相続した実家を売却するにあたって、遺品や家具の処分に困る方は多いでしょう。遺品や家具の整理・処分はできるだけ早めに行う事が望ましいですが、相続では遺産分割協議や相続登記などやるべき事が多く後回しになってしまうケースは少なくありません。
遺品整理で相続人が把握していない相続財産が見つかる事がありますので、重要な書類や貴重品の捜索は遺産分割協議前に行っておくことが重要です。
本記事では、相続の流れと遺品・家具を処分する、遺品や家具を処分する手順・費用、注意点を解説していきます。
目次
- 相続、実家売却の流れと遺品・家具を処分するタイミング
1-1.遺品・家具を処分するタイミングはいつ? - 実家にある遺品や家具を処分する手順
2-1.貴重品・相続に関わる書類を探す
2-2.遺品整理を業者に依頼するか検討する - 実家売却で遺品整理を行う際の注意点
3-1.遺言書を発見した時には開封しない
3-2.資産性のある遺品の取り扱いは相続人全員で相談する - まとめ
1.相続、実家売却の流れと遺品・家具を処分するタイミング
まずは、大まかな相続の流れを見ていきましょう。
相続の流れ
- 被相続人が亡くなり自動的に相続開始
- 遺言書の有無を確認
- 相続人と相続財産の調査・把握
- 相続財産の評価
- 相続放棄・限定承認の手続き(3ヶ月以内)
- 被相続人の準確定申告(4ヶ月以内)
- 遺産分割協議
- 遺産の分配(被相続人から相続人に名義変更)
- 相続税の計算
- 相続税の申告・納付(10ヶ月以内)
実家(相続不動産)は相続人を決め、法務局で相続による所有権移転登記を行い実家の名義を被相続人(亡くなった方)から相続人に変更してから売却します。相続不動産の売却の流れは以下の通りです。
相続不動産の売却の流れ
- 相続登記
- 不動産会社による査定
- 不動産会社と媒介契約を結ぶ
- 売り出し価格の決定、販売活動の開始
- 購入希望者の内覧対応・交渉
- 売買契約を結ぶ
- 実家の引き渡し・清算
- 確定申告
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1-1.遺品・家具を処分するタイミングはいつ?
実家にある遺品や家具などの処分はできるだけ早めに行う事が望ましいと言えます。相続財産の調査で漏れがあった場合、遺産分割や相続税に影響を及ぼす可能性があり被相続人の相続財産は全て把握する必要があるためです。
相続人が相続財産の調査を十分に行ったと思っていても「遺品整理で取引している金融機関の通帳が見つかった」「家を整理していたら貴金属など相続財産が見つかった」という事例もあります。
よって可能であれば、相続財産の調査漏れを回避するためにも、「相続財産の調査の前」に遺品整理・処分を行っておくと良いでしょう。
しかし、相続時にはやるべきことが多いため後回しになってしまうケースも少なくありません。「相続財産の調査前」が難しい場合には、遺産分割協議の前には重要な書類や貴重品の有無を確認しておき売却前に処分を行いましょう。
2.実家にある遺品や家具を処分する手順
遺品や家具を処分する手順は以下の通りです。
- 貴重品・相続に関わる書類を探す
- 自力で片づけるか業者に依頼するかを検討する
- 自力で片づける
- 遺品整理業者・不要品回収業者へ依頼する
2-1.貴重品・相続に関わる書類を探す
まずは貴金属や装飾品・時計などの貴重品、遺言書・権利書や借用書など相続・相続財産に関わる書類の有無を確認しましょう。可能であれば相続人全員が最終確認を行います。相続人全員が最終確認を行うことで、特定の人が責任を負うことなく、相続人間のトラブルを回避できることがあります。
また、調査していない金融機関・保険会社・不動産会社などの郵便物や景品が見つかった場合には要注意です。過去に取引があり、相続人が把握していない相続財産が有る可能性があるため、念のため問い合わせを行っておきましょう。
2-2.遺品整理を業者に依頼するか検討する
実家を相続人や関係者自らが片づけるか、業者に依頼するかを検討します。自力で実家の遺品・家具などを処分する方法は、コストをかけたくない方や処分する物が少ない、時間に余裕のあるケースに適しています。
