不動産のリフォームや解体で使える税制や補助金は?9つ紹介

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不動産のリフォームや解体で利用できる「税制」や「補助金」にはどのようなものがあるのでしょうか?

税制は、毎年の改正で目まぐるしく変わります。補助金も、資金を拠出する省庁や自治体によって取り扱いはさまざまです。

この記事では、分かりにくい不動産のリフォームや解体で利用できる「税制」と「補助金」について、2020年6月現在、利用できる可能性があるものを9つにまとめて紹介します。

目次

  1. リフォームで利用できる5つの税制
    1-1.住宅借入金等特別控除
    1-2.特定増改築等住宅借入金等特別控除
    1-3.住宅特定改修特別控除
    1-4.住宅耐震改修特別控除
    1-5.固定資産税の減額制度
  2. リフォームで利用できる2つの補助金
    2-1.省エネ系補助金
    2-2.長期優良住宅化補助金
  3. 解体で利用できる税制と補助金
    3-1.譲渡所得税の3,000万控除
    3-2.地方自治体の解体補助金
  4. まとめ

1.リフォームで利用できる5つの税制

不動産のリフォームで利用できる「税制」には、ローン利用の場合の所得税控除系の制度、ローンに関わらず特定の改修を行った場合の所得税控除制度、特定の改修を行った場合の固定資産税の減免制度があります。

ローン所得税控除系の2制度は、古くからある住宅ローンによる投資促進のための優遇税制です。特定の改修にかかる所得税控除制度は、近年導入されたもので、特定の政策目的の趣旨に合致するような住宅の改修を促進するための優遇税制と言えます。

ここではリフォームで利用できる5つの控除・減免制度についてご紹介します。

1-1.住宅借入金等特別控除

住宅借入金等特別控除は住宅ローン控除制度の一つで、個人が住宅ローンを利用して増改築等を行い、自己の居住用とした場合に、そのローン残高の0.6%~1%を10年間、所得税額から控除する制度です。(*国税庁「増改築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」参照)

居住を始めた年によって割合と限度額が変わります。初年度のみ確定申告をする必要がありますが、翌年以降は年末調整で手続きできます。

1-2.特定増改築等住宅借入金等特別控除

住宅ローンを利用して特定の増改築を行い、自己の居住用とした場合に、そのローン残高のうち250万円までは2%、それを超える部分は1%を5年間、所得税額から控除できます。

上記の通常の住宅ローン控除との選択適用となります。

手続きは、初年度のみ確定申告、翌年以降は年末調整可能です。特定の増改築とは、以下のものになります。

それぞれの改修工事は、趣旨に沿っていればどのようなものでもよいというわけではなく、一定の基準があるため注意が必要です。

通常の住宅ローン控除と異なり控除期間が5年と短いので、選択する際には控除税額の総額だけでなく、控除期間も併せて比較して判断しましょう。

1-3.住宅特定改修特別控除

特定の改修工事を行って自己の居住用とした場合、工事資金の調達方法がローンによる場合でなくても、工事金額の10%をその年分の所得税額から控除する制度です。

利用には確定申告が必要で、250万円が限度(控除税額ベースでは25万円)ですが、住宅ローン系の特別控除との選択適用です。

特定の改修工事とは、次の4つの工事です。

こちらも、それぞれの改修工事ごとに一定の基準があります。住宅ローンを組んでいる場合、住宅ローン系の特別控除との選択適用になりますが、ローン控除は1%×10年間のため、控除できる税額の総額は変わりません。

ただし、工事を行った1年間で一気に税額控除できるメリットが大きいと感じる方も多いでしょう。

1-4.住宅耐震改修特別控除

個人が現行の耐震基準に適合する住宅の耐震改修を行い、自己の居住用とした場合、工事金額の10%をその年分の所得税額から控除する制度です。最高25万円が限度となります。(*国税庁「耐震改修工事をした場合(住宅耐震改修特別控除)」を参照)

住宅ローン系の特別控除との併用が可能ですが、住宅特定改修特別控除との併用はできません。

適用には確定申告が必要で、旧建築基準法下で建築された建物に対して耐震改修を行うことが条件になっています。

住宅特定改修特別控除制度の耐久性向上工事との選択適用ですが、耐久性向上工事は長期優良住宅の基準となっているため、耐震改修工事の方が比較的適用しやすいでしょう。

1-5.固定資産税の減額制度

既存住宅に以下のリフォーム工事を行った際、翌年度の固定資産税額が、それぞれの割合で減額されるという制度があります。(*国土交通省住宅局「国土交通省税制改正事項(住宅局関係抜粋)」参照)

