不動産投資はシミュレーション通りに運用できれば、他の投資と比べて安定した投資となります。しかし、その一方で不動産投資には空室や突発的な修繕費用、金利上昇などのリスクもあります。
そのようなリスクと向かい合いながらシミュレーション通りに運用するには、物件の見極めがひとつのカギになってきます。
ここでは、投資用不動産を購入する際に抑えておきたいポイントとして、5つのキーワードについて解説したいと思います。
目次
- 「職住近接」が今後の住居環境の主流になる
1-1.職住近接のメリット、デメリット
1-2.企業が職住近接を後押しする
1-3.職住近接で狙い目になる投資用不動産 - 駅から徒歩7分圏内の住居が人気
2-1.徒歩7分圏内に建つ建物とは
2-2.物件によっては徒歩7分以上かかっても需要はある
2-3.徒歩7分圏内で狙い目の投資用不動産 - 売買時に説明が義務化されたホームインスペクションとは
3-1.ホームインスペクションの具体的内容
3-2.ホームインスペクションの導入により狙える投資用不動産 - イールドギャップで投資効率を判断する
4-1.イールドギャップの正しい計算方法
4-2.イールドギャップを考慮した場合に有利な投資用不動産 - 不動産投資で生かせるレバレッジ効果
5-1.レバレッジ効果で生まれるメリット
5-2.レバレッジ効果を生かした投資用不動産 - まとめ
1.「職住近接」が今後の住居環境の主流になる
国土交通省が市街地活性化や環境整備のひとつの策として「職住近接」という施策を推進しています。文字通り職場と住居を近接させるという意味です。
単に会社の近くに住むというだけではなく、周辺は緑の木々や、水などの自然に囲まれ、学校や病院、銀行、福祉施設などが建設されています。子供から老人までが快適に安心して暮らせるそのような環境を総称して「職住近接」と言います。
以前は郊外に戸建てを買い、通勤時間に1時間以上かかることが当たり前でしたが、職住近接の推進により、働く人のライフスタイルが変わってきています。
1-1.職住近接のメリット、デメリット
職住近接が推し進められることで、そこに住む人は通勤のストレスから解消され、時間的余裕が生まれます。また、仕事終わりに社員同士で食事に行ったりすることで、仲間とコミュニケーションをとることが容易にできるようになります。雇用される側も雇用する側にもプラスに働くことは多いでしょう。
その反面、プライベートと仕事のオンオフが難しくなったり、都市部では家賃が高かったりするデメリットもあります。
1-2.企業が職住近接を後押しする
そのようなデメリットになる部分を解消し、社員の生活を後押ししてくれる企業もあります。会社から2駅以内のところに住めば家賃補助が数万円ついたり、数km以内に住めば数万円キャッシュバックしてくれたりする企業も出てきています。
1-3.職住近接で狙い目になる投資用不動産
職住近接の施策は、主に都市中心部の企業の拠点周りで進められています。このことから企業に勤める社員が住む都市部のマンションが狙い目になってくるでしょう。
マンションやマンション建設に伴う環境の再開発は、都市部の駅からの距離が遠いエリアもあります。都市部のオフィス街に近いエリアとなると必然的に学生ではなく社会人にターゲットを絞ることになります。
特に独身や子供のいない夫婦が多くなっていますので、ワンルームではなくそういった層の人たちが住むような1LDKがおすすめです。
2.駅から徒歩7分圏内の住居が人気
駅から徒歩7分圏内が一つの基準としてあります。これはある大手の不動産情報会社が住居を探している人に、駅からどれくらいの距離で探しているかというアンケートを取ったところ、徒歩7分以内という回答が多かったため、その項目を作ったことが始まりだと言われています。このことから駅徒歩7分以内が暮らしやすい距離だということが想定されます。
2-1.徒歩7分圏内に建つ建物とは
建物を建てる際には建築基準法にある用途地域の制限を受けます。用途地域とは街の景観や環境が損なわれないように、場所によって建てられる建物の高さや種類を制限するものです。13種類の用途地域があり、大きく分けると「住居系」「商業系」「工業系」に分類されます。以下の図は国土交通省で用途地域を説明した図です。
*国土交通省のホームページから引用
投資用不動産を選択する際には用途地域を見ることで、どういった不動産が周りにあるかがわかり、競合になる物件を想定することができます。
駅から徒歩3分以内のエリアは、傾向として商業地域になっていることが多く、大規模な百貨店やオフィスビルが立ち並びます。駅から徒歩3分から7分は近隣商業地域で、店舗や高層のマンションが立ち並びます。7分を超えた時点で戸建て住宅や3階建てくらいのアパートが見られるようになります。
