夫婦の離婚、不動産を損せず財産分与する方法は?3つの分割方法を解説

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離婚時の財産分与で、不動産はどうやって分けるべきなのでしょうか?

不動産のような現物資産は、現物・代償・換価という3つの方法から、家庭の事情や分与に対する優先順位を考慮して選ぶ事になります。財産分与を行う前に、不動産の価格や名義、ローンの残債等を確認しておくことが重要です。

本記事では、離婚時において不動産を分与する前に確認しておくポイント5つと3つの分割方法、ケース別でそれぞれに適した分与方法をお伝えしていきます。

目次

  1. 財産分与の前に確認しておくポイント5つ
    1-1.財産分与の流れ
    1-2.親からの援助など「特有財産」が含まれていないか
    1-3.不動産の売却価格を査定する
    1-4.ローンの残債と売却価格の比較
    1-5.不動産の名義やローンの契約者の確認
  2. 不動産の分与方法、現物・代償・換価とは
    2-1.現物分割
    2-2.代償分割
    2-3.換価分割
  3. 現物、代償、換価、分与はどの方法が良い?
  4. まとめ

1.財産分与の前に確認しておくポイント5つ

離婚時の財産分与にあたって、分与の前に確認しておいたほうが良いポイントとして、本記事では下記の5点を挙げています。

  • 財産分与の流れ
  • 親からの援助など「特有財産」が含まれていないか
  • 不動産の売却価格を査定する
  • ローンの残債と売却価格の比較
  • 不動産の名義やローンの契約者の確認

それぞれのポイントについて詳しく見て行きましょう。

1-1.財産分与の流れ

離婚時の財産分与は、「公平」が原則となっていますが、一方が離婚後経済的な自立が難しい場合や慰謝料を含むケースでは双方が話し合った割合で分与する事になります。

離婚する際、話し合いで分与方法や分与割合を決める「協議離婚」、話がまとまらない時は家庭裁判所において調停で話し合う「調停離婚」、調停でも意見が別れた時に裁判官が審判を下す「審判離婚」があります。

その他、弁護士に相談を行い、裁判により分与を決める「裁判離婚」もあります。状況に合わせてそれぞれの手段を検討しましょう。

1-2.親からの援助など「特有財産」が含まれていないか

財産分与の対象は、「婚姻中に夫婦が二人で築いた財産」(共有財産)となり、親から相続した財産や結婚前から持っていた財産は「特有財産」と呼ばれ分与の対象外となります。

不動産の場合、「頭金を親に出してもらった」「土地は親が所有している」等のケースでは、該当する一部が特有財産となります。

頭金を親に出してもらった場合は不動産の価額から頭金部分を差し引き、残額分を2人で分与する形になります。土地を親が持っている際は建物部分のみを共有財産として分与します。

不動産だけではなく、他の財産にも特有財産が含まれている場合には共有財産を分割し、特有財産が含まれている場合は財産の総額から特有部分の価額を差し引き分与する、という流れとなります。

1-3.不動産の売却価格を査定する

不動産を分与する前に不動産の売却価格を査定し、資産価値を確認しておきましょう。

不動産の売却価格を知るためには、下記2つの方法があります。

  • 無料で不動産会社に査定を依頼する
  • 有料で不動産鑑定士に鑑定額を算出してもらう

無料で不動産会社に査定を依頼する

不動産会社による査定は費用がかからないというメリットがありますが、不動産会社によって価格にばらつきがあるというデメリットがあります。複数の不動産会社による査定を受け、査定結果を比較することが重要です。

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有料で不動産鑑定士に鑑定額を算出してもらう

一方、不動産鑑定士による不動産鑑定は、売買に関わらない客観的な不動産価格を知ることができるメリットがある反面、鑑定費用がかかるというデメリットがあります。

不動産鑑定の費用相場としては、低く見積もっても20万円以上かかる傾向にあります。この鑑定費用が捻出できるか、依頼する場合は費用負担をどのように分配するか、双方で話し合いをする必要があります。

1-4.ローンの残債と売却価格の比較

不動産にローンが残っている場合、ローンの残債と売却価格を比較し、下記どちらかの状態になるかを確認しておきましょう。

  • アンダーローン:不動産の売却価格>ローンの残債
  • オーバーローン:不動産の売却価格<ローンの残債

アンダーローンの場合は、売却価格からローンの残債を差し引いた価額を共有財産として分与します。

オーバーローンの不動産はマイナスの資産となり、財産分与の対象とはなりません。オーバーローンで家を売却したいケースでは、任意売却により家を売却すると損失が少なく済む傾向にあります。

