2020年1Qの世界の事業用不動産投資額15%増、2Qは新型コロナ影響で抑制の見込み

※ このページには広告・PRが含まれています

CBREが5月14日に発表した2020年第1四半期の投資市場動向で、世界の事業用不動産投資額は対前年同期比15%増の2350億米ドル(約26兆円)となった。前年下期から増加していた企業買収の動きが今期成約に至ったことが主因。地域別では、米州の投資額が1210億ドル(約13兆円)で同8%増加した。前年に株価が好調だったREITによる旺盛な投資による。欧州・中東・アフリカ(EMEA)は同比46%増の920億ドル(約10兆円)で第一四半期では過去最高を記録した。このうち、EMEAでは5000億ドルを超える大型の企業買収が全投資額の25%を占めている。

一方で、アジア太平洋地域(APAC)は230億米ドル(約2.5兆円)で同22%減と落ち込んだ。中国や香港、豪州の投資額減少が主因。新型コロナウィルス感染拡大により投資活動は3月から停滞しており、同社は「第2四半期投資額は全地域で抑制される可能性がある」と予測する。ただし中国はじめアジアの一部の国で企業活動が正常化しつつあることから、APACで他の地域に先んじて投資意欲、投資額が回復する可能性も付言した。

日本の投資市場では、事業用不動産の投資額(10億円以上が対象、土地取引およびJ-REITのIPO時の取得物件は除く)は同41%増の1兆円となった。海外投資家による取得額が増加しており、投資主体別投資額割合で最も大きかったのはJ-REITの42%。一方、投資額は横ばいの4460億円、J-REIT以外の国内投資家は3350億円で同32%増加。海外投資家は2940億円で、前年同期の4倍近い規模となった。

同時に発表された四半期ごとの「不動産投資に関するアンケート 期待利回り」(回答期間3月11日~4月14日)では、東京ではホテル(運営委託型)、商業施設(銀座中央通り)、賃貸マンション(ワンルーム)が前期から5ps~20bps上昇した。ホテル(運営委託型)は2期連続の上昇。調査で東京の主要アセットの期待利回りが2期連続で上昇したのは2009年以来。他のアセットタイプ(オフィス、物流施設、賃貸マンション・ファミリー)は横ばいで最低値を維持した。地方都市のオフィス期待利回りは大阪と仙台で前期から低下して最低値を更新。福岡のみ同2bps上昇した。

20年3月時点の東京オフィスAクラスビルを対象としたCBRE短観指数(DI)は全項目で悪化した。「3ヶ月前と比較して売買取引価格は下落」「期待利回りは上昇」と回答した割合が前期から10ポイント以上増加。物流施設(首都圏マルチテナント型)のDIも、「空室率」を除く全項目で悪化した。ただし、「6ケ月前と比較して変わらない」と回答した割合は7項目中5項目で増加し、物流施設では市況感に大きな変化は見られない。

3月以降、新型コロナウイルス感染拡大による影響で海外投資家が来日できず、取引を延期する事例が増加している。ホテルやリテールの中止案件、財務基盤強化のためのキャッシュ確保を目的とした売却案件も発生した。ただし、「CBRE投資家意識調査2020」によると投資家の投資意欲は高く、ウイルスの影響で「取得額を減らす」と回答した投資家は3月下旬でも2割弱に止まった。同社は「業績悪化によるノンコアアセットの売却やセールス・アンド・リースバックを検討する事業会社の増加が予測される一方、投資機会を見出す投資家も国内金融機関を中心に存在する。感染拡大収束の兆しが見えてくれば、再び投資額は増加する」という予想で締めくくった。

The following two tabs change content below.

HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チームは、不動産投資や金融知識が豊富なメンバーが不動産投資の基礎知識からローン融資のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融メディア「HEDGE GUIDE」