2021年の債券市場はどう動く?2020年の振り返りと今後の予測、投資の注意点も

2020年は、「禍」の年でした。東京五輪開催や米国大統領選挙などのイベントにより、世界的に景気拡大が期待されていましたが、2020年1月からの新型コロナ感染拡大により景気が悪化しました。株価は急落し、信用不安の高まりから社債は売られ、利回りが急騰しました。

経済の混乱を抑えるために、各国政府は財政を投入し、中央銀行は政策金利引き下げや量的緩和拡大により市場に資金を供給しました。12月現在、市場は落ち着きを取り戻していますが、新型コロナは世界各地で再び猛威をふるっており、2021年を展望するうえでは新型コロナが終息するかが大きなカギとなっています。また、各国の財政・金融政策も2021年の債券市場を見るうえで重要な要素と言えます。

今回は、2020年の債券市場を振り返り、さらに今後の予測、投資の注意点について解説します。

目次

  1. 2020年の債券市場を振り返って
    1-1.米国の金融政策
    1-2.日本の金融政策
    1-3.ECB(欧州中央銀行)の金融政策
  2. 2021年の債券市場はどうなる
    2-1.イールドカーブのスティープニング
    2-2.中央銀行の足並みの乱れ
    2-3.注目される日銀
  3. 投資の注意点
  4. まとめ

1.2020年の債券市場を振り返って

2020年1月末から新型コロナの感染が拡大したことを受け、3月には各国でロックダウンが実施されました。企業業績悪化を背景としたデフォルト懸念が台頭し、社債が売られ、利回りが急騰しました。

各国政府はこの混乱を回避するため、財政を投入、中央銀行も資金を市場に供給し続けています。特に、中央銀行の政策が市場の混乱収束に大きな役割を果たしたと考えられます。

世界中の中央銀行が資金を市場に供給しており、社債や国債に資金が流れ、欧州では南欧諸国の国債利回りが史上最低を更新しています。以下で各国の中銀の政策をみてみましょう。

1-1.米国の金融政策

FRB(連邦準備銀行)は、新型コロナの影響により企業業績が悪化し、株価が急落したことを受け、2度に渡る利下げに踏み切りました。年初1.75%だった政策金利は3月3日に1.25%に、3月16日には0.25%に引き下げられました。

また、新型コロナによる経済危機に対応するため導入した緊急資金供給プログラムにより、社債が買い入れられたため市場は落ち着きを取り戻しました。社債の買い取りについてはハイイールド債(BB以下)が一部対象(3月22日まで投資適格だった社債)となったため、ハイイールド債の買入比率が高くなることで経済の不安定化を懸念する投資家達には安心感を与えました。

1-2.日本の金融政策

BOJ(日本銀行)は、企業等の資金繰り支援のため130 兆円を超える「特別プログラム」を導入しました。これにより、社債等買入(社オペ)における「金額の増加」と「対象年限の追加(「1年以上3年以下」に加え「3年以上5年以下」も実施)がなされました。

この結果、2020年5月には1年から3年を対象とした「社債等の買入」の「按分レート(最低落札利回り)」が2019年10月以来の“マイナス”となり、その後もマイナスで推移しています。また、起債市場(社債の発行市場)では社オペに対応した期間3年から5年の起債(社債の発行)が相次ぎ、企業に低コストの資金が供給され続けています。

1-3.ECB(欧州中央銀行)の金融政策

足元でコロナ感染の再拡大していることを受け、ECBも市場への資金供給を継続することを表明しています。

3月に導入したパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を、12月には1兆8,500億ユーロの規模に増額し、期間も2022年3月末まで延長することを決定。また、ユーロシステムによる社債の購入プログラムについても、月額200億ユーロ規模での購入を継続し、金利の引き上げ開始前までは必要な限り継続するとしています。

このほか、金融システム保全策として、2022年6月まで銀行にマイナス1%で資金を供給するとしています。銀行にマイナス金利で直接貸し出しを行うことで、銀行収益に直接プラスに働きます。