【関連記事】ローンが残っている家は売却できる?売却の手順、オーバーローンの対策も

なお、不動産を売却せず継続して居住する場合には、家の所有権を持っており、ローンの契約者の方がローンを支払っていく形になります。ただ、こちらは家庭によって事情が異なるため、二人で話し合い臨機応変に対応していくと良いでしょう。

1-5.不動産の名義やローンの契約者の確認

不動産の名義やローンの契約者が誰になっているかを確認しておきましょう。

家を売却せずどちらかが住み続ける場合、住み続ける方と名義人・契約者が同じであればローンの返済問題を二人で話し合う事で分与が終わりますが、家の名義やローンの契約者と住む方が違う場合は注意が必要です。

住み続ける方と名義や契約が異なる場合は、法務局で所有権移転の登記や金融機関でローンの契約内容を変更することになります。

その他、例えば夫が主債務者で妻が連帯保証人、又は連帯債務者といった共有名義のケースでも契約を変更する必要があります。

住宅ローンの変更は、離婚した後には世帯収入が減るケースが多いことから、契約が難しい傾向があります。代わりの連帯保証人を立てる、別の財産を担保にする等の方法で契約変更を行いましょう。

2.不動産の分与方法、現物・代償・換価とは

不動産の分与として、「現物分割」「代償分割」「換価分割」という3つの方法があります。それぞれの分割内容や、メリット・デメリットを見て行きましょう。

2-1.現物分割

現物分割は不動産をどちらかが譲り受け、譲った方は不動産とは別の財産を受け取る方法です。例えば妻が不動産を分与された場合、夫は車や有価証券などの財産を分与する、などのように分与する対象を決めて行きます。

現物分割は手続きが単純になるメリットがある反面、明確に不動産やその他の資産評価を行った上で分与を行わないため、不公平感の残る点がデメリットとなります。

2-2.代償分割

代償分割は、現物分割では不動産の価額と他の共有財産の釣り合いが取れない際に、金銭(代償金)を支払う形で公平に分与する方法です。

例えば夫が1500万円の不動産を譲り受けても、残りの財産が1000万円相当しか無い場合、妻は500万円分の財産を受け取れなくなってしまいます。

代償分割では、財産分与の原則である「公平に分与」するために、夫は500万円を妻に支払う形になります。分与割合が5:5ではないケースでも、上手く分割できない時には代償分割を行います。

代償分割は公平感のある分与が可能となりますが、上記の例の場合だと夫に500万円分の資産が無いと成立しないデメリットがあります。なお、現物分割と同様に、住人と不動産の名義・ローン契約人が違う際は変更手続きが必要となります。

2-3.換価分割

換価分割は不動産を売却してお金に換え、売却代金を分割する方法です。

3つの方法の中で、換価分割は最も公平感のある財産分与がしやすく、後のトラブルも少ない可能性があります。ただし、換価分割は不動産売却によって住宅を手放してしまうデメリットがあります。

職場が家の近くにある方や、子供を転校させたくない等の事情がある方には、現物分割又は代償分割が適していると言えます。

3.現物、代償、換価、分与はどの方法が良い?

離婚時の不動産の財産分与で、代償、現物、換価と3つのうち、どの方法が良いのかは家庭によって事情が異なるため、ケースバイケースです。迷った際の判断の目安としては、2人の「財産分与での優先順位」により3つの方法を選択してみましょう。

例えば、「公平に分与し、後のトラブルを防ぎたい」という点を優先させるケースでは換価分割が良いでしょう。

一方で「どちらかが家に住み続けたい」場合や、「オーバーローンで売却後の損失が大きい」というケースでは代償分割又は現物分割が適していると言えます。

なお、不動産の財産分与ではどちらが家に住み続けるか、不動産の査定方法や査定額等の問題で意見がまとまらないケースがあります。

話し合いをした後は公正役場で公正証書として「離婚協議書」を作成しておき、お互い約束したことを公的文書として残しておきましょう。トラブル時の対応を記載しておくことで、いざという時に裁判をすることなく、給料の差し押さえといった行為が可能になります。

まとめ

不動産の財産分与では、現物・代償・換価という3つの方法がありますが、2人の財産分与における優先順位や事情を考慮した上で話し合い分与を行いましょう。

分与の前には、①財産分与の流れ、②不動産に特有財産が含まれていないか、③不動産の売却価格、④売却価格とローン残債の比較、⑤不動産の名義やローンの契約者の5点を確認しておきましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。