協議離婚による不動産名義の変更、公正証書を作成するメリットや手順は?

協議離婚では2人で話し合い不動産を始め財産の分与を決めますが、内容を公正証書として残しておくことで、いざという時に裁判をすることなく財産を差し押さえる事が可能です。

公正証書を作成することで、公証役場で原本が保存され、紛失・偽造・変造されることがないなどのメリットがあります。しかし、公正証書を作成するには、どのような手順で書類を作成するのか分からずにお困りの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、協議離婚の財産分与や不動産の名義変更で、公正証書を作成するメリットと手順をお伝えしていきます。

目次

  1. 協議離婚の財産分与で、公正証書を作成するメリットとは?
    1-1.強制執行を設定することで、財産の一部を差し押さえることが出来る
    1-2.「財産開示手続」と「第三者からの情報取得手続」が可能になる
    1-3.公証役場で原本が保存され、紛失・偽造・変造の恐れが無い
    1-4.相手に心理的なプレッシャーをかけられる可能性がある
  2. 公正証書を作成する手順
    2-1.公正証書を作成する準備を行う
    2-2.公証役場に申し込み、2人で出向く
    2-3.手数料を支払う
  3. まとめ

1.協議離婚の財産分与で、公正証書を作成するメリットとは?

協議離婚では離婚の財産分与の内容を話し合い、話し合った内容を「離婚給付契約公正証書」として公的文書として残しておくことができます。離婚給付契約公正証書は、離婚の合意や親権、養育費などに加え、財産分与に関して記載する事が可能です。

特に、不動産の名義変更を行う際や住宅ローンが残っている不動産の分与では様々な問題が起こる恐れがあります。話し合った内容を公的文書として書面に残しておくと、後のトラブルを回避することにもつながります。

離婚給付契約公正証書を作成した時のメリットを以下で詳しく解説していきます。

1-1.強制執行を設定することで、財産の一部を差し押さえることが出来る

離婚後の不動産関係のトラブルとして、「不動産の名義変更に応じてくれない」「住宅ローンの残債を支払ってくれる予定だったのに滞納している」など、相手が約束を守らないことからトラブル発展してしまう事例があります。

離婚給付契約公正証書の「強制執行」の項に「支払いが履行されない時は強制執行を行う」「相手が強制執行を受諾した」旨を記載しておくことで、法的な拘束力をもって財産の一部を差し押さえる事が可能です。

相手の財産に不明点がある時は、「民事執行法」で定められている「財産開示手続」と「第三者からの情報取得手続」を利用することができます。財産開示手続と第三者からの情報取得手続は、相手の財産の情報を明らかにできる手続きです。

このように、離婚給付契約公正証書を作成する際は、相手が約束を守らなかった時の「強制執行」について記載しておくことで、裁判をすることなく民事執行法に基づいた財産の差し押さえが可能になります。

ただし、不動産の名義変更は、法務局で所有権移転登記を行う際、住所証明情報や印鑑証明書等の書類の添付、住宅の家屋番号や床面積等の情報が必要になりますので、公正証書に記載があった場合でも相手の協力を仰ぐ形になります。

1-2.「財産開示手続」と「第三者からの情報取得手続」が可能になる

財産に対して強制執行を実施するためには、裁判所に強制執行の申立てを行います。しかし、この時相手方の差し押さえられる財産の情報が無ければ強制執行を行うことができません。

例えば、預貯金を差し押さえるには相手の預貯金を取り扱う金融機関名や支店等の情報が必要になります。その他、給与を差し押さえるには相手の勤務先の名称や所在地等を申立書に記載する必要があります。

離婚後に連絡がつかなくなってしまった相手から、正確な金融機関情報や勤務先情報を得ることは難しく、強制執行権を持っていたとしても執行手続きを進めることが出来ないケースは少なくありません。

このような状況を避けるため、「財産開示手続」では民事執行法により、相手を裁判所に呼び出し、どのような財産をもっているかを裁判官の前で明らかにさせる事が可能です。

また「第三者からの情報取得手続」では相手以外の第三者からも財産に関する情報を得ることができます。預貯金等については金融機関、勤務先については市町村や自治体に強制執行の申立てに必要な情報の提供を命じてもらうことができます。

上記の2つの手続きにより、相手と連絡が取れない時や財産の状況が分からない時でも強制執行をスムーズに行える可能性があります。

1-3.公証役場で原本が保存され、紛失・偽造・変造の恐れが無い

離婚給付契約公正証書を公証役場で作成した時には、正本と謄本が交付されます。公正証書の原本は公証役場に保存されますので、偽造・変造・紛失の可能性は非常に低いと言えるでしょう。

