総合不動産サービスのCBREは6月23日、「JAPAN レンダーサーベイ 2020」を発表した。不動産会社や不動産ファンド向けに融資するレンダーを対象に、今後の不動産市場の見通しや融資方針に関するアンケート調査。それによると、2020年度の不動産ノンリコースローンの新規融資額は減少する見込み。レンダーは新型コロナウィルス感染拡大の影響による新規案件の減少を想定していると考えられる。
融資対象としてもっとも人気が高いのは「物流施設」だった。これまでもeコマース拡大による旺盛な物流需要を吸引して市場は拡大、長期契約による収益の安定性も評価されたと考えられる。また、今後1年間のデットマーケットの見通しについて、回答率が高かったのは「スプレッドは拡大する」、次いで「不動産価格は下落」、「LTV(Loan to Value:総資産有利子負債比率)は低下」だった。融資戦略ではLTVの低下やスプレッドの引き上げは一部のアセットタイプにとどまったが、レンダーの慎重な姿勢がうかがえる結果となった。
調査対象のレンダー25社によると、20年度の不動産ノンリコースローンの新規融資額は減少する見込み。同年度の融資方針を質問したところ、昨年の融資額実績と比較して20年度は「減少する」と回答したレンダーは、シニアで41%(前年比+31ポイント)、メザニンで20%(同+11ポイント)となった。同社は「レンダーは今後の不動産価格の推移を注視しており、出口・ローン回収の蓋然性を高めようとしている」と推定している。
不動産ノンリコースローンの融資の可否を判断する際にもっとも重視する項目として、回答率トップの項目は前年と同様に「LTV」(40%、対前年比+4ポイント)、次いで「スポンサー」と「安定した収益」(いずれも16%)となった。融資可能なアセットタイプについては、新型コロナの影響を大きく受けている「商業施設」(79%、対前年比-23ポイント)と「ホテル」(58%、同-32ポイント)で、前年より回答率が大きく減少した。レンダーが融資可能なアセットタイプについて選別姿勢を強めていることがわかる。
一方、融資対象としてもっとも魅力的なアセットタイプについては、「物流施設」(55%、対前年比+37ポイント)、「オフィス」(23%)、「賃貸マンション」(18%)の割合が高くなった。物流施設は従来からeコマース拡大による旺盛な物流需要で市場が拡大、さらに長期契約による収益の安定性も評価されたと考えられる。
20年度不動産ファイナンス市場における最大の脅威は「国内外の経済ショック」 (48%)、次いで新型コロナウィルス感染症「COVID-19」(36%)になった。今後1年間の見通しについて、回答率がもっとも高かったのは「スプレッドは拡大する」(80%)、「不動産価格は下落 」(68%)、「LTVは減少 」(68%)。23日時点でも新興国での感染拡大と先進国の二次感染が報告されており、同社も「レンダーは慎重姿勢をさらに強める」との見方だ。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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