不動産を売却すると、仲介会社への支払などの経費や、不動産譲渡税などの税金が発生します。売却を検討するのであれば、どの程度の費用が発生するのか事前に確認しておくことは重要なポイントです。
そこで本記事では、不動産売却でかかる諸費用の相場や税金について詳しく解説していきます。できるだけ安くするコツも紹介するので、不動産の売却を検討している方はご参考下さい。
※記事内の税金・税率などは2021年8月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- 不動産売却にかかる諸費用と相場
1-1.不動産会社の仲介手数料
1-2.登記に関する手数料
1-3.ローン繰上返済手数料
1-4.測量費用
1-5.その他の費用 - 不動産売却にかかる税金
2-1.印紙税
2-2.各種登記の登録免許税
2-3.譲渡所得税
2-4.住民税 - 不動産売却にかかる諸費用を安くするコツ
3-1.手続きにかかる費用を交渉する・見直す
3-2.不動産売却の税金を軽減できる税制度を活用する - まとめ
1.不動産売却にかかる諸費用と相場
不動産を売却する際、様々な諸費用がかかります。その中でも最も負担が大きいのは、不動産会社に支払う仲介手数料となってきます。
売却不動産にローンが残っている場合には抹消登記に関する費用、ローンの返済手数料がかかることがあります。登記費用は他にもかかるケースがあります。場合によっては測量費用がかかることもあります。その他、個別事情に応じて費用がかかることがあります。
1-1.不動産会社の仲介手数料
不動産売却を依頼する不動産会社には様々な業務を依頼することになり、その報酬として仲介手数料を支払います。依頼された不動産会社では、不動産情報サイトに物件情報を掲載したり、チラシを作成・配布したりして販売活動をおこないます。その他、購入希望者に対して売買条件の交渉をおこなったりすることもあります。
この仲介手数料は不動産会社が自由に設定することは出来ず、法律によって下表の上限に定められています。
売買価格 | 仲介手数料率 |
---|---|
200万円未満 | 売買金額×5.5% |
200万円超~400万円以下 | 売買金額×4.4%+2.2万円 |
400万円超 | 売買金額×3.3%+6.6万円 |
規定の利率以下であれば、不動産会社は仲介手数料率を自由に設定することが可能です。たとえば、不動産の売買価格が2,700万円の場合「2,700万円×3.3%+6.6万円=95.7万円(税込)」以下の範囲で仲介手数料をいくらに設定しても良いことになっています。なお、仲介手数料は成功報酬であり、売買契約成立後に支払います。
1-2.登記に関する手数料
不動産売買の所有権移転登記の手数料は、買主が負担するのが原則であり、売主にはかかりません。しかし、一定の場合には、売主側でも登記に関する手続きをおこなう必要があり、司法書士などに依頼すると手数料がかかります。なお、登記の際には、手数料以外に、登録免許税という税金がかかります。
不動産に抵当権が設定されている場合
売却不動産を担保にして融資を受けている場合、抵当権が設定されています。このような場合、売却時にその融資を受けた金融機関にローンの残債を返済し、抵当権の設定を抹消する必要があります。抵当権抹消登記を司法書士に依頼した場合の手数料は、1.5万円程度が相場になります。
売主の現住所と登記住所が異なる場合
所有権移転登記をおこなうには、売主の現住所と登記簿上の住所が一致している必要があります。異なる場合には、売主負担で住所変更登記をおこないます。住所変更登記を司法書士に依頼した場合の手数料は、1万円程度が相場になります。
相続した不動産や贈与を受けた不動産を売る場合
相続や贈与によって取得した不動産を売却する場合、被相続人や贈与者から所有権移転登記をおこなう必要があります。相続や贈与の所有権移転登記を司法書士に依頼した場合の手数料は、5万円~10万円程度が相場になります。
土地の一部を切り売りする場合
土地の一部を切り売りする場合には、分筆登記をする必要があります。広すぎる土地で、購入者側にとって利用しにくかったり、あるいは、相続などで複数人の権利を整理したりするときに分筆することがあります。分筆登記は土地家屋調査士に依頼することが多いといえます。
分筆登記を土地家屋調査士に依頼した場合の一般的な手数料は50万円程度ですが、条件によって大きく変動します。
1-3.ローン繰上返済手数料
売却時に、その不動産に残債がある場合、繰上げ返済をする必要があります。金融機関によっては、繰上げ返済をする場合に手数料がかかることがあります。数千円のケースから、返済元金の2%程度のケースまで様々です。
返済元金に対して数%の手数料がかかる場合、残債の金額によっては数十万円の手数料になりますので注意しましょう。
