不動産の相続登記を自分でするメリット・デメリットは?手順や注意点も

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不動産の相続登記は司法書士に依頼することで、手続きを代行して貰えますが、事務所によって5~8万円程度の費用がかかります。司法書士への代行費用を削減したい方は、自身でも相続登記を行うことが可能です。

ただし、相続登記は自身でもできますが、慣れない方だと大きな手間と時間をかけてしまうこともあります。登記を急いでいる時や、数次相続(前の代から未登記の不動産相続)などのケースでは専門家に依頼することも検討してみましょう。

本記事では不動産の相続登記の概要、自分で相続登記を行う際のメリット・デメリット・注意点、相続登記の手順をお伝えしていきます。

目次

  1. 不動産の相続登記とは
  2. 自身で相続登記を行うメリット・デメリット、注意点
  3. 不動産の相続登記の手順
    3-1.不動産の名義人を決める
    3-2.必要書類を準備する
    3-3.法務局に登記の申請を行う
    3-4.登記完了証を受け取る
  4. まとめ

1.不動産の相続登記とは

不動産の登記とは、土地や建物などの所在地や面積、所有者の氏名や住所などを公開し、誰でも見られるようにすることで権利関係を明確にする行為です。登記を行うことで、不動産の売却や、担保に入れローンを組む事などが可能となります。

登記の記録管理は法務局で行っており、以前は書面で「登記簿」として管理を行っていましたが、現在はデータの電子化により「登記記録」として保管されています。

ない、近年相続により取得した不動産が登記されていない事例が増加しています。未登記の不動産は自治体にとって地域の景観を損ねることがある、公共事業が進まない、空き家の増加などにつながり社会問題となっています。

所有者にとっても次の相続時に調査に時間がかかる、登記の手続き費用が高額になる、売却できないなどのデメリットがあります。所有者側も不利益やトラブルを防ぐことにつながるため、相続後はできるだけ早く登記を行いましょう。

2.自身で相続登記を行うメリット・デメリット、注意点

自身で相続登記を行う主なメリットは、司法書士への報酬費用がかからない点です。また、登記の手順に関わることで、不動産の所有権がどのようになっているのかなど、不動産の状態を詳しく知ることにもつながります。

親子間といった上記のように複雑ではない相続では、相続登記が負担にならない可能性が高く自身で行う方も少なくありません。

一方、デメリットは登記の手間や時間がかかることです。平日の役所が開いている時間帯に住民票や戸籍謄本など各種証明書を請求しなくてはいけないため、仕事によっては家族の協力が必要なケース、自身で登記が出来ない場合もあります。

注意すべきケースは、例えば親の不動産を相続する際に、親が祖父母から譲り受けたものの祖父母が登記を行っていない事例など未登記の不動産を相続する「数次相続」などイレギュラーな相続登記です。

数次相続は、未登記の不動産を登記することから始まり、通常の相続より多くの時間と手間がかかります。複雑な事例にも慣れている司法書士といった専門家に依頼することで、負担を減らすことができます。

他には登記を急ぐ時、不動産の所在地を管轄する法務局が遠方にある場合、相続関係が複雑な事例などでは司法書士に依頼すると正確な手続きがスムーズにできる可能性が高くなります。

3.不動産の相続登記の手順

自身で相続登記を行う際の手順は以下の通りとなります。

  • 不動産の名義人を決める
  • 必要書類を準備する
  • 法務局に登記の申請を行う
  • 申請後に書類を受け取る

3-1.不動産の名義人を決める

まずは不動産の新たな名義人を決定しましょう。相続の際に遺産は、被相続人(亡くなった方)の遺言書・遺産分割協議・法定相続分のいずれかで決まった分割方法・割合で分割されます。

遺言書がある場合には遺言書通りに分割されることとなりますが、遺産分割協議で相続人全員が合意している場合には、遺言書と異なる分割割合・方法でも相続が可能です。遺産分割協議により決定した場合には、遺産分割協議後に遺産分割協議書を作成する必要があります。

法定相続分は民法で定められた相続人・相続割合ですが、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の取り分であり、必ずこの相続分で遺産の分割をしなければならないわけではありません。

