不動産投資は株式投資などの他の投資と比較しても長期の投資になります。節税効果は不動産を取得して確定申告をすればすぐに体感できますが、年金代わりになるメリットはローンの返済が終わる30年後くらいにようやく実感できるというものになります。果たして、今所有している物件は30年後も本当に稼げるのでしょうか。
長期投資に向いているかどうかは建物のデザインや造りだけではなく物件の所在するエリアも重要な条件になってきます。また、立地や物件以外の自己資金の額なども大きく関係してくるため、複数の視点からチェックをしていくことが大切です。
そこで今回は、長期投資に向いた収益物件の選び方についてエリアと建物、それ以外の3つの側面から考えてみたいと思います。
目次
- 建物の所在するエリアから収益力を考える
1-1.不動産を購入する際に立地は外せない条件
1-2.治安が良いかどうかは性別年齢問わず気になる条件のひとつ
1-3.不動産の種類によって駅からの徒歩時間を検討する
1-4.物件の周辺は生活に必要な環境が整っているか - 建物から長期投資に向いた収益物件を考える
2-1.物件は飽きのこない造りになっているか
2-2.専有面積は今後も必要とされる広さになっているか
2-3.管理体制が良好であること
2-4.新築と中古どちらを選ぶか - 立地や建物以外の条件から長期投資に向いた収益物件を考える
3-1.銀行の評価が高い物件を選ぶ
3-2.不動産投資の出口戦略を考える
3-3.自己資金にみあった物件選びをする
3-4.災害に備えた物件選びと保険を考える - まとめ
1.建物の所在するエリアから収益力を考える
30年後も稼いでいる、ということは30年後も賃借人がいて家賃収入が発生しているということです。つまり長期にわたり賃貸力があるかないかで長期間稼げるかどうかが決まります。では賃貸力とは何があれば良くなるのでしょうか。賃貸力につながるポイントを物件の所在するエリアから考えてみます。
1-1.不動産を購入する際に立地は外せない条件
不動産を購入する際の重要な条件は立地です。駅から10分以内か、通勤するのに楽なエリアか、周りにスーパーがあるか、などの条件によって入居率も変わってきます。自分が気に入った間取りだったとしても、子供が通える学校がないと物件を見送る理由になります。
全ての人の条件に合った物件を見つけるのは難しいですが、立地には十分注意して物件を探しましょう。まずは立地の善し悪しを決める条件について見てみましょう。
1-2.治安が良いかどうかは性別年齢問わず気になる条件のひとつ
住みたい街ランキングに入っている街の条件には治安の良さが必ず含まれています。治安の良さは老若男女問わず必要不可欠な条件だと言えます。特に近年は生涯未婚率が上がり、女性の一人暮らしも増えていますので、今後はますます治安維持が求められる条件になってくるでしょう。
以下は総務省統計局の資料をもとに野村證券が作成した生涯未婚率の推移グラフです。このグラフから男女とも年々未婚率が増えていることがわかります。
生涯未婚率の推移
※野村證券株式会社「2040年、約4割が単身世帯に!? 80年代生まれは「ソロ社会」をどう生きる?」記事内の図を引用
1-3.不動産の種類によって駅からの徒歩時間を検討する
できれば駅から数分のところにある物件に越したことはありませんが、駅からの距離は購入する不動産の種類によって変わります。
不動産を建築する際は用途地域という都市計画法から、場所によって建てられる物件が限られてきます。例えば駅の近隣は商業地域と呼ばれる用途地域が多く、建築できる建物が鉄筋コンクリートのオフィスビルや商業ビルなどに限られてきます。
そのようなエリアには小ぶりの木造アパートなどは建築できません。そういった事情から住居目的の建物も駅の周りは鉄筋コンクリート造りのマンションが多くなります。
木造のアパートが駅から徒歩15分以上かかるエリアに点在するのは用途地域が一つの理由です。そのようなエリアであれば木造アパートでも需要があります。
逆に鉄筋コンクリートのマンションは駅から徒歩5分から10分以内が競合するエリアとなりますので、徒歩15分以上かかると入居率は落ちてきます。
駅からの距離は物件の種類によって検討することが大事なポイントになります。
1-4.物件の周辺は生活に必要な環境が整っているか
スーパーや病院、コンビニ、ショップなど生活に必要な環境は整っているかも細かく調べましょう。また公園などが近くにあるかも見てみましょう。近年、国土交通省では職住近接といって、職場と住居が近く近隣は緑地やスーパーなどの生活に必要なものが揃っている環境づくりを推奨しています。