  • 耐震改修工事:2分の1を減額
  • バリアフリー改修工事:3分の1を減額
  • 省エネ改修工事:3分の1を減額
  • 長期優良住宅化工事:3分の2を減額

適用を受けるには、工事完了後3カ月以内に市区町村に届け出る必要があります。減額期間は翌年度1年間のみになります。

2.リフォームで利用できる2つの補助金

リフォームの際に利用できる「補助金」には、大きく、省エネ系の補助金と長期優良住宅化事業の補助金の2つがあります。

省エネ系の補助金は、補助金の対象となる省エネ設備、資金を拠出する管轄省庁などによって、主に、省エネ建材、断熱リフォーム、ネットゼロエネルギーハウス、エネファームの補助金があります。

それぞれ詳しく見て行きましょう。

2-1.省エネ系補助金

省エネ系補助金は、断熱改修に位置づけられる、省エネ建材と断熱リフォームの補助金と、蓄電設備の導入リフォームの補助金に分けられます。

それぞれリフォームの用途に合った補助金の利用を検討するとよいでしょう。

断熱改修の補助金

断熱改修の補助金には、下記の2つがあります。

  • 「高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業」による補助金
  • 「次世代省エネ建材支援事業」による補助金

「高性能建材による住宅の断熱リフォーム支援事業」による補助金は、該当事業に登録された建材を用いて、断熱リフォームを行い、15%以上の省エネ効果を得ることが条件となっており、ガラスや窓も対象となります。

工事額の3分の1以内、120万円までの補助で、期限までの申請や所定の審査を経る手続きが必要になるので、一般社団法人環境共創イニシアチブのホームページなどで確認が必要です。

「次世代省エネ建材支援事業」による補助金は、高断熱パネルや潜熱蓄熱建材として該当事業に登録された建材を用いて、断熱リフォームを行うことが条件になります。

前述の断熱リフォーム事業よりも指定された建材は数が少なく、一定の施工方法に沿って施工しなければなりません。

工事額の2分の1以内、200万円までが補助されますが、申請期限や所定の審査がありますので、申請を検討している場合は一般社団法人環境共創イニシアチブのホームページなどを確認するようにしましょう。

蓄電設備の補助金

蓄電設備のリフォームに対する補助金として、ネットゼロエネルギーハウス(ZEH)支援事業補助金があります。

経済産業省の定める、ZEHの条件を満たす蓄電設備のリフォームに対し、60万円~115万円を補助するものです。

戸建て住宅の場合、補助メニューは、ZEH、ZEH+、ZEH+R、先進的再エネ熱等導入支援、の4つがあります。

大まかにいうと、ZEHとは省エネ性能が高く、使うエネルギーと発電するエネルギーがほぼ同じになる住宅のことです。使うエネルギーについては、必ずしも電気である必要はなく、ガスや灯油のエネルギーを共通単位に換算してエネルギー収支の計算をします。

ZEH+は再生可能エネルギーの自家消費をより拡大させたもの、ZEH+RはZEH+に停電時の対応機能を加えたものになります。

こちらも、補助金の申請時期と所定の審査を経て交付決定となるので、一般社団法人環境共創イニシアチブのホームページなどで確認が必要です。

登録されている対象事業者も公表されているので、実際上、補助金を受けるには、その事業者によって施工が推奨されると言えます。

2-2.長期優良住宅化補助金

長期優良住宅化補助金は、劣化対策、耐震性、省エネ性の3つの性能面から一定基準を満たすための住宅リフォームの工事費を3分の1補助する制度です。(*国土交通省「長期優良住宅のページ」参照)

それぞれ、性能レベルの低い順から高い順に、次の3つのパターンがあり、補助限度額が異なります。

  • 評価基準型:長期優良住宅認定の取得には至らないが、一定の性能向上が認められるもの(100万円限度)
  • 認定長期優良住宅型:長期優良住宅の認定を受けるもの(200万円限度)
  • 高度省エネルギー型:認定長期優良住宅のうち、更にエネルギー性能を高めたもの(250万円限度)

評価基準型の基準を満たせば、三世代同居対応のための工事、子育て世代向け改修工事であっても補助対象となります。

補助申請はリフォーム工事業者が行い、補助金も第一次窓口はリフォーム工事業者となっているため、補助金の適用を受けたい場合は補助対象の事業者を探して窓口にする必要があります。

