次世代に受け継ぎやすい住宅の特徴は?長寿命住宅の制度や間取りのポイントも

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地球環境への配慮という観点から、良いものを長く受け継いでいくという時代に移り変わっています。住宅も同様に、次世代に受け継いでいくことが求められるようになっています。

そこで今回のコラムでは、住宅を次世代に受け継ぐためのポイントを紹介していきます。長寿命住宅に必要な間取りや住み方といった要素についても解説していきます。

目次

  1. 次世代に受け継ぐための住宅のポイントとは
    1-1.耐久性が高い
    1-2.劣化を遅らせる工夫がされている
    1-3.耐震性に優れている
    1-4.変化に対応できる柔軟性のある間取り
    1-5.誰にでも受け入れられるデザイン
  2. 住宅を次世代に受け継ぐための管理・メンテンナンスのコツ
    2-1.適切な清掃
    2-2.定期的なメンテナンス
  3. 長寿命住宅に適用される「長期優良住宅認定制度」
    3-1.長期優良住宅認定の概要
    3-2.長期優良住宅の主な認定基準
    3-3.長期優良住宅の認定手続きの流れ
  4. まとめ

1 次世代に受け継ぐための住宅のポイントとは

住宅を次世代に継承するには、長く暮らすことができる住宅構造であることが重要になります。そこで、長寿命住宅に必要な構造上のポイントについて解説していきます。

1-1 耐久性が高い

住宅を長持ちさせるのに必要なのは、耐久性の高さです。そのためには、頑丈な基礎が欠かせません。2023年時点の耐久性が高い工法としては「ベタ基礎」と呼ばれる工法があります。

ベタ基礎とは床下の全体に鉄筋コンクリートを流して造る基礎のことで、住宅の荷重を底板全体で受け止めることができるため、より耐久性が高まるのです。また基礎の最上部のところを立ち上がりと言いますが、立ち上がりの幅は120mmが基準となっています。(※国土交通省「建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件」)

なお、これは最低基準であるため150mmなどそれ以上の幅を設けることでより頑丈な基礎にすることができます。ベタ基礎と立ち上がり部分を鉄筋で緊結することで、地面からの湿気を防ぐことも可能になります。

1-2 劣化を遅らせる工夫がされている

耐久性にも関わることですが、住宅の劣化を早めてしまう主な要因は腐食を引き起こす湿気やシロアリなどの害虫類です。これらを防ぐことが重要で、カビやダニが発生しにくいヒノキ材などを使用することで、防腐や防蟻効果などが期待できます。また含水率を下げた木材を使用することで、反りやねじれ、割れといった経年劣化のリスクを低下させることもできます。

一方、基礎部分の換気性能も重要です。土壌面から水蒸気が発散されるためで、床下の換気性能が低いと逃げ場を失った水蒸気によって建物に湿害が起きてしまうのです。

近年のトレンドは、土壌面からの水蒸気をシャットアウトするために、通気パッキンなどを採用することです。結露や湿気を抑えることで、カビの発生や木材の腐食などを防ぐことができ、湿気を好むシロアリの発生も抑制することができると考えられます。

1-3 耐震性に優れている

日本は地震大国と言われますが、地震が起きると住宅が揺れるため、たわんだり、狂いが生じることで建物の寿命を早めてしまうことになります。そのため耐震性を優先するのであれば、鉄筋コンクリート(RC)造、重量鉄骨造、軽量鉄骨造などを選択することになります。

一方、木造住宅の場合は、木造軸組工法と木造壁式工法(ツーバイフォー)という2つの工法がありますが、耐力壁を用いているツーバイフォーの方が耐震性は高くなります。

ただし、ハウスメーカーや工務店などでは耐震性を高める取り組みを独自に行っていることがあります。木造軸組構法にツーバイフォーの良さを組み込んだ工法を独自に開発して、採用しているケースもあります。

住宅を次世代に受け継ぐためには、ハウスメーカーや工務店に工法や耐久性への取り組みなどについて聞き、慎重に選ぶことも大切な視点です。

1-4 変化に対応できる柔軟性のある間取り

次世代に住宅を継承することを前提に間取りを考えるのであれば、将来の家族形態を予想して間取りを検討する必要があります。予想通りになるとは限らないため、家族の要望に柔軟に対応できるように後でリフォームしやすいような間取りにしておくことが重要です。

