戸建住宅の資産価値が市場において何年程度まで評価されるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
資産評価については、金融機関において、建物部分の担保評価の際、原価法という評価方法を採用していることが大きく影響しています。
本記事では、金融機関の担保評価からみる戸建住宅の資産価値について説明していきます。その際、原価法において用いられる耐用年数の仕組みについても解説します。
目次
- 金融機関の担保評価からみる戸建住宅の資産価値と年数
1-1.土地と建物とを区別して評価する
1-2.原価法による建物評価において戸建の資産価値は22年
1-3.評価のポイント - 賃貸用不動産の場合、収益還元評価も考慮する
- 中古戸建住宅の建物評価を適切に評価しようという国の取組みも
- まとめ
1.金融機関の担保評価からみる戸建住宅の資産価値と年数
戸建住宅の資産価値を測る上、原則的には金融機関の担保評価方法が基準となります。不動産を現金一括で購入する方は少なく、多くの方が住宅ローンや不動産投資ローンなどのローン商品を活用して購入するためです。
金融機関が不動産投資ローンや住宅ローンを融資する際、審査基準となる要素として、物件の担保評価があります。担保評価に基づいてローンの融資額や融資年数、金利などの条件が変わってくるため、金融機関の担保評価が高いほど良い条件で売却しやすい物件ということになります。
以下で、まず、戸建住宅の資産価値を金融機関が評価する方法を、土地部分と建物部分について見ていきます。
その上で、建物部分を原価法で評価する際、再調達原価から控除される減価修正の仕組みについて、耐用年数の計算方法と併せて解説します。
1-1.土地と建物とを区別して評価する
戸建住宅の資産価値は、その価値評価の方法が土地と建物とで異なります。
土地の評価は、主に、取引事例比較法によって評価します。この方法は、取引事例を収集し、その取引価格について、個別事情や時点要因などを考慮し標準化します。
次いで、評価物件とその標準物件とを、地域要因、個別的要因の比較をおこなって、比準価格を求めていきます。実務的には、取引事例の代わりに、相続税路線価や公示地価などを用いて比準価格を求めることが多いといえます。
建物の評価は、主に、原価法によって評価します。この方法は、評価時点における再調達原価を求め、これに減価修正をおこなって、積算価格を求める方法です。
1-2.原価法による建物評価において戸建の資産価値は22年
それでは、原価法による建物評価は、どのような仕組みで算定されるのでしょうか。
建物評価の算定方法である再調達原価とは、その建物と同じ規模、構造、設備等を有する建物を、現時点で新しく建築したら建築費はいくらになるかを推測して算出します。建築費については、標準的建築費に対し、その建物の外観から品等格差率、規模修正率を評価し、それらを乗じて求める方式があります。
再調達原価から減算する減価修正は、新築建物から物理的・機能的・経済的要因による減価をおこなうことです。建物の摩滅や破損、老朽化等による物理的な減価のみならず、付近環境との不適合や類似不動産の需給動向の悪化等による経済的な減価も考慮します。
このような減価額を求める方法として主に用いられるのが、耐用年数法と呼ばれる方法です。耐用年数法とは、経過年数と経済的残存耐用年数の和として把握される耐用年数を基礎として、減価額を把握する方法です。次の算式によって、減価修正率を算出します。
減価修正率=1-(経済的耐用年数-経過年数)/経済的耐用年数
耐用年数は、木造の場合、国税庁が定める法定耐用年数22年を目安に、評価されることが多いといえます。
このように、原価法による木造建物評価において、減価修正が22年程度の耐用年数を目安におこなわれることから、木造戸建住宅の資産価値は、新築時から22年程度であるといえるでしょう。
※出典:国土交通省「不動産鑑定評価基準」
1-3.評価のポイント
土地の評価は、相続税の路線価評価による場合は、路線価の高い地域であることがポイントとなります。相続税の路線価評価については、国税庁の「路線価図」で確認することが可能です。
取引事例と比較する場合には、住宅地の場合は、居住の快適性が地域要因や個別的要因を評価する際のポイントとなります。こちらについては、取引事例の情報にアクセスできる不動産会社の査定を受けるのが良いでしょう。
なお、建物の評価では、減価修正をおこなうにあたり、物理的な減価のみならず、機能的、経済的要因による減価も考慮されるのがポイントといえます。すなわち、老朽化が進んでいなかったとしても、機能的に陳腐化していたり、他の競合不動産との比較において市場性が減退していたりする場合は、減価要因となります。
いずれにしても専門的な知識が必要となり、実際に売却できる価格については不動産市場の動向にも大きな影響を受けることになります。戸建住宅の資産価値を時価で把握していきたい場合には、戸建売却の専門性が高い不動産会社へ査定を依頼するのが有効です。
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2.賃貸用不動産の場合、収益還元評価も考慮する
戸建住宅が賃貸用不動産である場合、収益還元評価も考慮されることがあります。
収益還元法とは、その不動産から期待できる賃料などの純収益を将来にわたって予測し、その総和を推計することで不動産の価格を算定する方法です。
収益還元価格を算出するには、一期間の純収益を還元利回りによって割り戻して算定する「直接還元法」や、複数の期間の純収益をその発生時期に応じて現在価値に割り引いて合計する「DCF法」を用いる場合もあります。
賃貸用不動産の場合、取引事例比較法や原価法に加えて、収益還元法による評価も参考にするとよいでしょう。
3.中古戸建住宅の建物評価を適切に評価しようという国の取組みも
平成26年3月に、国土交通省は「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を取りまとめ、中古戸建て住宅の建物評価を、取引市場において適切に評価する仕組みを作るべきことを提言しています。
すなわち、中古戸建住宅の取引市場において、住宅の状態に関わらず、築後20~25年で建物の市場価値がゼロと評価される慣行を改め、良質な維持管理やリフォームが行われている住宅を適切に評価する仕組みを定着させようとするものです。
この指針では、原価法によって建物を評価する際、個別の住宅の状態に応じて、住宅の使用価値を把握し、減価修正すべきであると提案しています。その他、住宅を構成する各部位ごとに再調達原価を算出し、減価修正を施した上で評価することが適当であるとしています。
今後、このような国の取組みが市場に浸透してくれば、良質な維持管理やリフォームを施した戸建住宅の資産価値が、市場で適切に評価されるようになる可能性があるといえるでしょう。
まとめ
金融機関が融資審査の際におこなう担保評価では、木造戸建住宅の資産価値は、建物部分については、法定耐用年数の22年程度でゼロになるといえます。
これは、建物部分の評価は、原価法による再調達原価に基づいて算出されるものの、耐用年数を下に減価される仕組みになっているからです。ただし、土地部分については、取引事例との比較や相続税の路線価によって評価されることが多いでしょう。
賃貸用不動産については、収益還元評価も参考にされることから、賃料収入があれば高めに評価されることもあります。
国土交通省が、中古戸建住宅の建物評価を、市場において適切に評価する仕組み作りを進めており、今後、良質な維持管理やリフォームを施した戸建住宅の資産価値が、市場で適切に評価されるようになる可能性があります。こちらの動向についても注視されてみると良いでしょう。
佐藤 永一郎
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