2017年も、不動産投資の市場には色々な動きが見られました。2018年の不動産投資市場がどのような動きになるかを考えていくにあたり、2017年の主な動きをまとめてみましたので、一緒に振り返っていきましょう。
- 不動産投資市場の2017年の動向
- ソーシャルレンディングの2017年の動向
- Jリートの2017年の動向
- 海外不動産の2017年の動向
- 民泊投資の2017年の動向
- 経済全体の2017年の動向
- 2018年の不動産投資市場の見通しまとめ
不動産投資市場の2017年の動向
まずは不動産投資市場全体の動向やアパートローンなどの動向について振り返っていきたいと思います。
首都圏の新築マンション平均価格は前年比107%に上昇
不動産経済研究所の調査によると、2017年全体の首都圏の新築マンションの平均価格(5,960万円)は、2016年全体の新築マンションの平均価格(5,553万円)に比べて107.3%の上昇となりました。(※1)
※1首都圏のマンション市場動向((株)不動産経済研究所調べ)
東京23区の中古マンション価格は2017年1月時点から101.5%に上昇
一方、東京23区内の中古マンション価格については、2017年1月時点と比べて2017年10月時点の価格は101.5%に上昇、東京都下では103.2%の上昇となりました。
参考記事:「LIFULL HOME’S PRICE INDEX」
※中古マンション価格が上昇し続けている背景については、「中古マンション価格上昇続く~東京23区は55ヶ月連続!なぜマンション投資市場は暴落しない?」の記事をご覧ください。
東京都のマンション賃料は2017年1月時点から98.9%に下落
マンション価格が上昇する一方で、マンション賃料は年初からやや下落のトレンドとなっています。マンション価格が上がり、マンション賃料がやや下がったことで、2017年全体ではマンションの利回りがやや低下したことになります。
2017年11月16日 三大都市圏・主要都市別/分譲マンション賃料月別推移(東京カンテイ)
2017年に入り、アパートローンは前年比マイナスに転じる
アパート関連の大きな動きとしては、日銀が10月に発表した「金融システムレポート」において、2017年4月~6月の地銀のアパートローンの融資が前年比マイナスに転じたという公表がありました。
参考記事:「アパートローン融資が急減速!」
マイナス金利政策や相続税対策などを背景に、地銀のアパートローンの融資実行は一貫して伸び続けていましたが、日銀などから融資の過熱が指摘されており、ローンの審査が以前よりも厳格になってきたものと考えられます。
不動産投資家「不動産投資の融資が厳しくなった」
一方、オーナー側のローンに対する感覚としても、健美家の実施する不動産投資に関する意識調査において、過半数が「融資が厳しくなった」と回答をしています。融資環境の厳しさは今後も続くと考えられますので、融資を引くノウハウなどについても知見を深めておくと良いでしょう。
貸家の着工件数は高水準が続くも5ヶ月連続のマイナス
国土交通省が発表している「住宅着工統計」において、貸家の着工件数は2017年1月~5月までは前年比プラスが続いていましたが、2017年6月~10月は5ヶ月連続で前年比マイナスとなりました。アパートローンの融資が厳しくなってきたことなども、大きく関係していると考えられますので、2018年はアパートの着工件数が減少する可能性もあります。
参考記事:「貸家(アパート・マンション)着工件数、高水準続く~住宅着工統計から見る不動産投資の動向と気になる空き家問題」
メガバンクが地方の住宅ローンから撤退
不動産投資だけでなく、住宅ローンでも大きな動きがありました。2017年10月末にみずほなどのメガバンクグループが地方での住宅ローンから撤退するという報道が相次ぎ、他の金融機関の事業継続・撤退が注目されています。
住宅ローンは、すでに薄利多売の商品になってきており、ある程度の価格水準でないと金融機関側も十分な利益が出せない状況です。住宅ローンの融資が厳しくなると、自宅購入層が不動産を購入しにくくなり、地方の不動産需要や不動産価格が低下する恐れがあるため、2018年も注視をしていきたいポイントとなります。
ソーシャルレンディングの2017年の動向
ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)の領域では、「OwnersBook(オーナーズブック)」を提供するロードスターキャピタル株式会社が2017年9月28日に上場を果たし、市場全体で盛り上がりを見せました。
※「ソーシャルレンディングって何?」という方は、「投資家急増中『ソーシャルレンディング』とは?~仕組みや市場規模から事業者の一覧など」の記事をご覧下さい。
Jリートの2017年の動向