これらの金融政策が功を奏し、債券市場は落ち着きを取り戻しています。特に南欧諸国(イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ)の国債の金利が史上最低を更新しました。
  

2.2021年の債券市場はどうなる

新型コロナが終息に向かうにつれ、金利は上昇に転じる可能性があります。2021年中の中央銀行による政策金利引き上げは難しいかもしれませんが、ファンダメンタルズが好転した場合はテーパリング(金融資産の購入額を徐々に減らすこと)により、金利上昇圧力が高まる可能性があります。

現在、各国政府はコロナによる経済の失速を、財政(国債の増発)で補っており、債務残高は膨らむばかりです。債務残高の増大は、国債金利の上昇に繋がる可能性があり、長期債や超長期債の金利動向には注意が必要です。

また、コロナワクチン開発・普及によりコロナが終息に向かうことで経済が安定すれば、長期債を中心に金利が上昇に転じる可能性があります。

2-1.米国:イールドカーブのスティープニング

FRBは金融政策正常化の条件として2020年9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で「雇用最大化とインフレ率が長期的に2%を超える軌道に乗るまでは現在の政策金利(0~0.25%)にとどめる」という方針を明らかにしました。FOMCメンバーによるドット・チャート(政策金利見通し予想分布)では、2023年まで現在の政策金利が維持される見通しです。

しかし、2021年中にコロナワクチンが開発・普及することでコロナが終息に向かえば、政策金利の影響を受けにくい長期・超長期の金利水準が上昇し、イールドカーブがスティープニングする(短期金利と長期金利の金利差が大きくなる)可能性があります。これは市場の回復とそれに伴う金利上昇の予想が市場に立つことを意味します。

2-2.中央銀行の足並みの乱れ

2020年は足並みが揃っていた世界各国の金融政策ですが、2021年には足並みが乱れてくる可能性があります。この乱れが債券市場の混乱を導く可能性があります。

現在、コロナの影響で世界中の中央銀行が金融市場に資金を供給しているため、債券・株式市場ともにリスクオンの動きとなっています。2020年の債券市場はコロナ禍を担保とし、リスクを取りやすい年でした。

2021年はファンダメンタルズが落ち着けば、中央銀行は政策金利を引き上げられないにしても、テーパリング(金融資産の購入額を徐々に減らすこと)の可能性があります。市場に供給されていた資金量が減ることで債券市場では金利が上昇するでしょう。日米欧の金融政策の足並みが乱れる可能性には、注意する必要があります。

2-3.注目される日銀の政策

日本銀行は、12月18日に現在実施している「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション」の6ヵ月の延長を発表しました。

現在の社債等買入の対象期間は残存年数が1年以上5年以下の銘柄が対象です。延期されない場合は2022年4月から対象期間が以前(1年以上3年以下)となるため、5年を中心とした社債の利回りが上昇する可能性がありました。しかし、今回延長されたことで、金利上昇懸念が無くなったため、市場に楽観が広がっています。

3.投資の注意点

コロナが終息に向かえば金利が反転する可能性があるため、債券に投資する場合は年限が10年を超えるようなものは見送り、期間の短い(3年から5年程度の投資適格債)銘柄を選ぶようにするのが無難です。また、コール付き劣後債に関しては、今後の長期金利上昇に伴いコールされないリスクが発生することが考えられるため、投資を避けたほうが望ましい状況です。

社債市場の動向を観測するには、米国のハイイールドETF(HYG)の動きが参考になります。ハイイールドETFは「炭鉱のカナリアと呼ばれるジャンク債」で構成されリスクに敏感なため、機関投資家からも注目されています。このETFが下落に転じたら要注意です。

まとめ

今回は債券市場について2020年を振り返り、さらに2021年の予測を試みました。

2020年は、新型コロナによる経済の混乱を抑えるために世界中の中央銀行が市場に大量の資金を供給したため、国債の金利が低水準にありました。2021年はワクチン開発・普及により、新型コロナの終息が期待されています。同年中の政策金利の変更は期待ができませんが、政策金利に動きが縛られにくい長期、超長期債を中心に金利が上昇する可能性があります。

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藤井 理

藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。