不動産相続で現物分割を行うメリット・デメリットは?手順や注意点も

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被相続人の相続財産の中に不動産が含まれていた場合は、どのように相続するのがいいか分からず悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

相続方法によっては、遺産分割に手間がかかる、不公平な分割になる可能性もあるため、特徴をよく理解してから分割方法を選ぶことが重要です。

この記事では、現物分割を行うメリット・デメリット、手順や注意点を解説します。

目次

  1. 不動産相続の現物分割とは
  2. 現物分割のメリットとデメリット
    2-1.現物分割のメリット
    2-2.現物分割のデメリット
  3. 現物分割を行う手順
    3-1.相続人の確定と相続財産の調査・評価
    3-2.遺産分割協議と遺産分割協議書の作成
    3-3.遺産分割協議書の内容に従った現物分割の実施
  4. 現物分割を行う際の注意点
  5. まとめ

1.不動産相続の現物分割とは

現物分割とは、相続が発生した場合に、相続人同士で話し合って相続財産をそのままの形で分け合うという方法です。遺産が多いケースや遺産の種類が多いケースなどで現物分割が用いられます。

現金・株式・不動産をそれぞれの相続人で分割する、現金と株式を2人の相続人で分割して不動産を1人の相続人が取得するといったように、相続財産の形を変えずに分割するのが現物分割です。

2.現物分割のメリットとデメリット

現物分割のメリットとデメリットを比較してみましょう。

2-1.現物分割のメリット

現物分割のメリットには、以下の3つが挙げられます。

  • 相続手続の手間が比較的少ない
  • 不動産を残せる
  • 所得税・相続税の控除が期待できる

相続手続の手間が比較的少ない

遺産分割には、現物分割のほか、換価分割、代償分割などがあります。

換価分割は不動産を売却して現金化する、代償分割は不動産を取得する相続人が代わりに他の相続人に現金を支払うなどの作業が発生します。

しかし、現物分割では相続人同士で相続財産を分け合うため、その他の分割方法と比較して手間がかかりません。

また、共有分割を選択した場合、後で売却することになると相続人全員の同意が必要ですが、そのような手間も省けるのがメリットと言えます。

不動産を残せる

換価分割では不動産を売却しなければなりませんが、現物分割では不動産を売却しません。そのため、代々受け継がれてきた不動産を手放さずに済むというメリットがあります。

不動産を残すには、代償分割と共有分割でも可能です。しかし、代償分割では代表者が不動産評価額に相当する金銭を支払う必要があり、共有分割では権利関係が複雑になるデメリットがあります。このような状況を避けたい時、現物分割が選ばれるケースがあります。

所得税・相続税の控除が期待できる

不動産を売却によって現金化して分割する換価分割では、売却益が生じると譲渡所得税が課されます。保有期間によって適用される税率は異なりますが、短期保有で39.63%、長期保有でも20.315%と負担が大きいのがデメリットです。

また、不動産を現金に換えると、相続税の特例(小規模宅地等の特例)が利用できないため、相続税の負担も大きくなります。

しかし、不動産のまま相続する現物分割であれば、所得税と相続税を抑えられる可能性があります。

2-2.現物分割のデメリット

現物分割のデメリットとして、以下の2つが挙げられます。

  • 不公平になりやすい
  • 価値が下がる可能性がある

不公平になりやすい

現物資産をそのまま相続する現物分割は、公平な遺産分割を行うことが難しい分割方法です。

現物資産である不動産は現金や株式と異なり、明確な評価を行うことが難しい特徴があります。遺産分割での評価をどのように行うのかで、後のトラブルに発展する可能性もあります。

不動産が土地の場合、土地を分割すれば一定の公平性を保つことも期待できますが、建物の建っている不動産の分割は困難となります。このように、現物分割は相続人の間で不公平になりやすい点に注意が必要です。

価値が下がる可能性がある

不動産を分筆して現物分割を行う場合、不動産の価値が下がる可能性があるので注意が必要です。

家を建てる人が所有している土地の平均的な大きさは、35~40坪程度となります。土地が狭く、現物分割後に平均的な大きさを下回っている場合、価値が下がる可能性があります。

また、不動産価格は不動産に面する道路関係によって大きく変動します。土地の分筆が可能でも、接道面が有利な土地は評価が高く、接道面が不利な土地は評価が下がります。その他、分筆により土地が不整形となると、相続不動産全体の価格下落にもつながります。

物理的な条件によって不動産価格の減少が起きる可能性のある点が、現物分割のデメリットと言えるでしょう。

3.現物分割を行う手順

現物分割を行う際は、以下の手順で行います。

  • 相続人の確定と相続財産の調査・評価
  • 遺産分割協議と遺産分割協議書の作成
  • 遺産分割協議書の内容に従った現物分割の実施

3-1.相続人の確定と相続財産の調査・評価

遺産相続を行う際は、相続人や相続財産に漏れがあった場合、後でトラブルに発展する可能性があります。トラブルを未然に防ぐために、まず相続人の確定、相続財産の調査を行うことが大切です。

相続人の確定と相続財産の調査終了後は、公平な分割を行う、相続税の納税に備えるために財産の評価を行います。

3-2.遺産分割協議と遺産分割協議書の作成

次にどのように遺産分割を行うのかを協議(遺産分割協議)します。この遺産分割協議では、遺産分割の方法や金額などについて話し合います。

遺産分割協議で話し合った内容は、最後に遺産分割協議書にまとめて相続人全員の印鑑が必要になるため、相続人全員が納得するまでしっかり話し合いましょう。

3-3.遺産分割協議書の内容に従った現物分割の実施

最後に、作成した遺産分割協議書の内容に従って、遺産分割を進めていきます。現物分割を行う不動産は、名義を変更しなくてはならないため、法務局に行って相続登記を行います。

相続税の申告・納付は期限がありますが、遺産分割には期限がありません。ただし、遺産分割を先延ばしにすると、第二相続、第三相続によって話し合いが難航しやすいため、早めに遺産分割協議を行うことも検討しておきましょう。

4.現物分割を行う際の注意点

現物分割は相続割合に応じて公平に分けることの難しい分割方法です。他の分割方法と比較しながら、不動産相続でどのようなポイントを優先して遺産分割を行うのか、相続人同士で慎重に話し合いを進めることが重要となります。

また、土地の分筆を伴った現物分割を行うと、接道義務という建築基準法のルールを満たさなくなる可能性があります。建築基準法を満たしていない土地では、建物を建てられなくなるので注意が必要です。

まずは不動産の価格調査や接道条件、市区の用途制限などを調査し、不動産に適した相続方法を検討してみると良いでしょう。不動産査定を行う場合は、複数の不動産会社へ査定を依頼し、査定価格の比較を行うことも大切です。

まとめ

不動産は現金のように公平な分割が難しく、後のトラブルとなりやすい相続財産です。相続不動産の状態や相続人同士の意見にあわせて、適切な分割方法を選択することが重要です。

今回は遺産の分割方法の1つである現物分割について解説しました。メリット・デメリットだけでなく、注意点などもよく確認してから現物分割に臨みましょう。

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矢野翔一

関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。HEDGE GUIDEでは不動産投資記事を主に担当しています。専門用語や法律が多く難しいジャンルですが分かりやすくお伝えしていきます。