相続不動産の売却、遺言執行者はどんな時に必要?売却手順と注意点を解説

不動産を相続する際、被相続人の遺言が残っている場合があります。資産は遺言に則って相続人に相続されることとなりますが、被相続人のその他の資産状況や、相続人同士の関係性によってスムーズに進まないケースがあります。

遺言執行者は、このような不動産を含む資産の相続を遺言に則り、スムーズに実行する役割を持っています。

しかし、遺言執行者が不動産売却に慣れた専門家とは限らないため、相続不動産を売却するのであれば通常の不動産売却とは異なる注意点があります。

この記事では、相続不動産を売却するにあたって遺言執行者の必要性、売却の手順や注意点について詳しく解説していきます。遺言執行者による相続不動産の売却を検討されている方はご参考下さい。

目次

  1. 不動産相続、どんな時に遺言執行者が必要になる?
    1-1.遺言執行者とは
    1-2.遺言執行者を選任する必要性
    1-3.清算型遺贈について
    1-4.遺贈と相続の違い
  2. 遺言執行者による不動産売却の手順
    2-1.遺言執行者の就任
    2-2.相続人への遺言執行者の通知
    2-3.財産・相続人の調査
    2-4.財産目録の作成・交付
    2-5.不動産の所有権移転登記
    2-6.不動産の売却
    2-7.清算金が分配され、遺言執行者の業務完了
  3. 遺言執行者による不動産売却の注意点
    3-1.遺言執行者が不動産売却に慣れた専門家とは限らない
    3-2.譲渡所得税がかかる
  4. まとめ

1.不動産売却でどんな時に遺言執行者が必要になる?

不動産を相続する際、遺言の有無や相続する資産の状況によって遺言執行者を専任するケースがあります。

遺言執行者の概要や、遺言執行者が必要になる状況について詳しく見て行きましょう。

1-1.遺言執行者とは

遺言執行者とは、被相続人の残した遺言の内容を実行する人のことです。

遺言を書く人は自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という3つのいずれかの方式の遺言で遺言執行者を指名します。

遺言で遺言執行者が指定されていない場合や、遺言執行者が亡くなってしまった場合には相続人の間で相談して決めるか、家庭裁判所に申し立て、遺言執行者を選任することとなります。

また、第三者に委託する事も可能で、弁護士や行政書士などの専門家に依頼すると相続人同士で争うことなく相続を進められます。

1-2.遺言執行者の選任が必要性となるケース

遺言書が無い場合や、相続人が一人で遺言の内容が「不動産の相続のみ」といった簡潔な内容である場合は、遺言執行者を置かず相続人が手続きを行っても問題ありません。

遺言執行者を置かなければいけないケースとして、主に下記の3つの事例があります。

  1. 子供を認知する時
  2. 相続人の廃除
  3. 廃除の取り消し

上記の3つの例に当てはまらず不動産の相続のみを行う場合、相続の際に遺言執行者を選任する必要はありません。

しかし、相続人が高齢者や遠方に住んでいる場合、煩雑な業務を行うのが難しくなってしまったり、遺言の内容によっては親族同士でトラブルに発展してしまう可能性があります。

このような場合には遺言執行者を専任し、作業をスムーズに進めることを検討しても良いでしょう。

また、遺言で「清算型遺贈」を指定されている際には、遺言執行者を選任することを検討してみましょう。

清算型遺贈では不動産など遺産の売却や登記手続き、清算金の分配などを行うこととなりますが、手続きの負担が大きく専門知識も必要となるため、相続問題に詳しい弁護士へ相談してみると良いでしょう。

1-3.清算型遺贈について

清算型遺贈とは、不動産を含む相続財産を売却し、経費を差し引いた売却代金を相続人や第三者に遺贈する方式のことです。

一般的に、主な相続財産が不動産で相続人全員に均等に分配する事が難しい場合や、有価証券などの財産をキャッシュで遺したい際に、清算型遺贈を検討するケースがあります。

清算型遺贈には現金で財産を受け取る事が出来る、相続人に公平に財産を分配できるメリットがありますが、遺言執行人を弁護士や司法書士に依頼した場合に報酬の費用がかかる点はデメリットとなります。

1-4.遺贈と相続の違い

清算型遺贈は「遺贈(いぞう)」であり「相続」とは異なります。

「相続」は故人が所有していた財産の権利や義務を一定の関係がある人に移転する事で、配偶者や子・孫、兄弟姉妹などの法定相続人のみが相続をする事ができます。

対して「遺贈」は遺書により財産を無償で譲るという意味で、譲る相手に制限がありません。ボランティア団体や非営利団体など、団体に贈る事も可能です。

清算型遺贈においても法定相続人以外に財産を譲るケースが存在しますが、遺贈を受け取る方は全て「受遺者」と呼ばれます。

2.遺言執行者による不動産売却の手順

遺言執行者による不動産を売却する手順を見ていきましょう。以下、財産を受け取る方は法定相続人を含め「受遺者」という表現になっています。

  1. 遺言執行者の就任
  2. 相続人への遺言執行者の通知
  3. 財産・相続人の調査
  4. 財産目録の作成・交付
  5. 不動産の所有権移転登記
  6. 不動産の売却
  7. 清算金が分配され、遺言執行者の業務完了