例えば、部屋を多く作っておき、必要に応じて収納部屋やウォークインクローゼットにリフォームするといった方法も考えられます。反対に、部屋を多くするよりはリビングを広くし、必要になったら仕切りを設けるといった考え方もあります。天井を高くしておくことも間取りを考える際のポイントの一つです。天井が高いと、リフォームをする際の制限が少なくなることも覚えておきましょう。

1-5 誰にでも受け入れられるデザイン

世代を超えて受け継がれる住宅には多様な人が住むと考えられるため、偏ったデザインは避けた方がいいでしょう。木目調を取り入れたり、目にやさしい色使いにすると、リラックスできる空間になります。使用する素材も、珪藻土や無垢材などできるだけ自然のものを使用し、体にも心にもやさしい空間にするように心がけしましょう。

また子どもや年配者も住むことが想定されるため、バリアフリー化も視野に入れておくことが重要です。段差をなるべく減らし、設備機器の高さを低くするなどで室内の安全性を高めることが期待できます。

2 住宅を次世代に受け継ぐための管理・メンテンナンスのコツ

住宅を次世代に受け継ぐには、住宅の劣化を早めてしまわないよう住み方にも気を付ける必要があります。詳しく見ていきましょう。

2-1 適切な清掃

住宅を長寿命化させるには、日常的な清掃が欠かせません。綺麗にすることで劣化を遅らせることができるのに加えて、床や壁、設備機器などの状態を確認することができます。

特に気をつけたいのが水回りのトラブルです。水漏れがあると構造体の腐食につながるためです。水漏れが起きないように日常的に清掃をし、異常がないかどうか確認することが大切なのです。

頻繁に行うわけではありませんが、外回り部分の清掃も慎重に行いましょう。雨樋が詰まっていたり、ひび割れを起こしていると、浸水が発生する可能性があるからです。また、敷地内に陥没がある場合は、給排水管設備にトラブルが起きていることも考えられます。こうした知識を持つことも、住宅の長寿命化に役立ちます。

2-2 定期的なメンテナンス

適切な時期に点検を行い、状態に合わせてメンテナンスをすることも住宅の長寿命化には不可欠です。特に気をつけたいのが外壁や屋根の状態です。10〜20年程度を塗装替えの目安として適切なメンテナンスをしないと、雨水の浸水などを招いてしまうことになります。

また、防水のメンテナンスも大切です。防水の種類によって劣化のスピードが異なることも注意しましょう。防水は主に「ウレタン防水」「シート防水」「アスファルト防水」の3つの種類があり、下記のように耐用年数が異なります。

防水の種類 耐用年数
ウレタン防水 8〜10年
シート防水 10〜15年
アスファルト防水 15〜25年

このほか玄関扉や窓のサッシなども点検し、必要に応じてメンテナンスや交換を行うことで、長寿命化につなげることができます。

3 長寿命住宅に適用される「長期優良住宅認定制度」

これまで、住宅を次世代へ継承するためのポイントについて紹介していきましたが、「長期優良住宅認定制度」という国の制度もあります。

長く使用することができる住宅を認定する制度で、具体的な認定基準が示されています。長期優良住宅認定を受けた住宅であれば、次世代に受け継ぎやすい住宅のポイントを備えていると考えられます。詳しく見ていきましょう。

3-1 長期優良住宅認定の概要

長期優良住宅とは、長期にわたって良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅を指します。「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいて認定する制度で、一般社団法人住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の概要について」によると、大きくわけて以下の5つの措置が講じられていることが認定基準となります。

A.長期に使用するための構造及び設備を有していること
B.居住環境等への配慮を行っていること
C.一定面積以上の住戸面積を有していること
D.維持保全の期間、方法を定めていること
E.自然災害への配慮を行っていること

※引用:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「長期優良住宅認定制度の概要について

長期優良住宅の認定を受けた住宅は、2021年度末で累計1,357,772戸となっています。2021年度は一戸建てが118,522戸、共同住宅では3,215戸が認定され、新築住宅の4戸に1戸は長期優良住宅の認定を取得しています。

3-2 長期優良住宅の主な認定基準

長期優良住宅の認定を受けるためには、認定基準を満たす必要があります。新築住宅の場合は8、アパートなどの共同住宅の場合は10の認定基準があります。詳しく見ていきましょう。

