ポストコロナの物流需要、ECと物流業がけん引。CBREがスペシャルレポート

世界最大の事業用不動産サービス会社CBREの日本法人であるシービーアールイー株式会社は9月2日、スペシャルレポート「物流テナントの特徴と変化 – ポストコロナの物流需要をECと物流業が牽引」を発表した。2015年から今年上半期にかけての物流テナントの動向を分析しており、それによると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設(LMT)の契約テナントの業種は、2016年-2018年は相対的に小売業・卸売業の割合が高く、コンビニエンスストアの店舗数拡大と呼応している。19年以降はECの契約面積が増大、割合も高まり、20年にはコロナ下の巣ごもり消費を取り込み、物流需要をけん引した。

首都圏テナントは、各年の大型マルチテナント型物流施設(LMT)需要のけん引役を調べるため、21年7月時点のテナント構成を調べて物件の竣工年別に集計した。16年から18年は小売業・卸売業の割合が相対的に高い。小売業・卸売業が物流施設の契約面積に占める割合は、16年から18年の3年間の平均が26%で、ピークの18年には10万坪の契約面積があった。コンビニエンスストアやドラッグストアなどの出店攻勢が激しかった時期にあたる。出店数の増加に伴ってより大きな保管スペースが必要になり、配送センターの重要度も高まった。このような小型小売店は店舗内に在庫をほとんど持たないため、多頻度少量配送が基本。そのため高機能な配送センターが必要となる。

しかし、全国のコンビニエンス店舗数が18年の5万6574店(経済産業省、商業動態統計)をピークに減少し始めると、同業種による物流施設の拡大ペースは減速。19年から20年にかけての小売業・卸売業の契約面積は平均3万坪となり、全体に占める割合も5~7%に低下した。替わって台頭したのがECだ。ECによる契約面積の割合は、16-18年の平均12%から、19年は23%に拡大。同年の契約面積は12万坪を上回る規模になった。

19年は首都圏の物流施設市場が過去最高の新規需要(70万5000坪)を記録した年で、新規供給もそれまでの過去最高だったにも関わらず、空室率は18年の4.8%から19年は1.1%に急低下している。「この時期にEC事業者による物流施設の増強が本格化し、新規需要を牽引したことを物語っている」と同社。

20年に新型コロナウイルスの感染拡大が発生、ECの契約面積は19年とほぼ同等だったが、物流施設の契約面積全体に占める割合は31%に上昇した。「コロナ下で他業種が拡大に慎重になった一方で、巣ごもり需要によるEC利用の促進を受けて、EC各社は拡大戦略を維持した結果だろう」と推測される。21年上半期に竣工した物件のテナント業種で、ECの割合は2020年をやや下回っているが、その契約面積は昨年のペースを上回っている。割合の低下は他の業種のニーズが高まったことによるもので、ECの物流需要そのものは依然として旺盛と同社は見ている。

LMTのテナント業種の構成は都市圏ごとに違いがみられるものの、物流業が全国的に主流。04年以降に竣工したLMTの入居テナントを四大都市圏で比較すると、物流業の占める割合は首都圏が最も低いが、57%と過半数を占める。地方では近畿圏63%、中部圏69%と徐々に比率が高まり、福岡圏では物流業が90%と圧倒的多数を占める。地方都市ほど物流業の割合が高い理由として、同社は物流網の構築に時間がかかることを挙げる。

一方で、自社の既存物流網が手薄な地域では、物流会社にアウトソースする傾向がある。地方ほど契約テナントに占める物流業のウェートが高いのは、このような荷主の戦略上の違いによるものと同社は分析している。

近年は、トラックドライバーの不足や労働条件改善を背景に高騰する輸送費の削減を目的として、在庫を全国に分散させる傾向が強くなっている。特に流通量の多い食品・飲料や日用雑貨等の商品群では「物流業が地方都市で保管スペースを増強する事例が増えるだろう。ECの拡大と雇用環境を背景に、物流施設の拡大ニーズは今後も続く」と予測した。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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