築古物件の瑕疵担保責任、民法改正による影響は?対処方法も解説

相続した不動産を売却したものの、その不動産に瑕疵が見つかった場合は、瑕疵担保責任を追及される可能性があります。

瑕疵の内容によっては、損害賠償を請求する、買主が目的を達成できない場合は契約解除のいずれかで対応することになりますが、瑕疵担保責任とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

今回は、築古物件の瑕疵担保責任と対処方法、民法改正による影響を解説します。

目次

  1. 瑕疵担保責任とは
    1-1.隠れた瑕疵に限定される
    1-2.損害賠償と契約解除が認められる
  2. 民法改正で瑕疵担保責任から契約不適合責任へ
    2-1.隠れた瑕疵に限定されない
    2-2.追完請求と代金減額請求が加わる
  3. 3.買取であれば瑕疵担保責任を負わずに済む
  4. 4.まとめ

1.瑕疵担保責任とは

売買契約を締結して目的の物件を取得したにもかかわらず、その物に瑕疵(欠陥)があったとします。それを売主に伝えたものの、「既に売却が完了しているので自分に責任はない」と言われてしまうと、買主は安心して買い物することができません。

そこで売買契約上で結ばれているのが瑕疵担保責任です。瑕疵担保責任は、売買契約における目的物が本来は有しているはずの品質や性能を欠いている場合に買主を守るため、売買契約書で定められます。

瑕疵担保責任が定められているおかげで、不動産や車など金額が大きな買い物の場合でも安心して買い物をすることが可能です。瑕疵担保責任の対象となる瑕疵や該当した場合にどのような責任を負うのかについて詳しく見ていきましょう。

1-1.隠れた瑕疵に限定される

瑕疵担保責任では全ての瑕疵が対象ではありません。瑕疵の内容は以下の4つに大きく分類されます。

  1. 物理的瑕疵
  2. 環境的瑕疵
  3. 心理的瑕疵
  4. 法律的瑕疵

物理的瑕疵とは、雨漏りやシロアリ被害、地盤沈下や土壌汚染など不動産に直接的な影響を与える瑕疵です。

環境的瑕疵とは、暴力団施設や火葬場、お墓などの険悪施設が付近にある状況を指します。

心理的瑕疵とは、殺人や自殺、火災で住人が死亡したなどが挙げられます。

法律的瑕疵とは、都市計画道路にかかっている、接道義務を満たしていないといった建築条件が付いている状況です。

これらの瑕疵を有していても、買主が知っていて購入した場合には、売主は瑕疵担保責任を負いません。瑕疵担保責任を負うのは、物件の引き渡しまでに売主が知らず、買主に説明できなかった「隠れた瑕疵」に限定されているという点に注意が必要です。

1-2.損害賠償と契約解除が認められる

現行の民法では、この瑕疵の発見から1年以内であれば損害賠償請求、瑕疵の内容が契約目的を達成できない瑕疵であれば契約解除を請求することが可能です。

しかし、発見から1年以内という期間は長く、売主にとって大きな負担となるため、買主の合意を得られた場合には期間を短縮することや免責することも認められています。

そのため、相続した不動産を売却する際に、売買契約書に瑕疵担保責任の免責を盛り込んでいれば売却後の不安を抑えることが可能です。しかし、瑕疵が潜んでいることを知りながら黙って売却した場合は免責されません。

後でトラブルに発展する可能性が高いため、瑕疵が潜んでいることが分かっている場合は必ずその旨を買主に伝えましょう。

2.民法改正で瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

2020年4月1日に新民法が施行されます。瑕疵担保責任という言葉は、隠れた瑕疵に限定されていましたが、隠れた瑕疵の判断が難しい部分が多く、実用的な考え方ではありませんでした。

そこで、新民法では、瑕疵担保責任を廃止して契約不適合責任を新設するということが既に決まっています。契約不適合責任も、売買契約における目的物が、本来は有しているはずの品質や性能を欠いている場合に買主を守るという点は同じです。