Jリート指数は、年初の1月4日終値1853.57から、12月8日時点で1660.08(10.4%下落)となっています。ただ、足元の数値を見てみると、三鬼商事が毎月発表している、東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の11月時点のオフィス平均空室率は3.03%と非常に好調な水準が続いており、2018年には戻りが期待できる水準となってきています。
海外不動産の2017年の動向
国内の不動産価格上昇や利回り低下などを受けて、海外不動産への投資は一層加速しています。CBREの発表によれば、2017年上期の日本人投資家によるアウトバウンド不動産投資(海外不動産への投資)は、投資額は前年同期比23%増の13億ドルまで増加をしています。
また、ドル円も年初の117円前半から、12月8日時点では113円台半ばへ下落しているため、円高の進行も海外不動産への投資拡大に寄与しているものと考えられます。
民泊投資の2017年の動向
2017年は訪日外国人数が過去最高となる2,800万人超の見込みとなり、民泊仲介サイト最大手Airbnbとみずほ銀行の提携や楽天による民泊事業への参入発表など大手企業のリリースも相次ぐなど、民泊市場は非常に盛り上がる一年となりました。また、今年の6月には住宅宿泊事業法(民泊新法)が可決、来年6月15日からは全国的に民泊が解禁されます。来年は本当の意味で日本にとっての民泊元年となることが予想されます。
不動産投資家にとっては、「旅館業」「特区民泊」「民泊新法」というそれぞれの法律の利点やデメリットをしっかりと理解しつつ、戦略的に民泊物件に投資していくことで、通常の賃貸よりもさらに高いリターンを得られるチャンスが広がる一年となるでしょう。
経済全体の2017年の動向
日経平均は11月7日に2万2937円60銭を記録し、1992年1月9日以来の26年振りの高値となりました。企業の好調な業績や米国の利上げ予測を背景として、日本株に本格的な見直しが入ったと言われています。年初の終値19,594.16円から比べると、12月8日時点で22,811.08円となっており、116.4%となりました。
2017年10月に行われた衆院選での与党圧勝により、2018年も金融緩和の継続が見込まれるため、マネックス証券の代表取締役社長の松本大さんをはじめとして「日経平均が3万円を突破する」という強気な見方も出てきています。株価の上昇や高値での安定が続けば、投資家の資金が潤い、不動産投資市場にとっても有利な状況となります。
2018年の不動産投資市場の見通しまとめ
2018年のマンション価格は、今年と同様に東京23区でやや上昇か横ばいとなる一方で、物件の物色は都下や郊外へと向かい、都下や郊外の物件需要や価格が上昇するのではないかと考えられますが、中長期的には都下や郊外の物件は下落リスクが大きいため、慎重な判断が必要です。2018年に販売・購入されるマンションのタイプとしては、都心の「職住近接」のハイグレードなマンションと、都下や郊外の低価格帯のマンションの2極化が一層進むことが予想されます。
アパートローンは2018年以降も引き締めの傾向が続くと想定されるため、融資環境の厳しさを背景にアパート価格は横ばいか下落に向かう可能性があります。一方、ソーシャルレンディングの分野は2018年も市場の盛り上がりが続き、市場規模が1000億円を超えることが想定され、民泊投資の分野でも「旅館業」「特区民泊」「民泊新法」などの収益機会につながるトピックが見込まれています。
Jリートは2017年の指数低下により利回りが改善してきており、足元の好調なオフィスマーケットの状況も後押しをする形で中長期の配当金を狙った買いが期待されるため、2018年は戻りが期待されます。
海外不動産の投資については、2017年に引き続き、2018年も投資額の拡大が予想されます。堅調な国内不動産市場に対して2018年も大きな値下がりは考えにくく、海外と比べて利回りが低い状態が続くという点と、2018年のドル円が円高に振れる見通しが強いという点から、海外不動産の物色が進むと想定されます。
2018年は副業解禁の後押しとなりうる「就業規則モデルの改正」なども見込まれるため、好調な経済状況や民泊解禁などのトピックと併せて、不動産投資市場には追い風が続く公算が大きいと考えられます。来るチャンスをしっかりと掴めるよう、ぜひとも年末年始は万全の情報収集をして素敵な新年をお迎え下さい。
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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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