2021年Q4 事業用不動産の投資額は14%減も投資意欲は依然高く。CBREの国内投資市場動向調査

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シービーアールイー株式会社(CBRE)は2月10日、2021年第4四半期(9月~12月)の国内の投資市場動向(Japan Investment MarketView)と第74回「不動産投資に関するアンケート」(CBRE Japan Cap Rate Survey)の調査結果を発表した。今期の事業用不動産の投資額は1兆1810億円で対前年同期比14%減少。主因は前年同期に500億円を超える大型取引が複数集中したことによる反動減で、東京の期待利回り(平均値)は、オフィス(大手町)は対前期比横ばい、その他の全セクターで前期に比べて低下した。

21年総投資額は3兆8410億円で対前年比6%減少だが、コロナ禍前の18年・19年を上回った。22年の投資戦略について実施したCBERの調査で、投資家の91%が「22年の予想取得額は21年以上になる」と回答。海外投資家が選ぶ魅力的な都市も3年連続で東京が1位になっており、同社は「投資意欲は依然として高い」と評価した。

今期の事業用不動産の投資額(10億円以上が対象)は1兆1810億円で、20年Q4に投資額が大きく増加したことによる反動減。前年同期にはJ-REITおよびその他の国内投資家による500億円を超える大型取引が複数集中していた。今期のJ-REITによる投資額は対前年同期比32%減、J-REIT以外の国内投資家は同37%減となった。ただし、海外投資家による投資額は対前年同期比40%の増加。また取引価格が500億円未満の総投資額も、前年同期から13%増加している。

アセットタイプ別では、前年同期に大型案件のあったオフィスと住宅が反動減となった。オフィスは対前年同期比34%減の4,340億円、住宅は同60%減の940億円。一方で、投資額が大きく増加した物流施設(同78%増、4280億円)は、Q4投資額としては05年調査開始以来の最大値を更新。物流施設の私募ファンド組成に伴う大型取引が主因だった。東京Aクラスオフィスを対象としたCBRE短観指数(DI)3 は、「NOI」が対前期比5ポイント悪化した一方で、「売買取引価格」や「期待利回り」など5項目で改善。2021年総投資額は3兆8410億円で対前年比6%減少したが、コロナ禍前の18年、19年を上回った。

今期のJ-REITによる公募増資(払込ベース)は9件と前年同期より2件増えたが、調達額は対前年同期比60%減の1102億円。調達額の減少は、前年同期に物流施設特化型リートとオフィス特化型リートの調達額が大きく増加したことによる反動減が主因だ。今期は全調達額の47%を総合型リートが占め、40%を物流特化型リートが占めた。

今期、J-REITによる全投資額は3671億円で前年同期比28%減。投資額が公募増資額ほど減少しなかったのは、物件の入れ替えが増加したため。今期の売却額は1682億円で同34%増。Q4売却額としては17年に次ぐ2番目の水準だった。「取引価格が高止まりして売却益を確保しやすい環境であったため、株価の売却収入が原資となってJ-REITの投資活動を下支えした」と同社は見る。

J-REITの株価をセクター別の指数でみてみると、今期は物流施設やヘルスケア、住宅などが上昇した一方、ホテルとオフィスが下落した。特にホテルはQ4中に14%下落、J-REITの中でもっともアンダーパフォームした。新型コロナウイルスの感染再拡大で、観光需要の回復が遅れるという予想が重しになったと考えられる。

一方、CBREが四半期毎に実施している「期待利回りに関する投資家アンケート調査」では、東京の期待利回りは、オフィス(大手町)は横ばい、その他の全セクターで前期に比べて低下した。最も大きく低下したのはマンション(ファミリー、東京城南・城西)で、対前期比7bps低下、4.13%となった。他のセクターは同3~5bps低下した。地方都市のオフィスは、福岡は横ばい、他の5都市で期待利回りは同2~7bps低下している。

物流施設(首都圏マルチテナント型)については、7項目中3項目でDIが悪化。ただし「変わらない」という回答の増加がDI悪化の主因で、DIが前期から4ポイント悪化した「金融機関の貸出態度」についても、「厳しい」と回答した投資家はいなかった。

21年通年の総投資額は3兆8410億円、前年比6%減。前年2020年に大きく増加した海外投資家およびJ-REITによる投資額が、反動で減少したことが主因。海外投資家とJ-REITの投資額はそれぞれ同18%、同7%減。一方でJ-REIT以外の国内投資家の投資額は同9%増加した。2021年の投資額は前年を下回ったものの、18年と19年の投資額をそれぞれ17%、5%上回った。

感染再拡大で1月21日から都市部を中心に「まん延防止等重点措置」が適用されているが、足元の投資マーケットでは取引の延期といった動きはまだ見られない。CBREの21年12⽉調査では、22年の予想取得額は「前年と同じ」と「前年を上回る」と回答した日本の投資家は91%で前年調査(81%)を上回った。さらに、海外投資家が選ぶアジア太平洋地域の魅力的な都市として東京が3年連続で1位となった。このランキング10位内にははじめて地方都市が8位にランクインしたほか、大阪も10位に入った。同社は「東京だけでなく地方都市でも海外投資家の取引が増加する可能性」を見込んでいる。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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