徒歩7分を境に物件の高さの低い物件が多くなりますので、マンションが少なくなることが考えられます。そういったことも投資用不動産を選ぶうえで大事な要素になってきます。
2-2.物件によっては徒歩7分以上かかっても需要はある
駅から徒歩7分を境に人気が落ち、建物は低層のものが多くなることがわかりました。だからといって、7分以上かかるエリアに投資のチャンスがないかというとそうでもありません。そのエリアはアパートが多くなります。駅から遠くても家賃の安い物件を探している人には、アパートは需要があるエリアと言えるでしょう。
2-3.徒歩7分圏内で狙い目の投資用不動産
徒歩7分圏外でも需要があることがわかりましたが、徒歩7分圏内を希望する人が多いということから、物件はまずはその圏内で探しましょう。
徒歩7分圏内はアパートを建てられないエリアが多いため、狙い目はマンションになってきます。もし、アパートがある場合は物件価格や築年数から、入居者が付くかどうかを検証することが必要です。
駅に近いほど、ライバルの物件がマンションになってきます。そのためアパートは優先順位がマンションより下になる可能性があり、入居率が落ちる可能性があるからです。
マンションであれば、7分圏内という立地から多少古くても入居者の需要が大きいでしょう。このエリアであれば広さを問わず新築や中古のマンションが狙い目になります。
3.売買時に説明が義務化されたホームインスペクションとは
ホームインペクションとは住宅診断のことです。2018年4月に不動産売買時に住宅診断結果の説明が義務化されました。ホームインスペクションとはいったいどのようなものなのでしょうか。その内容と義務化されることで有利になる投資用不動産について解説します。
3-1.ホームインスペクションの具体的内容
ホームインスペクションはプロの住宅診断士が物件を調査し、物件の細かなところまで、診断することを指しています。住宅診断というと戸建てのイメージが大きいですが、中古マンションも診断の対象になっています。
ホームインスペクションでは基礎部分からベランダ、天井、内壁などまで0.5mmのほどのひび割れや、雨漏りがないかなどまで細かく診断します。調査は目視で行いますが、必要に応じてサーモグラフィなどの機材を使うこともあります。
ホームインスペクションの導入により、購入してすぐに大きな修繕が必要になった、といったような問題が減るのではないかと期待されています。
診断士は、売り主と買い主のどちらか一方に、メリットやデメリットが生じるような発言は禁止されているため、フラットな診断が期待できます。また、修繕が必要な場合でもリフォーム業者などの斡旋などは禁止されています。第三者的立場の診断のプロから公平な意見が聞けるという点で購入者には大きなメリットになるでしょう。
3-2.ホームインスペクションの導入により狙える不動産
ホームインスペクションの導入により、中古アパートや築20年を超えるような築年数の経った中古マンションなどについても投資機会が広がりました。
これまで、築古物件は利回りが高いというメリットがある一方で、建物や設備の見えない部分などに損壊部分や瑕疵部分が隠れている可能性があった上に、購入時の契約では「瑕疵担保責任」という瑕疵があったときの保証期間が数ヶ月しかなかったりするなど、購入側のリスクが大きいというデメリットがありました。
ホームインスペクションによりこれらの中古物件において購入時には見えなかったリスクを排除できるようになったため、「立地はいいけど、雨漏りや設備故障などがないか不安…」といった悩みが解消され、中古物件への投資が拡大することが予測されます。
さらに、そういった立地が良く需要の高い中古物件を購入して、リノベーションを行って物件のバリューアップを狙うという投資戦略も採ることができるでしょう。たとえば、「リズム」という中古マンション投資会社は、自社でもインスペクションのサービスを提供していますが、東京23区の割安な中古マンションをリノベーションすることで不動産価値の向上や家賃アップなどの実績があります。
リズムのインスペクションサービス
リズムのリノベーション例
今後は、新築だけではなく中古不動産への投資やリノベーション投資なども視野に入れながら、幅広く検討を進めていくと良いでしょう。
4.イールドギャップで投資効率を判断する
