不動産は分与が難しく、相続時の評価・分割方法で意見が別れやすい財産です。相続においてトラブルになる事例があるため、あらかじめ対策を行っておくことが重要となります。
不動産の相続では、不動産の価額や財産の総額を知り遺言書を作成する、相続人となる方とよく話し合うなど、注意すべきポイントがあります。
本記事では不動産相続でトラブルが起こりやすい理由、注意すべきポイント8つをご紹介していきます。
目次
- 不動産相続でトラブルが起こる主な原因
- 不動産相続で注意すべきポイント8つ
2-1.不動産の価額を把握する
2-2.財産全体の評価額を調べる
2-3.相続税が発生するか否か
2-4.遺言書を作成しておく
2-5.将来相続人になる方とよく話し合う
2-6.財産を分割しやすくしておく
2-7.税金の軽減について調べておく - まとめ
1.不動産相続でトラブルが起こる主な原因
不動産の相続が相続人の間でトラブルになりやすい要因の1点目は、不動産の評価方法です。相続税の計算に利用される評価額と、実際に売買される価格(実勢価格)に大きな差が出ることも少なくないため、どの評価額を基準として遺産分割を行うかで意見が別れる事があります。
また、親が住んでいた家屋を相続する場合には分割が難しい傾向にあり、相続人同士で分割方法・割合で意見が合わないことがあります。
「長年住んでいた実家なので取り壊したくない」「両親の遺したものを整理するのが辛い」などの理由で空き家となっているケースもあります。相続人同士の感情面も判断材料の1つととらえ、話し合いをすることが重要です。
自身にもしものことがあった時、上記のような問題が起こらないように「どうやって不動産相続を行うべきか」を検討していきましょう。
2.不動産相続で注意すべきポイント8つ
不動産の相続にあたって、注意すべきポイントは以下の8つになります。
- 不動産の価額を把握する
- 財産全体の評価額を調べる
- 不動産の評価方法を決めておく
- 相続税が発生するか否か
- 遺言書を作成しておく
- 将来相続人になる方とよく話し合う
- 財産を分割しやすくしておく
- 税金の軽減について調べておく
2-1.不動産の価額を把握する
最初に相続予定の不動産の価額を把握しておきましょう。この時、相続税評価額ではなく実際の売買価格である実勢価格を調査することが重要です。
実勢価格は不動産会社に査定を依頼し、査定額を出してもらう事で把握できます。査定価格は不動産会社によって異なるため、複数の不動産会社へ査定を依頼し、それぞれの査定価格を比較することが重要です。
不動産査定の注意点として、最も高い査定価格を参考にするのではなく、査定の根拠なる背景や根拠を比較することが大切です。不動産査定価格は売出時の参考価格であり、必ず売却ができる価格ではないためです。
効率的に不動産査定を行うには、不動産一括査定サイトの活用を検討してみましょう。不動産一括査定サイトでは、物件情報を登録すると無料で複数の不動産会社から査定結果が送られてくるため、1社ずつ問い合わせる手間を省くことができます。下記、主な不動産一括査定サイトの一覧です。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
SUUMO(スーモ)不動産売却[PR] | 株式会社リクルート | 大手から中小企業まで約2,000の店舗と提携。独自の審査基準で悪質な不動産会社を排除。60秒で入力が終了し、無料査定がスタートできる。 |
すまいValue[PR] | 不動産仲介大手6社による共同運営 | 査定は業界をリードする6社のみ。全国841店舗。利用者の95.5%が「安心感がある」と回答 |
LIFULL HOME’Sの不動産売却査定サービス[PR] | 株式会社LIFULL | 全国3826社以上の不動産会社に依頼できる。匿名での依頼も可能 |
リガイド(RE-Guide)[PR] | 株式会社ウェイブダッシュ | 17年目の老舗サイト。登録会社数900社、最大10社から査定を受け取れる。収益物件情報を掲載する姉妹サイトも運営、他サイトと比べて投資用マンションや投資用アパートの売却に強みあり |
HOME4U[PR] | 株式会社NTTデータ スマートソーシング | 全国2100社から6社まで依頼可能。独自審査で悪徳会社を排除 |
【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
不動産の価額は経年により変化するため、5年、10年と定期的に情報を収集しておくことが重要となります。不動産の評価方法でトラブルになることを避けたい方は、遺言書で評価方法を指定することも可能です。
その他、住宅ローンや不動産投資ローンなどの残債が残っている場合には、相続時までに完済できるのか返済予定を確認しておきましょう。ローンが完済できない場合には、不動産の売却価格よりローンの残債が大きいオーバーローンの状態となっていないか確認しておくことも大切です。
2-2.財産全体の評価額を調べる
相続税を計算する時や相続・相続放棄を行う場合、相続対象となる財産全体の評価額を知る必要があります。あらかじめ財産の総評価額を把握しておきましょう。
相続の対象となる財産は土地や建物を始めとした不動産、株価や債券などの有価証券、預貯金、ゴルフ会員権や骨とう品、腕時計など「換金できる物すべて」となります。
亡くなる前3年以内に贈与した財産や生命保険契約の死亡保険金も相続税の対象となりますが、保険金は一部の金額が控除されます。
有価証券は上場株式の場合、下記のうち最も低い価格で評価を行います。
- 相続・贈与の最終価格
- 相続・贈与のあった月の毎日の最終価格の平均
- 相続・贈与があった前月の毎日の最終価格の平均
