マンション投資では運用して月々の賃貸収益を得るだけでなく、売却をして利益を得ることもできます。売却してより多くの利益を得るには管理状態や立地などが関係しますが、売却をするタイミングの違いによっても高く売却できたり、あまり高く売却できなかったりします。
今回は、投資用の区分マンション売却で成功するためには、売却タイミングはいつが良いのかについて考えてみたいと思います。
目次
1.東京オリンピックの開催前後
東京オリピックの開催が決まってから、都心の投資用マンションの価格は上昇してきましたので、今売却すれば利益が出る見込みが高そうだ、という方もいるでしょう。しかし、まだ東京オリンピックが終わるまでは上がり続けるかもしれない、と思うと売却のタイミングが難しいのではないでしょうか。
以下は不動産と収益物件の情報サイト「健美家」が調査した、全国の収益物件の価格と利回りの推移グラフです。こちらのグラフでは2013年3月から2019年3月までの収益物件の価格と利回りの推移がわかります。赤いグラフが価格を表したものになります。
*不動産と収益物件の情報サイト健美家調査「収益物件市場動向マンスリーレポート2019年3月期」から引用
このグラフから区分マンションの価格は2013年の3月から2015年7月くらいまで大きく上昇していることがわかります。2015年7月以降は1,300万円から1,600万円の価格帯の範囲を上下しており、直近の2019年3月時点の物件価格は2013年3月の倍近い数字となっています。
この点を踏まえると、東京オリンピックの前にマンションを売却しても、タイミングが早いというわけではないと考えられます。不動産市況はオリンピック前後に大きく変わる可能性もあるため、マンションの売却を考えている方は注意してチェックするようにしましょう。
2.金利の引き上げが決まった直後
マンション投資でローンを組んでいる場合は、家賃収入から管理費を支払ったりローンの返済をしたりして、残った資金をキャッシュフローとしてストックしていきます。そのため金利が上がるとキャッシュフローが減り運用に影響する可能性もあります。
売却を検討している際に金利の引き上げが決まったら、すぐに売却することで金利上昇の影響をあまり受けないようにすることができます。
変動金利の場合、一般的には半年に一度金利の見直しが行われていますが、金利が引き上げられた場合でも5年間は返済額が変わらないというルールがあります。また、5年後に返済額が増えても「1.25倍ルール」というものがあり、月々の返済額は1.25倍までしか上がりません(1.25倍ルールを取り入れていない金融機関もありますので注意が必要です)。
しかし、返済額が変わらないかわりに、返済金内訳の元金部分が減り利息部分が増えているという状態になりますので、長期の運用を考えた場合は注意が必要です。この状態が続くと元金が減っていくスピードが遅くなるために、将来的に完済の期日を迎えても、残りの元金の返済が発生するという可能性も出てきます。
このように、返済額が一気に増えることはありませんが、長い目で見ると金利上昇は将来的な収支に影響する可能性があります。金利の引き上げが決まった場合は、返済額に影響がない早い段階が売却のタイミングと言えるでしょう。
3.大規模修繕が行われる前(修繕積立金が上がる前)
大規模修繕を区切りにマンションの売却を考えるのも、ひとつの売却をうまく行うタイミングです。大規模修繕には大きな費用がかかりますが、大規模修繕計画で資金計画がうまくいっていなかったり、工事費が高騰したりしたことが理由で、修繕積立金だけでは費用が不足しているマンションもあります。
以下の図は国土交通省が作成した民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブックから引用したものです。図はRC造20戸(1LDK~2DK)の賃貸住宅の長期修繕計画はいつごろどのような修繕を行うべきで、いくらくらい費用がかかるかを表しています。
*国土交通省作成「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」から引用
こちらの図から、1戸当たりにかかる修繕費用は最初の修繕時は9万円くらいですが、その後は数十万円、21年~25年では100万円を超える試算がされており、相応の費用負担があることがわかります。
実際にこのガイドライン通りに管理されているのかを見てみましょう。
不動産・住宅情報サイトライフルホームズが調査した「マンション管理実態調査2」によると、修繕積立金がすでに築5年未満で値上がりしたという回答が25%、さらに築15年を超えると6割近くのマンションが修繕積立金を値上げしています。このことから築年数が経過するほど修繕費用が不足しているマンションが多くなり、最初に計画した修繕費用から不足していることが考えられます。
全てのマンションで修繕費用が不足しているわけではありませんが、大規模修繕を境に売却を検討している場合は、大規模修繕前のタイミングで売却した方が、出費が少なくて済む可能性が高いことが考えられます。
4.周辺の家賃相場が下がった時
周辺の家賃相場が下がった時も売却のタイミングと言えるでしょう。売却の際は不動産会社に査定を依頼して売却価格を決めますが、投資用の不動産の場合、その際の試算に主に使われる方法が収益還元法と言われる方法になります。
収益還元法には直接還元法とDCF法とがありますが、ここでは計算のしやすい直接還元法について解説します。直接還元法で用いられる計算式は、
物件価格=家賃収入÷利回り
という形となります。収益還元法の計算では、家賃が低いと物件価格も低くなりますので、実際に家賃相場が下がる前のタイミングで売却の活動を始めるのが、安易に価格を下げずに売却するコツとも言えます。物件価格の維持のためにも、日頃から周辺エリアの家賃相場の動きをチェックしておくようにしましょう。
5.マンションの売買繁忙期
マンションが大量に売買される繁忙期も狙い目です。以下のグラフは公益財団法人不動産流通推進センターが調査した「2018 不動産業統計集」によれば、2月や3月といった、一般的に転勤や進学などで引っ越しが多い時期がマンションの成約件数が多いことがわかります。成約件数が多い繁忙期は物件の競争力もあり、価格が安易に下がらないことが考えられます。
毎年このような傾向とは限りませんが、不動産会社に相談のうえ、このような時期に売却するのも価格を下げないコツだと言えます。
まとめ
マンション投資で売却をすべきタイミングについてご紹介しました。マンション投資では家賃収入と返済額の差が収益になりますので、金利や家賃の変動には注意が必要です。一方、金利や家賃の変動タイミングに合わせて売却をするのも、場合によってはメリットが大きくなるチャンスだと言えるでしょう。
また、大規模修繕やオリンピックなどの大きなイベント、繁忙期などの時期に合わせて売却をすることで、より良い条件で売却できたり、価格下落を免れられたりする可能性も高まります。そのような点も日頃から確認しながら売却活動をすることが大切です。
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西宮光夏
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