事業用不動産サービスのシービーアールイー株式会社(CBRE)は12月16日、「不動産マーケットアウトルック2023」を発表した。来年の不動産マーケットの見通しをマクロ経済、オフィス、リテール、ロジスティクス、投資の項目からまとめている。日本経済については「緩やかな回復基調が続くだろう」と予測。日本における商業用不動産への投資額は前年をやや下回る見込みだが、期待利回りは低下傾向が続き、投資家の意欲は旺盛だったとして、23年も同様の状態が続くと予測した。
投資については、22年通年の日本における商業用不動産への投資額は前年をやや下回る見込みだが、期待利回りは低下傾向が続き、投資家の意欲は「依然として旺盛」(同社)だ。海外金利の上昇および欧米の景気後退懸念を背景に、慎重姿勢に転じる投資家が一部で見られている。しかし、日銀が金融引き締め方向に大きく舵を切ることは当面は考えにくく、「23年も日本の不動産市場に対する投資家の需要は総じて高い状態が続く」とした。
22年Q3までの累計投資額は前年同期を1割強下回ったものの、投資家の期待利回りは低下が続いており、投資意欲が旺盛な投資家が依然として多い。Q4には大型案件の成約が複数見込まれていることから、通年の投資額は「前年を3%程度下回る水準での着地」を見込む。
海外市場での金利の上昇および欧米の景気後退懸念の高まりによって、22年Q3頃から慎重姿勢に転じる海外投資家が一部で見られる。しかし、23年、日本の不動産投資市場は堅調に推移する可能性が高いと同社は見る。日本が国内外の投資家にとって魅力的な投資先となる理由として①日本経済は今後も緩やかな回復傾向が続く見込み②物価上昇率が限定的な日本では、金融緩和政策が当面維持される可能性が高く、不動産投資利回りの金利に対するスプレッドは、海外と比べて相対的に高い水準が続く③不動産ファンドの資金は潤沢で買い意欲は引き続き高い――という3点を理由に挙げた。
一部の海外投資家が慎重姿勢になって以降、大型案件の入札では国内投資家が優勢となるケースが見られ、23年は国内投資家が市場を牽引しそうだ。ただし、オフィスや物流施設では、首都圏を中心に大型の新規供給が見込まれており、総じて市況は弱含む傾向が続くとみられる。キャッシュフローの上昇が期待できる物件は限定的になる中、投資家は選別姿勢を強めると同社は予測。また、22年にみられた1,000億円超の大型案件の投資額は調査開始以来2番目の規模だった。23年に同規模の案件が複数成約される見込みはあるものの、22年の投資額には届かず、投資額は22年をやや下回ると予想する。
東京オフィス市場は、大量供給の影響で今後3年間にわたって空室率が上昇、新規賃料は下落が続く見込み。投資対象として、テナント需要を牽引する「グレードアップ移転」の受け皿となる物件が関心を集めそう。立地の優位性、築年数、さらにはアメニティの充実度などによる属性での選別がより重要となると同社は見る。
物流施設は、特に景気の先行きに対する不透明感が高まる局面では投資家の人気は根強いが、首都圏の新規賃料は23年に対前年比0.4%下落する見込み。新規供給が集中するエリアや競合するエリアで賃料が弱含むことが主因。投資家は選別姿勢を強めることから、現在、過去最低値となっている取引利回りは今後上昇する可能性がある。
入国規制が緩和されたことでインバウンド需要の回復期待が高まり、リテールとホテルに対する投資家の注目が集まっている。ホテルについても、10月の日本人宿泊者数(累計)は19年同月の88%まで回復。今後、外国人宿泊者数が次第に増加することでキャッシュフローのさらなる改善が期待される。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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