- 相続・贈与があった前々月の毎日の最終価格の平均
定期預金は元本+利息、ゴルフ会員権は取引価格の7割程度、自動車や家財道具などの動産は評価する時点で同じものを買う時の価額(再調達価額)で評価されます。相続時に正確な評価額が分かる財産も多いため、あくまでおおよその価額を把握しておきましょう。
※参照:国税庁「相続税がかかる財産」
2-3.相続税が発生するか否か
相続予定の財産の総額を把握した所で、相続税が発生するか否かを調べます。相続税は以下の基礎控除額を超えた時に発生します。
基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人とは、配偶者や子孫、父母や、祖父母、兄弟など法律で相続人と定められている人を指します。
法定相続人はあくまで相続人同士で意見がまとまらない時に相続する人となりますので、法定相続人以外で財産を引き継いで欲しい方がいる場合には、遺言書に記載する事で相続できる可能性があります。
※参照:国税庁「相続税の計算」
2-4.遺言書を作成しておく
遺言書を作成しておくことで、財産分割方法・割合などをめぐるトラブルを避けられる可能性があります。遺言書には自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種があります。
自筆証書遺言は、財産目録以外を自身で書き、日付・署名・押印をすることで法的に有効となります。不動産登記事項証明書を添付でき、法務局に保管してもらう事で偽造・変造を防ぐことが出来ます。
秘密証書遺言は、遺言の内容を知られたくない時に自身又は弁護士や司法書士などの第三者が作成します。自筆証書遺言と違いワープロやパソコンでも作成可能で、日付の記載も必須ではありませんが、本人署名と押印は必要となります。
秘密証書遺言の作成は、公正役場で相続において利害関係の無い証人2人と共に公証人立ち会いのもと、自身の遺言である事と住所氏名を述べ、書類を封筒に入れ、中の書面と同じ印鑑で封印します。
公正証書遺言は本人の口述または自書を元に公証人が作成する遺言で、公証役場に保管される公的な文書となります。3つの遺言のうち唯一相続時に家庭裁判所による「検認」という手続きが必要のない遺言となります。
遺言の内容を知られたくない方は秘密証書遺言、公証役場に行く事が難しい方や自身で保管しておきたい方は自筆証書遺言、公文書として証拠力の高い文書を残しておきたい方は公正証書遺言を作成すると良いでしょう。
なお、遺産は基本的に遺言があれば遺言書に従って分割、なければ法定相続分に従い分割することになりますが、遺産分割協議で相続人全員の同意があれば、決められた割合で相続を行わないケースもあります。
2-5.将来相続人になる方とよく話し合う
不動産相続を行う際には相続人や法定相続人の方と財産の分与方法や割合についてよく話し合っておく事で相続時のトラブルを回避できる可能性があります。
不動産に関しては相続を希望しているか否か、ローンが残っている場合返済はどうするか、物件の評価方法や分与割合、分与の方法などを話し合っておきましょう。
相続人となる予定の方に配偶者がいる場合には、配偶者の意見を聞いておくことも大事なポイントとなります。
2-6.財産を分割しやすくしておく
不動産は分割が難しい財産ですので、事前に分割しやすくしておくことが重要となります。
分割方法は、現物のまま分割する現物分割、売却した後代金を分ける換価分割、相続人のうち一人が不動産を相続し他の相続人には金銭や物を代償として支払う代償分割、共同名義とする共有分割の4つとなります。
例えば、代償分割は不動産を相続した相続人が他の相続人に主に現金(代償金)を支払いますが、手元に現金や代わりとなる財産が無い場合分割が不可能です。代償分割が検討可能かどうか、相続人になる方とよく話し合っておきましょう。
また、不動産が未登記の場合は登記を行っておいたり、共有名義になっている時は単独名義に変更するなど、手続きの面でも事前に対策することで相続人の負担が軽減します。
2-7.税金の軽減について調べておく
相続人の負担を減らすために、相続税の軽減についても調べておきましょう。例えば、相続人に配偶者がいる場合は、「配偶者の税額の軽減制度」を適用し、1億6千万円まで又は配偶者の法定相続分相当額のうち多い金額の税金が控除できる可能性があります。(※参照:国税庁:「配偶者の税額の軽減」)
相続税が発生することが想定される場合には、適用できる可能性のある税制度についても確認をしておきましょう。
【関連記事】自宅の売却で適用したい5つの特例とは?それぞれ適用の流れと条件を解説
まとめ
不動産は相続可否や評価方法、分割の割合など相続において注意すべきポイントの多い相続財産です。遺言書を作成する、将来相続人となる方と配偶者を含めよく話し合うなど対策を行っておくことでスムーズに相続できる可能性が高くなります。
事前に相続財産の整理を行うことで、相続人同士のトラブルを避けられる可能性を高めることができます。まずは相続財産を把握し、相続人とも早めの話し合いを検討してみると良いでしょう。
田中 あさみ
最新記事 by 田中 あさみ (全て見る)
- 空き家相続で相続人がいない時の対処法は?5つのケースごとに解説 - 2024年8月17日
- 親の山林や農地は相続するべき?メリット・デメリットを検証 - 2024年5月27日
- 法人名義の不動産を相続する方法は?建物と土地の名義が分かれているケースも - 2024年5月24日
- 相続不動産の査定方法は?遺産分割の手順や流れ、査定のタイミングも - 2024年4月22日
- 離婚後に不動産査定でもめないためには?査定方法を2つ紹介 - 2024年4月22日