タワーマンションが建築される際はそのようなコミュニティもいっしょに作られることが多くなっています。タワーマンション以外のマンションでも、周辺がそのような環境になっていることが、長期投資を考えた場合に有利な条件になってきます。
時代とともに入居者が住居に求めるものが変化していますので、どのようなものが求められているかを考えることが長期投資を成功させるコツだと言えます。
立地の面から長期投資に有利な条件を考えてみました。一方の建物はどのような物件が長期投資に向いているか考えてみましょう。
2.建物から長期投資に向いた収益物件を考える
物件のデザインや間取りは人によって好みが違いますので、誰もが好む物件を選ぶのは難しいのですが、収益力のある物件とはどういうものか考えてみましょう。
2-1.物件は飽きのこない造りになっているか
デザイナーズ物件と呼ばれる物件には時々特殊なデザインをしたものがあります。例えば部屋の間取りが直線ではなく円形になっていたり、お風呂がガラス張りになっていてリビングから見えていたり、といった間取りなどです。
そういった物件だと住みたいと思う人も限られてきますし、建築直後は流行っていたとしても、数十年後はとても古く感じるかもしれません。そういった意味で、できれば造りは飽きのこない、一般的なものを選ぶのが無難です。
2-2.専有面積は今後も必要とされる広さになっているか
専有面積の広さは広いほど良い、という気もしますが、実際には地域や年代によって供給されたり好まれたりする広さは異なっています。以下は1992年から2012年までに供給された新築マンションの年ごとの平均専有面積の推移です。エリアは東京23区、大阪市、名古屋市で集計したものです。
*東京カンテイの資料から引用
1992年くらいまでは東京23区、大阪市、名古屋市ともに非常に狭い造りになっていましたが、その後徐々に広くなり2000年を超えるあたりでは名古屋市で83㎡を超え、大阪市、東京23区で71㎡を超えています。
しかし、その後は広がり続けるわけではなく、2005年を超えたあたりから狭くなっています。不動産が高騰し広い物件が購入されにくくなったことや、東京では広い土地がなくなってきたことが考えられます。また、少子化で子供を持つ夫婦が減り、狭い部屋の需要が高くなっていることも考えられます。
このような推移から、必要とされる広さは不動産価格や、家族構成によって変化していることがわかります。このようなことから先行きを予想した場合、30年後に東京23区で60㎡以上ある部屋の需要が高いということはあまり考えられにくいのではないでしょうか。
生活の変化なども考慮して、広さは慎重に検討することが収益力を維持するポイントになるでしょう。
2-3.管理体制が良好であること
長期にわたり収益を上げるためには管理体制がしっかりしていることが重要です。管理体制は、物件の資産価値に非常に大きく影響してくるからです。
建物の周りやエントランスの清掃などの毎日の管理から、十数年に1回行われる大規模修繕のような大きな補修まで計画的にされているかいないかで、物件の資産価値は変わってきます。管理会社においては業者選びや修繕計画など細かくチェックするようにしましょう。
2-4.新築と中古どちらを選ぶか
新築と中古のどちらを選ぶかによって30年後の状態も当然違ってきます。新築は誰も住んだことのない物件ですので、購入してすぐに修理が必要になるというケースはほとんどありませんが、中古物件ではその可能性を考慮する必要があります。
新築の価格にはディベロッパーの広告代などの費用が上乗せされているため、中古物件と比較した場合、価格はかなり高くなります。購入価格は利回りに影響してきますので、なるべく安い方が長期保有する上ではメリットがあります。
しかし、物件によっては安く購入した中古物件でも修繕費用がかさんだり、重大な瑕疵などがあった場合は長期的に考えるとマイナス、ということにもなりかねません。
新築と中古はどちらかが良いということはありませんので、物件ごとにシミュレーションをし、30年後でも無理なく運用できる方を選択しましょう。
ここまでは、建物から長期投資に向いた物件の選び方を考えてみました。建物の間取りや広さの需要の大きさは時代によって変化してきています。ただ広ければ良いということではありません。
価格や家族構成によって変わっていきますので、今後もその点を念頭に置いて物件選びをすることが大切です。
また、立地と物件の条件についても、長期期間にわたり収益を上げていくためには、両方の条件を細かく見て投資をしなければいけないことがわかりました。
3.立地や建物以外の条件から長期投資に向いた収益物件を考える
立地や建物以外にも収益物件を選ぶ際に注意すべき点があります。一つの例として、物件の評価などです。金融機関は購入者の信用情報以外に物件の担保価値を見て融資をしますので、設定価格の満額融資が下りることもあれば、70%くらいしか下りないこともあります。