1-4.測量費用
売却不動産が、戸建やアパートなど土地付きの不動産である場合、通常、土地面積を確定させることが条件となります。このような場合、隣地との境界を確定させて境界標を設置し、確定測量図を作成する必要があります。
居住用に利用されていた戸建用地の確定測量を土地家屋調査士に依頼した場合の手数料は、30万円~50万円程度といえます。土地の面積や形状、境界確定に必要な立ち会い人数、境界トラブルの存在など個別事情によって手数料は変動します。
境界の確定が難しく、現況測量のみとする場合は、10万円~30万円程度となるケースが多いと言えるでしょう。
1-5.その他の費用
売却不動産に居住していた場合は、引越し費用が必要になります。また、建物の中を空の状態で引き渡すことが条件になる場合、残置物の撤去処分費用が必要になります。
売却不動産が築古の戸建である場合、購入者は新築の建物用地として利用することを想定して購入する場合、建物の解体が条件になることがあります。
解体費用は、木造で坪5万円弱、鉄骨では5万円強がおおよその相場となります。解体の際には、足場が必要になる場合もあり、別途工事費用がかかることもあります。
2.不動産売却にかかる税金
不動産の売却では、売買契約時に、売買契約書の作成について、売買代金に応じた印紙税がかかってきます。この時、登記手続きが必要になれば、登録免許税がかかります。利益が出た場合、翌年以降、譲渡所得税と住民税がかかることになります。
2-1.印紙税
売買契約書の作成の際には、契約書に収入印紙を貼付して印紙税を納めることになります。不動産の売買価格によって印紙税の金額は次のようになっています。なお、令和4年3月31日までに作成される「不動産譲渡契約書」の印紙税は、軽減措置により原則の半額となっています。
売買価格 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円超50万円以下 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 60,000円 |
5億円超10億円以下 | 160,000円 |
10億円超50億円以下 | 320,000円 |
50億円超 | 480,000円 |
※引用:国税庁「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」
2-2.各種登記の登録免許税
登記が必要な場合は、それぞれ規定の登録免許税がかかります。
登記の種類 | 登録免許税額 |
---|---|
抵当権抹消登記 | 不動産1個につき1,000円 |
住所変更登記 | 不動産1個につき1,000円 |
相続による所有権移転登記 | 不動産の固定資産税評価額×0.4% |
贈与による所有権移転登記 | 不動産の固定資産税評価額×2% |
分筆登記 | 不動産1個につき1,000円 |
2-3.譲渡所得税
不動産の売却について利益が出た場合、売却した年の翌年3月15日までに確定申告をおこない、その利益(譲渡所得)につき譲渡所得税が課されます。譲渡所得は、次の算式によって計算されます。
譲渡所得=譲渡価格-(取得費+売却費用)-特別控除
税額は、取得期間に応じて下表のようになっています。
- 長期譲渡所得:所得税15%・住民税5%
- 短期譲渡所得:所得税30%・住民税9%
建物の所有期間が5年以下の場合には短期譲渡所得、5年超の場合には長期譲渡所得が適用されます。2037年までは上記所得税に復興特別所得税が加算されるため、短期譲渡所得は所得税と住民税を足して39.63%、長期譲渡所得は20.315%の税金が課されます。
譲渡所得の取得費の計算方法
譲渡所得の取得費は、次の算式によって計算されます。
取得価格+取得の際要した費用+取得後の改良費-減価償却費(建物の場合のみ)
取得価格は、購入時の土地・建物の価格や建物の建築費用となります。建物を売却した場合には、減価償却費を差し引かなければならないので、注意が必要です。
減価償却費は経年劣化によって目減りした価値分のことです。目的や構造によって償却率が決まっており、次の算式によって計算されます。
減価償却費=建物の取得費×0.9×償却率×経過年数
居住用建物の耐用年数と償却率は次のようになっています。ただし、賃貸などの事業用に供していなかった場合、法定耐用年数の1.5倍を用いるものとされています。
構造 | 耐用年数(法定の1.5倍) | 償却率(法定の1.5倍) |
---|---|---|
木造 | 22(33) | 0.046(0.031) |
軽量鉄骨 | 27(40) | 0.038(0.025) |
鉄筋コンクリート | 47(70) | 0.022(0.015) |
2-4.住民税
