投資用マンションの売却、利益は出る?色々な視点から売却収益を試算

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マンションの価格は築年数の経過とともに緩やかに下落します。特殊な事情がない限りは、購入した際の価格より高い価格で売却できることは滅多にないことが予想できます。価格が上昇する要因がない状態で売却した場合、果たして収益を得ることはできるのでしょうか。

この記事では、経年劣化で価格が下落した状態でマンションを売却した時の収益について、色々な視点から試算してみたいと思います。

目次

  1. マンション投資の収益は2種類
  2. 売却のタイミングを見計らうことで利益を得る可能性が高くなる
  3. インカムゲインによる収支シミュレーション
  4. 一般的な物件価格下落率から物件価格を算出した場合の収益
    4-1.築16年~20年位の物件が下落率は少なく売却に有利
    4-2.築16年~20年の物件を売却した場合の収益
  5. 収益還元法で査定し売却した場合の利益
    5-1.一般的な家賃下落率から20年後の家賃を試算
    5-2.収益還元法で価格を算出して収益を試算
  6. 周辺の類似物件の成約事例をもとに売買収益を算出
    6-1.同じエリアの類似物件の成約事例
    6-2.類似物件の成約事例から収益を算出
  7. 価格が下落しすぎないように注意すること
    7-1.物件管理が重要
    7-2.売却する時期を選ぶ
    7-3.相場は常に確認しておく
  8. まとめ

1.マンション投資の収益は2種類

マンション投資で得られる収益にはインカムゲインとキャピタルゲインの2種類があります。インカムゲインとは家賃収入のことで、キャピタルゲインはマンションを売却して得られる収益のことを言います。

インカムゲインは入居者がいれば原則として毎月発生しますので、安定して得ることのできる収入だと言うことができます。

キャピタルゲインの場合、収益を得るためには不動産を売却する必要があり、売却した際の価格が想定していた価格を大きく下回った場合は、利益が小さくなったり、トータルで支出の方が多かったりする結果を招くこともあります。そのため、家賃のように安定して得られる収益とは言えません。

しかし、キャピタルゲインは数百万円単位の収益になることもあるため、収益アップを検討する上ではキャピタルゲインの確保が重要な戦略の一つと言えます。

2.売却のタイミングを見計らうことで利益を得る可能性が高くなる

キャピタルゲインは家賃収入のように毎月同じ額の収益が発生するものではありませんが、マンションの売買の事例は多く、相場価格なども調べればわかるため、市場価格やローンの残債を見ながら戦略的に売却することで、収益を確保するのも難しくなくなります。

「購入した時より価格が下がっているから、収益は出ないかもしれない」と諦めるのではなく、どうやって売却したら収益が得られるのかを検討して取り組むようにすることが大切です。

3.インカムゲインによる収支シミュレーション

キャピタルゲインで得られる収益を見る前に、インカムゲインだけでいくらくらいの収益が得られるのかを、実際に販売されているマンションの事例をもとに試算してみましょう。ライフルホームズに以下の物件が掲載されていましたので、こちらの物件を事例に試算をしてみましょう。

物件価格 2,290万円
築年数 1年
広さ 25.70㎡
利回り 4.74%
満室時の年収 108.54万円
想定月収 9.04万円
住所 東京都練馬区南田中2丁目
交通 西武池袋線練馬高野台駅徒歩10分
管理費 5,700円
修繕積立金 1,000円

*不動産・住宅情報サイトライフルホームズから引用

こちらの物件に頭金を200万円入れて、2,090万円でローンを組んだ場合の収支を試算してみましょう。ローンの条件は金利2%、返済期間30年とします。
         

ローン価格 月々の返済額 月々手残り額 年間手残り額
2,090万円 7万7,250円 6,450円 6万4,500円

*金利2%、返済期間30年で試算、経費は考慮していません

月々の手残り額が6,450円、年間では6万4,500円残ることが確認できます。20年後には129万円弱が積み立てられます。ただし、この試算には経費を算入していませんので、実際にはこの額より低くなることが想定されます(利回りや経費の額、融資条件によって手残り額は大きく変わるため、物件個別にシミュレーションを行う必要があります)。

4.一般的な物件価格下落率から物件価格を算出した場合の収益

上記はインカムゲインの収益です。では次にキャピタルゲインを試算してみましょう。上記の物件の売却時の価格を一般的な価格下落率から算出し、その価格で売却した場合の収益を試算してみます。

4-1.築16年~20年位が下落率は少なく売却に有利

まず一般的な下落率で物件価格を算出してみましょう。以下は東日本不動産流通機構が調査した、築年数による物件価格の推移が確認できるグラフです。

中古マンションの築年帯別平均価格グラフ*東日本不動産流通機構調査「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2018年)」から引用

築0~5年の時期に約5,500万円だった物件(成約物件)価格は、築6~10年に4,500万円位まで下落し、築21年~25年の時期には2,500万円くらいまで下落していることが確認できます。

