新型コロナウイルス感染拡大は、感染者数の全国的な増加と変異種の確認で、不安なまま年末を迎えている。不動産投資市場の先行きが不透明な中、投資用不動産を扱う株式会社グローバル・リンク・マネジメントの研究機関「グローバル都市不動産研究所」は2020年のコロナ禍での東京の不動産市況はこれまでどのように推移したのかを振り返り2年目に突入する21年を予測している(12月22日発表)。
20年の東京の不動産市況は「マンション堅調、オフィスやや弱含み」。新築マンションの新規販売戸数は緊急事態宣言を受けて一時的に供給が絞り込まれたものの、宣言解除後の6―7月には前年同月比2割程度減と回復傾向をみせ、10月には51.5%増と大幅に増加した。中古マンション市況は新築マンションよりもさらに早い回復傾向がみられ、成約㎡単価も、3~4月を除いておおむね前年同月比でプラスを維持、堅調に推移している。一方、東京都心5区のオフィスビル平均空室率は5月以降徐々に悪化し、特に既存ビルの空室率が悪化。渋谷区、千代田区、港区では平均賃料が低下傾向に転じた。
国土交通省の地価LOOKレポートによると、20年第3四半期(7月1日~10月1日)の東京都区部主要地区の地価動向は、横ばいが16地区、下落が8地区となった。特に渋谷区ではこの地区に集積するIT企業などのテレワーク導入拡大に伴うオフィス需要の減少と、賃貸店舗需要・収益の減少の双方が影響していると分析される。一方で、住宅系地区についてはマンション需要や開発需要は底堅く、地価動向は横ばいで推移している。
21年の展望として、同研究所は感染拡大の収束を前提に、楽観的な見方を維持する。まず、TDB景気動向調査(帝国データバンクによる景気DI)は、都の不動産業の景気判断は4月に22.5と急速に悪化したが、これを底に徐々に持ち直し、直近の11月時点で38.4まで回復。今後の見通しでも3カ月後に39.3、6カ月後に39.6、1年後に40.8と緩やかな改善を予測している。
また、米国の不動団サービス大手ジョーンズラングラサール(JLL)によると、20年1-9月期の東京の商業用不動産投資額は193億ドル(約2兆円)と世界首位。前年同期の4位から躍進しており「欧米各都市よりもコロナ禍による経済的な影響が少なかった東京の不動産市場が海外の機関投資家などから選好されている」(同研究所)と分析される。
同研究所は、現在の都内の感染拡大について「仮に緊急事態宣言(ロックダウン)のような状況まで事態が悪化すれば、不動産市況にも一時的にマイナスの影響を与える可能性もある。しかし、この一年間のデータをみれば、東京の不動産市況、とりわけマンション市況は堅調に推移し、感染拡大が収まる状況になれば力強く回復する」と分析。「世界各国で進められたワクチン開発もようやく目途が立ち、来年前半には日本への供給も期待される。新型コロナウイルス感染の終息を迎えるようになれば、東京の不動産市況も再び活況を取り戻すことができるだろう」としめくくっている。
同研究所は、東京という都市を分析しその魅力を世界に向けて発信すること、不動産を核とした新しいサービスの開発、等を目的に、明治大学名誉教授の市川宏雄氏を所長に迎え、19年1月1日に設立された。
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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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