後で相手の意見が変わった時には、公正証書に書いてある元の内容を実行する権利を主張できます。公正証書は公証役場で原本を閲覧、謄本を再発行してもらう事ができます。

1-4.相手に心理的なプレッシャーをかけられる可能性がある

離婚給付契約公正証書を作成することで「公的な拘束力を持つ」「強制執行される」とい意識が生まれ、相手に「約束を守らなければならない」と心理的なプレッシャーをかけられる可能性があります。

2.公正証書を作成する手順

公正証書を作成する際には、まず2人で書類に記載する内容を話し合い、意見を一致させます。続いて本人確認書類や戸籍謄本等の必要書類を揃え、公証役場に連絡します。

公証役場では書類作成の準備を行い、準備が終わった所で依頼者に連絡、確認を取った後公証役場に出向き公証人の前で最終確認、公正証書に署名・捺印を行い完成、という流れになります。

2-1.公正証書を作成する準備を行う

公正証書となる書類の内容について2人で話し合っておき、必要書類を揃えておきましょう。離婚給付契約公正証書の内容は、以下の項目の中から必要に応じて記載を行います。

  1. 離婚の合意
  2. 親権者と監護権者の定め
  3. 子供の養育費
  4. 子供との面会交流
  5. 離婚慰謝料
  6. 離婚による財産分与
  7. 住所変更等の通知義務
  8. 清算条項(債務や債権の清算に関する条項)
  9. 強制執行認諾

上記の項目で、2人の意見にズレがある場合、例えば「夫は保有している株式を自身の単独の資産だと思っていたが妻は共有財産として分与の対象としていた」といった場合では、財産分与の金額が異なってきますので、まず話をまとめておく必要があります。

2人の意見にズレがある状態で公正証書を作成すると、手続きが進まない、完成した後にトラブルに発展する等の事態が起きる可能性があります。まずは内容を具体的に話し合い、意見をまとめておきましょう。

なお、公証役場で必要な書類は以下の通りになります。

  1. 本人確認書類 1~5のうちいずれか
    1. 印鑑証明書と実印
    2. 運転免許証と認印
    3. マイナンバーカードと認印
    4. 住民基本台帳カード(写真付き)と認印
    5. パスポート、身体障害者手帳又は在留カードと認印
  2. 戸籍謄本:公正証書作成後に離婚する場合は、現在の家族全員が載った戸籍謄本を、離婚した後の場合は当事者双方の離婚後の戸籍謄本を持参
  3. 不動産の登記簿謄本及び固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書:不動産の所有権を相手方に移転する場合に必要
  4. 年金分割をする際は、年金手帳といった年金番号が分かるもの:年金分割の場合当事者の年金番号を公正証書に記載する必要があるため、当事者の年金番号が分かる年金手帳を持参

2-2.公証役場に申し込み、2人で出向く

公証役場は全国に約300箇所存在し、どこでも制限なく利用することが可能です。お互いにとって便利な役場を利用しましょう。

公証役場によって予約の有無といった受付方法が異なりますので、まずは電話やメール等で連絡し、離婚の公正証書を作成したい旨を伝えましょう。申し込みを受けた公証役場は公正証書作成の準備を行い、必要な場合は内容確認の連絡があります。

準備が終わった所で内容に間違いがないか、依頼者に連絡が来ます。準備期間はおおむね1ヶ月以内ですが、役場によっては1週間程度で連絡が来るケースもあります。日時を予約して、公証役場で内容の最終確認を行います。

離婚給付契約公正証書は本人の委任状を持った代理人でも手続きが行う事ができますが、委任者本人の意思を直接確認できないため、実際は代理による手続きは困難となります。また基本的に双方の代理を一人で行うことはできません。

そのため、公証役場には2人で直接出向く必要があります。公証人の最終確認を経て、公正証書の原本に署名・捺印を行い書類が完成します。事務手続きは公証役場によって異なる場合があります。

2-3.手数料を支払う

最後に手数料を支払いますが、公正証書は契約に関する価額により金額が異なります。「法律行為に係る証書作成の手数料」は以下のように定められています。

目的の価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 11000円
500万円を超え1000万円以下 17000円
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下 43000円
1億円を超え3億円以下 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額

※引用:日本公証人連合会「公証事務 > 10 手数料 > 法律行為に関する証書作成の基本手数料

不動産の鑑定額を始め財産分与の対象となる財産が多ければ多いほど、手数料は高くなります。離婚の場合、10万円以内におさまるケースが多いと言えますが、費用負担についても双方であらかじめ話し合っておきましょう。

まとめ

不動産の名義変更は、相手の協力が無ければ行う事が出来ませんが、公正証書として残しておくことで公正性、高い証拠力が担保されます。後で相手の意見が変わった時にも、公証役場に原本が残されていますので、原本を閲覧、謄本の再発行を依頼する事が出来ます。

不動産の所有権を移転する際には、公正証書を作成する時に登記簿謄本・固定資産税納税通知書・固定資産評価証明書のいずれかが必要となりますので準備しておきましょう。

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田中 あさみ

田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。