このグラフから、売却するには都合の良いと思われる「物件価格があまり下落しない時期」で、ローンの残債が通常通り減っている時期を見てみます。築16年~20年の時期がその条件に当てはまっていることが考えられます。その時期に物件価格がいくらくらいになっているかを算出してみましょう。

上記グラフでは、築16年~20年の時期の価格は約4,000万円で推移しています。物件価格を4,000万円とした場合、5,500万円から約28%下落したことになりますので、この数値を使って試算してみます。

上記で事例として使った物件の築1年時の価格が2,290万円でしたので、この価格が築16年~20年となった際に28%下落したと仮定すると、価格は以下のようになります。

2,290万円-(2,290万円×28%)=1,648万8,000円

この下落率で試算した結果、上記物件の価格は築16年~20年の時期に1,648万8,000円になっていることが想定できます。

マンション投資は物件に固有性があるため、全ての物件でこのような推移を辿って価格が変動するわけではありませんが、一つの傾向として押さえておきましょう。

4-2.築16年~20年で売却した場合の収益

では、次に1,648万8,000円で売却できた場合の収益を試算してみます。

まず、ローンの残債が20年後いくらになっているのかを見てみましょう。上記と同じように頭金を200万円入れて2,090万円でローンを組んでいた場合の残債を出してみます。以下は月々の返済額と10年後、15年後、20年後のローンの残債です。

  • 毎月の返済額:7万7,250円
  • 10年後の借入残高:1,527万410円
  • 15年後の借入残高:1,200万4,568円
  • 20年後の借入残高:839万5,553円

この場合、20年後の借入残高は約840万円だということが確認できます。築20年の時点に1,648万8,000円で売却できた場合、ローンを完済した後の収益とインカムゲインを足した金額は以下のようになります。

1,648万8,000円-839万5,553円=809万2,447円
809万2,447円+129万円(20年時の手残り額合計)=938万2,447円

一般的な築年数による価格の下落率から試算した場合、ローンを完済しても約810万円が収益として残ることが確認できます。さらに手残り額を足すと940万円弱の金額が残ることになります。

ただし、ここから、仲介手数料や税金といった経費を支払った額を差し引かなければいけませんので、それらを加味した上で黒字か赤字かを判断することとなります。

5.収益還元法で査定し売却した場合の利益

上記ではマンションの平均的な価格推移から下落率を割り出し、物件価格を算出しました。次に収益マンションの査定の際に一般的に使われる、収益還元法でマンション価格を算出し、売却した場合の収益を試算してみましょう。

5-1.一般的な家賃下落率から20年後の家賃を試算

以下は株式会社三井住友トラスト基礎研究所の資料から引用した築年数別の賃料指数です。新築時の価格を100として、築年数が経過すると賃料がどれくらい下落するかを指数グラフで確認することができます。

*株式会社三井住友トラスト基礎研究所作成「経年劣化が住宅賃料に与える影響とその理由」から引用

こちらのグラフからシングルマンションの価格指数を拾って、上記で使用した物件を事例として試算してみたいと思います。上記物件の概要は以下の通りでした。

物件価格 2,290万円
築年数 1年
広さ 25.70㎡
利回り 4.74%
満室時の年収 108.54万円
想定月収 9.04万円
住所 東京都練馬区南田中2丁目
交通 西武池袋線練馬高野台駅徒歩10分
管理費 5,700円
修繕積立金 1,000円

築1年時の家賃を100とした場合、賃料指数のグラフから築20年時の指数は83となっていますので、築20年時の家賃は以下のように算出できます。

9万400円×0.83=7万3,224円

一般的な家賃の下落率から、上記物件の20年後の家賃を試算したところ7万3,224円になることが想定されます。

5-2.収益還元法で価格を算出して収益を試算

築20年時の家賃を7万3,224円と想定し、収益還元法で物件価格を算出して、その価格で売却した場合の収益を試算してみましょう。今回は収益還元法の直接還元法を使って試算してみます。直接還元法の計算式は「年間の家賃収入÷還元利回り(買主に提示する利回りのこと)」です。この式を使って計算した場合以下のようになります。

7万3,224円×12ヵ月÷4.74%=1,853万7,721円(築20年時の物件価格)
1,853万7,721円-839万5,553円(20年後の借入残高)=1,014万2,168円
1,014万2,168円+129万円(20年時の手残り額合計)=1,143万2,168円

この場合は1,000万円を超える収益があることが想定され、平均価格推移から割り出した価格で売却した場合より収益が多いことが確認できます。この場合も、物件は固有の条件や事情がありますので、賃料や売却価格がこの通りになるわけではありませんが、一つの傾向として押さえておきましょう。

6.周辺の類似物件の成約事例をもとに売買収益を算出

周辺にある同じような物件の価格はどのように推移しているのでしょうか。ここでは同じ練馬区の収益物件の築15年~20年時の物件価格をもとに、その価格で売却した場合の収益を試算してみようと思います。

