相続不動産・空き家売却で2023年に知っておきたい制度情報や動向は?

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2023年は相続不動産・空き家売却に関連する制度環境が大きく変化する年です。今後、相続不動産・空き家売却の予定がある方は、制度の変化について正しい知識を得ておきましょう。

本記事では、相続不動産・空き家売却で2023年に知っておきたい制度情報や動向について解説していきます。

目次

  1. 2023年以降の相続不動産・空き家売却に関連する制度環境の変化
  2. 2023年に知っておきたい相続不動産・空き家売却に関連する制度や動向
    2-1.相続した空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除
    2-2.相続登記の義務化
    2-3.共有不動産の利用・変更の円滑化
    2-4.相続土地国庫帰属制度の創設
    2-5.マンション管理計画認定制度の本格スタート
  3. まとめ

1.2023年以降の相続不動産・空き家売却に関連する制度環境の変化

2023年以降、相続不動産や相続した空き家売却に関連する制度環境が変化することになります。

例えば、一定要件を満たす相続した空き家の譲渡所得から3,000万円を控除することができる特例措置は、2023年末までの適用となっています。

また、所有者不明土地問題を契機として改正された諸法律が2023年以降に施行時期を迎え、相続不動産の登記の義務化、共有不動産の利用・変更の円滑化などが始まります。法改正を機に、相続不動産の売却意識が高まったり、あるいは売却しやすくなったりすることが考えられます。

相続によって権利が複雑化していた不動産の流動性を高めるこれらの制度変化は、市場への物件供給が増えることで、住宅需要の少ないエリアでは物件価格の低下が起きる可能性もあるでしょう。

また、相続・空き家という観点ではありませんが、マンション管理適正化法の改正による管理計画認定制度も本格スタートします。認定を受けることによってマンションを差別化し資産価値を高めることができる可能性もあり、2023年は不動産に関連した諸制度の大きな変化があるということが言えます。

2.2023年に知っておきたい相続不動産・空き家売却に関連する制度や動向

2023年に知っておきたい相続不動産・空き家売却に関連する制度や動向は、次のようにまとめられます。

  • 相続した空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除
  • 相続登記の義務化
  • 共有不動産の利用・変更の円滑化
  • 相続土地国庫帰属制度の創設
  • マンション管理計画認定制度の本格スタート

以下で、それぞれの内容を詳しくみてみましょう。

2-1.相続した空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除

一定の条件に該当すると、相続した空き家を売却して利益が生じた場合、譲渡所得税の課税所得から3,000万円の控除を受けることができます。主な適用条件は、以下のようになっています。

  • 被相続人が一人で居住していたこと
  • 1981年5月31日以前築の一戸建てであること
  • 相続によって取得した人が、その土地建物を耐震リフォームするか、あるいは取り壊して相続日から3年以内に売却すること
  • 相続時から売却時まで空き家であること

この特別控除の適用を受けることができるのは、2023年12月31日までに売却した空き家となります。なお、相続で取得した不動産に自分が居住した後売却した場合は、譲渡所得税のマイホーム特別控除の適用を受けることができます。

※参照:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

2-2.相続登記の義務化

2024年4月1日以降、相続等による所有権移転登記が義務化されます。これは、所有者不明土地問題を契機として不動産登記法が改正されたことによります。具体的には、不動産を相続等により取得した相続人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならなくなります。正当な理由なく、申請しなかった場合、10万円以下の過料を課せられます。

相続登記の義務化に伴い、相続登記手続きが簡素化されます。相続人が、所有権の登記名義人について相続が開始した旨と自らがその相続人である旨を3年以内に登記官に対して申し出ることで、相続登記の申請義務を履行したものとみなされることになります。

※参照:法務省「令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化(※)されます!

2-3.共有不動産の利用・変更の円滑化

所有者不明土地問題を契機として民法の一部も改正され、2023年4月1日より、共有不動産の利用・変更が円滑化されます。改正によって、共有不動産に一定の短期賃借権等を設定する場合や軽微な変更をする場合には、共有持分の過半数で決定できるようになります。

また、所在等が不明であったり、賛否が不明であったりする共有者がいる場合、裁判所の決定を得て、共有持分の過半数で共有物の管理が決定できるようになります。

さらに、共有者の請求により、裁判所がその共有者に所在等不明共有者の持分を取得させ、またはその共有者に所在等不明共有者の持分を譲渡する権限を付与する旨の裁判ができる制度も新設されます。

※参照:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し

2-4.相続土地国庫帰属制度の創設

2023年4月27日より、相続土地国庫帰属制度が施行されます。この制度は、相続などにより取得した土地を国庫に帰属させることを可能にするものです。相続等により土地を取得した者が申請権者となり、法務大臣による要件審査・承認を経て、申請権者が10年分の土地管理費を納付することによって、相続した土地が国庫に帰属することになります。

ただし、国庫に帰属させることのできる土地には要件があり、建物がある土地や他人による使用が予定される土地のほか、崖、汚染のある土地などの、通常の管理または処分に過分の費用または労力を要する土地は対象となりません。

※参照:法務省「相続土地国庫帰属制度について

2-5.マンション管理計画認定制度の本格スタート

2023年4月から、マンション管理適正化法が改正され、地方公共団体が適切な管理計画を持つマンションを認定することができるようになりました。

適切なマンション管理計画の認定は、地方公共団体が策定したマンション管理適正化推進計画に基づいておこなわれることから、令和5年以降、地方公共団体の計画策定が進み次第、本格的に適切な管理計画を持っているマンションの認定がおこなわれるものとみられます。

マンション管理計画認定制度の本格スタートにより、マンションの管理が「見える化」され、管理面からマンションの資産価値の差別化につながるものと予測できます。

※参照:国土交通省「マンション管理の新制度の概要

まとめ

これまでは相続不動産の所有権が煩雑化していることにより、管理や売却などの適切な対応が出来ないというケースが少なくありませんでした。このような状況に対し、2023年以降、相続不動産や相続した空き家売却に関連する制度環境が変化していきます。

制度環境の変化をうまく活用し、相続不動産や空き家の売却をスムーズに進めることを検討してみましょう。

また、これまでよりも不動産の流動性が高まり、不動産供給によって市場が活発化することも期待されています。住宅需要の少ないエリアでは供給過多による不動産価格の下落などが起こる可能性もあるため、早いタイミングで不動産査定を受けるなど対策をしておきましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。