IPOは「新規株式公開」と呼ばれ、未上場企業が株を投資家に売り出して、証券取引所に株式を上場し、幅広い投資家が売買できるようにすることを言います。IPO投資とは、新規上場するときに投資家に販売される「株を買う権利」を抽選で取得し、上場日に株式を売却し利益を狙う手法のことです。
2020年1年間のIPOは93件(東京PROマーケットを除く)です。12月16日時点で上場した72銘柄のうち、初値の株価が公募価格を上回った銘柄は49銘柄でした。なかには公募価格の10倍を上回った銘柄もあります。
IPOは気になるものの、時間がない、購入の仕方がわからないなどの理由で参加されていない方も多いと思います。なかなか当選しないIPOですが、当選すれば大きな利益につながる可能性があります。今回はIPO株の買い方、抽選申し込みなどの手順や当たる確率を高くする方法などを解説します。
目次
- IPOに参加するには
1-1.証券会社に口座を作る
1-2.IPOの情報を集める
1-3.IPOに応募する - IPOの事例・・ウェルスナビの例
- IPO投資に便利な証券会社
- まとめ
1.IPOに参加するには
IPO株を買うには、①証券会社に口座を作る、②IPOの情報を集める、③IPOの抽選に応募するという手順を踏むことになります。それぞれ詳しくみていきましょう。
1-1.証券会社に口座を作る
国内に約260社ある証券会社のなかから、IPOの取扱い実績のある証券会社に口座を開設する必要があります。IPOを申し込む際には、事前に前受金が必要な証券会社があるため注意が必要です。また、IPOは複数の証券会社に申し込むことで、当選確率を高くすることができます。
2020年のIPO取扱い本数が多い会社はSBI証券、みずほ証券。取扱い銘柄数が多い証券会社としては、SMBC日興証券、野村證券、大和証券、楽天証券、マネックス証券、岡三オンラインなどが挙げられます。前受金が不必要な証券会社は、野村證券、岡三オンライン、、松井証券、DMM株などです。
前受金とは、IPO申し込み時に、あらかじめ払い込む購入金額のことです。例えば1,150円でIPOに参加した場合、株の取引単位が100株ならば11.5万円を払い込む必要があります。複数の証券会社に申し込んだ場合、1社ごとに資金が必要になります。一方、前受金が必要ではない証券会社の場合、事前に資金を準備する必要はありません。
1-2.IPOの情報を集める
IPOの情報はJPX日本取引所グループのホームページの「新規上場会社情報」で確認できます。このホームページ上にはIPOに関する情報が集約されています。
1-3.IPOに応募する
幹事など引受会社は、「1-2. IPOの情報を集める」で紹介した「新規上場会社情報」にある「会社概要」を参考にします。幹事取引参加者や元引受参加者等に掲載のある証券会社において、IPOへの申し込みが可能です。なお、幹事取引参加者は主幹事と呼ばれ、引受数がもっとも多い証券会社です。IPOを申し込む場合、できれば主幹事には申し込みをするようにしましょう。
2.IPOの事例・・ウェルスナビの例
ここからは、IPOにどのように参加するのかをみていきます。具体的にロボアドバイザー「ウェルスナビ」運営会社のウェルスナビ株式会社の例を取り上げ紹介していきますが、前項で説明した「証券会社を選んでから情報収集する」方法とは違う説明となります。投資したいIPO銘柄が決まっている場合には、先に情報収集をした方が良いためです。また、すでに証券口座を保持している場合、違う証券会社に新たに口座を開設した方が、当選確率が高くなる場合があります。
さて、ウェルスナビの例で具体的にみていきます。まず、日本取引所グループの「新規上場会社情報」上で「ウェルスナビ」を探します。会社概要のファイルを広げるとIPOに関する情報を確認することができます。上場承認日は2020年11月18日です。
「新規上場会社情報」に掲載されている情報のうちチェックすべき項目を挙げておきます。
- 上場予定日:2020年12月22日
- 市場区分:マザーズ
- 発行済株式総数:4,246.764万株
- 1単元の株数:100株
- 幹事取引参加者:SBI証券
- 公募・売出しの別:公募250万株、売出し1,309.43万株 、オーバーアロットメントによる売出し155.94万株
- 公開価格の決定方法:ブック・ビルディング方式
- 仮条件決定日:2020年12月3日
- ブック・ビルディング期間:2020年12月7日から12月11日まで
- 公開価格決定日:2020年12月14日
- 申込期間:2020年12月15日から12月18日まで
- 払込期日:2020年12月21日
- 元引受取引参加者等:SBI証券、野村證券、大和証券、みずほ証券、三菱UFJMS証券、岡三証券
上記の情報から、SBI証券が主幹事証券であることや、IPOの規模などを知ることができます。このケースでは公募・売出し株数の合計が1,715.37万株です。IPOの当選人数は、1人100株と想定した単純計算では、171,537名(1715.37万÷100株)となります。
主幹事証券のSBI証券は、引受株数が多いため当選確率が高いといえます。前受金が準備できる方は、SBI証券や、その他の引受会社に資金が許す限り申し込みをしましょう。
しかし、SBI証券に申し込む場合、前受金11.5万円(1,150円×100株)が必要です。そこで、上記情報の「⑬元引受取引参加者等」にある証券会社のうち、野村證券に申し込むと前受金なしで申し込みが可能です。このほか、岡三証券のグループ会社である岡三オンラインなどは前受金なしで申し込みできます。
IPOの申し込みは、ブック・ビルディング期間の12月7日から12月11日の間に行います。入札価格は12月3日に発表された仮条件(1,100~1,150円)の範囲になりますが、当選確率をあげるためにレンジの高値1,150円で申し込みます。
12月14日に公募価格と抽選結果が分かります。当選したら申し込み期間内に購入・辞退の意思表示をし、購入する場合は購入金額を21日までに振り込みます。前受金が必要な会社の場合は事前に支払いをしているため、この時点では支払う必要がありません。支払いが終われば、22日の上場日を待つのみです。
3.IPO投資に便利な証券会社
IPO投資を行うのに有利になる証券会社は、「1-1.証券会社に口座を作る」で挙げた引受実績がある会社です。できれば1社だけではなく複数の証券会社に口座を開設しましょう。
売買手数料は高いよりは低い方が良いのですが、そもそもIPOは当選しないと意味がありません。IPO株の購入時には手数料がかかりませんが、売却時にはかかります。しかし、当選すれば売却時には手数料を上回る利益が期待できるため、ある程度の手数料はコストと考えましょう。
4.まとめ
IPOは、人気が高く倍率が高いため、なかなか当選することができません。当選確率を上げるには多くの証券会社に申し込むことが必要です。あきらめずに応募し続けることが大切です。
今回はIPOの参加の仕方や、流れについて説明しました。2021年も多くの銘柄が新規上場します。IPOに興味があり参加したいと思っていた方は、2021年にはデビューを検討してみてはいかがでしょうか。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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