6-1.同じエリアの類似物件の成約事例

Reins Market Informationで、同じ練馬区内の練馬高野台駅から徒歩10分の場所に1K物件の成約事例がありました。こちらの物件の築年時期と成約時期から築15年~16年の時期に売却したことが確認できます。この時期は価格の下落率が低く、ローンの残債が通常通り減っている時期に該当しているため、売却にはタイミングも良いことが考えられます。

単価(万円/㎡) 60万円
築年 2002年~2003年
成約時期 2018年9月~2018年11月
住所 東京都練馬区高野台
交通 西武池袋線練馬高野台駅徒歩10分
間取り 1K
専有面積 20㎡~40㎡
用途地域 準住居

Reins Market Information成約事例をもとに筆者作成

こちらの成約事例から類似物件の売却単価は60万円/㎡だということが確認できます。先の事例で使用していた物件の面積は25.70㎡でしたので、売却時の㎡単価を60万円とした場合、物件価格は以下のようになります。

60万円×25.7㎡=1,542万円

類似物件の成約事例をもとに試算した結果、事例で使用している物件の価格は1,542万円程度になることが想定されます。

6-2.類似物件の成約事例から収益を算出

1,542万円で事例のマンションを売却した場合の収益は以下のようになります。

1,542万円-1,200万4,568円(15年後の借入残高)=341万5,432円
341万5,432円+129万円(20年時の手残り額合計)=470万5,432円

類似物件の成約事例をもとに売却した場合、手残り額と合わせて470万円位の収益になることが算出されました。こちらもこの通りになるわけではりませんが、傾向として捉えておきましょう。

様々な視点から収益を試算してみました。試算の結果から、今回のケースではマンション価格が下落していても収益は期待できることが確認できました。再開発による地価上昇などの好材料で価格が上がるに越したことはありませんが、一般的な価格の推移でも売却のタイミングさえ間違えなければ、収益を得られる形で売却できることが考えられます。

しかし、物件に一定の品質がなければ査定価格はさらに下落することも考えられますので、価格が下がりすぎないように物件をきちんと管理しておくことが大切です。

7.価格が下落しすぎないように注意すること

価格が想定以上に下落しすぎないためにはどのような点に注意して運用すれば良いのかを確認しておきましょう。

7-1.物件管理が重要

想定以上に価格が下落しないためには、物件の管理をきちんとしておくことが大切です。物件の管理は区分所有している室内だけでなく、エントランスやポスト周りといった共用部も確認しておくようにしましょう。

小さい損傷や汚れでも放っておくと修復が手間になることもあります。細かい箇所は管理会社に任せるだけでなく、自分の目でも確認し、必要に応じて管理会社に依頼すると良いでしょう。

7-2.売却する時期を選ぶ

1年を通して見た場合、不動産が流通する月には偏りが生じます。流通量が多い月は売り物件も多いぶん買主も市場に注目をしていて、普段よりも成約件数が多くなることが考えられます。そのため、なるべく流通量が多い時期に売却をするようにすることでスムーズに売却できることが考えられます。

以下の表は、公益財団法人不動産流通推進センターの資料から引用したものです。平成29年3月から平成30年2月までの期間で、不動産流通推進センターに報告があったマンションと他の種類の物件も合わせた総数の、月ごとの成約件数が記載されています。

*公益財団法人不動産流通推進センター作成「2018不動産業統計集」から引用

こちらの表からマンション・総数ともに、3月が年間を通して最も成約数が多いことが確認できます。マンションの場合、3月に7,432件の成約が確認できます。最も少ない8月の約1.6倍ありますので、3月に売却できるように動くことが、スムーズに売却をする上で一つのコツと言えるでしょう。

7-3.相場は常に確認しておく

マンションの売却をする際は、必ず自分で価格相場を確認して活動をすることが、希望価格で売却する上で求められることになります。相場を知らないと、不動産会社や買主と価格交渉になった場合に、不利益になる価格で売りに出したり売却したりしてしまう可能性があるからです。

むやみに価格を下げないためにも、相場はしっかり確認して売却活動をするようにしましょう。

まとめ

投資用マンションを運用後に売却した際のシミュレーションをしてみました。今回は価格の平均的な下落率や、賃料の下落率、類似物件の成約事例から物件価格を試算し、その価格で売却した際の収益を試算しています。

マンション価格は築年数が経過すると価格は緩やかに下落し、購入した価格より高く売却できることは、特殊な条件がなければ難しいことが考えられます。しかし、売却価格からローンの残債と経費を差し引いた金額が収益になりますので、きちんとシミュレーションをした上で売却活動をすれば、収益が見込める可能性も高いと言えるでしょう。

マンションを売却して収益を得るためには、物件の管理状態や売却するタイミングがとても重要になってきます。これらの点も慎重に考えた上で売却活動をするようにしましょう。

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西宮光夏

不動産会社での勤務や、所有している不動産運用の経験をもとにHEDGE GUIDEでは不動産関連記事を執筆しています。現在は主にふるさと納税の記事を担当しています。ふるさと納税記事では、地域の人たちが心を込めて提供する返礼品の素晴らしさを、少しでも多くの人にお伝えできればと思っています。