借地権・借家権を相続する手順・流れは?必要書類や事務的手続きの委託方法も

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相続において被相続人(亡くなった方)が土地や家を借りてる場合、相続人に借地権・借家権が引き継がれることがあります。

借地権・借家権は権利として相続が可能ですが、被相続人が亡くなったこと・相続人が権利を相続したことを家主・地主へ通知する必要があり、場合によっては契約書を作り直すことがあります。

本記事では借地権・借家権とは何か、相続の方法や手順、手続きの代行依頼について解説していきます。

目次

  1. 借地権・借家権とは
  2. 借地権・借家権を相続する方法
    2-1.土地区画整理事業を行っているエリアの相続は自治体に届出が必要
  3. 借地権・借家権を相続する手順
    3-1.遺言書又は遺産分割協議で相続人を決める
    3-2.地主又は家主に相続を通知
    3-3.場合によっては賃貸借契約書を作り直す
    3-4.双方が署名・押印を行う
  4. 名義変更手続きを委託する方法
  5. まとめ

1.借地権・借家権とは

借地権とは建物の所有を目的とした権利を指します。例えばAさんがBさんと契約を結び、Aさんから土地を借り土地の上に家を建てた場合、Bさんは借地権を保有している事になります。

借地権の中には、土地を利用できる物的な権利(地上権)と、賃借権と呼ばれる賃貸借契約に基づく賃借人(住んでいる方)の債権的な権利があります。

借家権は生活に関わる家を借りる権利で、Aさんが家の所有者であるBさんと賃貸借契約を結び、家を借りた際にはAさんは借家権・賃借権(家を借りた人の権利)を持つ事になります。

借地権・借家権共に貸別荘などの一時使用が目的の契約は対象外ですが、基本的に借地権・借家権は相続の対象です。

借地権・借家権を相続した場合、相続人は被相続人(亡くなった方)から借地権・借家権を受け継ぎ土地や建物を借りる権利を所有する事になります。

なお、被相続人がマンション・アパートなど賃貸物件に住んでいた場合は賃借権を相続します。しかし、被相続人が1人で住んでいた場合や亡くなった事をきっかけに同居していた方が引っ越す時には、契約を解約することを検討して良いでしょう。

2.借地権・借家権を相続する方法

借地権・借家権は、損害賠償請求権・知的財産権などと同様に相続が認められている権利となりますので、相続にあたって地主の許可を得る必要はありません。被相続人が亡くなった事をきっかけに明け渡しを要求されることもありますが、要求に応じる必要もないという結論になります。

ただし、賃貸借契約書に基づき契約されているものとなりますので、賃貸借契約書の名義変更を行う必要があります。地主・家主の方に相続を通知し、書き換えをすることで名義が変更できます。

なお、地主から「名義書換(変更)料」を請求される可能性がありますが、相続の場合には支払う必要はありません。

ただし、民法第612条「賃借権の譲渡及び転貸の制限」では「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」と記載されています。売却や家屋の増改築・処分などでは地主の許可が必要となります。(※2021年10月28日時点)

借家権は被相続人(亡くなった方)と同居している場合は借家権、同居していない場合には賃借権を相続します。

2-1.土地区画整理事業を行っているエリアの相続は自治体に届出が必要

道路・公園・河川など公共施設を整備し、土地の区画を整え宅地の利用増進を図る「土地区画整理事業」の施行中であるエリアで、借地権・借家権の相続を行った場合には自治体に手続きを行う必要があります。

所定の申告書に必要事項を記入し、相続人全員の印鑑登録証明書、被相続人及び相続人全員の除籍謄本・戸籍謄本などの添付書類を提出することで手続きは完了します。自治体によって対応が異なりますので、手続きを行う際には役所に問い合わせてみましょう。

土地区画整理事業を行っているエリアは自治体のホームページに掲載されていることがありますが、不明な場合には管轄の役所に尋ねてみましょう。

3.借地権・借家権を相続する手順

借地権・借家権を相続する手順は以下の通りです。

  1. 遺言書又は遺産分割協議で相続人を決める
  2. 地主又は家主に相続を通知
  3. 場合によっては賃貸借契約書を作り直す
  4. 双方が署名・押印を行う

3-1.遺言書又は遺産分割協議で相続人を決める

借地権・借家権を相続する人・割合などを遺言書や遺産分割協議によって決定します。

遺言書があり、相続人・割合が指定されている場合には基本的に遺言書通りに相続を行い、遺言書が無い場合又は遺言書に借地権・借家権に関する記載がない時には遺産分割協議にて相続人や割合を決定します。

遺産分割協議は相続人全員で行い、一人でも欠けている場合や反対意見がある時には成立しません。全員が合意した内容で相続を行います。なお、遺産分割協議で全員の合意が得られた際には、遺言書の内容と異なる分割を行っても問題ありません。

3-2.地主又は家主に相続を通知

土地又は家の所有者である地主・家主に、被相続人が亡くなったため相続人が相続を行う旨の通知を行います。電話や手紙など方法は自由ですが、相手の都合を考慮した連絡方法が望ましいと言えます。

また、相手が古くからの知り合いであり、「こちらで書き換えておく」と言われた場合には契約書を作り直す必要がない、という判断を行うケースもあります。しかし、後のトラブルを避けるためにも、できるだけ賃貸借契約書を作り直しておくことを検討しておきましょう。

3-3.場合によっては賃貸借契約書を作り直す

契約者を被相続人から相続人に変更した賃貸借契約書を作成します。

被相続人と地主・家主が賃貸借契約書を交わしており、契約内容に変更がない場合には借地人・借家人・賃借人の名前のみを相続人に変更します。契約期間や条件などを変更したい場合には、双方で話し合い合意をした上で契約書の内容を決定します。

3-4.双方が署名・押印を行う

契約書の最後に賃貸人(貸す人)と借地人・借家人・賃借人など借りる人の署名・押印欄を設け、双方が署名・押印を行い一通ずつ保管します。

以上で契約変更手続きは終了となります。

4.名義変更手続きを委託する方法

契約書の作成や家主・地主との連絡の代行など手続きの代行を依頼したい場合には、弁護士や司法書士などの専門家に依頼します。

料金はや事務所によって異なりますが、5~10万円程度が相場と言えるでしょう。ただし借地権・借家権の評価額によっては数十万円かかる可能性があります。

遺産分割協議書の作成といった他の相続手続き代行も依頼する事が可能です。専門家に依頼する際には、料金や対応など複数の事務所を比較・検討した上で依頼先を決定しましょう。

まとめ

借地権・借家権を相続する際には、遺言書や遺産分割協議で相続人を決定、家主・地主に連絡を行い必要に応じて契約書を作り直します。

手続きの代行は弁護士・司法書士などの事務所に依頼します。複数の事務所を比較することでより良い依頼先を見つけられる可能性が高くなります。

この記事を参考に借地権・借家権の概要や相続の流れを知り、実際の場面で活かしていきましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。