著者は前職で3メガ系証券会社で外国為替のスポット、フォワードトレーディング、そしてEM通貨建(トルコリラ、南アフリカランド、インドルピー、ブラジルレアル等々)クレジットトレーディングを行っており、世界経済の分析をしながら日々マーケットと対峙していました。その後、仮想通貨取引所でトレーダーを行ってた際には、仮想通貨の市況をチェックする際に伝統的な金融市場の動きや各国経済の動きと関連性を注視していました。
そこで、本日は仮想通貨のマーケットと伝統的な金融市場の関連性がどのように関連しているのかを解説していきます。
目次
ビットコインはリスク回避資産?リスク資産?
最近ではビットコインがリスク資産なのかリスク回避資産なのかといった議論がなされています。しかし実際のところ、ビットコインと金融市場の関連性の定義はまだ定まっておりません。では実際に今はどのように動いているのかビットコインの動きと、株価、金価格や金利とどのように関係しているのかチャートから確認していきましょう。
まず米国の株価とビットコインの関係を見てみましょう。
このチャート内にはオレンジがS&P株価指数、青色がビットコイン円の価格です。
最初の黄色の丸印を見るとビットコインが上昇しながらS&P株価指数も上昇しており、相関関係があるような動き方となっています。ちなみにこのような動き方をしている時、巷のニュースでは「現金で保有していた投資家がリスク資産へ投資し株価が上昇しビットコインも上昇した」というような表面上の説明がされるため注意しましょう。それが正しいわけではありませんし間違っているわけでもありません。
次に2つ目の黄色の丸印をご覧ください。S&P株価指数が下落する過程でビットコインが上昇する動きとなっています。これは最初の動き方とは真逆と言えるでしょう。この時にニュースで説明されるのは「リスク資産が下落する中で、リスク回避資産であるビットコインに資金が流れてビットコイン価格が上昇した」というニュースが流れるでしょう。これもまた正しいわけでもなく間違っているわけでもありません。相場の動きに理由はないということを強く意識しておきましょう。
次にビットコインと一緒にチェックされる金価格について見ていきましょう。
上のチャートは青色がビットコイン価格の値動きで、緑色が金価格の動きです。この2つを見るとある程度相関関係があると言えるのではないかとも思いますが、はっきり相関が強いとも言いにくいでしょう。では、なぜこの両者がよく同じリスク回避資産として見なされてチェックされているのでしょうか?
金は有限資産で、無限に採掘できるわけではありません。また、ビットコインもマイニングから発行できる量は2,100万ビットコインまでで、有限資産です。そのため、ビットコインは有限資産だからリスク回避資産として使われるという言い方もできるでしょう。金を購入している保有者がビットコインをポートフォリオの一つとして購入する可能性が高いとも言われていますが、金を保有しているプレイヤーが仮想通貨のハッキングリスクを抱えた資産に代替として利用するかは疑問の余地が残るところです。
次にビットコインの債券金利についてチェックしましょう。
上のチャートは青色がビットコイン価格の推移で、黄色が米国債10年金利です。
債券はリスク回避資産です。そのため株価が下落すると、株を売った資金は債券に流れるため債券価格が上昇します。債券価格が上昇すると債券金利は低下します。この動き方は一般的な動き方です。
上記のチャートで説明すると、ビットコインの価格が上昇する理由がリスク回避資産として上昇している局面では、債券金利を表している黄色の米債金利10年チャートは低下する動きとなります。
しかし、実際にそのように動いているかをチェックすると、一部分ではビットコインがリスク回避資産として認識されているような動きも出ていますが、実際にはっきりとリスク回避資産と呼べるような動きでもないのがわかります。
参考までにリスク回避通貨である金が債券金利とどのように相関しているか値動きを見てみましょう。
上記は青色が金価格の値動きで黄色が米国債10年金利です。リスク回避資産であるゴールドが上昇すると米債金利が低下することで相関関係があるといえます。
実際の値動きを見るとゴールドと米債金利は綺麗に相関していると言えます。このチャート見るとビットコインと米債金利が相関しているとは言い難いと感じます。またビットコインがリスク回避資産と断定するのは時期尚早でしょう。
ではこの相関をチェックすることで何をお伝えしたいのかを次にご説明します。
ニュースの解説は全てを信用しないこと
相場において大事なことは、ビットコインがリスク回避資産なのかリスク資産なのか定義することではなく、なぜその時に相関が強くなったり逆相関になったりするのかをしっかり考えて自分の考えを持つことです。ビットコインがリスク資産かリスク回避資産か整理することが重要なのではなく、なぜそのようになりつつあるのかと常に考える必要があるのです。
個人的には、現段階のビットコインはリスク回避資産のような動きになりやすいと考えています。しかしこれは個人の考え方次第です。私が上記のように考えている理由は、2017年はリスク資産としてビットコインの上昇と株価は相関していたことにあります。そしてこれは個人投資家が投資家の大半を占めていたこと、プレイヤーが個人主体で動いていたことが大きいと考えています。
その後、2018年から先物市場が出て来始め、2019年にはbakktのような現物受け渡しが可能な先物市場まで誕生しました。つまり、プレイヤーが2018年最初の急落で退場する中、機関投資家がプレイヤーの割合を増してきたことを意味します。機関投資家がプレイヤーとなると、ビットコインをリスク資産として利用するよりも、金と同様の目的でポートフォリオの一つとして利用する可能性が高くなります。
しかしこの仮説が正しいわけでもありません。仮想通貨の値動きを考える上でとても大事なことは「ポジションの傾きを把握すること」です。つまり需給バランスをしっかりと頭で整理しておくことがトレードする上ではとても大切なことです。
例えば、直近のニュースでは米大手の仮想通貨取引所coinbaseがイギリスがEU離脱問題で揺れ動いている中、アイルランドで仮想通貨の免許を取得したことが報道されました。このニュースを見て皆さんはどのように考えるでしょうか?私の場合は、ビットコインをリスク回避資産として考え、自国通貨の信任がなくなる過程でビットコインに需要が集まるという予測の元、coinbaseがこの動きをしたのではないかと考えています。
さらにその先まで予測する場合、もしも今月末が期限となるイギリスのEU離脱交渉において、ハードブレグジットに進行した場合は株が急落、ポンドが急落、債券金利は低下しビットコインが上昇するという予測がたつため、ここまで頭で整理しておくとビットコインをトレードする上でも反応が早くなることでしょう。
このように、昔は仮想通貨マーケットは伝統的な金融産業からの枠外でマーケットが出来上がっていましたが現在ではそれぞれが密接に絡み合ってくるようになって来ました。リブラの問題も、世界各国の中央銀行が焦りを見せているように、それだけ仮想通貨のマーケットが世界経済を揺るがす大きなインパクトを持っているプロダクトに成長しているということです。
2年前の仮想通貨の常識は今では通用しません。日進月歩で成長する仮想通貨マーケットでは固定観念は捨て、今この瞬間マーケットがどう動いており、どう考えるべきなのかを常に考えてトレードするように心がけましょう。
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中島 翔
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