項目 内容
劣化対策 数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できることが認定基準。具体的には劣化対策等級(構造躯体等)等級3が必要。木造の場合では、床下空間有効高さの確保や、床下および小屋裏に点検口を設けることなどが要件になっている。
耐震性 大規模な地震が発生しても継続的に利用できるよう、損傷のレベルを低減できるように強度を高めることが認定基準。具体的には、耐震等級(倒壊等防止)等級2や、免震建築物であることなどが要件となっている。
省エネルギー性 認定基準は、必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていることとなっている。具体的には、断熱等性能等級5かつ一次エネルギ消費量等級6の基準をクリアしていることが要件。
維持管理・更新の容易性 構造躯体に比べて耐用年数が短い設備配管について、点検や清掃、補修、更新といった維持管理を容易に行うための措置が講じられていることが認定基準となっている。新築住宅の場合、維持管理対策等級(専用配管)等級3が要件となっており、共同住宅の場合はさらに維持管理対策等級(共用配管)等級3、更新対策(共用排水管)等級3も満たす必要がある。
可変性(共同住宅のみ) 居住者のライフスタイルの変化に合わせて、間取りの変更ができるような措置が講じられていることが基準となっている。共同住宅と長屋にのみ課せられている認定基準で、具体的には躯体天井高さが2,600㎜以上となっている。
バリアフリー性(共同住宅のみ) 「可変性」と同様に、ライフスタイルの変化に合わせられるように、バリアフリー改修に対応できるようなスペースが確保できていることが認定基準となっている。具体的には、高齢者等配慮耐久等級(共用部分)等級3をクリアしていることが要件。適用になるのは共同住宅のみ。
居住環境 良好な景観の形成や、その他の地域における居住環境の維持・向上に配慮されたものであることが認定基準となっている。地区計画、景観計画、建築協定、景観協定などの区域内にある場合は、これらの内容に即した建物が要件となる。
住戸面積 良好な居住水準を確保することを目的に、必要な規模の確保のために設けられた認定基準。基準は戸建て住宅が75㎡以上、共同住宅が40㎡以上となっている。2022年9月以前に建てられた共同住宅の基準は55㎡以上で、条件が緩和されて認定が受けやすくなっている。
維持保全計画 将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていることが認定基準となっている。対象となるのは、構造耐力上の主要な部分や、雨水の侵入を防止する部分、給排水設備など。また計画を策定するだけではなく、建築時に定めた時期と内容に則って点検を実施することも必要。
災害配慮 自然災害が発生するリスクのある地域の場合、そのリスクの高さに応じて、発生の防止または被害の軽減に配慮した措置を講じることが認定基準となっている。

※参照:同上

長期優良住宅に認定されると、住宅ローンの優遇金利が適用されるなどのメリットがあります。これらの基準をクリアできるような工法などを揃えているハウスメーカーや工務店では、長期優良住宅の認定取得も提案しています。

3-3 長期優良住宅の認定手続きの流れ

長期優良住宅認定制度は、着工前に申請を行うところからスタートします。具体的な流れは下記になります。

  1. 住宅性能評価機関に対して各種の図面や計算書などを提出し、長期使用構造等かどうか確認する
  2. 確認書が交付される
  3. 所管行政庁に認定申請を行う
  4. 認定を取得した後、工事を開始する
  5. 工事完了後に維持保全計画に基づいて点検を行う
  6. 必要があれば調査、修繕、改良を行う
  7. 記録を作成し、保存をする

維持保全の期間は30年以上で、工事完了後10年以内ごとに点検と調査、改良を行い、住宅の状態を維持していきます。これによって住宅の長寿命化を実現させることができます。

まとめ

今回のコラムでは、世代を超えて住宅を継承する構造上のポイントとして、耐久性や耐震性、耐劣化性能などについて取り上げました。また、間取りやデザインの柔軟性が重要ということも紹介しました。

現在では建築技術の向上に加えて、環境負荷の観点からも長い使用に耐えられる住宅の需要が増してきています。このような背景の中、国土交通省が推奨する住宅の認定制度の一つとして、「長期優良住宅」という認定制度があります。

住宅を次の世代に受け継ぎたいという意向をお持ちの方、また環境負荷への配慮を行っていきたい方は、参考にしてみましょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。