イールドギャップとは不動産投資によって生じる利回りと、ローン金利の差のことを言います。イールドギャップが大きいほど利回りが良い投資をしていると判断できます。イールドギャップが大きければ大きいほど、融資金利を利回りでカバーして、なおかつキャッシュフローを得られていることを表しています。ただ、イールドギャップの計算方法は間違えて理解することが多いので、正しく理解して使うようにしましょう。
4-1.イールドギャップの正しい計算方法
例えば不動産投資をする際に金融機関から2%で融資を受けているとします。利回りが6%あるとしましょう。この場合は6%-2%=4%つまりイールドギャップは4%という試算が成り立ちますが、実はこれは間違いです。
この計算には返済期間が考慮されていません。例えば2,000万円のローンを2%で組んだ場合、返済期間が10年の場合と30年の場合では年間の返済額が違います。月々の返済額は以下の表のようになります。
融資額 | 金利 | 期間 | 月々の返済額 |
---|---|---|---|
2,000万円 | 0.02 | 10年 | 18万4,026円 |
2,000万円 | 0.02 | 30年 | 7万3,923円 |
期間を考慮しないと本当にイールドギャップのメリットがあるのかどうかがわかりません。そこで、イールドギャップの試算をする際は、ローンの金利ではなく、年間返済額を借り入れ総額で割った「ローン定数K」という数値を使います。ローン定数Kを使って試算をしてみましょう。
2,000万円借り入れ30年のローンを組んだ場合、毎月の返済額は7万3,923円ですので、
7万3,923円×12ヵ月÷2,000万=4.4%(小数点2位以下切り捨て)
となります。これがローン定数Kと呼ばれる数値です。この数値を利回りから引けばイールドギャップが算出されます。
この場合6%-4.4%=1.6%がイールドギャップになります。
4-2.イールドギャップを考慮した場合に有利な投資用不動産
イールドギャップの計算にはローンの返済期間が大きく影響することがわかりました。同じ融資額でもローンの返済期間が短いとイールドギャップは悪くなります。
そのため中古マンションや木造のアパートなどは融資期間が短くなる可能性が高いため、イールドギャップの面から見ると悪くなる可能性が高くなります。イールドギャップだけを考えるなら新築のマンション投資を選択するのが良いでしょう。
5.不動産投資で生かせるレバレッジ効果
レバレッジ効果とはテコの原理のことです。不動産投資では小さな資金で大きな投資効果を出すことを指します。例えば2,000万円の不動産を購入する際に自己資金を200万円準備して1,800万円の融資を受けて不動産投資を始めたとします。
この場合200万円の投資で2,000万円の投資効果を得られます。このような状態がレバレッジ効果を利用していることになります。
5-1.レバレッジ効果で生まれるメリット
では融資を受けることでどのようなメリットがあるのでしょうか。上記の物件が利回り6%だとします。この場合の年間の収入は2,000万円×6%=120万円で年間120万円の収入が発生することになります。
しかし、自己資金は200万円ですので、200万円の場合6%の利回りは12万円しかありません。120万円-12万円=108万円がレバレッジ効果で発生する利益になります。
5-2.レバレッジ効果を生かした投資用不動産
レバレッジ効果は融資を受けていますので、金利が高くなったりすることで月々の返済額が大きくなることがリスクになります。月々の返済で赤字にならないためにもなるべく長めのローンが組める新築のマンション投資がおすすめです。
融資額の比率が大きくなるほどレバレッジ効果が大きくなりますが、リスクも大きくなります。レバレッジ効果を考慮した場合、新築マンションが中古マンションと比較してメリットがあるという意味で、決して新築マンションが安全だということではありません。
金利が上昇した場合は返済額が多くなり、レバレッジ効果が出せなくなるリスクもありますので、金利には十分注意して運用しましょう。
まとめ
不動産投資で最近良く聞かれるキーワードの解説と、それぞれのキーワードの詳細な内容からメリットのある投資用不動産をご紹介しました。しかし、不動産投資は色々な要素が影響し投資効果が変わってくる奥の深いものです。
今の日本はとても金利が低いので、レバレッジ効果やイールドギャップがプラス効果に働いていますが、経済の状態が変わり金利が極端に上がった場合は、リスクになります。今回の解説をひとつの参考にしていただき、色々な視点から物件を検討しましょう。
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