米国に投資できるETFのメリット・デメリットと対象商品まとめ

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日本の証券会社ではさまざまな種類のETF(上場投資信託)を購入できますが、なかには日本にいながら米国に投資できるETFも存在します。そこで今回は、日本の取引所に上場していて米国に投資できるETFのメリットやデメリットを紹介します。

また、実際にどんな銘柄があるのかも紹介しますので、ETFへの投資を考えている方は参考にしてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. ETFとは
  2. 米国に投資できるETFのメリット
    2-1.投資信託と比較してコストが低い
    2-2.手軽に分散投資ができる
    2-3.値動きがわかりやすい
    2-4.リアルタイムで取引できる
  3. 米国に投資できるETFのデメリット
    3-1.積立投資には向いていない
    3-2.自動的に分配金は再投資されない
    3-3.取引のたびに手数料が発生する
  4. 米国に投資できるETFに伴うリスク
    4-1.価格変動リスク
    4-2.為替リスク
    4-3.流動性リスク
    4-4.上場廃止リスク
    4-5.価格乖離リスク
    4-6.カントリーリスク
  5. 米国に投資できるETF銘柄
  6. まとめ

1.ETFとは

ETFとは「Exchange Traded Fund」の頭文字を取った略称で、日本語では「上場投資信託」と呼ばれます。ETFは特定の指数に連動した値動きを目指すという性質があり、投資信託のインデックスファンドと似た金融商品となっています。

しかし、ETFは「証券取引所に上場している」という点で投資信託とは大きく異なります。株式取引のように株式市場の立会時間内であればリアルタイムの価格で取引できるというのがETFの特徴の1つです。

また、ETFは大きく2つのタイプに分類できます。

  • 国内籍ETF(国内ETF)
  • 外国籍ETF(海外ETF)

国内籍ETF(国内ETF)は、日本の法令に基づいて日本で組成された上場投資信託のことで、外国籍(海外ETF)は外国の法令に基づいて外国で組成された上場投資信託のことをいいます。

さらに、外国籍ETFは、日本の取引所に上場している銘柄と、外国の取引所に上場している銘柄に分けられます。日本の取引所に上場しているETFは日本円で取引を行うことになり、外国の取引所に上場している銘柄は現地の通貨で取引を行います。

2.米国に投資できるETFのメリット

米国に投資できるETFには下記のメリットがあります。

  • 投資信託と比較してコストが低い
  • 手軽に分散投資ができる
  • 値動きがわかりやすい
  • リアルタイムで取引できる

2-1.投資信託と比較してコストが低い

ETFには信託報酬が発生しますが、一般的な投資信託と比較して低い傾向にあります。投資信託の信託報酬に含まれる「販売会社報酬」がETFの信託報酬には含まれていないためです。

銘柄によって異なりますが、保有コストが低いので長期投資にも向いている金融商品といえます。米国市場は数十年にわたり成長を続けていますので、長期投資によって経済成長に伴う資産増加を期待できます。

2-2.手軽に分散投資ができる

ETFを1銘柄購入することで、簡単に分散投資ができるのもメリットです。

ETFでは特定の指数(インデックス)に連動するように運用されますが、対象となる指数はさまざまな銘柄から構成されています。そのため、ETFを購入することが、リスクを軽減する分散投資につながるのです。

2-3.値動きがわかりやすい

日本国内で提供されているETFはすべてインデックス運用されるファンドとなっているため、購入銘柄の値動きがわかりやすいというメリットがあります。加えて米国の指数は、日経平均株価のような日本の指数と同じように簡単に調べることができ、情報を入手しやすいといえます。

2-4.リアルタイムで取引できる

先述した通り、ETFは証券取引所に上場しているため、取引所が開いている時間帯であれば株式と同じようにリアルタイムで取引を行うことができます。

投資信託では購入申込みから購入が確定するまでに時間がかかり、思い通りの価格で購入できないケースがあります。一方、ETFは取引時間内であれば何度でも売買できますし、成行注文や指値注文など注文方法の選択や信用取引も可能です。

3.米国に投資できるETFのデメリット

一方で、米国に投資できるETFには下記のデメリットもあります。

  • 積立投資には向いていない
  • 自動的に分配金は再投資されない
  • 取引のたびに手数料が発生する

3-1.積立投資には向いていない

投資信託は自動積立ができることがほとんどですので、積立投資に対する手間を省くことができますが、ETFは、一部を除いて自動積立投資には対応していません。そのため、ETFを使った積立投資では、投資家自身が毎月購入手続きを踏んで行う必要があります。

