不動産は金額の大きな取引になりやすい資産であり、売却に失敗してしまうと大きな損失に繋がってしまうこともあります。はじめての不動産売却に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回のコラムでは、はじめての不動産売却で起きやすい失敗事例を5つ紹介します。それぞれの対策も解説しますので、失敗事例から学び、事前に対策を練っておきましょう。
目次
- はじめての不動産売却でおきやすい失敗事例
1-1.査定価格は高かったが、その価格では売れなかった
1-2.どのような売却活動をするのか確認しないで契約してしまった
1-3.買取保証があるので契約したが、買取は価格が安くなるとあとで知った
1-4.内覧の際に適切な対応ができなかった
1-5.引き渡し後に設備の不具合でトラブルになった - まとめ
1 はじめての不動産売却でおきやすい失敗事例
はじめての不動産売却で起きやすい失敗事例として、次の5つを取り上げます。
- 査定価格は高かったが、その価格では売れなかった
- どのような売却活動をするのか確認しないで契約してしまった
- 買取保証があるので契約したが、買取は価格が安くなるとあとで知った
- 内覧の際に適切な対応ができなかった
- 引き渡し後に設備の不具合でトラブルになった
特に売却活動を担当する不動産会社選びを間違えると、売却がうまくいかないなどの失敗につながるので気をつけたいポイントです。次から、原因と対策法についても解説していきます。
1-1 査定価格は高かったが、その価格では売れなかった
「マンションの売却を決めたときに複数の不動産会社に査定を出してもらいました。その中で最も高い価格をつけてくれた不動産会社に売却を依頼したのですが、売却活動を始めてもなかなか売れない状況が続きました。結局、不動産会社から相談されて3ヵ月後と半年後に値下げをしましたが、それでも売れずに1年後に大幅に価格を下げたところで売却することになりました。査定額が高いからと言って、その価格で売れるものではないのですね。無知が招いた失敗でした」(50代男性)
失敗してしまった原因と対策
不動産会社によって得意不得意があり、不動産査定の価格にも違いが生まれます。不動産を売却するときに複数の不動産会社に査定を出してもらうのは、不動産相場を知るためにも有効な手段と言えるでしょう。
ただし、査定価格とは不動産会社が不動産市場や過去の事例から「この価格であれば売却できる可能性がある」と推測する価格です。売却できる価格ではないことを覚えておきましょう。
特に複数の不動産会社に査定書を出してもらった際に、1社だけ高い査定額をつけている場合は注意が必要です。売却依頼を受けるために、あえて相場よりも査定価格を高くつけているケースも考えられます。査定価格だけを単純に比較するのではなく、査定の根拠についても確認することが大切です。
査定価格と売買価格の開きを少なくするには、自分で相場価格を調べてみるのも有効な方法です。不動産の相場価格を調べるには下記のような方法があります。
- 不動産流通機構の「レインズマーケットインフォメーション」で調べる
- suumoやathomeなどの不動産ポータルサイトで調べる
1-2 どのような売却活動をするのか確認しないで契約してしまった
「査定額がどこも似たような価格だったので、ネームバリューのあるところが安心だと思って名前の知っている不動産会社と媒介契約を結びました。しかしなかなか売却がスムーズにいかず、情報を確認しようとしても担当者が忙しいようで電話がつながらないこともありました。不動産会社選びをもっときっちりやっていおけばよかったと思いました。」(60代男性)
失敗してしまった原因と対策
不動産会社には、全国に支店や支社を展開する大手企業や、地元で密着した営業活動を行う中小企業、小規模事業者などがあります。大手だからしっかり仕事をしてくれるというのではなく、それぞれの不動産会社がその特徴を生かしながら売却活動をしていますので、ご自身の意向や物件の状態などに合わせて選ぶようにしましょう。
下記にそれぞれの大まかな特徴を紹介しました。参考にしてください。
- 大手不動産会社:全国に支店や支社を持ち、ネームバリューがある。
- 中小企業・小規模事業者:地域の特性を熟知していることも多く、地元に密着した営業活動をしてくれる
また媒介契約を締結する際に、具体的にどのような売却活動を行うのか確認しておきましょう。売却活動にはいくつか方法があり、代表的なものは下記になります。
- 不動産情報ネットワーク「レインズ」への物件の登録
- 不動産ポータルサイトへの物件情報の掲載
- 自社サイトへの物件情報の掲載
- チラシや、新聞の折り込みチラシによる物件情報の配布
- 住宅情報雑誌への物件情報の掲載
- オープンハウスや現地説明会の開催、など
売却予定の物件やターゲットによってどの方法に注力するのか変わってきます。契約前にそうしたノウハウを提示してもらうと、不動産会社を選ぶ際の判断ポイントにもなります。
また不動産売却における不動産会社の収益は、売買契約が成立したときの仲介手数料です。そのため仲介手数料が高くなる販売価格の高い物件に力を注ぐ傾向があり、販売価格が低い物件であれば後回しになっている可能性もあります。
小規模の不動産で売却活動が長引いているようであれば、手が回っていないことも考えられます。売却活動の報告をしてもらい、状況の改善が見込めないようであれば不動産会社を変更することも検討しましょう。
1-3 買取保証があるので契約したが、買取は価格が安くなるとあとで知った
「マンションの売却の際にいくつかの不動産会社に査定をしてもらいました。その際、半年間で売却できなかったら買取する買取保証をつけると提案してくれた不動産会社があったので、安心だと思って契約しました。しかしなかなか売却できず、買取を検討したときに価格が思っていたよりも低くて驚きました。結局、買取はしてもらわずに、そのまま売却活動を継続してもらいました。」(60代男性)
失敗してしまった原因と対策
不動産売買には主に「仲介」と「買取」という方法がありますが、仲介と買取には下記のような異なる点があります。
