少額資金で運用可能なクラウドファンディングを活用した投資手法に注目している方も多いのではないでしょうか。
ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングは、クラウドファンディングの仕組みを活用した投資手法ですが、基本的な仕組みやリスク対策の方法などで様々な違いがあります。
そこで、この記事ではソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングの違いについて、それぞれの特徴やメリット・デメリットを詳しく解説します。クラウドファンディングを活用した投資手法に興味のある方は、ご参考ください。
目次
- ソーシャルレンディングとは
1-1.ソーシャルレンティングのメリット
1-2.ソーシャルレンティングのデメリット - 不動産投資型クラウドファンディングとは
2-1.不動産投資型クラウドファンディングのメリット
2-2.不動産投資型クラウドファンディングのデメリット - ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングの違いを比較
3-1.法律上の規制
3-2.リスク
3-2.リスク対策 - まとめ
1.ソーシャルレンディングとは
ソーシャルレンディングとは、ネットを通じて投資家からファンドの募集を行い、集まった出資金をファンドの業者を通じて企業等に貸し付ける仕組みです。
ファンド業者はネット上で資金の出し手である投資家の募集を行い、申込みがあった投資家から出資を受けます。その際、出資した資金で行う事業によって利益が発生した場合、利益を投資家に分配する匿名組合契約を締結し、投資家は契約に基づいて分配金をもらうことが可能です。
一方、ファンド業者は資金の借り手である企業等と金銭消費貸借契約を締結し、出資で募った資金を元手に資金の貸し付けを行い、受け取った利息から管理報酬などを差し引いて投資家に分配します。
ソーシャルレンディングは融資(貸付)型クラウドファンディングとも呼ばれ、資金の出し手である投資家は資金の運用によって得られた利益の分配を受けることができ、資金の借り手は銀行などの金融機関以外からも資金調達が可能となります。
ソーシャルレンディングはまだ新しい金融取引の形ですが、設備投資や新規事業資金、運転資金など様々な用途で資金を調達できる点が企業にとってメリットとなっています。
例えば、借り手となる企業は、「融資を受けたくても実績がないため金融機関から資金を調達できない」「銀行の融資枠を使い切っていて新規事業のための資金調達が難しい」などを理由に、金融機関ではなくソーシャルレンディングを資金調達の手段として選択するケースがあります。
一方、資金の出し手である投資家にとっては、次のようなメリット・デメリットがあります。それぞれ見て行きましょう。
1-1.ソーシャルレンティングのメリット
- 予定運用期間は3か月~数年と幅広い
- 貸付金に対して担保が設定される案件ではデフォルトリスクが軽減される
- 1万円程度の少額から運用できる事業者が多い
- 一度出資するとその後の運用で手間やコストがかからない
ソーシャルレンディングの予定分配利回りは案件によって異なるものの、おおよそ2~10%と幅が広くなっており、普通預金や定期預金、国債などと比較して高い水準と言えます。
投資期間は3か月〜2年と、数か月の短期のものから長期まであり、自身の裁量で期間を選択して運用できる点もメリットです。
1-2.ソーシャルレンティングのデメリット
- デフォルト(債務不履行)などにより元本を毀損する可能性
- ファンド業者独自のリスクもある
- 基本的に投資した資金は期間満了まで拘束される
一方、利回りが高いぶん、リスクも高くなる点に注意が必要です。例えば、貸付先の経営状況によっては貸付金が返済されずに元本が毀損する可能性があります。
また、ファンドを組成する業者が資金を不正に活用していないかにも気を配る必要があります。ソーシャルレンディングは比較的に新しい投資手法であり、貸付先の匿名性もあいまって、過去には金融庁から指摘を受けているケースがあります。
ファンド選びを行う際、貸付先に対する無理な営業は行っていないか、発信される情報は透明性があり信用に値するものかなどを確認することが大切です。
2.不動産投資型クラウドファンディングとは
不動産投資型クラウドファンディングとは、投資家からインターネット上で資金を募り、集まった資金をもとに不動産の売買や運用などを行う仕組みです。
事業者はインターネットなどで投資家から資金を募り、集まった資金をもとに不動産を取得して運用することによって収益を生み出します。投資家はその収益から不動産の管理運営費や事業者の営業報酬などを差し引いた利益を配当金として受け取ります。
この仕組みは、不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディングとなっているため、不特法型クラウドファンディングとも呼ばれています。
事業者と投資家が結ぶ契約形態には、おもに任意組合型、匿名組合型、賃貸型の3種類があります。中でも、投資家から匿名組合に金銭出資を受けて不動産を取得する匿名組合型で出資を募る方法が主流となっています。
ソーシャルレンディングと似たような仕組みですが、不動産投資型クラウドファンディングは出資した事業者自身が出資金をもとに直接不動産を購入し、賃貸などの運用を行う点が大きく異なります。
また、ソーシャルレンディングでは資金の借り手によって設備投資や新規事業資金、運転資金など資金の用途が違いますが、不動産投資型クラウドファンディングでは基本的に不動産の投資運用に用途に限られている点も異なるポイントです。
不動産投資型クラウドファンディングにもメリットとデメリットがあり、これらを正確に把握した上で投資判断を行う必要があります。
2-1.不動産投資型クラウドファンディングのメリット
- 予定運用期間が6か月~2年と幅広い
- 案件ごとに投資対象となる不動産情報が公開されている
- 案件によっては優先劣後出資で投資家の元本割れ対策をしている
