経済産業省は10月8日、気候変動問題に関する企業の情報開示の枠組みであるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に先進的に取り組む海外企業や金融機関などのリーダー約350人を集めた「TCFDサミット」を都内で開催した。
TCFDによる提言の趣旨に対する賛同数は世界で864機関に増え、うち日本における賛同数は199機関と世界第1位(10月10日時点)。同サミットは、2019年のG20議長国である日本がTCFDを実務に定着させ、「環境と成長の好循環」へのリーダーシップを取り、さらに産業界と金融界の建設的な対話に基づく資金循環の活性化促進するため、世界で初めて開催。TCFDをめぐる今後の課題や進むべき方向性などについて、発表や議論が活発に行われた。
オープニングセッションでは、企業の効果的な情報開示や開示された情報を金融機関などの適切な投資判断に繋げるための取り組みについて議論する「TCFDコンソーシアム」(2019年5月設立)が、コンソーシアムが同日付で策定した「グリーン投資の促進に向けた気候関連情報活用ガイダンス(グリーン投資ガイダンス)」について発表した。
パネルディスカッションは「エンゲージメントの重要性」「オポチュニティ(事業機会)評価の重要性」「アジアにおける開示の課題と今後の展望」の3テーマを設定。このうちエンゲージメントは、ESG投資において、投資家と企業が建設的な目的を持って対話する手法。ダイベストメントは投資対象から株、債券、投資信託を手放す手法。欧州では、核兵器や化石燃料に関わる企業へのダイベストメントが定着している。
これについて、会場では「環境と成長の好循環」の実現に向け、「気候変動対応に積極的な企業に資金が流れるためには、気候変動リスクの高い業種から資金を引き揚げるダイベストメントではなく、エンゲージメントを通じて企業価値を向上し、その結果が投資リターンに還元されていくポジティブフローを生み出していくことが重要」という認識が共有された。また、エンゲージメントにはESGアナリストだけでなくポートフォリオマネージャーが参加することで実効性を高めるとともに、エンゲージメントの取組について投資家が透明性を高めていくことも重要と提言された。
TCFDサミット共催者であるWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)のピーター・バッカー プレジデント兼CEOは、サミットの総括として「気候変動リスクとその評価だけではなく、事業機会についての理解を深めるべき。ダイベストメントには手法として限界があり、建設的なエンゲージメントの方がより強力。世界の幅広い関係者にTCFDの支持を呼びかけていく」と述べた。また、グリーン投資ガイダンスには「企業と投資家の対話を促進する有用なツールとなる」と期待を寄せた。
【参照記事】経済産業省「第1回TCFDサミットを開催しました」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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