「実家に業者にも見られたくない物がある」という場合には、見られたくない物を先に片付けた後で業者に依頼するという方法もあります。一方で、遺品整理が精神的に辛い、実家が遠方にある、時間がない、処分する物が多い場合には、遺品整理業者や不要品回収業者に依頼する方もいます。
不要品回収業者は要らない物を買い取り再利用できないものは有料で処分するなどのサービスを行っており、遺品整理業者は不要品買い取り・処分に加えて室内の清掃、仏壇・仏具の処分を行っています。
相続人が自力で片づける手順と注意点
自力で片づける際には、要らないものは分類しゴミに出し、粗大ごみは自治体の粗大ごみ回収を利用するか、リサイクル業者に売却することで処分できます。
家電はエアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機の4品目は家電リサイクル法により、家電販売店が引き取った後にメーカーがリサイクルする仕組みになっています。リサイクル料金は販売店やメーカー・製品によって異なり、1,000円~10,000円程度です。なお、家具・家電が使える状態であればリサイクルショップに売却する事もできます。
自治体の粗大ごみ回収を利用する場合は、申し込みから引き取りまで1~2ヶ月ほどの期間を必要とするケースがあります。スケジュールに余裕をもって取り組まれると良いでしょう。
遺品整理業者・不要品回収業者へ依頼する手順と注意点
遺品整理業者・不要品回収業者に処分を依頼します。遺品整理業者や不要品回収業者の中には、買い取りや運搬を行わない業者もありますので、事前にチェックしてみましょう。
総務省行政評価局が2020年に公表した「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」によると、見積書75例の金額の分布は以下の通りです。
10万円超~40万円以下がボリュームゾーンと言えます。
一方、全国の消費生活相談センターには「高額な追加料金が発生した」「処分しない予定の遺品が処分された」などの相談が寄せられています。(※参照:独立行政法人国民生活センター「遺品整理サービス」)中には悪質な業者も存在しますので、複数の業者から見積もりを取る、契約内容をよく確認するなどの方法で対処しましょう。
不要品回収業者にも、高額な処分費用を請求する、一般廃棄物収集運搬業許可を受けていない違法・悪質な業者が存在します。自治体のホームページに許可を受けた業者が掲載されている事がありますので、不要品回収業者を選ぶ際には調べてみましょう。
遺品整理業者・不要品回収業者はリサイクルできるものを買い取り、有料で処分するものと相殺して料金を計算する会社も多くあります。出張費用については別途料金がかかる業者が多いため、あらかじめ多めに費用を準備しておくことが大事です。
3.実家売却で遺品整理を行う際の注意点
遺品整理を行う際には以下の2点に注意しましょう。
3-1.遺言書を発見した時には開封しない
実家で遺言書を発見した時には、勝手に開封してはいけません。遺言書には自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言の3種類があり、公正証書遺言は基本的に公証役場に保管されているため、自宅にある遺言書は自筆証書遺言又は秘密証書遺言です。
自筆証書遺言・秘密証書遺言は家庭裁判所で偽造・変造を防ぐ検認の手続きを行う必要があります。開封した場合には5万円以下の過料の対象となってしまうことがありますので注意しましょう。
3-2.資産性のある遺品の取り扱いは相続人全員で相談する
アンティークで高額な家具、骨とう品や美術品・貴金属など資産として価値のある遺品が見つかる事があります。資産性の高い遺品を相続財産に含めるか否かは、相続税や遺産分割にも関わりますので相続人全員で相談して取り決めましょう。
4.まとめ
相続と実家の売却の流れ、遺品・家具を処分するタイミングや手順・費用、注意点を解説してきました。
実家の遺品・家具を処分するにあたって業者に依頼するか、自力で行うかはケースバイケースです。実家との距離や物の多さなどを考慮した上で相続人や関係者で相談して決定しましょう。
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田中 あさみ
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