毎月同じ口数を購入し続けるのが手間になるため、積立投資にはあまり向かない金融商品といえます。

3-2.自動的に分配金は再投資されない

ETFを購入して発生する分配金は、再投資されずに必ず投資家に分配されるというのもデメリットとなりえます。長期投資をするうえでは、得た配当や分配金を再度投資元本に組み込むことで雪だるま式に資産を殖やすことを狙える複利投資の考え方が重要ですが、分配金が再投資されないETFでは、これを手動で行わなければならないからです。

3-3.取引のたびに手数料が発生する

ETFの手数料は株取引と同様で、購入するたびに売買手数料が発生する証券会社がほとんどです。一般的に店舗を持つ証券会社では手数料が高く、ネット証券では安い傾向にあります。なお、SBI証券や楽天証券などいくつかのネット証券では、1日の約定代金が100万円までなら手数料が無料となるといった体系を用意しています。

また、投資信託では購入手数料無料の銘柄が多くみられますが、ETFでは数が限られます。長期的な投資を考えているのであれば、手数料コストもしっかり考慮して、利用する証券会社や投資する商品を選定しましょう。

4.米国に投資できるETFに伴うリスク

米国に投資できるETFを購入する場合に伴うリスクとしては、下記のものが挙げられます。

  • 価格変動リスク
  • 為替リスク
  • 流動性リスク
  • 上場廃止リスク
  • 価格乖離リスク
  • カントリーリスク

4-1.価格変動リスク

ETFには上場している株式としての側面と、指数に連動する投資信託の側面があります。

いずれにせよ証券取引所で売買されているため、価格は常に変動することになります。購入時と比較して価格が下落する可能性もあり、場合によっては出資元本を毀損するケースもあります。

4-2.為替リスク

米ドル建てにて運用されるファンドは、為替相場の影響を受けます。円安の状況では分配金や売却益は実質的に増えることになり、逆に円高の状況では目減りすることになります。

この為替リスクを軽減するため、為替ヘッジを行うファンドもありますが、ヘッジコストがかかるぶん価格上昇に圧力がかかるというデメリットもあります。

為替相場は常に変動しますので、ETF投資の出口戦略についてはよく検討することが重要です。

4-3.流動性リスク

ETFには流動性リスクがあります。ETFは株式のように売買できるというのがメリットの1つですが、売買が少なく取引が成立しづらい、いわゆる流動性が低いファンドでは、思ったタイミングで売買できない場合があります。そのため、取引のタイミングを逃したり、資産価値が目減りしたりする可能性があるため、注意が必要です。

4-4.上場廃止リスク

ETFは上場が廃止されるリスクがあります。万が一、ETFの上場が廃止された場合は、東京証券取引所によって「監理銘柄」「整理銘柄」として売買されることになり、想定通りの金額で売却できなくなる可能性があります。

4-5.価格乖離リスク

ETFには2つの価格が存在します。1つは上場株式としての「市場価格」、もう1つが、投資信託としての「基準価額」です。

市場価格は株式と同様に投資家が売買する際の価格であり、需要と供給を反映しながらリアルタイムで変動し、取引終了時に終値として当日の価格が確定することになります。

一方、基準価額はETFに組み込まれた有価証券などの時価評価額に配当金・利息などを加えた金額から、必要経費を差し引いた純資産総額を発行済み口数で割って算出する「1口当たりの価格」です。投資信託と同様に、当日の夜になってから基準価額は算出・発表されます。

このように、算出方法が全く異なる2つの価格は、必ず一致するものではなく、時として価格の乖離が発生することになります。これにより、必ずしも指数と同様の値動きをするわけではない点もETFの特性です。

4-6.カントリーリスク

米国に投資できるETFにはカントリーリスクが伴います。

投資対象となる国の政治情勢・経済情勢・社会情勢が影響して、取引価格や基準価額、為替の変動が起こることで、損失を被る可能性があります。そのため、投資をしている期間は米国に関するニュースなどをチェックして情報を集め、危険と感じた場合は売却するなどの対策を講じる必要があります。

