海外投資家の21年上半期のインバウンド不動産投資額は43億ドル、前年同期比42%減。CBRE調査

不動産サービス大手のシービーアールイー(CBRE)が9月16日に発表したスペシャルレポート「「日本のインバウンド投資・アウトバウンド投資2021年上期」で、海外投資家による日本のインバウンド不動産投資額は43億ドルで前年同期比42%減となった。前年同期に5億ドルを超える超大型取引が散見されたことに対する反動減が主因。一方、日本からのアウトバウンド不動産投資額は前年同期から183%増加(13億ドル)したものの、2019年上期と比べると未だ42%も少ない。21年のアウトバウンド投資額は「19年と同じ」と回答した投資家は約6割もいるが、新型コロナウィルスの感染再拡大により、実際に投資額が持ち直すか、同社は「不透明」と判断を保留した。

海外投資家による投資額(直接投資)の対前年同期比42%減のうち、米州の投資家による投資額が全体の66%と最も多く、次いでアジア太平洋地域(22%)、EMEA(12%)となった。20年上期に散見された超大型取引の反動減が主因だが、同社は「投資市場自体は回復しつつある」として、超大型取引を除いた投資額は31億ドル、同33%増で、19年上期の投資額も上回った点に注目。「21年も世界の機関投資家の資金が不動産投資に流入している状況に変化は見られない。相変わらず投資資金は潤沢なことから、安定かつ相対的に利回りが高い不動産に対する意欲は高い」とする。

アセットタイプ別投資額ではオフィスが全体の51%を占めた。今期に把握された海外投資家による取引のうち、最高額となった案件がオフィスだったことが一因。規模が大きく、安定した収益が期待できるなど条件が良いオフィス案件では、海外投資家が入札を勝ち抜き取得するケースが前年から散見されている。また、今期はホテルの大型取引が注目を集めた。ホテル投資の実績が豊富な海外投資家が、運営会社が保有するホテルポートフォリオの一部を取得。運営は、売却後も売主が継続して行う。コロナ禍で高まるリスクを軽減したいという売主のニーズと、コロナ後の回復を見据えた投資家の戦略がマッチしたと考えられる。

日本からのアウトバウンド投資額(直接投資)は13億ドルで対前年同期比183%増加、早くも20年通年の投資額を13%上回った。投資先では米州が全体の66%と最も多く、次いでEMEA(21%)、アジア太平洋地域(13%)となった。投資額は大きく増加したものの、2019年上期と比べると未だ42%も少ない。アセットタイプ別投資額は物流施設が6億ドルと最も多く、全体の46%を占めた。ほとんどが米国での取引で、買主はゼネコンや商社だった。

次いで多かったのはオフィスで、4.6億ドルと全体の35%を占めた。うち、約半分を占めるとみられるのが、自社利用目的で事業会社が取得した米国での案件だった。投資家属性別でみると、ほとんどの投資家が現地法人による取引。「現地法人を持たない投資家は、渡航規制によって投資を進められないということもあろう。あるいは感染再拡大を背景に、慎重になっているとも考えられる」と同社。21年6月に実施した投資家調査では「21年に海外で不動産を取得する予定」と回答した22社の約6割が「19年と投資額は同じ」と回答した。9月に入って日本国内の感染者数は減少傾向にあるが、米国では再拡大が懸念され、世界的にも収束とは遠い状況で、不透明感が高まっている。「実際の取引額はアンケート結果が示唆するほど高まらない可能性はある」と同社も慎重な見方を崩さない。

一方、パンデミックによって、アウトバウンド投資家が増加する可能性が出てきた。訪日観光客向けの国内ビジネスが悪化したなかで、海外市場に事業拡大の機会を求めるケースが増えている。このようなケースでは、海外市場で実績を積んだ投資家とともにJVで投資を開始することが多く、こういった動きが今後も増える可能性がある。

20年の主要な機関投資家による間接投資は、コロナ前に比べてペースがやや鈍化した。パンデミックにより、多くの案件が一時的に投資を見合わせたと考えられる。ただし、物件を現地で視察する直接投資とは異なり、間接投資は現地のゲートキーパーや運用マネージャーなどを通じて投資が可能なことから、運用額そのものは20年も拡大していたと推定される。

実際、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、20年度の海外資産の時価総額は前年度比で46%増加したと公表。一部投資家には、コミングル投資に加えてJVやクラブ・ディールに取り組むケースも増えてきた。

同社がヒアリングなどをもとに推定した今後3年程度を対象とする間接投資のエクイティ投資額(見込み)は140億ドルで、過去3年間に投資されたエクイティ投資額(推定)74億ドルを上回った。理由として、GPIFなど大手機関投資家による不動産アセットクラスへの投資拡大が見込まれること、大手デベロッパーが強化するファンド事業を通じてアウトバウンド投資家の裾野が拡大する可能性があることなどがを挙げている。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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