この場合、金融機関による物件の評価も検討する材料にすることで、より長期間収益をもたらしてくれる物件に巡り合える確率が上がるでしょう。
次はこういった立地や物件以外の視点から物件の選び方を考えてみたいと思います。
3-1.銀行の評価が高い物件を選ぶ
購入者の信用情報がしっかりしていても、物件価格の50%や60%程度しか融資が下りない、という場合は物件の評価が低い可能性があります。この場合、そもそも物件価格の設定が見合っていないということですので、その物件を購入することは、価格に値しない物件を購入することになります。
割高な物件を購入するのと同じですから、長期的に見た場合、利回りが悪くなります。将来的な評価も含めて、最低でも90%は融資が下りる物件を探しましょう。
3-2.不動産投資の出口戦略を考える
不動産投資における「出口」とは、不動産の売却を指す言葉です。いつくらいに、いくらで売却をして、いくらの利益を得る、といった戦略を立てるということです。
実際にその時に売却するかどうかは別として、出口戦略を考えることで、自分の物件がどういう状態になっているかをイメージしやすくなります。より条件良く売却するには購入者が高くで買いたい、と思える物件や立地であることが条件になります。
出口戦略を考えることで、立地や物件の条件を慎重に見ることができるようになります。ぜひ出口戦略も考えて物件選びをしましょう。
3-3.自己資金に見合った物件選びをする
不動産は種類によって頭金の額が違います。区分マンションの投資であれば物件価格は2,000万円~2,500万円位が多く、頭金の額は0円~200万円くらいです。アパート1棟になると価格帯は5,000万円から1億くらいの物件が多くなります。
アパート1棟は、部屋の戸数が数室ありますので、月々の家賃収入は大きくなります。しかし、頭金の額が500万円~700万円になることがあります。頭金を無理すると、空室が続いたり、修繕費用が不足したりした時に対応できなくなる可能性があります。
逆に自己資金に余裕がある場合は、頭金を多めに入れることで月々の収支が良くなりますので、長期的にキャッシュフローは潤沢に得られることになります。
自己資金の額に応じて、どのような不動産に投資をするかを決めることも、長期投資には必要な作業になってきます。
3-4.災害に備えた物件選びと保険を考える
日本は地震大国と言われるように、少し前までは災害と言えば地震か火災で加入する保険は一般的な火災保険と地震保険でした。しかし、最近は広い地域でゲリラ豪雨や集中豪雨などの被害が多くなり、保険も慎重に検討して入ることが求められています。
山間部の災害が多かったので、都心のマンションには無関係に思えますが、いざ集中豪雨などによる被害を受けると都市型水害と言われる大きな被害をもたらす可能性があります。都市型水害が起きると、地下鉄に水が氾濫したり、ライフラインが切断されたり、交通機関が使えず孤立したりするリスクがあります。都心の物件でも災害には十分に備えることが必要です。
水害の被害を受けそうなエリアかどうかはハザードマップで確認できますので、ハザードマップを見て、物件を探すことも災害に備えた探し方と言えます。災害を受けにくいエリアにある物件を探すことも、長期間運用を考える一つのコツでしょう。
*国土交通省資料より引用 東京23区洪水浸水想定区域
万が一、被害を受けた場合は、少しでも早く保険金で現状を回復することができるかどうかが、その後の運用に影響してきます。また、火災保険に加入していたとしても、いざ水害などの災害が起きた場合に、条件によっては保険金の支払い対象にならないケースもあります。
保険は新しい補償のものができたり、火災保険の特約が保険会社によって違ったりしますので、加入の際には、細かい点まで相談をして判断することが重要なポイントになってきます。
まとめ
30年後も稼ぐ物件を選ぶために、立地と建物、その他の条件について考えてみました。立地の条件や物件の広さや好みは時代によって変化していることがわかりました。
30年後も稼げる物件を探すには、いかに今後の社会を予想し、必要とされる生活空間を想定できるかが大きなカギだと言えるでしょう。
さらに、立地や建物以外の条件も収益物件を選ぶ上で重要なポイントになることがわかりました。
近年の傾向としては地震以外の災害が多く起きています。長期間収益を上げるためには、今後は新しい災害のリスクも考えて不動産を選ぶことが重要になってくるでしょう。
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