5.米国に投資できるETF銘柄

東京証券取引所に上場していて、米国に投資できるETF銘柄は以下の通りです(2021年8月25日時点)。

コード 銘柄 指数 信託報酬
1659 iシェアーズ 米国リート ETF FTSE Nareit Equity REITs インデックス(TTM 円建て) 0.20%以内
1660 MAXIS高利回りJリート上場投信 野村高利回りJリート指数 0.25%
1679 Simple-X NYダウ・ジョーンズ・インデックス上場投信 ダウ・ジョーンズ工業株30種平均 0.50%程度
1546 NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価連動型上場投信 ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価(円換算) 0.45%以内
2562 上場インデックスファンド米国株式(ダウ平均)為替ヘッジあり ダウ・ジョーンズ工業株価平均(TTM、円建て、円ヘッジ) 0.30%以内
1547 上場インデックスファンド米国株式(S&P500) S&P500指数 0.15%程度
1557 SPDR® S&P500® ETF(注2) S&P500指数 0.09%
2558 MAXIS米国株式(S&P500)上場投信 S&P500指数 0.078%程度
2633 NEXT FUNDS S&P 500 指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信 S&P500指数 0.09%以内
1655 iシェアーズ S&P 500 米国株 ETF S&P500®(TTM、円建て) 0.15%以内
2521 上場インデックスファンド米国株式(S&P500)為替ヘッジあり S&P500指数(円ヘッジ) 0.15%程度
2563 iシェアーズ S&P 500 米国株 ETF(為替ヘッジあり) S&P500®(TTM、円建て、円ヘッジ) 0.15%程度
2634 NEXT FUNDS S&P 500 指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信 S&P500指数(TTM、円建て、円ヘッジ) 0.09%以内
2630 MAXIS米国株式(S&P500)上場投信(為替ヘッジあり) S&P500指数(円ヘッジ・円換算ベース) 0.078%程度
2635 NEXT FUNDS S&P 500 ESG指数連動型上場投信 S&P 500 ESG指数 0.13%以内
1545 NEXT FUNDS NASDAQ-100®連動型上場投信 NASDAQ-100®指数(円換算) 0.45%以内
2568 上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)為替ヘッジなし NASDAQ100指数(円換算ベース) 0.25%以内
2569 上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)為替ヘッジあり NASDAQ100指数(円建て、円ヘッジ) 0.25%以内
2631 MAXISナスダック100上場投信 NASDAQ100指数(円換算ベース) 0.20%程度
2632 MAXISナスダック100上場投信(為替ヘッジあり) NASDAQ100指数(円ヘッジ・円換算ベース) 0.20%程度
1393 UBS ETF 米国株(MSCI米国) MSCI米国インデックス(ネットリターン) 0.14%
1482 iシェアーズ・コア 米国債7-10年 ETF(為替ヘッジあり) FTSE米国債7-10年セレクト・インデックス(国内投信用 円ヘッジ円ベース) 0.14%
1486 上場インデックスファンド米国債券(為替ヘッジなし) S&P 米国債7-10年指数(TTM、円建て) 0.16%程度
1487 上場インデックスファンド米国債券(為替ヘッジあり) S&P 米国債7-10年指数(TTM、円建て、円ヘッジ) 0.16%程度
1496 iシェアーズ 米ドル建て投資適格社債 ETF(為替ヘッジあり) Markit iBoxx 米ドル建てリキッド投資適格指数(TTM円ヘッジ付き) 0.28%
1497 iシェアーズ 米ドル建てハイイールド社債 ETF(為替ヘッジあり) Markit iBoxx 米ドル建てリキッド・ハイイールド指数(TTM円ヘッジ付き) 0.58%
1656 iシェアーズ・コア 米国債7-10年 ETF FTSE米国債7-10年セレクト・インデックス(国内投信用 円ベース) 0.14%
2554 NEXT FUNDS ブルームバーグ・バークレイズ米国投資適格社債(1-10年)インデックス(為替ヘッジあり)連動型上場投信 ブルームバーグ・バークレイズ米国投資適格社債(1-10年)インデックス(円ヘッジ・円ベース) 0.27%以内
2620 iシェアーズ 米国債1-3年 ETF FTSE米国債1-3年セレクト・インデックス(国内投信用 円ベース) 0.14%
2621 iシェアーズ 米国債20年超 ETF(為替ヘッジあり) FTSE米国債20年超セレクト・インデックス(国内投信用 円ヘッジ円ベース) 0.14%

全30銘柄のETFが提供されており、米国の不動産投資信託の指数に連動する銘柄、米国の株価指数に連動する銘柄、米国の国債指数に連動する銘柄があります。

市況に応じて、分析を行ったうえで取引する銘柄を選択するようにしましょう。

まとめ

今回は米国に投資できるETFのメリットやデメリット、リスクについて紹介しました。

コストを抑えながら分散投資がしたい、そのうえで利益を目指していきたいという方にとって、成長を続ける米国に投資できるETFは向いている金融商品といえます。ただし、リスクが伴うことや、元本割れの可能性があることも理解したうえで投資について判断することが大切です。

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山本 将弘

フリーランスWebライター。主に株式投資や投資信託の記事を執筆。それぞれのテーマに対して、できるだけわかりやすく解説することをモットーとしている。将来に備えとリスクヘッジのために、株式・不動産など「投資」に関する知識や情報の収集、実践に奮闘中。