では、瑕疵担保責任と契約不適合責任は何が異なるのでしょうか。異なる点を詳しく見ていきましょう。

2-1.隠れた瑕疵に限定されない

瑕疵担保責任の対象は隠れた瑕疵に限定されているため、売主や買主が事前に知っていたかを証明するには高いハードルがありました。

しかし、契約不適合責任では、契約内容通りの物を売主が提供できていない場合には、必ず責任を負うことになります。「欠陥のない物件を提供する」という契約内容の物件に欠陥が潜んでいた場合には、売主は責任を負わなくてはなりません。

一方、「雨漏りが生じている」ということがあらかじめ契約内容に盛り込まれていて買主がそれに合意して契約に至った場合は、売主は責任を負わずに済みます。

契約内容に盛り込まれていない欠陥は、全て売主が責任を負うことになるため、以前よりも買主保護が強化されているという点に注意が必要です。

2-2.追完請求と代金減額請求が加わる

瑕疵担保責任の場合には、損害賠償請求が一般的で、目的を達成できないような事例に限り契約解除が認められました。契約不適合責任では、上記2つに追完請求と代金減額請求のさらに2つが加わります。

追完請求とは、目的物が抱えている欠陥を売主負担で補ってもらうことを指します。例えば、雨漏りが生じている場合は雨漏りの原因を特定して売主負担で修繕する、シロアリ被害が生じている場合は売主負担でシロアリ駆除を行うなどです。

代金減額請求は、追完請求したにもかかわらず売主が修繕を行わない、修繕できない欠陥を抱えている場合などに適用されます。追完しない代わりに代金減額に応じることで買主の損害を負担します。

追完請求や代金減額に売主が応じたからといって、損害賠償請求されないというわけではありません。追完請求や代金減額に応じても、欠陥が潜んでいることを調べるために行った調査費用や利用・転売によって生じたと考えられる利益などが存在している場合には、損害賠償請求が認められます。

以前よりも売主の負担が大きくなっているため、少しでも負担を軽減するためにも、事前の対策が重要です。事前の対策として、売却前に建物診断を行う、瑕疵担保保険に加入する、契約内容を明確に記載するなどが挙げられます。

特に相続した不動産は築年数が経過していて、欠陥が潜んでいる可能性が高いため、事前の対策をしっかりと行いましょう。

3.買取であれば瑕疵担保責任を負わずに済む

2020年4月1日の新民法の施行によって、売主負担がさらに大きくなると言えます。瑕疵が発見されそうな古い家を売却する場合、不動産会社へ買取を依頼するという方法を検討しても良いでしょう。

不動産を仲介で売却する際は、不動産会社に仲介を依頼して買主を探してもらいます。一方で買取とは、不動産会社に買主を探してもらうのではなく不動産会社が買主となってくれる売却方法です。

買取を行う不動産会社は、買い取った不動産を再販して利益を得るため、仲介で売却した物件価格よりも買取の価格が低くなるというデメリットがあります。しかし、不動産会社への売却なので、瑕疵担保責任を負わない、すぐ契約が成立する、仲介手数料が発生しないというメリットがあります。

そのため、「瑕疵担保責任を負いたくない」と不安を抱いている方は、買取を選ぶのも1つの選択肢と言えるでしょう。

4.まとめ

相続した不動産を売却する際は、築年数がかなり経過しているケースが多いため、瑕疵担保責任に注意が必要です。しかし、瑕疵担保責任は、2020年4月1日の新民法の施行で契約不適合責任へと変化するため、どのように変化するのか理解しておかなくてはなりません。

契約不適合者責任とは、契約内容に盛り込まれていない欠陥に対し、売主が補完、代金減額、損害賠償、契約解除に応じなければならないというものです。瑕疵担保責任と比べて、より買主保護が強化されており、売主負担が大きくなっています。

売主負担を少しでも軽減したい場合には、事前にどのような対策を練ればいいのかをよく理解してから売却を進めましょう。

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矢野翔一

矢野翔一

関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。HEDGE GUIDEでは不動産投資記事を主に担当しています。専門用語や法律が多く難しいジャンルですが分かりやすくお伝えしていきます。