- 最低投資資金1万円〜10万円
- 現物不動産投資と比べて手間や運用コストがかからない
不動産投資型クラウドファンディングも手軽に少額資金で運用できる点が大きなメリットです。運用期間はおおむね6か月〜2年程度で投資することができます。また、投資対象となる不動産の情報が公開されている場合、直接物件を確かめてから投資判断を行うことが可能です。
2-2.不動産投資型クラウドファンディングのデメリット
- 不動産価値の下落などによって元本毀損のリスクがある
- 不動産の管理運用を行う事業者自体のリスク
- 投資した資金は基本的に期間満了まで拘束される
不動産投資型クラウドファンディングには元本毀損のリスクがあります。不動産の管理運用を行う事業者は、収益確保に向けて最大限取り組むものの、投資家側でも事業者の過去の実績も含めた運用状況はどうか、事業者の発信する情報に透明性はあるかなどのリスクを判断することが大切です。
3.ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングの違いを比較
ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングは一見すると同じような仕組みですが、それぞれの根拠法やリスク管理体制などのガバナンスは全く異なっています。
両者の違いについて、各ポイントを比較しながら詳しく見ていきましょう。
3-1.法律上の規制
ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングの匿名組合契約は原則として金融商品取引法上のみなし有価証券に該当するため、募集を行うファンド業者は第二種金融商品取引業の登録を受ける必要があります。
また、ファンド募集を行った企業が借り手に資金を貸し付ける行為は貸金業法に規定する貸付行為に該当するため貸金業としての登録も必要です。
不動産投資型クラウドファンディング
一方、不動産投資型クラウドファンディングは不動産特定共同事業法に基づく取引となるため、国土交通省の許可が必要になります。なお、投資家一人当たりの出資額が100万円以下で出資総額が1億円を超えない場合、平成29年に新設された制度により小規模不動産特定共同事業者の登録だけで事業を行うことも可能です。
なお、不動産投資型クラウドファンディングもソーシャルレンディングと同様に匿名組合契約などに基づいた契約形態です。
しかし、不動産特定共同事業法が適用される不動産特定共同事業契約となるため、契約上の権利はみなし有価証券の定義から除外され、第二種金融商品取引業の登録は不要となっています。
3-2.リスク
ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングでは、借り手企業に返済不能となるデフォルト(債務不履行)が発生すると、元本が大きく毀損する可能性があります。そのため、投資判断をする際は、担保設定がされているか等を確認することも重要になってきます。
ただし、基本的に価値の大きい担保が設定されている案件ほど利回りが低くなる傾向にあるため、利回りとリスクを天秤にかけながら検討することになります。
不動産投資型クラウドファンディング
一方、不動産投資型クラウドファンディングでは不動産価値の下落や空室リスクに注意が必要です。空室が続いて収益が出ない場合、配当が出ない可能性もあります。
賃料保証のあるマスターリース契約で物件を貸し出すことによって空室リスクを低減している案件もあるため、個々の案件ごとに不動産の詳細や運用方法などを確認しておくことがポイントです。
なお、ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングでは出資を募る事業者選びも重要なポイントです。投資を検討する際は、過去の実績や貸し倒れ件数なども確認しておきましょう。
3-3.リスク対策
ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングでは、資金を貸し付ける際に担保権の設定などを行うことでデフォルトの際のリスク低減を図っています。
ただし、全ての案件で担保設定がされるわけではありません。担保設定されている場合でも、債務不履行の場合に担保物件を処分しても債権の全額を回収できないケースも少なくないため、貸付額に対する担保評価についても確認しておくことが重要です。
なお、担保物件の評価の際に他の事業者などを介入させることで厳しく担保価値を算定している事業者があるほか、貸付先が法人の場合、借り手の情報を詳細に公表するなどの取り組みも行われています。
不動産投資型クラウドファンディング
一方、不動産投資型クラウドファンディングの場合、事業者が不動産の所有権を保有して運用を直接行います。
借り手を選んで貸し出すことや、業績による業態変更や物件売却などを事業者自身で判断することも可能になるので、対象物件に問題が生じた場合でも柔軟に対応することが可能となっています。
また、不動産投資型のクラウドファンディングでは事業者の劣後出資が認められています。
例えば、総額1億円の案件に対して投資家から8千万円を募り、残る2千万円を劣後出資で事業者が出資した場合、事業に3千万円の損失が発生したとしても劣後出資の2千万円が優先的に補填される形となるため、投資家の損失は1千万円に軽減されます。
まとめ
この記事ではソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングの違いをご紹介しました。
クラウドファンディングを活用して資金調達を行うという仕組みは同じであるものの、ソーシャルレンディングは金利収入であり、不動産投資型クラウドファンディングは賃料収入であるという違いがあります。投資対象・運用手順が異なるため、根拠法も異なります。
両者とも少額での運用ができる投資方法ですが、元本毀損リスクには注意も必要です。募集事業者や案件の内容をしっかりと精査した上で、投資判断を行うことを検討してみましょう。
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