遺言書や相続人全員による遺産分割協議で、不動産を相続する方を決定しましょう。

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3-2.必要書類を準備する

不動産を相続することになった方は、登記で必要となる書類を準備します。

遺言書・遺産分割協議・遺産分割調停・審判と相続の経緯によって必要となる書類は異なりますが、登記申請書、申告者(相続人)全員の住民票、課税証明書(課税明細)の写し又は固定資産評価証明書の原本はすべてのケースで共通して必要となります。

登記申請書は法務局のホームページからダウンロードが可能です。相続における登記申請には下記の5種類があります。

  1. 公正証書による遺言書による相続
  2. 自筆証書遺言による相続
  3. 遺産分割協議による相続
  4. 何世代も相続登記をしていない場合(数次相続)
  5. 法定相続分による相続

④の数次相続は、相続人が増え多くの書類が必要となりますので、申請書様式を確認しても手続きが不明である時は、管轄の法務局に相談することが推奨されています。

なお、主な必要書類は以下の通りになっています。(※相続人と被相続人の関係によって別途書類が必要となるケースがあります。)

共通で必要となる書類

  • 登記申請書
  • 申告者(相続人)全員の住民票
  • 課税証明書(課税明細)の写し又は固定資産評価証明書の原本

※代理人が申請する場合には委任状も必要となる

遺言書による相続

  • 遺言書
  • 検認済証明書(自筆証書遺言の場合)
  • 遺言書情報証明書(法務局で保管されていた場合)
  • 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本または住民票(本籍・筆頭者記載のもの)

遺産分割協議で相続

  • 遺産分割協議書
  • 遺産分割協議書に捺された印の印鑑登録証明書すべて
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 先に順位法定相続人がいないことを確認できる戸籍謄本(第2順位以後)
  • 法定相続人全員の現在の戸籍謄本

遺産分割調停・審判により決定

  • 調停の場合:調停調書
  • 審判の場合:審判書
  • 確定証明書

不動産の登記では登録免許税を支払う必要があり、収入印紙を購入して登記申請書に貼付することで納付します。金額は「固定資産税評価額×0.4%」で算出します。

3-3.法務局に登記の申請を行う

必要書類が準備できた後は、不動産の所在地を管轄する法務局に所有権移転登記の申請を行います。申請方法は、法務局に直接書類を持参する、書類を郵送する、オンライン申請の3つがあります。

法務局が開いている時間は平日の8:30~17:15のため、直接出向く際には時間内に管轄の法務局を訪れ所定の手続きを行います。

書類を郵送する申請の手順

  1. 申請書は,A4の用紙を使用、他の添付情報と共に左とじにて提出する
  2. 文字はPCを使用し入力又は黒色インク・黒色ボールペン・カーボン紙等(摩擦等により消える又は見えなくなるものは不可)ではっきりと記入。鉛筆は使用不可。
  3. 申請書や必要書類を入れた封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載し、「書留郵便」により送付する
  4. 登記完了時に、還付を希望する書類・登記完了証を郵送により返送を希望する場合は、宛名を記載した返信用封筒に加え書留郵便のための切手を同封する
  5. 登記識別情報を記載した書面について郵送による交付を希望する場合には、本人限定受取郵便等による方法となるため、「書留料金+105円」(2021.5月現在)の切手を同封する

オンライン(登記・供託オンライン申請システム)による申請の手順

  1. 申請者情報登録で氏名・住所など基本情報を登録
  2. システム内で利用するID・パスワードを発行される
  3. 申請用総合ソフトをダウンロードする
  4. ソフトを用いて所定の手続きを行い、オンライン申請

申請は平日の8:30から21時まで可能です。(国民の祝日・休日、12月29日から1月3日までの年末年始を除く。)

3-4.登記完了証を受け取る

登記完了時には登記完了証が交付されます。オンラインで申請を行うとオンラインにより取得できますが、郵送代を負担することで書面でも交付の請求ができます。

まとめ

不動産の相続登記は、複雑な事例や急ぎのケースを除いて自身で行う事が可能です。

法務局に書類を持参し申請する方法の他に、郵送やオンラインでも申請が可能です。郵送・オンラインによる申請は平日の昼間に法務局に出向くことなく行えるため、平日に時間が取れない方に適した方法となります。

不動産の相続登記は多くの書類が必要ですが、この記事を参考に書類を集め手続きを行っていきましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。