譲渡所得には、住民税も課されます。住民税は、所得税の確定申告に基づき、売却した年の翌年6月以降、各市区町村が賦課します。税率は、譲渡所得に対して次表のようになっています。
- 短期譲渡所得(5年以下):9%
- 長期譲渡所得(5年超):5%
3.不動産売却にかかる諸費用を安くするコツ
不動産売却にかかる諸費用は必ず支払わなければならないものもありますが、工夫次第で安く抑えられるものもあります。諸費用や税金を抑えるコツをご紹介します。
3-1.手続きにかかる費用を交渉する・見直す
不動産会社の仲介手数料は、上述で紹介した金額は上限であり、交渉次第で値引きしてもらえる可能性があります。ただし、買い手のつきやすい人気物件や、売却価格の高い物件でないと交渉のハードルは高いと言えるでしょう。
同じ物件であっても不動産会社によって取り扱いや広告手段は異なります。仲介手数料の相談に乗ってくれる不動産会社を探すのであれば、複数の不動産会社へ同時に相談できる「不動産一括査定サイト」の利用を検討してみましょう。
不動産一括査定サイトは無料で利用することができ、一度登録をするだけで問い合わせが可能になるため、1社ずつ問い合わせを行う手間を省くことができます。ただし、提携している不動産会社にしか依頼をすることができない点はデメリットとなるため、提携先の不動産会社にも注意しておきましょう。
下記は、主な不動産一括査定サイトの一覧です。ここで紹介している査定サイトは全国エリアに対応しており、積極的に悪徳業者の排除を行っている特徴があります。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
なお、不動産会社から提示された仲介手数料を支払い、広告宣伝活動に力を入れてもらった方が、手数料の値引き分よりも高値で売却できる場合もあります。仲介手数料の交渉を行う際は状況に合わせて、慎重に検討することが大切です。
【関連記事】不動産売却の仲介手数料は値引き交渉できる?成功事例や注意点を解説
その他、登記手数料、測量費用、その他の諸費用は、いずれも交渉次第では安く抑えることが可能です。サービス内容が大きく変わるようでなければ、複数の業者から相見積りを取って比較し、安価な業者に依頼することを検討してみましょう。
3-2.不動産売却の税金を軽減できる税制度を活用する
譲渡所得税や住民税を安くするには、譲渡所得の特別控除や税金の繰延べを利用する方法があります。主な税制度として、下記の3つの特例を見て行きましょう。
マイホームを売ったときの特例
マイホームの特別控除では、自己の居住用財産を住まなくなってから3年以内に売却したときに、譲渡所得から3,000万円までの控除が認められます。空き家にかかる特別控除では、相続した空き家に耐震リフォームをして売却した場合、または取り壊し後に売却した場合、譲渡所得から3,000万円まで控除することが可能になります。(※参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例」)
特定のマイホームを買い換えたときの特例
一定のマイホームや事業用資産を買換えた場合にも、元の不動産を売却して生じた利益にかかる譲渡所得税を、買換えた不動産を売却するまで繰り延べることができる特例があります。(※参照:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」)
マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
また、特定のマイホームを売却して損失が生じた場合、あるいはマイホームを買換えて損失が生じた場合、その損失を他の所得と損益通算や繰越控除できる特例があります。(※参照:国税庁「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」)
ただし、これらの税制優遇措置の適用を受けるには、詳細な条件があります。適用を受ける場合は、税理士などの専門家に相談することも検討しておくと良いでしょう。
【関連記事】不動産売却の確定申告、税理士に依頼する費用は?メリット・デメリットも
まとめ
不動産買取の際には、売却と異なり仲介手数料がかかりません。しかし、売却予定の不動産に抵当権が設定されているなど、個別の事情によっては、登記費用などの手数料が生じてきます。利益が出た場合には、譲渡所得税や住民税も支払うことになります。
不動産売却で得た資金を別の用途に使おうと考えている場合であっても、諸費用の支払後にほとんど資金が残らないケースもあります。売却前にどれぐらいの費用が生じるのか推測し、手元に資金を用意しておくようにしましょう。
佐藤 永一郎
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