買主 | 売却価格 | 売却活動の期間 | |
---|---|---|---|
仲介 | 個人もしくは法人 | 不動産市場の相場価格で売り出す | 買主を探すところから始めるため、予測しづらい |
買取 | 不動産会社 | 不動産会社が買取価格を決める(相場より2~3割程度安くなる) | 買取する不動産会社が決まるとスムーズに進められる |
買取保証自体が悪いことではありませんが、特に気をつけるのは買取だと売買価格が相場より2~3割程度低くなることです。それは不動産会社が買い取った後で、リフォームなどをして不動産市場で売却するからです。それぞれのメリットとデメリットをしっかり理解した上で、買取保証を選ぶようにしましょう。
このほか、不動産会社では仲介手数料無料を謳っていたり、仲介手数料以外に費用がかかったりなど、様々な手法で営業活動をしているケースがあります。こうした場合も、どのような内容なのか確認してから契約するようにしましょう。
1-4 内覧の際に適切な対応ができなかった
「先日、初めての内覧希望者をお迎えしました。ご夫婦で来てくれたのですが、結局契約には至リませんでした。あとで原因を聞いたら、『いただいた資料で見た間取りよりも、部屋が狭そうで使いづらそうだった』という感想をいただいたそうです。不動産会社から内覧時には部屋をきれいにしておいてくださいと言われたのですが、しっかりできていなかったのでしょうか。内覧のことを考えて、もう少し丁寧にすればよかったと思いました。」(30代女性)
失敗してしまった原因と対策
不動産を売却する際は購入希望者に、実際に物件を見てもらうのが通常です。その際、物件内の清掃はいつもより丁寧にし、整理整頓もしておきましょう。特に荷物が多いと圧迫感があり、部屋が狭く感じるなど印象が悪くなってしまいます。ポイントは生活感が出ないようにすることや、広くてスッキリ見せることです。
内覧時には売主として下記のことに注意しましょう。
- 窓際の荷物をよけておく
- カーテンの色は明るめのものにしておく
- 室内の収納に入れておく
- 室温を調節しておく
- 換気をしておく
- 暮らしている人にしかわからないアピールポイントをまとめておく
- ネガティブなことを聞かれても正直に答える、など
部屋を見るまでは買う気だったのに、内覧をして購入意欲が薄れたというのはよくあることです。内覧時の印象が売買に影響しますので、適切な対応をするように心がけましょう。
1-5 引き渡し後に設備の不具合でトラブルになった
「マンションを引き渡したあとに不動産会社から連絡があり、給湯器に故障が見つかったとのことで修理代金を支払うことになりました。これから住むわけではないマンションの設備に費用を使うのは納得いかない気もしましたが、売主として当然のことと言われ、代金を支払いました。売却する前に適切に対処していればよかったと思いました。」(30代女性)
失敗してしまった原因と対策
不動産の売却では、対象物件に不備や不良があった場合には売主が買主に対して責任を負うことになっています。かつては瑕疵担保責任と呼ばれましたが、2020年4月に民法が改正されて「契約不適合責任」という名称に変わっています。
契約不適合責任とは、売買の契約に適さないものに対して売主が責任を負う民法上の義務のことで、これは不動産だけではなく、あらゆる売買契約に用いられます。
不動産の売却を決めた際には、設備機器や壁やドア、扉、窓・サッシなどに不具合がないか確認しておく必要があります。万が一、不具合があった場合は、売却活動を依頼する不動産会社にその旨を伝えて、対策を取ってから売却活動を始めるようにしましょう。
また契約不適合責任の範囲には売主が気づいていないケースでも該当することがあります。気づいている場合は対処のしようがあるので、しっかりと対策をしておきましょう。例えば給湯器が故障しているのであれば、修理費用に相当する金額を差し引いた価格で売却するという方法です。
見落としがある場合に備えて、不動産売買契約書に明記することで契約不適合責任の適用範囲や期間を限定したり、責任自体を免責とすることも可能です。ただし、免責とまでしてしまうと売主優位の契約内容となるため、売却価格が下がってしまったり、売却が長引いてしまうこともある点に注意しておきましょう。
【関連記事】不動産売却、契約不適合責任を免責にする方法は?交渉のコツも
2.はじめての不動産売却で信頼できる不動産会社を見分ける方法
はじめての不動産売却で注意しておきたいことは、売却のパートナーとなる不動産会社が信頼できるかどうか、という視点です。悪質な不動産会社の中には、自社の利益を優先して相場から離れた価格をつけるケースや、知識や実績の乏しい担当者によって売却活動自体が難航してしまうこともあります。
不動産会社を見極めるには、複数の不動産会社とコミュニケーションを取りながら、慎重に依頼先を検証することが重要となってきます。例えば、1社から案内された内容に疑問が出てくる場合、同時に相談している他の不動産会社へ確認をとるなどして、どの情報が正しいのか判断することも可能となります。
複数の不動産会社へ不動産査定を依頼するのであれば、無料で利用できる不動産一括査定サイトが便利です。下記、悪質な不動産会社の排除を積極的に行い、全国に対応している不動産一括査定サイトをまとめましたのでご参考ください。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
まとめ
今回のコラムでは、不動産売却で起こりやすい失敗事例とその対策法について紹介しました。
不動産売却での失敗は、売主としての知識が不足していることが主な要因になります。初めてのことでスムーズにいかないこともありますが、今回の紹介したような失敗しやすい事例などを知り、対策を行っておきましょう。
また不動産の売却は不動産会社の協力も重要です。依頼する不動産会社を複数社から慎重に選び、コミュニケーションの取り方などにも注意を払うようにしましょう。
倉岡 明広
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