3.解体で利用できる税制と補助金2つ

住宅を解体する際に利用できる「税制」と「補助金」をそれぞれ1つずつ紹介します。

解体することそのものを優遇する税制はなく、ここで紹介するのは、解体後にその物件を譲渡することで利用できる税制です。

補助金については、国の支援事業に基づいて地方自治体が独自に補助金を交付する制度で、不動産の所在している地域によって取り扱いが異なるので注意が必要です。

3-1.譲渡所得税の3,000万控除

相続した空き家を解体して更地売却をした場合、適用を受けられる所得税の優遇制度があります。それが、譲渡所得の3,000万円控除の特例です。(*国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」参照)

譲渡所得税は、不動産の譲渡で生じた利益に対して課税される税金であり、この特例は利益からさらに3,000万円の控除ができる措置になります。

適用できる主な条件は次のようになっています。

  • 相続によって取得したこと
  • 相続直前に被相続人が一人で居住していた不動産であること
  • 昭和56年3月31日以前の建築でないこと
  • 区分所有建物でないこと
  • 相続開始後3年を経過する日までに売却したこと

相続した不動産の場合、取得費用がわからず、売却価格から控除する取得費用が少なくなるケースもあります。そうすると、譲渡所得が高額になり多額の譲渡所得税が発生しかねません。

このようなときには、譲渡所得税の3,000万控除は是非適用を検討したい「税制」と言えるでしょう。相続後3年以内の売却が条件になっていますので、解体後の売却時期に注意しましょう。

3-2.地方自治体の解体補助金

空き家の解体にかかる補助金制度は、各地方自治体によって様々です。

たとえば、神奈川県厚木市の「老朽空き家解体工事補助金」は以下のような制度となっています。

  • 1年以上空き家になっていること、市の定める不良度基準以上であること、所有権以外の権利が設定されていないことが対象となる空き家の条件
  • 所定の手続きを経て、解体工事費の2分の1を最大50万円まで助成

(*厚木市「老朽空き家解体工事補助金」を参照)

各地方自治体によって、助成対象となる空き家の基準も異なり、補助金額も50万円~100万円程度と様々です。

解体を検討している空き家が対象となるかどうか、対象になるとすれば、いくらぐらいの補助金が出るのか、空き家の所在している地方自治体のホームページなどで確認するようにしましょう。

不動産を解体する前の注意点

築古の不動産を解体する際に注意しておきたいのは、建築基準法に基づいた再建築の可否です。仮に建築基準を満たせていない土地の場合、同規模の建物を建設することが非常に困難になります。まずは土地の面積や接面状況を調査し、再建築が可能かどうか確認をしておきましょう。

また、解体した不動産の売却を検討しているのであれば、建物の解体をせずにそのまま売却する方が最終的な利益が大きくなる傾向にあります。解体費用分を売却価格に上乗せしてしまったり、更地にして土地の用途を限定すると、購入希望者が減少してしまうためです。

地方や郊外の古い不動産で売却できないと考えて解体を検討しているのであれば、最大10社に査定依頼が可能な「リガイド」やNTTデータグループが提供する「HOME4U」などの不動産一括査定サイトで不動産の査定を行い、おおよその売却価格を調べてみましょう。

不動産一括サイトを利用することで、複数の不動産会社へ同時に問い合わせることができるため、査定結果を比較することが可能です。解体前に不動産会社へ相談し、売却の手順について事前に相談をしておきましょう。

【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

まとめ

不動産のリフォームで利用できる「税制」には、所得税のローン控除制度と、投資額に対して所得税を10%控除する制度、固定資産税の減額制度があります。

固定資産税の減額制度は、適用要件を満たすリフォームであれば、申請して適用を受けるようにしましょう。

所得税の控除制度は、リフォームの種類によって複数の制度を選択あるいは併用できる場合があります。それぞれの優遇税制の性質を踏まえたうえで、自分に合った税制の適用を受けるようにしましょう。

不動産のリフォームで利用できる「補助金」には、省エネ系の補助金と長期優良住宅化事業の補助金の2つがあります。

省エネ系の補助金は、申請時期や適用されるリフォームにつき、様々な条件があります。適用を検討するなら、予め確認の上、リフォームに取り掛かるようにすべきでしょう。

長期優良住宅化事業の補助金は、劣化対策、耐震性、省エネ性の3つの性能面から一定基準を満たしたリフォーム、あるいはすでに満たしている住宅の三世代同居対応のための工事、子育て世代向け改修工事であれば受けられる可能性は高いと言えます。事業者申請が条件なので、予め事業者に確認するようにしましょう。

解体工事で利用できる「税制」は、譲渡所得の3,000万円控除の特例になります。相続物件で条件に該当すれば、是非適用を検討したい「税制」です。

解体工事に対しての各地方自治体が実施している「補助金」は、自治体によって取り扱いが異なるのでホームページなどで予め確認するようにしましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。