子供の存命中は、子供が法定相続人(民法で定められた相続人)であり、法律上孫に相続の権利はありません。孫に不動産を相続するにはどうすれば良いのか、また孫へ相続を行う際にどのような点に注意すれば良いか、悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では孫に不動産を相続する方法やメリット・デメリット、注意点を解説していきます。
※本記事は2021年11月25日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- 孫に不動産を相続する方法・ケース4つ
1-1.子供が亡くなっており、孫が代わりに相続
1-2.遺言書で孫を相続人として指定する
1-3.生前贈与を行う
1-4.孫と養子縁組を組む - 孫に不動産を相続するメリット・デメリット
2-1.孫に不動産を相続するメリット
2-2.孫に不動産を相続するデメリット - 孫に不動産を相続する際の注意点
3-1.相続税の2割加算
3-2.孫が未成年者である時には法定代理人が必要となる
3-3.不動産を売却して現金化する場合と比較する - まとめ
1.孫に不動産を相続する方法・ケース4つ
孫に不動産を相続するケースや方法は主に以下の4つとなります。
1-1.子供が亡くなっており、孫が代わりに相続
民法では被相続人との関係によって法定相続の順位や割合が決まっており、順位は以下の通りです。
法定相続人の順位
法定相続の順位 | 相続人 |
---|---|
常に相続人になる | 被相続人の配偶者 |
第1順位 | 被相続人の子 |
第2順位 | 被相続人の親 |
第3順位 | 被相続人の兄弟姉妹 |
法定相続割合
相続人 | 配偶者の割合 | その他の割合 |
---|---|---|
配偶者と子供 | 2分の1 | 全員で2分の1 |
配偶者と親 | 3分の2 | 全員で3分の1 |
配偶者と兄弟姉妹 | 4分の3 | 全員で4分の1 |
※参照:国税庁「相続人の範囲と法定相続分」
孫は子供が亡くなっている際に「代襲相続」として相続することができますが、子供が生きているうちには子供が第1順位となります。
配偶者の最低限の取り分である遺留分(上記の場合は相続財産の1/4)を侵害せず、子供が亡くなっており遺産分割協議で全員が合意している時、孫が相続する事は可能です。
ただし、配偶者は常に相続人となり、相続人が配偶者と子供の場合には配偶者が1/2、子供(代襲相続では孫)が全員で1/2となりますので不動産の価額やその他の相続財産の状況によっては相続できない可能性があります。
1-2.遺言書で孫を相続人として指定する
遺言書に孫を不動産の相続人として記載しておき「遺贈」する方法です。(法定相続人ではない場合には「相続」ではなく「遺贈」という呼び方になります。)
基本的に遺言書がある場合には遺言書通りに相続を行う事とされていますが、遺産分割協議で全員が合意した時、遺留分を侵害しているケースなどでは遺言書の内容通りで無くても構いません。
よって相続人が遺言書の内容を必ず実行するとは限りません。心配な方は弁護士・司法書士などの第三者を遺言執行者に選任しておくことを検討しておきましょう。
1-3.生前贈与を行う
生前、孫に不動産を贈与しておく方法です。贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの方法があり、暦年贈与では年間110万円までが控除対象となります。
一方、相続時精算課税を選択すると2500万円までが控除されますので、2500万円までの価額の不動産であれば贈与税を課されることなく贈与ができます。子だけではなく、孫への生前贈与にも適用可能な税制度です。(※参照:国税庁「相続時精算課税の選択」)
1-4.孫と養子縁組を組む
孫と養子縁組を組む事で「子供」として法定相続人となり、法定相続を行う事が可能となります。
一方、孫を養子にすることで、相続人の人数が増え相続税の基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)が増えますが、遺産分割のバランスが崩れ他の相続人が納得せずトラブルに発展してしまう事例があります。
特に遺留分を侵害している場合には、遺留分侵害額請求の申し立てをされる可能性があります。養子縁組は遺言書や生前贈与が出来なかった場合に、メリット・デメリットを踏まえ親族でよく話し合い検討した上で選択する方法と言えるでしょう。
2.孫に不動産を相続するメリット・デメリット
孫に不動産相続を行う主なメリットは相続税の課税が一度で済むこと、デメリットはトラブルに発展する可能性があることや手続き面の負担などです。
2-1.孫に不動産を相続するメリット
孫に不動産相続をするメリットは、相続税や贈与税の課税を一度にまとめられることです。
通常の相続であれば祖父母から親、親から孫へと相続され相続税が2回課されることになりますが、祖父母から孫に相続する場合は親を通さないため相続(贈与)税がかかるのは1回のみです。
