住宅総合メーカーの大和ハウス工業株式会社は今年4月、社内の投資用不動産の投資判断基準としてインターナルカーボンプライシング制度(ICP)を導入したと発表した。ICPは「社内炭素価格」とも呼ばれ、企業が独自に対象不動産のCO2削減量により環境価値を金額換算して加算すること。同社は二酸化炭素(CO2)削減の価値を「1トンあたり2万円」と換算、内部収益率(IRR)に反映させる。ICP導入は同社が日本で初めてとなる。
日本でも金利の上昇が予測される中、同社は今年2月から社内の投資用不動産の投資判断基準のIRRを8.5%から10%に引き上げ、不動産開発による損失リスクを軽減させる取り組みを開始した。IRRの厳格化に対する緩和策として、不動産投資の判断基準にICPを活用することで、自社が開発・建設する投資用不動産の稼働後におけるCO2排出量を削減し、建物やまちづくりの脱炭素化を加速させるという方向性を打ち出している。
同社のICPはZEB(net Zero Energy Building)/ZEH(net Zero Energy House)の定義に基づき、「Nearly ZEB」または「Nearly ZEH-M」以上、太陽光発電システムの設置に制限がある場合は「ZEB Ready」または「ZEH-M Ready」以上の建物を対象とする。
換算条件は「ZEB Oriented」または「ZEH-M Oriented」の CO2排出量を基準として、対象建物のCO2削減量を算定。これに社内炭素価格を乗じて金額換算したものをみなし収益として、IRRを算出する。
同社は2050年までに新築建築物のネット・ゼロ・エネルギー化と既存建築物の省・創エネ改修、再生可能エネルギーの供給を通じ、カーボンニュートラルの実現を目指す。

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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