CBREは8月13日、2021年第2四半期(4~6月、Q2)の国内の投資市場動向「ジャパン・インベストメントマーケットビュー」を発表した。Q2の事業用不動産の投資額は5120億円で対前年同期比37%減となった。前年同期は海外投資家を中心とする500億円超の大型取引が散見されたが、反動減が主因。J-REITによる投資額は2,106億円で同94%増加した一方、海外投資家、J-REIT以外の国内投資家の投資額はそれぞれ同-66%、同-39%と減少した。アセットタイプ別では商業施設が同584%増、物流施設が同5%増。他の主要アセットタイプ(オフィス、住宅、ホテル)は減少となった。
今期は、3度目の緊急事態宣言が4月25日に発令、6月20日に解除された。投資額は前年同期を下回ったものの、取引件数は上回っている。このことから、同社では「緊急事態宣言の売買市場への影響は特にみられなかった」としている。
J-REITによる公募増資(払込ベース)は4件と前年同期より1件多く、調達額は対前年同期⽐11%増の528億円となった。株式市場全体は軟調だったものの、J-REITの株価は上昇基調が続いたことが調達額の増加につながった。東証REIT指数はQ2初めに2000ポイントを上回り、6月30日には2151と1四半期で6.8%上昇。コロナショック前(2020年2月)の高値2251ポイントの水準付近にまで回復した。
CBREが四半期ごとに実施している「不動産投資に関するアンケート期待利回り」では、物流施設(首都圏湾岸部)と商業施設(銀座中央通り)が前期から低下、オフィス(⼤⼿町)、マンション(ワンルーム)、ホテル(運営委託型)が横ばい、マンション(ファミリー)は上昇した。物流施設は調査開始以来の最低値を更新したほか、オフィスとマンション(ワンルーム)は最低値を維持した。東京Aクラスオフィスを対象としたCBRE短観指数(DI)は、前期と⽐べ6項目中4項目が改善。最も大きく改善した「売買取引価格」DI(対前期比+14ポイント)では「下落した」の回答率が11ポイント減少したことが主因。物流施設(⾸都圏マルチテナント型)については、7項目中5項目が改善した。
このうち、最も大きく改善した「投融資取組スタンス」DI(同+9ポイント)では「促進する」が6ポイント増加。一方で「空室率」DIは3期連続で悪化、「期待利回り」DIも5期ぶりに悪化した。
パンデミック前の水準を下回る利回りで東京都心のオフィスビルが取引された。売買市場では、長期定借など賃貸条件の良い、かつ価格規模が大きい都心の物件は、取引利回りが低下傾向にある。投資家は中長期的なオフィス需要の減退を懸念しており、安定した収益が期待できる都心立地の物件を選好する姿勢が強まっていると考えられる。地方都市の大型オフィスビルの期待利回りも低位で推移。地方都市では、オフィスの需給バランスの悪化が東京に比べて抑えられると見込まれているためとみられる。
投資家アンケートに基づく大阪の期待利回りは前期から横ばいで最低値を維持、名古屋は低下し最低値を更新した。同社は「今期は両都市ともに目立った取引は把握されなかったものの、入札などの状況からも投資家の意欲は高いと考えられる。今後、大阪など案件が相対的に多い都市では、低水準の取引利回りを示唆する案件も出てこよう」と予測する。
物流施設の投資額は1,330億円で対前年同期比5.3%増加、投資額としてはオフィス(1,630億円)に次ぐ2番目の規模だった。投資主体別割合ではJ-REITが全投資額の69%に達し、海外投資家が22%を占めた。一方、首都圏の需給バランスの悪化を懸念する投資家が増加。CBRE短観指数(首都圏マルチテナント型)によれば、2年先の見通しについて「空室率は上昇する」と回答した投資家の割合は29%と前期から13ポイント増加。新規供給の増加により空室率の上昇が見込まれていることが、投資家の回答に影響したようだ。
一方、商業施設の投資額は1070億円で対前年同期比584%増加、水準としては19年Q2を超えた。投資主体別ではJ-REITが全投資額の53%と最も多く、J-REIT以外の国内投資家、海外投資家はそれぞれ26%、21%を占めた。取引された案件の殆どがコロナ禍の影響を受けにくい生活密着型の郊外型商業施設だったが、大阪ハイストリートの大型物件を海外投資家が取得する取引もあった。
同社が前期に実施した調査では、21年の投資戦略として商業施設を投資対象とする投資家の割合は全体の51%。投資対象地域については、商業施設に投資する投資家の53%が東京都心をターゲットにしていた。東京都心、特にハイストリートの案件は非常に限られているとはいえ、希少性が高い案件に対しては投資家の関心は高い。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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