ただし、相続財産の合計額が基礎控除額内(3000万円+600万円×法定相続人の数)である場合には、通常の相続過程であっても相続税は課されません。相続財産が控除枠内であれば、不動産を孫へ相続する税制上のメリットは薄いと言えるでしょう。(※参照:国税庁「相続税の計算」)
【関連記事】不動産の相続に強い税理士の探し方・選び方は?相場や相談方法も
2-2.孫に不動産を相続するデメリット
孫に不動産を相続する第一のデメリットは、相続トラブルに発展する可能性があることです。
被相続人の子供が存命中で法定相続人ではない孫が相続を行う際には、たとえ遺言書で指定されていても他の相続人に不公平感を与えてしまう可能性があります。
例えば子供に兄弟がおり、兄弟のうち兄の孫にだけ相続を行うケースでは弟や弟の配偶者・子供とトラブルになってしまう事があります。事前に家族間で相続財産の分配方法について協議することが大切です。
第二のデメリットは手続き面です。不動産の相続は必要書類を集め所有権移転登記の申請を行う必要があり、手続きの手間が孫に負担となってしまう可能性があります。
3.孫に不動産を相続する際の注意点
孫へ不動産を相続する前に確認しておきたい注意点について解説します。それぞれ確認しておきましょう。
3-1.相続税の2割加算
孫が養子となって相続を行う場合や、相続時精算課税制度で贈与を行った場合、財産を取得した孫には相続税の2割加算が行われます。(※参照:国税庁「相続税額の2割加算」)
ただし、子供(被相続人にとっての親)が亡くなっており、代襲相続で孫が相続する場合には2割加算は適用されません。相続対策として孫を養子にする予定の方は、2割加算をおさえておきましょう。
一方、子供が存命である場合には通常の相続過程を経ることで、3,000万円の基礎控除を受けることが可能です。税制上どちらにメリットがあるのかはケースバイケースとなるため、相続を専門としている税理士への依頼も検討しておきましょう。
例えば、「税理士ドットコム」は、全国5,900名の税理士の中から無料で希望に沿った税理士を紹介してもらえるウェブサービスです。複数の税理士を比較することができるうえ、「費用はいくら?」「どんな税理士を選ぶべき?」といった税理士を選ぶ際の相談も可能となっています。
3-2.孫が未成年者である時には法定代理人が必要となる
未成年者は基本的に遺産分割協議といった法律行為を行う事ができません。親(又は親権者)が法定代理人として代わりに協議を行う事になります。
親・親権者が不在である場合には、他の相続人や関係者などが家庭裁判所に申し立て「未成年後見人」を選任、後見人が孫に代わり遺産分割協議に参加、財産管理などを行います。
後見人に弁護士といった専門家が選ばれた場合、報酬は未成年者の財産から支払われます。
3-3.不動産を売却して現金化する場合と比較する
不動産相続が孫にとって負担となる、トラブルを引き起こす可能性がある時、非課税制度を活用し贈与を行う方法があります。
例えば「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」は一定の要件を満たすことで祖父母から孫に対する贈与にも適用され、最高3,000万円までは贈与税が控除となります。
その他、教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置・結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税措置などもあります。
不動産をそのまま贈与するよりも、売却して現金化することでより利用しやすい形で資産を渡すことができるケースもあります。また、実際に売却が明確に定まっていない時でも、売却した時の不動産価格を知っておくことで、財産をどのように分配するか判断するときにも役立ちます。
不動産価格を調査するのであれば、複数の不動産会社の査定価格を一括で比較できる不動産一括査定サイトが便利です。例えば、大手不動産会社6社に無料で査定依頼ができる「すまいValue」や、全国3100社以上と提携している「LIFULL HOME’S」などがあります。
以下、主な不動産一括査定サイトの一覧です。下記のサイトは悪質な不動産会社の排除を積極的に行い、全国エリアに対応している特徴があります。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
まとめ
孫に不動産を相続させる方法としては、遺言書で指定する、生前贈与を行うなどがあり、子供が亡くなっている際には代襲相続人として孫が相続する流れとなります。
孫が不動産相続をすることで、相続税の軽減が期待できるというメリットがありますがトラブルに発展する可能性や手続きが負担となってしまうことがあります。不動産相続のメリット・デメリットを把握し、デメリットが気になるケースでは売却して非課税制度を活用しながら現金を贈与することを視野に入れておきましょう。
この記事で孫へ不動産相続を行うメリット・デメリットを知り、今後に活かしていきましょう。
田中 あさみ
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