上接しているか、建ぺい率・容積率が適合している物件であるかどうか、を再度確認しましょう。

その他、建て替えや増改築の制限がないかどうか、についても確認しましょう。都市計画法の法令規制によって、市街化調整区域では新たな建物の建築が制限されたり、都市計画道路の計画決定区域で一定の建築制限が課されたりする場合があります。

4-3.第三者による占有事項をチェックする

重要事項説明書、売買契約書では、第三者による占有に関する事項として、賃借人の住所氏名、賃料、契約期間などが記載されています。

中古物件のオーナーチェンジであれば、レントロールとあわせてチェックするとよいでしょう。この時、入居者の属性や過去の滞納の有無なども確認しておきましょう。

4-4.契約不適合責任の有無と内容を確認する

売主は買主に対して原則として契約不適合責任を負います。しかし、実務上、特約によって買主には修補請求のみを認めるものとし、代金の減額請求や契約の解除を制限することがあります。

中古の場合には、契約不適合責任を免責とするケースも少なくありません。このような契約不適合責任の有無とその内容について確認しておきましょう。

4-5.契約解除に関する事項を確認する

売買契約書では、契約解除に関する事項も確認しておきましょう。主な契約解除の手段としては、手付解除とローン特約による解除があります。

手付解除とは、手付金を放棄することで売買契約を解除できる取り決めになります。手付金の額と解除期日を確認しましょう。

ローン特約による解除は、ローン審査に通らなかったため代金を支払うことができない場合の無条件解除を認めるものです。ローン特約を付ける場合は解除期日を確認しておきましょう。

その他、違約金を支払うことで売買契約を解除できるという取り決めも設けることがあります。自然災害による現況有姿の受け渡しが出来ない場合の解除要件も売買契約書で定めているため、こちらも確認しておきましょう。

まとめ

物件探しから売買契約までの注意すべきポイントを、物件販売資料検討、物件の現地調査、購入申し込み、重要事項説明書と売買契約書、の4つの段階に分けて解説しました。

それぞれの段階で、効率的にかつ慎重に、ポイントを押さえた物件探しをおこなって、自分の投資計画に合った投資物件を購入するようにしましょう。

投資物件の売買契約は大きな支出を伴い、いったん締結すると法的拘束力が発生します。疑問点、不明点があれば、不動産会社に聞いたり、さらに調査をしたりして納得したうえで、契約するようにしましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。