事業用不動産サービスのシービーアールイー株式会社(CBRE)が11月11日発表した2022年第3四半期(Q3)の日本投資市場動向(Japan Investment MarketView)で、同期の投資額は9710億円で、対前年同期比19%減少となったが、コロナ禍前の19年Q3の水準を上回った。海外投資家による投資額は同360%増となり、複数の大型取引が散見された。東京の主要アセットタイプの期待利回りは、横ばいだった「ホテル」を除き全セクターで低下。CBRE短観指数(DI)は東京Aクラスオフィス、物流施設(首都圏マルチテナント型)ともに「投融資取組スタンス」が悪化した。ただし、将来見通しでは「促進する」の回答率が増加し、「抑制する」は低水準にとどまっている。
下期に入り、ホテル取引が散見され始め、ホテル投資額は2期連続で前年同期を上回った。投資額はさらに増加が予想され、ホテルマーケットの先行き不透明感が改善していることがうかがえる。
また、上期に入札が進行していた複数の大型案件がQ3に入って成約に至った。来期以降も「大手町プレイス」を含む大型取引の成約が見込まれている。一方、現在進行中の大型案件の入札では、国内投資家が優勢な買い手となるケースが増えている。CBREは「海外投資家も投資意欲は総じて高い。しかし、海外で先行する金利上昇による影響を懸念して一部の海外投資家が慎重姿勢に転じたことが影響した」と考察している。
住宅投資額は2690億円とQ3投資額としては調査開始以来最大を記録。海外投資家による100億円を超えるポートフォリオが複数取引されたことが主因で、住宅に対する海外投資家の投資意欲は依然として高い。しかし、同社は「売主の価格目線が上昇し、買主の検討可能な水準を上回りつつある。今後、ポートフォリオの入札が不調な場合は、物件単位での売却に切り替えるなど対応が必要なケースも出てくるだろう。取引成立までに時間を要する可能性がある」と見方を引き締めている。
四半期毎に実施している投資家アンケートでは、東京の期待利回りは、ホテルを除き全セクターで低下した。最も低下幅が大きかったのは、賃貸マンション(ファミリー、対前期比-12.5bps)、次いで物流施設(マルチテナント型、同-5bps)となった。地方都市のオフィス期待利回りも低下傾向が続いている。今期は横ばいだった福岡を除き、全主要都市で期待利回りは低下した。最も低下幅が大きかったのは大阪と札幌で、ともに同-10bps。
投資状況を示すCBRE短観指数(DI)は、東京Aクラスオフィス、物流施設(首都圏マルチテナント型)ともに投融資取組スタンスが悪化。ただし両セクターとも「投融資を促進した」と回答した投資家の割合が減少し、「現状を維持した」が増加したことが主因で、投資意欲が減退した訳ではないと同社は見る。
一方、「期待利回り」に対する投資家の見方は、セクター毎に異なっている。東京Aクラスオフィスの「期待利回り」DIは同+1ポイントとほぼ横ばい、「NOI」DIの変動も同-1ポイントで、オフィスについての見方は前期からほぼ変化がなかった。
一方、物流施設(首都圏マルチテナント型)の「期待利回り」DIは同-12ポイントと大きく悪化。「賃料」DIも同-7ポイントとなった。首都圏で空室率の上昇が続く中、賃料上昇を見込む投資家が減少しつつあることがDIの悪化につながったと考えられる。ただし、半年先の「期待利回り」の低下を想定する投資家割合は3割に上り、上昇を想定する投資家(15%)を上回った。同社は「当面、物流施設の期待利回りは低水準で推移しそう」と予想している。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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