それぞれ詳しく解説していきます。

2-1.遺言執行者の就任

遺言で遺言執行者が指名されている場合は指名された者が就任します。指名されていない場合は相続人の間で協議して遺言執行者を決めるか、家庭裁判所に申し立てます。

申し立てる事ができるのは、相続人や遺贈を受けた者、遺言者の債権者などの利害関係がある方に限定されているので注意しましょう。

2-2.相続人への遺言執行者の通知

遺言執行者が就任通知書を作成し、相続人に送付します。就任の通知は遺言執行者の義務として民法で定められています。

2-3.財産・相続人の調査

現金・有価証券を始め不動産や自動車や貴金属・骨董品等の動産、ゴルフ会員権など故人が遺した財産を全て調べます。上記のようなプラスの財産だけでなく、負債や売掛金等のマイナスの財産も含まれます。

相続人の対象や範囲を調べ、戸籍や印鑑証明書等の必要書類を揃えます。

2-4. 財産目録の作成・交付

財産の一覧表となる財産目録を作成し、相続人に交付します。財産目録は財産を遺贈する上で重要な種類ですので、公証人に作成を依頼、または相続人立ち会いのもとで作成する事が可能です。

2-5.不動産の所有権移転登記

遺された不動産を第三者に売却する場合は、一旦相続人全員の所有となりますので法定相続人全員の名義で法定相続分により「相続」として所有権移転登記を行います。

所有権移転登記は遺言執行者が代理で法務局に申請する事が出来ます。

2-6.不動産の売却

不動産売却は遺言執行者が行うこととなります。遺言執行者は買主を登記権利者、相続人を登記義務者として「売買による所有権移転登記」を法務局に申請します。登記は遺言執行者と買主が共同で行うことができます。

また、財産の中に債務がある場合は売却代金から弁済することとなります。

2-7.清算金が分配され、遺言執行者の業務完了

不動産会社への仲介手数料や登記費用など、遺言の執行にかかった必要経費と遺言執行者への報酬を売却代金(売却代金から債務を弁済した場合は残った代金)から支払います。

遺言執行者への報酬は遺言書に記載があればその通りに従い、記載がない場合は遺言執行者が家庭裁判所に申し立てて報酬額を決める事が可能です。

不動産売却の売却益から経費と報酬を差し引き、残りのお金を受遺者に渡します。受遺者が複数いる場合は、遺言執行者が清算金を分配することとなります。

遺言執行者は遺言に書いてある内容を全て実行した後、業務完了報告を行い、文書により受遺者に通知します。

3.遺言執行者による不動産売却の注意点

遺言執行者による不動産売却では、通常の不動産売却とは異なる注意点があります。

それぞれ詳しく見て行きましょう。

3-1.遺言執行者が不動産売却に慣れた専門家とは限らない

弁護士や司法書士などに遺言執行者を選任した場合、希望通りの売却価格とならず、売却がスムーズに進まない可能性があります。弁護士や司法書士は法律の専門家であり、不動産売却の知識や経験が必ずしも備わっているとは限らないためです。

より良い条件で不動産を売却するためには、遺言執行者とコミュニケーションを取り、希望の売却条件について事前に相談しておきましょう。

相談に備えて、あらかじめ市場価格の調査・不動産会社に査定を依頼する等の事前準備をしておく事も重要です。

また、相続を専門としている弁護士や司法書士であっても、提携先の不動産会社を限定している可能性があります。査定依頼を1社に限定してしまうと、査定価格や査定の根拠を比較できず、判断が難しくなってしまいます。

そこで、価格査定を依頼する際は、不動産一括査定サービスの利用を検討してみましょう。物件登録を一度行うと、複数の不動産会社から査定結果を受け取ることができるため、効率的に複数社の査定結果を比較することが可能です。

不動産一括査定サービスによって登録されている不動産会社が異なります。無料で登録が行えるため、複数のサイトに物件登録することも検討してみましょう。

【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

3-2.譲渡所得税がかかる

不動産を売却した時は売却利益に譲渡所得税が課されます。清算型遺贈では不動産の名義を一度法定相続人に移すため、法定相続人が譲渡所得税を納めなくてはいけません。

譲渡所得税は清算金の分配が終わった年の翌年に確定申告で納付しますので、法定相続人ではない受遺者から税金を回収できないケースが存在します。

上記のようなトラブルを防ぐために、あらかじめ譲渡所得税を執行費用として売却費用から差し引いてもらうよう遺言執行者に伝えておきましょう。

まとめ

遺言執行者による不動産売却の手順や注意点をご紹介しました。

「遺言執行者」「清算型遺贈」といった単語は日常で耳慣れないかもしれませんが、知識を身につけることで相続人の間のトラブルも回避する事ができます。

相続を専門とする弁護士などの専門家にアドバイスを受けつつ、後のトラブルとならないよう不動産売却をスムーズに行いましょう。

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田中 あさみ

田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。