老朽化マンションの増加が不動産投資に与える影響は?エリアなど投資判断のポイントも

※ このページには広告・PRが含まれています

実物資産を運用する不動産投資では、建物の経年劣化が一つの課題となります。以前に建てられた老朽化マンションの増加については、国の政策検討課題ともなってきており、社会問題として指摘されています。

老朽化マンションの増加は、不動産投資にどのような影響があるのでしょうか。本記事では、老朽化マンションの増加と都市・地域環境との関係や影響、エリア選びの判断材料について考えていきます。

目次

  1. 老朽化マンションの増加がもたらす問題が懸念されている
  2. 老朽化マンションの増加と都市・地域環境との関係・影響
    2-1.マンションの老朽化とともに高齢化が進行している
    2-2.老朽化マンションの増加と住宅市場・地域へのマイナス影響
  3. 老朽化マンションの増加から考える不動産投資判断のポイント
    3-1.都市開発に伴い大規模なマンション建設がおこなわれたエリアを避ける
    3-2.マンションが多く、人口構成の高齢化が顕著なエリアを避ける
    3-3.行政による「コンパクトシティ」への動きも
  4. まとめ

1.老朽化マンションの増加がもたらす問題が懸念されている

国土交通省のマンション政策小委員会がまとめた「マンション政策の現状と課題」によると、令和5年に約140万戸であった築40年超の老朽化マンションは、令和10年には約200万戸、令和20年には約370万戸に達し、急増すると見込まれています。

国土交通省は、こうした老朽化マンションが、適切に維持管理がおこなわれず、そのマンションの居住者のみならず、近隣住民などにまで、生命や身体に危険を及ぼすような事態が発生し始めていることを指摘しています。

たとえば、老朽化マンションでは、廊下や天井が崩落したり、外壁や手すりが崩落、剥落するようなことが起きています。このような危険が発生しなくとも、築40年を超えると、外壁や屋根が劣化して雨漏りがしたり、給排水管が老朽化して水漏れするような問題は、約4割のマンションで起きているとされます。

また、同じレポートの中では、築40年超の老朽化マンションの約4割が、大規模修繕を適切に実施できていない可能性があるとしています。老朽化マンションの管理組合が高齢化や非居住化によって十分に機能していない実態も指摘されています。

2.老朽化マンションの増加と都市・地域環境との関係・影響

老朽化マンションの増加は、その都市・地域の人口構成と大きな関係があります。そして、その都市・地域の人口構成と関連して、都市・地域環境、不動産市場などにどのような悪影響を及ぼすといえるのか、考察していきます。

2-1.マンションの老朽化とともに高齢化が進行している

老朽化マンションは、その地域の高齢化と同時に進行し、マンションの劣化をもたらす可能性があります。

たとえば、ニュータウンの開発に伴って建設されたマンションは、大規模な共同住宅であり、建設当時その地域に一定の年齢層が居住されたということになります。そのようなマンションが老朽化しているということは、継続的に転入者が来ていない限り、マンションの住人も高齢化しているということになります。

マンション住民が高齢化した場合、リタイヤによる所得の低下や、余命期間が短いことが影響し、マンションの維持管理や修繕への投資に積極的でなくなる傾向があります。そのため、老朽化マンションは一層劣化しかねない可能性があります。

2-2.老朽化マンションの増加と住宅市場・地域へのマイナス影響

生産年齢人口が減少するにつれて、住宅需要は減少していきます。通常は、需要が減少すると市場原理が働き、ストックの減少によって価格調整が起こります。

しかし、住宅は耐用年数が長く、区分所有のあるマンションでは各区分所有者の合意形成が難しいことから、ストック量の調整が働きにくい傾向があります。

住宅需要の減少量と比較して老朽化マンションなどの住宅ストックの増加が目立つようになっていくと、不動産価格の低下が急速に進む可能性があるといえます。不動産価格の低下は資産価値の低下だけでなく、その地域の税収の低下や治安の悪化にもつながり、生活環境を整備していくことが難しくなってしまうという問題があります。

3.老朽化マンションの増加から考える不動産投資判断のポイント

マンションの老朽化は、高齢化とともに進行し、そのことが一層マンションの老朽化に拍車をかける可能性があると考えられました。

そして、老朽化マンションなどの住宅ストックの増加は、不動産市場やその地域環境にマイナス影響を与える可能性もあるといえます。これらの考察結果を前提に、老朽化マンションとの関連で不動産投資判断のポイントを考えてみましょう。

3-1.都市開発に伴い大規模なマンション建設がおこなわれたエリアを避ける

前述したように、ニュータウンのような、郊外型の都市開発に伴い、大規模なマンションが建設されたエリアは、マンションの老朽化と人口減少が進むことで、人口構成の高齢化が急速に進行していく可能性が高いといえます。

急速な人口の高齢化は、住宅需要の減少と不動産価格の急激な低下をもたらすことがあり、不動産投資の際にも、こうしたエリアは避けた方がよいでしょう。

3-2.マンションが多く、人口構成の高齢化が顕著なエリアを避ける

老朽化マンションが問題となるのは、適切な維持管理や修繕などがおこなわれないケースです。適切な維持管理や修繕などがおこなわれないと、老朽化マンションが一層劣化して生命や身体に危険を生じたり、環境に悪影響を及ぼしたりするような状況になります。

このような状況になってしまう背景の一つには、人口構成の高齢化によるマンションへの投資能力の減退があると考えられます。

また、老朽化マンションの建て替えは、区分所有者の合意形成を図ることが難しいという問題がありますが、住民の高齢化が進んでいると、健康上の理由などにより住み替えが難しいケースもあることから、建て替えの合意形成がさらに困難になる可能性があります。

このように、高齢化が顕著なエリアは、老朽化マンションに適切な維持管理や修繕などがおこなわれず、建て替えも一層困難になる可能性があり、環境に悪影響を及ぼすような老朽化マンションが増える可能性があります。マンションが多く、かつ、人口構成の高齢化が顕著なエリアは、不動産投資の際に避けることを検討してみましょう。

3-3.行政による「コンパクトシティ」への動きも

「コンパクトシティ」とは、国土交通省が推進している政策で、人口減少の社会において、地方の利便性を高めるべく都市機能を整備するための政策です。郊外に分散してしまっている人口を都市部に集めることで、インフラの効率化やエネルギー消費の抑制を目指した施策になっています。

コンパクトシティが推進されていくことで、地方経済に変化が起き、これまでとは異なる住宅需要が増加する可能性もあります。アクセスのしやすい都市部においては、地価上昇の可能性も高まると考えられるでしょう。

老朽化マンションといっても、各都市の財政状況や人口構成、また細かなエリアの事情によって住宅需要が大きく異なってきます。どのような背景で老朽化が進んでいるのか、行政の取り組みなどもチェックしながら、今後の流れを検証されていくと良いでしょう。

まとめ

老朽化マンションの増加が問題となっていることと、その地域の人口構成との関連性、不動産市場や地域環境に及ぼす影響について考えてきました。マンションの老朽化は、高齢化とともに進行し、そのことが一層マンションの老朽化に拍車をかける可能性があると考えられます。

そして、老朽化マンションなどの住宅ストックの増加は、不動産市場やその地域環境にマイナス影響を与える可能性もあるといえるでしょう。

不動産投資のエリア判断にあたっては、大規模な都市開発に伴ってマンションが建設されたエリアでないか、人口構成の高齢化が顕著なエリアでないか、という点を検討材料にしてみましょう。

The following two tabs change content below.

佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。