不動産相続、故人の所有不動産を調査する手順は?空き家問題への対策も

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相続は一生に何度も経験する出来事ではありません。相続の方法はあまり知られていないうえに、やらなければならないことが多く、財産が散在しているとどこに何があるのかを調べるだけでも途方に暮れてしまいかねません。

財産が不動産である場合は、調査する手続きはさらに手間がかかるだけでなく、空き家問題などのリスクもあります。

本記事では、故人の所有不動産を効率よく調査する手順と、不動産のうちに空き家がある場合の対策についても解説します。

目次

  1. 故人の所有不動産の調査手順
    1-1.権利証や固定資産税通知書を探す
    1-2.不動産名寄帳の写しを取得する
    1-3.登記事項証明書を取得する
  2. 空き家問題への対策
    2-1.資産価値が高い場合
    2-2.資産価値が低い場合
  3. まとめ

1.故人の所有不動産の調査手順

相続手続きには10カ月という税務申告の期限があるので、財産調査はできる限り迅速に行いたいと言えます。相続放棄を視野に入れている場合は、3カ月が期限になります。

しかし、相続人といえども、故人の所有財産をすべて把握しているとは限りません。たとえ、それが不動産であったとしても同様です。また、不動産の場合は大方の所在地の検討はついていたとしても、正確な地番や筆の数が分からなかったりすることがあります。

効率よく所有不動産の調査を行うために、次のような手順で進めることを検討しましょう。

  1. 権利証や固定資産税通知書を探す
  2. 不動産名寄帳の写しを取得する
  3. 登記事項証明書を取得する

それぞれについて、内容を詳しく説明していきます。

1-1.権利証(登記識別情報)や固定資産税通知書を探す

まず、故人の居住していた家や持ち物の中から、手がかりを探していきます。

不動産の「登記済権利証」あるいは「登記識別情報」があれば、故人がその不動産を所有している可能性が高くなります。これらは、所有権取得の登記が完了した際に、法務局から所有者に発行されるものです。

既に手放している可能性もありますが、少なくとも対象不動産を所有していた時期があったことを示す書類といえます。

最新の固定資産税通知書を探すことも有効です。固定資産税通知書は、不動産の所在する市区町村がその市区町村ごとに、固定資産税の納付義務者に対して、税金の算定基準となる評価額や納付額などを通知する書類です。

固定資産税は、その年の1月1日に所有者として登記簿に登記されている者に課されるのが原則です。通知書が故人宛てに届いていれば、その年の1月1日に故人がその不動産を所有していたといえます。

ただし、固定資産税通知書には、課税されていない不動産までは掲載されていません。農地や山林、原野、公道や私道持分などは非課税扱いになることもあり、固定資産税通知書からは知ることができないので注意が必要です。

1-2.不動産名寄帳の写しを取得する

どこの市区町村に不動産があるかということが特定できたら、不動産名寄(なよせ)帳と呼ばれているものを各市区町村(東京23区では東京都、政令指定都市ではその市)で取得します。これによって、非課税扱いになっている不動産の所有も確認することができます。

特に、私道の共有持分は非課税であり、固定資産税通知書に掲載されないため、必ず名寄帳を取得しましょう。名寄帳の写しを取得できる人は、不動産の所有者本人や代理人、相続人に限られています。取得には次のものが必要です。

  • 申請書
  • 印鑑
  • 本人確認書類
  • 故人の除籍謄本、相続人の戸籍謄本
  • 手数料(郵送の場合は定額小為替)

注意しなければならないのは、名寄帳は、その年の1月1日時点の情報で作成されているということです。その年の途中での売却などは反映されません。

また、名寄帳は市区町村ごとに作成されているため、他の市区町村に所在する故人の不動産までは調査できないことにも注意が必要です。

1-3.登記事項証明書を取得する

権利証や固定資産税通知書、名寄帳の写しの取得によって、故人が過去に取得していたことが明らかになった不動産を、現在も所有しているかどうか調べるのが最後の手順になります。登記事項証明書を取得することによって明らかになります。

該当エリアの法務局の窓口で直接請求する場合、請求したい不動産の地番、家屋番号を請求書に記載して取得します。誰でも請求、取得が可能であるため、特に持ち物は必要ありませんが、1通につき600円の手数料がかかります。

また、法務局へは郵送での請求も可能で、その際の手数料は収入印紙で用意することになります。

その他、「登記・供託オンライン申請システム」を利用したオンラインでの請求も可能です。ホームページから申請者情報を登録の上、登記事項の請求情報、送付情報を入力し、手数料はネットバンキングで納付します。登記事項証明書は郵送によって送られてきます。

以上の手続きによって、故人が相続発生時に所有していた不動産情報が明らかになります。

2.空き家問題への対策

故人の相続財産の中に、空き家となっている不動産が含まれている場合は、相続する際に注意が必要です。空き家は放置すると、倒壊して他人に損害を与えたり、犯罪に巻き込まれたりするなどのリスクがあるからです。

放置してある空き家が付近や周辺に悪影響を及ぼすと判断された場合、空き家対策の推進に関する特別措置法によって、取り壊しなどの行政代執行がおこなわれる可能性もあります。

ここでは、資産価値が高い場合と、そうでない場合とに分けて、相続開始時から検討しておきたい空き家対策や、相続放棄の方法について説明します。

2-1.資産価値が高い場合

相続財産の空き家の資産価値が高いと見込まれる場合、維持管理か売却、もしくは賃貸利用のいずれかが選択肢となるでしょう。

維持管理する場合は、固定資産税や火災保険料、メンテナンスのための費用が生じることを念頭に置いておきましょう。維持管理を兼ねて自己居住してもよいでしょう。

【関連記事】相続した家を売りたくない…空き家の維持費用やおすすめの活用方法は?

売却すると、現金化できることが大きなメリットになります。将来的に不動産価値が下がる可能性があることを考えると、売却も一つの選択肢です。空き家の管理責任などの負担からも解放されます。売却するならば、空き家の譲渡所得3,000万円特別控除特例が利用できる、3年以内が目安になるでしょう。

【関連記事】空き家を売却するタイミングは?費用や税金、売却の方法や戦略も解説

賃貸利用は、空き家から家賃収入を得ることができるのが大きなメリットといえます。ただし、賃貸利用するにはリフォーム費用や修繕費用もかかるため、慎重な検討が必要です。

【関連記事】放置している空き家で賃貸経営はできる?メリット・デメリット、手順も解説

2-2.資産価値が低い場合

空き家が田舎に立地しており建物も古く利用が難しい、などの理由で資産価値が低いと考えられる場合、相続放棄をすることも一つの方法です。相続放棄する場合は、相続開始から3カ月が期限となるので早めの判断が必要になります。

ただし、相続放棄は、空き家だけを選んで放棄できるわけではなく、すべての資産と負債を放棄することになります。相続放棄をしても、他の相続人がいないなどの場合、空き家の管理責任は残ります。

管理責任をすべて放棄して空き家を国庫に帰属させるには、相続財産管理人の選定手続きを行うことになりますが、これには一定の費用と時間がかかるので注意した方がよいでしょう。(裁判所「相続財産管理人の選任」を参照)

まとめ

故人の所有していた不動産は、権利証や固定資産税通知書から所在する市区町村の見当を付けて、各市区町村で名寄帳の写しを取得することで調査することができます。

最終的に直近で所有していたかどうかは、法務局で登記事項証明書を取得することによって判明するといえます。

相続する不動産が空き家である場合は、空き家対策も重要になります。期限のある措置などもあるので、本記事を参考に、適切な対策を講じたいといえます。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。